仮面ライダーGT   作:カッティングカマター

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2019年編#2-6

2019年編 #2-6

 

白昼の太陽が容赦なく地上を照りつける中、街の中心部は既に本来の姿を失っていた。道路は無数の亀裂が走り、あちこちでアスファルトが砕けて盛り上がり、倒れた電柱や瓦礫が行く手を塞ぐ。建物の壁面には深い傷が刻まれ、ガラスの破片がきらきらと太陽光を反射しながら地面に散らばっている。まるで巨大な竜が暴れまわったかのような、荒涼とした光景が広がっていた。

 

その荒れ果てた街の中心で、二つの巨大なエネルギーが対峙し、激しくぶつかり合っていた。

 

一方は、白銀に輝く装甲を身にまとった戦士――仮面ライダーGT-X。そして対するは、漆黒の装甲に血のような赤いラインが走るレイジロイミュード。その体躯はGT-Xをはるかに上回り、まさに暴力そのものを具現化したかのような威圧感を放っている。さらにレイジの背後には、同じく巨体を誇る大型ロイミュードが四体、整列するように立ち並び、それぞれが凶悪な武器や鋭い爪を構えていた。

 

戦力差は絶望的と言ってよかった。数においても、個々の戦力においても、レイジ率いるロイミュード軍団はGT-Xを圧倒している。普通の戦士ならば、その場に立っているだけでも恐怖に足がすくみ、戦意を喪失してしまうだろう。

 

だが、紫苑――GT-Xに変身した彼は、ただ一歩も後ろに下がることはなかった。

 

 

紫苑の体が一瞬にして動き出す。白銀の装甲が残像を描くほどの高速移動で、迫り来る大型ロイミュードの攻撃を次々とかわしていく。地面を蹴るたびにコンクリートが砕け、風を切る音が鋭く響く。

 

手には長大な剣、ファントムカリバーがしっかりと握られている。紫苑は敵の攻撃の隙を見逃さず、剣を一閃するたびに、空気が裂けるような甲高い音が戦場に鳴り響く。まさに死の舞踏。たった一人で敵の全軍を相手取り、一歩も引かずに戦い続けるその姿は、まさに伝説の戦士と呼ぶにふさわしい勇壮さだった。

 

だが、レイジの実力はそれをはるかに上回っていた。

 

GT-Xの剣撃がレイジの体に命中するたびに、激しい火花が散るものの、分厚く頑丈な重装甲がその威力をまともに受け止め、致命的な損傷を与えることができない。レイジはまるで痛みを感じていないかのように、哄笑を上げながら反撃を繰り出してくる。

 

「ハハハハ! その程度か! 見せかけだけの強さだな!」

 

レイジの大きな声が周囲に響き渡るたびに、鉄拳と剣が激突し、衝撃波が周囲の建物を揺らす。アスファルトはさらに大きく砕け、壁面には次々と亀裂が生まれ、まるで建物自体が悲鳴を上げているかのようだ。

 

力と力のぶつかり合い、速さと重さのせめぎ合い。二人の戦いはまさに拮抗状態にあり、どちらが勝つか全く予想がつかない状況が続いていた。だが、その均衡を完全に打ち砕いたのは、レイジの野獣を超えた膂力だった。

 

紫苑が剣を振り下ろそうとした瞬間、レイジは素早く前に出て、両手でファントムカリバーの刀身をがっちりと掴み取った。

 

「なに!?」

 

紫苑が驚きの声を上げる間もなく、レイジは渾身の力を込めて剣ごと紫苑の体を持ち上げ、そのまま地面に叩きつけるように投げ飛ばした。

 

「くっ……!」

 

体勢を大きく崩し、宙を舞う紫苑。その刹那、レイジが間髪を入れずに放った渾身の一撃が、GT-Xの側面に容赦なく襲いかかる。

 

ガシャーン!

 

金属同士が激しく叩き合う鈍く重い衝撃音が響き、ファントムカリバーが紫苑の手から離れ、大きく宙を舞い、数十メートル先の地面に深々と突き刺さり、そのまま動かなくなった。

 

「ははははは! もらったぜ! これでもうお前の武器はない! 終わりだ!」

 

レイジが勝利の雄叫びを上げ、巨体を弾ませるようにしてGT-Xの前に迫り、その胸部にさらに強烈な一撃を叩き込む。さらに追撃とばかりに、重い拳が雨のようにGT-Xの体に降り注ぐ。白銀の装甲は次々とへこみ、紫苑は大きくのけ反り、体をくの字に曲げて耐えるしかない。

 

そして背後からは、大型ロイミュードの一体が山のような巨腕を高々と振り上げ、今まさに紫苑の体を押しつぶさんと迫ってくる。

 

前からはレイジの猛攻、後ろからは巨体による圧殺の一撃。まさに逃げ場のない、完璧な挟み撃ち。絶望的としか言いようのない状況が完成しようとした、そのまさに刹那――。

 

戦場の常識を完全に覆す、信じられない光景が目の前で展開された。

 

遥か後方、地面に深く突き刺さったままだったファントムカリバーが、突如として蒼い神秘的な燐光を帯び始めたのだ。刀身全体が青く輝きだすと、周囲の岩盤やコンクリートがそのエネルギーに耐えられずに次々と砕け、剣はまるで自らの意思で動き出すかのように、ゆっくりと、そして力強く地面から浮き上がった。

 

次の瞬間、ファントムカリバーは弾丸のような凄まじい速度で虚空を駆け抜け、まさに紫苑の背中に届かんとしていた巨腕に向かって突進し、自らの刀身で完璧にその一撃を受け止めたのである。

 

カキーン!

 

金属が高く鳴り響く音が戦場にこだまし、衝撃で周囲の地面が大きく揺れる。

 

「何っ……!? 剣が、剣が勝手に動きやがっただと!? 」

 

レイジが驚きに目を見開き、思わず攻撃の手を止めてその光景を見つめる。いくら強靭な精神力を持つ彼でも、自分の意思を持つかのように動く武器を目の当たりにして、動揺を隠せなかった。

 

紫苑とレイジは至近距離で火花を散らし合う肉弾戦を繰り広げる。そのすぐ傍らで、既に主の手を離れたファントムカリバーは、まるで見えない騎士が操縦しているかのように、あるいは剣自体に確固たる意志が宿っているかのように、縦横無尽に大空を舞い続けていた。

 

迫り来る敵の攻撃を防ぐ盾となり、次の瞬間には死神の鎌のようになって敵に襲いかかる。大型ロイミュードの分厚い装甲は、ファントムカリバーが放つ剣圧の前ではまるで紙のように容易く切り裂かれ、白銀の刃が閃くたびに、巨体の一体が断末魔の絶叫を上げながら爆散する。

 

「こ、こんな馬鹿なことが……! 」

 

レイジがこの想像を絶する「意志を持つ兵器」のあまりの完成度に完全にたじろぎ、わずかながらも体の動きに隙が生まれた。

 

だが、紫苑はその隙を見逃さなかった。

紫苑は地を強く蹴り、地面に亀裂が走るほどの反動を利用して、弾かれるようにしてレイジの懐へと一気に突進する。二人の間合いが一瞬にして詰まると同時に、空中を自在に舞い、敵を圧倒していたファントムカリバーが、まるで磁石に引き寄せられる鉄のように、紫苑の右腕へと吸い込まれるようにして飛来した。

 

ガッ!

 

重厚で力強い金属音が響き渡り、ファントムカリバーが確かに紫苑の手の中に収まる。手に伝わる剣の鼓動、そして剣と心が一つになる感覚を感じ取ると、紫苑はこれまで以上に力強く、そして鋭い目つきでレイジを見据えた。

紫苑はそのまま突進の加速の勢いをすべて刀身に集約させ、全身のエネルギーを剣に注ぎ込み、渾身の一閃をレイジの胸元目がけて叩き込んだ。

 

「ぐあああああっ!!」

 

レイジの口から断末魔の叫びが迸り、まるで鮮血のような赤い火花が彼の体から盛大に散らばる。その衝撃は凄まじく、レイジの巨体はまるでゴミのように軽々と放り投げられ、道路を挟んだ向こう側に建っていたビルの壁面まで文字通り吹き飛ばされ、そのまま壁を大きく突き破って建物の中深くまでめり込む。

 

そして、紫苑たちの戦いから少し離れた場所では、もう一つの熱い戦いが繰り広げられていた。

 

蒼――仮面ライダーインフェルナスに変身した彼は、自分の目の前で展開された紫苑とレイジの戦いの一部始終を、まさに息を呑んで見つめていた。そしてその光景は、蒼の魂を直接揺さぶるような、言いようのないほどの大きな衝撃を彼に与えていた。

 

冷徹で、まるで計算し尽くされたかのような、時には残酷とも言えるほどに効率的な攻防。だが、その冷たく鋭い戦い方の奥底には、どんなに困難な状況に陥っても決して折れることのない、強靭で熱い人間の意志が、蒼い焔のように力強く脈打っているのを、蒼ははっきりと感じ取ることができた。

 

(……すげぇ……なんて戦い方なんだ……)

 

圧倒的な力、圧倒的な速さ、そして何よりも戦いの最中に一切の迷いがない。紫苑の背中は、蒼にとってあまりにも大きく、あまりにも遠い、まさに手の届かない存在のように見えた。だが、それは同時に、蒼の胸の奥深くで長い間眠っていた闘争心に、熱くて強い火をつけるには十分すぎる光景でもあったのだ。

 

「俺だって……負けてられるかぁッ!!」

 

蒼が口を開けて絶叫すると同時に、インフェルナスの全身を覆う装甲の隙間から、青い炎が爆ぜるように立ち上り、周囲の空気を熱く震わせた。

 

蒼は全身のエネルギーを極限まで高め、変身システムの出力を最大限まで引き上げる。体の各部から警告音のような電子音が鳴り響き、まるでシステム自体が悲鳴を上げるほどの急加速を得ると、蒼は目の前に立ちはだかる敵――クライロイミュードに向かって一直線に突進した。

 

クライは先ほどから周囲に散乱している瓦礫やコンクリートの破片をエネルギーで操り、無数の弾幕として蒼に向かって放ち続けていた。それらは一つ一つが高速で飛んでくる凶器であり、避けることも容易ではない。

 

だが、蒼はその弾幕を避けようとはしなかった。

 

「くらえええ!」

 

自らの体を頑丈な盾にするかのようにして、正面から強引に弾幕の中へと突っ込んでいく。瓦礫がインフェルナスの装甲に次々と激突し、激しい音と火花が散るたびに、蒼の体は大きく揺さぶられ、衝撃が全身に伝わる。だが、彼は決して足を止めることなく、痛みにも耐え、一歩、また一歩と確実にクライとの距離を詰めていく。

 

「なにっ……!?」

 

蒼のあまりの捨て身とも言える行動に、常に冷静沈着で計算高いクライですら、思わず目を見開き、わずかながらも動揺を隠せない。まさかこれほどまでに無謀で、そして力強く突っ込んでくるとは予想外だったのだ。

 

蒼はクライのわずかな動揺を見逃さず、その懐へと一瞬で滑り込むと、全身に満ち溢れさせた灼熱のエネルギーを拳に集中させ、渾身の力を込めてクライの体目がけて叩きつけた。

 

「これで決める!」

 

インフェルナスの剣は青い炎をまとい、クライの装甲にめり込むように命中する。凄まじい熱エネルギーが一気に解放され、クライの体は大きく後ろに吹き飛ばされ、地面を数回転がった。

 

白日のもとに晒された壮絶な戦い。

 

過去の時代から蘇った亡霊のように、圧倒的な実力で敵を制圧する伝説の戦士・紫苑。

 

そして、未来を担うべく自らの道を切り開き、新たな力で立ち上がった新星の戦士・蒼。

 

二つの異なる時代、異なる信念から生まれた二つの熱量が、今まさに静まり返っていた街を再び焦熱の渦へと変えていく。

 

戦いはまだ終わらない。だが、この瞬間、街には確かな希望の光が差し込み始めていた。

 

 

(続)

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