仮面ライダーGT   作:カッティングカマター

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2014年編#1-4

2014年編#1-4

 

アパートの狭い一室に、デスクライトの暖かな光だけが柔らかく満ちていた。時刻は午後11時を回り、窓の外は深い闇に包まれ、遠くの街灯がまばらに光っているだけの静かな夜だった。

紫苑は机に向かい、キーボードを叩く指先を忙しく動かしていた。法学部のレポート提出期限が迫っており、ここ数日は毎日こうして夜遅くまで机にかじりついている。画面に並ぶ文字の羅列を目で追いながら、頭の中で論点を整理し、言葉を紡ぎ出す。部屋の中には、キーボードの打鍵音と、パソコンの冷却ファンの低い回転音だけが規則正しく響いていた。

ようやく一つの章を書き終え、紫苑はキーボードから手を離し、大きく息を吐いた。

 

「ふぅ……」

両手を高く伸ばし、背中を反らせて思い切り体を伸ばす。肩や首回りが凝り固まっており、軋むような感覚が走る。長時間同じ姿勢でいたせいで、体中が重く、だるい。少し休憩を挟もう——そう思い、濃いめに淹れたコーヒーでも飲んで頭をすっきりさせようと、席を立ってキッチンの方へ歩き出した。

その瞬間だった。

――ドォォォォォンッ!!

まるで大地そのものが割れるかのような、地鳴りにも似た凄まじい爆音が轟き、紫苑は思わず足を止めて体を硬くした。音の衝撃は鋭く、腹の底から胸元にかけてズンと響き渡り、心臓が一瞬跳ね上がる。次の瞬間、カーテン越しの窓ガラスが不自然に明るくなり、外の世界が燃えるような鮮やかなオレンジ色に染まったのがはっきりと見えた。

「な、なんだ……!?」

驚きと不安が一気に押し寄せ、紫苑は慌ててベランダに続くガラス戸を開け、外に飛び出した。冷たい夜風が肌に触れる暇もなく、彼の視界は信じられない光景に奪われた。

数キロ先の市街地の一角から、天に届かんばかりの巨大な火柱が立ち上っている。赤い炎は空気を震わせながら激しく燃え盛り、黒い煙が渦を巻くようにして夜空を覆い隠していく。炎の光は周囲の建物や道路を照らし出し、まるで昼間のように明るくなった一帯では、何かが崩れ落ちるような重たい音や、人々の叫び声が風に乗ってこちらまで届いてくる。遠く離れているにもかかわらず、熱気さえもが微かに感じられ、紫苑は背筋を寒気が走り抜けるのを感じた。

火事——それもただの建物火災などではない。規模があまりにも大きすぎる。何が起きているのか、まったく見当もつかなかったが、紫苑の胸の奥では、危険が迫っていることを告げる警鐘が激しく鳴り響いていた。直感的に、この場所に留まっていてはならない、一刻も早く安全な場所へ逃れなければならない——そう悟った。

部屋に戻ると、机の上に置いてあった財布と携帯電話だけを掴み、上着も着ずに部屋を飛び出した。ドアを閉める時には、手が震えて鍵をかけるのも一苦労だった。

アパートの外の通りに出ると、そこはすでにパニックに包まれていた。近隣の住民たちが、着の身着のまま、眠たげな顔のまま、あるいは恐怖に歪んだ表情で、我先にと道路を走り抜けていく。「何があったの!?」「早く逃げなきゃ!」「子供がまだ家の中に……!」そんな叫び声や泣き声があちこちから上がり、混乱は極限に達していた。人々の動きは慌ただしく、誰もが何が起きているのかを理解できないまま、ただ漠然とした不安に駆られて右往左往している様子だった。

紫苑は立ち止まり、遠くの火災現場の方を再び見やった。炎はますます勢いを増し、広がり続けている。そして、その周囲には不自然なほどの破壊の痕跡が見え始めていた。建物が根元から崩れ落ち、道路が裂け、車がひっくり返って燃えている——これは単なる火事などではない。爆発事故にしては被害範囲が広すぎるし、損壊の仕方も奇妙だ。

「火事じゃない……これじゃまるで、戦場だ……」

低く呟いた紫苑の声は、自分でも驚くほど震えていた。生まれてこの方、こんな光景を見たことも、想像したこともなかった。テレビのニュースで見る遠い国の紛争地帯の様子が、まさに目の前で繰り広げられているかのようだ。恐怖が心の底から湧き上がり、体中を凍てつかせる。

その時だった。

突然、紫苑の全身に、鉛のように重く、圧倒的な重圧が襲いかかった。

空気が急に粘り気を帯びたかのように重たくなり、呼吸をするのも困難になる。肺に空気が入ってこない、まるで水の中に潜っているような感覚だ。足を一歩前に踏み出そうとしても、地面に強力な接着剤で貼り付けられたかのように動かせない。体の自由が完全に奪われ、まばたきさえもが重く、ゆっくりになっていく。

周囲を見渡すと、他の人々も全く同じ状態になっていた。

慌てて走り出そうとした体勢のまま、手を伸ばしたまま、叫び声を上げた口を開けたまま——誰も彼もが、まるで彫刻か写真に切り取られたかのように、ピタリと動きを止めている。風さえもが止まり、街全体が時間ごと凍りついてしまったかのような、異常で不気味な静寂が辺りを覆った。

何が起きているのか、紫苑にはさっぱり理解できなかった。恐怖と混乱で頭が真っ白になり、ただ周囲の状況を呆然と見つめることしかできない。そんな彼の視界の端から、重い金属音を響かせながら、何かがゆっくりと姿を現した。

それらは、人間の姿を模した巨大な存在だった。

体全体が冷たい鋼鉄で覆われており、暗い光の中でもその表面がぬらぬらと不吉な光沢を放っている。関節部分からは機械油のようなものが滴り落ち、地面に黒い染みを作っていく。顔には目立った器官はなく、ただ二つの赤く光る無機質な双眸だけが、闇の中で獲物を探すようにきょろきょろと動いていた。

金属同士が擦れ合う軋み音が、静寂の中で異常なほど大きく響く。怪物たちはゆっくりと、しかし確実に、凍りついた人々の間を歩き回り、赤い目で一人一人を値踏みするように見下ろしていく。その姿はあまりにも異質で、この世のものとは思えなかった。紫苑は自分の心臓が止まってしまうのではないかと思うほど緊張し、冷や汗が背中を伝って流れ落ちた。

数秒だったのか、それとも数分、あるいは永遠にも感じられる長い時間だったのか——それは誰にも分からなかった。ただ、次の瞬間、紫苑の体を縛り付けていた重圧が、まるで最初から存在しなかったかのように、唐突に、ふっと消え失せた。

「う、あ……動ける……!」

自由を取り戻した体はまだ少し震えていたが、紫苑は迷うことなく一目散に駆け出した。考える暇など一秒もない。ただ、逃げなければ殺される——それだけが明確に分かっていた。

背後で、再び人々の悲鳴が響き始めた。だがそれは先ほどの混乱した叫び声とは違い、苦痛と恐怖に満ちた、絶望的な叫びだった。それに重なるように、硬い金属が肉や骨を裂き、砕くような生々しい音が次々と聞こえてくる。紫苑は振り返ることができなかった。もし見てしまったら、恐怖で足が止まり、その場に崩れ落ちてしまうような気がしたからだ。

「何だよ……あれ……! 何が起きてるんだよ!」

口から出る言葉は自分でもよく分からないまま、紫苑はただ走り続けた。喉の奥は乾ききって焼けるように熱く、息を吸い込むたびに肺が痛む。心臓は今にも破裂しそうな勢いで鼓動し、その音が耳元でうるさく鳴り響き、他の音をほとんど遮断してしまっている。

この前まで——つい数時間前まで、いや、今日の昼間だって——自分は学食で仲間たちと笑い合い、レポートに追われながらも平和な日常を送っていたのだ。悠真の愚痴を聞き、ちひろの笑顔を見て、美穂や朔也と他愛のない話をして……そんな何気ない時間が、今となっては遠い昔の、まるで前世の出来事のように感じられた。自分が生きていた世界と、今自分がいる世界が、全く別のものになってしまったかのようだ。

街の至る所で破壊が進み、炎が燃え盛り、不条理な怪物たちが人々を襲っている。自分が信じていた常識も、安全も、何もかもが一瞬にして崩れ去った。紫苑はただ、必死に走った。自分の命を守るために、この狂気の現実から逃れるために、そしてすぐ背後まで迫っている「死」という名の絶望から、少しでも遠くへ離れるために。

路地を曲がり、階段を駆け下り、人々の叫び声と破壊の音が背後から追いかけてくる。どこまで走ればいいのか、どこに行けば安全なのか、何も分からない。ただ、足が動く限り、息が続く限り、紫苑は走り続けた。その心の中には、まだこれから起きるさらなる悲劇や、自分自身が辿る運命など、知る由もなかった。

(続)

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