仮面ライダーGT   作:カッティングカマター

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2014年編#3-5

2014年編#3-5

 

倉庫街の暗がりの中、紫苑と黒衣の男は互いに一歩も譲らず、鋭い視線を交わした。潮風が二人の間を抜け、錆びた鉄の臭いと緊張感が混ざり合い、辺りの空気はまるで凍りついたかのように重く沈んでいた。

紫苑は全身の神経を研ぎ澄まし、わずかな動きも見逃すまいと身構える。目の前の男から放たれる圧力は、これまで戦ってきたどのロイミュードよりもはるかに強く、まさに桁違いのものだった。心の奥底から警鐘が鳴り響き、この男が自分の想像をはるかに超えた危険な存在であることを本能が告げていた。

その時、通信越しに三原の声が響き渡った。それはいつもの冷静で無機質な調子とはまったく異なり、驚きと恐怖が入り混じった、まるで悲鳴のようなものだった。

『紫苑、離れろ! すぐにその場から逃げろ! そいつは……クライだ!!』

「クライ……?」

聞き慣れない名前に紫苑が眉をひそめた瞬間、男は口元をゆっくりと歪め、笑みを浮かべた。その笑顔は冷たく、どこか哀れみを含んでおり、紫苑の背筋にさらなる悪寒を走らせた。

次の瞬間、男の体が奇妙な光に包まれ、徐々に形を失っていくのが見えた。皮膚や肉といった有機的な部分は跡形もなく消え去り、代わりに硬い金属の結晶が次々と生成され、全身を覆い始める。骨格は大きく変形し、身長は瞬く間に数倍に膨れ上がり、衣服は裂けて舞い上がった。

数秒も経たないうちに、そこに立っていたのは、人間の姿など微塵も残さない、禍々しい怪物だった。

全体が暗い鉄色の装甲で覆われ、背中からは長く鋭い棘が生え、右手には大鎌を持っている。その姿はまさに伝説に語られる死神そのもので、見る者全てに死の予感を与える。青く光る眼窩からは冷徹な光が放たれ、周囲の空気さえも切り裂くような威圧感が溢れ出していた。

これが、三原が「クライ」と呼んだ存在——クライロイミュードの真の姿だった。

「お前の力、試させてもらうぞ」

低く重々しい声が響くと同時に、クライは軽く片手をかざした。特に何の動作もなく、ただ手を向けただけの行為に過ぎなかったが、紫苑は次の瞬間、信じられない光景を目にすることになった。

さっき自分が倒したばかりの下級ロイミュードの破片たちが、まるで意志を持った生き物のように地面から浮かび上がり、蠢き始めたのだ。砕けた装甲の破片、飛び散った機械部品、液体の残骸——それら全てが一つの点に向かって集まり始める。

それだけではなかった。周囲に放置されていた古い重機やコンクリートの瓦礫、倉庫の骨組みまでもが、磁石に吸い寄せられる鉄粉のように次々と吸い込まれていく。物質同士が強固に結合し、形を変え、成長を続ける。

「なっ……何をしているんだ!?」

紫苑は驚きのあまり声を上げた。あのロイミュードは確かに完全に破壊したはずだった。爆発炎上し、機能停止したことは誰が見ても明らかだった。死んだはずの存在が、なぜこうして再び動き出すのか——それどころか、周囲の物質まで巻き込んで変化していくなんて、常識では考えられないことだった。

集積は瞬く間に進み、数秒と経たないうちに、そこには巨大な体躯を持つ怪物が完成していた。高さは周囲の倉庫をはるかに超え、まるでビルそのものが生き物になったかのような大きさで、見上げる紫苑の視界はその影に完全に覆われてしまった。無数の部品が複雑に組み合わさった体は硬く重厚で、全身からは破壊的なエネルギーが溢れ出している。

だが、クライ自身はその怪物が完成すると同時に、煙や霧が消えるようにして跡形もなく姿を消していた。

「待て! どこに行った!?」

紫苑が慌てて周囲を見回すものの、クライの姿はどこにも見当たらない。代わりに、眼前の巨大な怪物が口を開き、地鳴りのような低い咆哮を上げた。その声は大地を震わせ、建物の窓ガラスは次々と割れていき、立っていることさえ困難なほどの衝撃波が生まれた。

「ふざけるな……こんなの、どうやって戦えばいいんだ!」

紫苑は絶望感を覚えた。目の前の相手は、一人のライダーの相手としてあまりにも規模が違いすぎた。

怪物が重たい体を動かし、右腕をゆっくりと振り上げる。その動きは遅いように見えたが、腕一本だけでも紫苑の体の数十倍はあり、振り下ろされればただでは済まないことは明らかだ。

紫苑は全速力で横に跳躍した。次の瞬間、巨大な鉄拳が先ほど自分が立っていた場所に叩きつけられる。

ドカーン!

轟音と共に地面は大きく陥没し、砂埃と破片が四方八方に飛び散った。衝撃波は紫苑の体を襲い、装甲にヒビが入るほどのダメージを受け、体は数メートルも吹き飛ばされてコンクリートの壁に叩きつけられた。

「がはっ……!」

口の中に鉄の味が広がり、息が詰まる。紫苑は体を起こしながら、これまでの戦いを思い返した。機動力を活かして戦うタイプツーリスモ、防御力と攻撃力に優れたタイプイージス——どちらの形態を使っても、この怪物を前にしてはまったく太刀打ちできないように思えた。

スピードがあっても、相手の攻撃範囲が広すぎて逃げ場がない。パワーがあっても、相手の体が大きすぎて攻撃が届かず、届いたとしてもほんのかすり傷程度にしかならない。絶望的な体格差、圧倒的な戦力差、逃げることも隠れることも許されない破壊の嵐——まさに袋のネズミ状態だ。

怪物は次々と攻撃を繰り出し、周囲の建物は瞬く間に瓦礫の山へと変わっていく。夜空は爆炎と煙に覆われ、まるで世界の終わりが訪れたかのような光景が広がっていた。

通信機からは三原の声が再び聞こえてきたが、それは遠くかすれて聞き取れない。紫苑は自分の無力さを痛感しながらも、ただただ生き延びるために逃げ回ることしかできなかった。

(続)

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