仮面ライダーGT   作:カッティングカマター

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2019年編#4-6

2019年編 #4-6

 

暗黒に閉ざされた廃墟の地下深く、時間すらも凍りついたかのような静寂が支配していた。その闇の中で、赤と青の不気味な光がまるで生き物の心臓が脈打つようにゆっくりと明滅し、苔むした石壁や朽ちた機械の残骸を、不吉な陰影と共に照らし出している。

 

ここは、かつてロイミュードの総本山として、地中深くに隠された地下神殿。外の世界が日々変化を続ける中、この空間だけはひっそりと時を止めていた。鼻をつくのは、長い年月が染み込ませた冷たい湿気と、古い機械のオイルが焦げついたような鉄錆び混じりの臭い。重く澱んだ空気は、呼吸するたびに肺の奥まで冷たく浸み込み、ここが生者の領域ではないことを告げている。

 

神殿の中心には、無数の太いケーブルや金属の蔓が複雑に絡み合い、まるで生きた器官のようにうねる祭壇が広がっていた。その前に、2体の幹部ロイミュードが彫刻のように微動だにせず立ち尽くしている。

 

一方は、全身を炎のような赤い装甲が覆い、体の節々から怒りの力が迸るような熱気を放つレイジロイミュード。

 

もう一方は、氷の結晶を凝縮させたような青銀の体躯を持ち、周囲の空気さえ凍らせる冷たい雰囲気を纏うクライロイミュード。

 

二人の鋭い視線が注がれる先には、無残に損傷した黒い体が横たわっていた。右半身は崩れ落ち、まるで廃棄された破片のように見える。だが、その残骸からは微かに、だが確かに消えることのない力の残り香が漂っていた。

 

それは5年前のあの日——紫苑が仮面ライダーGTへと変身し、渾身の一撃「フレアフェイズ」を放った瞬間、爆炎と共に塵となって消滅したと誰もが信じていた男、星川大悟、すなわち元・フィアロイミュードの肉体そのものだった。

 

「キングは……まだ、ここにいる」

 

レイジが、地層の奥深くから這い上がってくるような、低く重く響く声で唸る。彼の体の装甲はわずかに震え、怒りとも焦燥ともつかない複雑なエネルギーが皮膚の下で脈打っている。

 

 

「あの爆発は体を砕いても、王の核だけは貫けなかった。」

 

クライが、氷の刃のように澄み切った冷たい声で応じる。その瞳には、悲しみを超えた熱狂的なまでの狂信が宿っている。

 

 

「この5年間、俺たちはただ待ち続けた。僅かな残滓を繋ぎ止め、損傷を抑え、回復の時が訪れることを祈り続けた。王を失った瞬間から、ロイミュードの未来は完全に閉ざされた。真の進化を成し遂げ、この種族を次の段階へ導けるのは、ただ王だけだ。だからこそ、絶対に蘇らせなければならない——」

 

その言葉が神殿の柱に反響して消えるか消えないうちに、最も奥まった闇の領域から、地殻そのものが軋みを上げるような重々しい足音が響き渡った。

 

カラン、カラン……と、金属と樹木が擦れ合うような独特の音が近づく。闇の中からゆっくりと姿を現したのは、他のロイミュードとはまったく異質な存在だった。

 

巨大な幹のように太い体躯は、うねる蔦や鋭い棘を持つ枝が何重にも絡み合い、表面には粘液のような光沢が浮かんでいる。全身から放たれる圧力は、生命力と腐敗、創造と破壊が渾然一体となった、理解を超えたおぞましい存在感だ。

 

グロウスロイミュード。

 

これまで一度も表舞台に姿を見せず、ロイミュードの最奥部に隠れ続けていた幹部。種族の「成長」と「進化」を司り、通常の理論では説明のつかない変質と覚醒を引き起こす力を持つ、最も危険で未知の存在である。

 

「最後のピースは……揃った」

 

木々が風にざわめくような、多くの声が重なり合った不明瞭な響きが、神殿の空気を震わせる。グロウスロイミュードはゆっくりと祭壇へ近づき、体のあらゆる部分から無数の根のような触手を伸ばす。それらはまるで意志を持つ蛇のようにうねり、横たわる大悟の体の傷口や亀裂へと、音もなく絡みついていく。

 

次の瞬間、ドロリと粘つく質感を持った漆黒の液体が、触手の先端から溢れ出し、大悟の体の内部へと流れ込んでいった。それと同時に、彼の体を中心に、白熱した光と濃い闇が渦を巻き、まるで星が生まれるか消滅するかのような激しいエネルギーが空間全体を揺るがし始める。

 

「う……あああああああっ!!」

 

苦痛なのか、それとも長い眠りから覚める歓喜なのか。両者が入り混じり、絶叫とも咆哮ともつかない声が、地下空間の天井を突き破るように轟き渡った。

 

黒いエネルギーの渦に押し上げられるように、大悟の体はゆっくりと宙に浮かび上がる。失われていた右半身、砕けた肩や関節、損傷した内部回路が、目に見える速度で再構築されていく。古い傷跡の上には、鉄よりも重く鈍い光沢を放つ鉛色の装甲が層を成し、さらにその継ぎ目や中心部には、禍々しく輝く深紅の結晶が脈打つように埋め込まれていく。まるで、過去の自分を脱ぎ捨て、より強靭で凶悪な器へと生まれ変わるかのような変容だった。

 

時間にして数分にも満たないその過程は、見守るレイジとクライにとっては永遠にも感じられた。やがて渦巻いていた光が一点に収束し、周囲を覆っていた黒い霧がゆっくりと晴れていく。

 

そこに降り立った存在は、もはやかつての星川大悟でも、恐怖を司るフィアロイミュードでもなかった。

 

全身を覆う鉛色の装甲は、見る者の心に重圧と本能的な恐怖を直接叩き込む。背中からは三対の鋭い棘のような翼がせり出し、その一枚一枚が闇を切り裂く刃となっている。頭部には角のような突起が伸び、顔の中心に浮かぶ二つの瞳は、深い闇の底から燃え上がるような赤い光を湛えていた。

 

その瞳の奥に宿るものは、人間だった頃の上昇志向も、フィアロイミュードとして抱いていた支配への野心も、すべてが完全に焼き尽くされた後に残る、底知れぬ虚無だった。そしてその虚無の中には、この世のあらゆる希望を否定し、すべてを破壊し尽くそうとする純粋なまでの憎悪だけが、渦巻くように燃えている。

 

ディスペアロイミュード。

 

絶望そのものを体現する存在——それこそが、彼の新たなる名であった。

 

復活を遂げた王は、ゆっくりと自身の両手を見つめる。装甲の指先を軽く握り、力が体の隅々まで満ちていくのを確かめるように、指を開閉する。そしてゆっくりと両手を広げると、口元を歪めて、冷たく、そして何よりも恐ろしい笑みを浮かべた。

 

「5年か……。本当に、長い時間だったな」

 

その声は、かつてのどの姿の時よりもさらに低く、深く、まるで地獄の最下層から響いてくるような重みを帯びている。一語一語が空気を震わせ、聞く者の魂の芯まで凍てつかせ、逃れることのできない絶望感を直接植え付けるような響きだった。

 

「紫苑……忘れるはずもない。お前が俺に放った一撃の痛み、砕け散った意識の中で感じ続けた暗闇、そのすべてを俺はこの5年間、ずっと抱え続けてきた」

 

ディスペアロイミュードは虚空を睨みつけ、瞳の赤い光がさらに濃く激しく輝きを増す。

 

「だが、その痛みが教えてくれたのだ。この世の真の姿とは何かを。希望など儚い幻に過ぎず、すべての道の果てに待っているのは、ただ絶望だけだということを。俺をこの姿へと導いたのは、紫苑。お前だ。」

 

彼はゆっくりと前に踏み出し、祭壇の上に立つ。その一歩一歩が、神殿全体の構造にまで圧力を与え、壁の亀裂からは細かい砂が落ち始める。

 

「次こそは俺が、お前に真の絶望を見せてやる。お前が守ろうとしている日常も、仲間との絆も、信じている正義も、すべてが無力であることを思い知らせてやる。そして最後には、お前ごとこの世界を、永遠に続く終わりのない絶望の底へと、叩き落としてやる……!」

 

その宣言が終わると、レイジとクライは全身を震わせながら深く頭を垂れ、新たなる王の誕生を祝い、その力の前に無条件の忠誠を誓った。彼らにとって、これこそが待ち望んでいた未来の始まりだった。

 

だが、その二人の背後に立つグロウスロイミュードだけは、何の言葉も発さず、ただ青い発光する瞳を妖しく点滅させながら、静かに、しかし計り知れない存在感を放っていた。その姿は、王の復活がすべての終着点ではなく、さらに深く暗い何かの始まりであることを、無言のうちに示唆しているかのようだった。

 

こうして、この地下神殿の闇の中で、新たなる最悪の脅威が世にその姿を現した。

 

ディスペアロイミュードの復活は、S.H.I.F.T.の組織にとっても、仮面ライダーたちにとっても、これまでのどんな戦いとも比較にならないほどに残酷で、厳しく、そして絶望的な、新たなる戦いの幕開けを告げるものだった。これから始まる戦いの行方は、誰にも予測することができない——ただ、これまでの平和な日常が、静かに崩れ始めていることだけは、確かだった。

 

 

#4完

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