仮面ライダーGT   作:カッティングカマター

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2014年編#3-6

2014年編#3-6

 

咆哮を上げながら、巨大ロイミュードが市街地へ向けて進軍を開始した。その重厚な足が地面を叩くたびに周囲のビルが大きく揺れ、ガラス窓は次々と粉々に砕け散り、コンクリートの壁には無数の亀裂が走った。このまま中心部に到達されれば、街は瞬く間に瓦礫の山と化し、無数の人々が巻き込まれてしまうだろう。

紫苑はライドストライダーのアクセルを限界まで捻り込み、悲鳴のようなエンジン音を響かせながら、降り注ぐ瓦礫の雨を間一髪で掻い潜っていた。だが、どれだけ速度を上げようとも、相手の進軍を止めることはおろか、遅らせることさえできない。ただ破壊の先を走っているだけの自分の無力さに、歯噛みする思いだった。

通信機に向けて紫苑は叫ぶ。声は緊張と焦りで震えていた。

「三原さん! あいつ、街の方へ向かってる! 体の大きさも攻撃力も、今の俺の力じゃどうにもならない! このままじゃ大惨事になる、どうすればいいんだ!」

少しの静寂の後、三原の声が返ってきた。普段の冷静さは消え、今まで聞いたこともないような切迫した響きがあった。

『――もう少しだけ持ちこたえろ! すぐにそちらへ送った! 視界の端に捉えるはずだ、確認次第、指示通りに行動しろ!』

三原の叫びとほぼ同時に、紫苑の背後から地鳴りのような重い音が迫ってきた。地面が大きく揺れ、建物の崩れ落ちる音さえもかき消すほどの轟音に、紫苑は思わず後方を振り返る。

西日を鈍く反射しながら現れたのは、六つの巨大な車輪を備えた無骨な重装甲車両だった。厚い装甲で覆われた車体は、まさに移動する要塞といった風格で、その背中には無数の砲口や機関銃が並んでいる。これはGTシステムを運用するために極秘裏に開発された支援兵器、『アーセナルライナー』——文字通り、走る兵器庫と呼ぶにふさわしい代物だった。

『紫苑、後部ハッチが開いている! 迷わず中へ飛び込め!』

「了解!」

紫苑は車両が迫る速度に合わせてアクセルを全開にし、開かれたハッチの暗い口元へ向けて一直線に走り出した。風が顔を叩き、視界が歪む中、彼は体を低く構え、バイクごとその内部へと突入する。

瞬間、強固なアームが伸びてきてライドストライダーの車体を掴み、中央の定位置にがっちりと固定した。外部の騒音は遮断され、代わりに低く重い機械の駆動音が周囲を満たす。紫苑の視界に投影されたHUDが瞬く間に書き換わり、複雑なシステム情報やエネルギー値、照準データなどが次々と浮かび上がった。

《DOCKING:COMPLETE.ARSENAL LIGER,AWAKEN. 》

「うおぉぉ……何だ、これ……!」

言葉にならない驚きの中、紫苑の意識は車両全体と強固にリンクされていくのを感じた。まるで自分の体が巨大化したかのように、車体の隅々まで感覚が行き届き、どこに何が備わっていて、どう動かせば何が起きるのかが、手に取るように分かる。

次の瞬間、アーセナルライナーは変形を開始した。重厚な金属音が連なり、車輪は内側に格納され、代わりに四本の力強い四肢が展開される。車体は立ち上がり、流線型のフォルムが鋭い獣の姿へと組み替えられていく。背中には巨大な武装ユニットがせり出し、頭部は威圧感に満ちた猛獣の貌へと変貌した。

これこそが、アーセナルライナーの戦闘形態——『アーセナルライガー』である。鋼鉄の体に命が吹き込まれたかのように、四足獣は低く唸り、背中の武装が次々と起動して青い光を放った。

紫苑はコックピットの中で、流れ込む膨大な情報を難なく処理しながら、この巨体を自由自在に操っていた。まったく操作経験がないはずなのに、紫苑の操縦に、まるで手足のようにライガーは的確に応答する。まるで生まれた時から共にあった相棒のように、息の合った動きを見せるのだ。

巨大ロイミュードが再び咆哮を上げ、重い拳を振り下ろす。紫苑は慌てず、ライガーの強靭な四肢を操り、その一撃を軽やかに受け流した。地割れが起きるほどの衝撃は空回りし、巨体は体勢を崩す。

「今だ!」

至近距離からライガーに搭載された重火器が一斉射撃を開始する。火炎と弾丸が敵の装甲を叩き、鋼鉄同士が擦れ合う激しい音が戦場に響き渡った。圧倒的な質量差にもかかわらず、ライガーは機動性と火力を両立させ、超重量級の肉弾戦を展開していく。攻撃をかわし、隙を突いて反撃する、その流れはまさに紫苑自身の戦い方そのものだった。

やがて戦いは終局を迎える。ライガーの背部から二つの大型パーツが展開され、融合しながら長大な高周波ブレードを形作った。刃先には青いエネルギーが渦巻き、空気さえも切り裂くような威圧感を放つ。

「これで……終わりだ!」

紫苑の叫びと共に、アーセナルライガーは地を強く蹴り、標的へ向けて疾走する。巨体同士がすれ違う瞬間、一閃の青い光が闇を切り裂いた。

一拍置いて、巨大ロイミュードの体にまっすぐな亀裂が走る。それは頭頂部から足元まで、正中線に沿って見事に真っ二つに裂け、次の瞬間、轟音と共に大爆発を起こした。炎は夜空を焦がし、破片は雨のように降り注ぐが、ライガーの装甲はそれらを難なく防いだ。

やがて火が収まり、戦場には静寂が戻った。

紫苑は変身を解除し、アーセナルライガーの背中から地上へと降り立つ。燃え盛る残骸を遠くに眺めながら、彼の心は勝利の喜びや安堵感とはまったく異なる、深い寒気に支配されていた。

あの『クライ』と名乗った男の姿が、何度も脳裏をよぎる。圧倒的な力、物体を自在に操る能力、そして自分たちのことを知り尽くした口調——あれこそがロイミュードの真の支配層なのだろうか。もしそうだとすれば、これから先、どれほどの脅威が待ち受けているのか、想像するだけで背筋が凍る。

そして、これほどの超兵器を、何の疑問もなく自分に託す三原たちの組織の正体も不明のままだ。彼らは一体何者で、何を目的としているのか。自分はただ彼らの駒として使われているだけなのではないか——そんな疑念が心の底から湧き上がってくる。

だが、何よりも恐ろしいのは他でもない、自分自身のことだった。

今日初めて操ることになった巨大兵器を、自分はたやすく使いこなしてしまった。難しい操作を覚える必要も、練習する必要もなく、まるで生まれた時から自分の手足であったかのように、意のままに動かすことができたのだ。変身のたびに感じる、脳を揺さぶるあの不快な感覚。それはまるで、自分の人間としての感覚や感情が少しずつ削ぎ取られ、戦うための「部品」へと書き換えられていくような感じだった。

(俺は……一体、どこへ向かってるんだ……)

紫苑は赤い火の粉が舞う夜の街を眺める。2ヶ月までは何の変哲もなく、安全で暖かい場所だったこの街が、今はまるで別の世界のように冷たく、遠いものに感じられた。

彼はただ一人、暗い闇の中に立ち尽くしていた。これから始まる長く険しい道のりが、まだ誰にも見えないままに——

#3完

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