仮面ライダーGT   作:カッティングカマター

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2019年編#2-7

2019年編#2-7

 

レイジは全身に走る激痛を堪えながら、自分の体が建物の壁に深くめり込んでいるのを感じていた。先ほど受けた一撃は、彼がこれまで幾多の戦いで受けてきたどの攻撃よりも重く、鋭く、そして確かな殺意を孕んでいた。彼は唸り声を上げながら、重く鉛のようになった体をゆっくりと起こし、周囲のアスファルトがひび割れ砕ける音を立てながら、どうにか膝をつく体勢を取った。荒い息遣いが漏れるたびに、彼の体の各部からは絶え間なく青白い火花が散り、体を覆う赤いラインの光も、先ほどと比べると明らかに輝きを弱め、かすかに点滅を繰り返しているのが目に見えてわかった。まさか、これほどまでの力を持つ存在がこの街にいたとは——レイジの心に、初めて戸惑いと焦りが生まれていた。

 

その刹那、戦場の中心に立つ紫苑の左腕に装着された銀色のブレスに収まっていた銀色に輝くシフトカーが、まるで弾かれるように装填口から飛び出し、虚空へと舞い上がった。

 

するとどこからともなく、漆黒のボディの、威圧感に満ちたシフトカーが、まるで自らの意志でこの場へと赴いたかのように、闇の中から姿を現し、紫苑の左腕のブレスへと向かって一直線に飛来した。そして、吸い込まれるようにして装填口へと収まり、カチリという重厚な音が戦場に響き渡った。

 

『MACHINE SET』

 

 

『 TYPE RAIDER』

 

電子音声がクリアに、そして冷たく空気を震わせる。

 

次の瞬間、紫苑の身を包んでいた白銀に輝く装甲は、波紋のように崩れ去り、代わりに漆黒の強化外殻が瞬く間に体全体を覆っていく。その姿はまさに一変し、仮面ライダーGT-Xは、白銀の戦士から闇の狩人へとその様相を変えた。全身から放たれる雰囲気は、先ほどの明るく力強いものから一転して、鋭く尖り、見る者すべてに危険だと本能的に感じさせるような、冷徹で重圧のあるものへと変化していた。頭部のバイザー部分にある単眼と、胸部に浮かび上がるXシグナルは、氷のような冷たい青色から、まるで内側から炎が燃え上がるかのような、鮮やかで不吉な赤色へと鮮やかに変色し、闇の中で妖しく輝きを放った。

 

これこそが、仮面ライダーGT-X タイプレイダー。

かつてのGTタイプレイダーの力を受け継ぎ、再び顕現した姿である。射撃戦を主体とした戦闘に特化したこの形態は、通常の形態と比較しても視覚、聴覚、触覚といった五感を大幅に強化されており、まるで周囲の空気の流れや、敵の心臓の鼓動さえも正確に捉えることができた。

 

紫苑は漆黒の装甲に身を包んだ体で、わずかに姿勢を低くし、周囲の状況を一瞬にして把握した。強化された視覚は、遠くの建物の細部まで鮮明に映し出し、聴覚は風の音、瓦礫の転がる音、そして今まさに自分たちへと迫り来る敵の足音までも、逃さず捉えていた。

 

残された三体の大型ロイミュードが、咆哮を上げながら一斉に襲いかかってくる。巨大な腕を振り下ろし、重い体を押しつけ、ありとあらゆる方法で紫苑を押しつぶそうとする猛攻。だが、タイプレイダーとなった彼には、その動きすらもスローモーションのように捉えられていた。

 

紫苑は最小限の動きで、まさに紙一重というタイミングで次々と攻撃を回避していく。右に身をかわし、左に体をひねり、時にはわずかに跳躍して重い拳をやり過ごす。その動きは無駄がなく、流れるようでありながら、どこか機械的で冷たい美しさを湛えていた。

 

彼の右手には、重厚な作りの銃器——レイダーマグナムがしっかりと握られ、左手には先ほどの戦いでその鋭い切れ味を証明したファントムカリバーが、刀身をわずかに輝かせながら構えられていた。

 

「——来い」

 

低く、感情のない声が漏れると同時に、紫苑は反撃を開始した。レイダーマグナムの引き金を引く音が連続して響き、赤い光弾が次々と敵の急所を狙って飛んでいく。同時に、間合いに入った敵に対してはファントムカリバーが閃き、重い装甲を容易く切り裂いていく。銃撃と斬撃が入り混じり、まるで嵐のような攻撃が敵に降り注ぎ、三体の大型ロイミュードは次第に反撃する隙を失い、徐々に、しかし確実に追い詰められていった。

 

紫苑は地面を強く蹴り、凄まじい跳躍力で一気に空中へと舞い上がると、まるで重力など存在しないかのような身軽さで、一体の大型ロイミュードの頭上へと軽やかに着地した。

突然の出来事に驚き、見上げる敵の中心部、眉間にあたる部分へと、紫苑はレイダーマグナムの銃口を直接突きつける。銃身が最大限まで展開され、内部のエネルギーが一点に収束していくのが感じられた。

 

「終わりだ」

 

零距離からの一撃が放たれる。轟音と共に強烈な光が弾け、直後に大きな爆発が起こり、ロイミュードの体は無数の破片となって周囲に飛び散った。紫苑は爆散の衝撃を巧みに推進力へと変換し、さらに高く空中へと舞い上がると、体を大きくひるがえし、次の敵とすれ違いざまにファントムカリバーで鋭く一閃。赤い斬撃は空気を裂き、敵の体を真っ二つに切断した。

 

勢いを緩めることなく、彼は三番目の敵の頭上へと再び着地し、レイダーマグナムを構える。銃口からはエネルギーが漏れ出し、轟くような咆哮が銃本体から響き渡る。そして、引き金が引かれた瞬間——最後の一体もまた、赤い閃光と共に一瞬にして塵となり、戦場から消え去った。

 

わずか数分の出来事だった。さきほどまで、絶望的な存在感を示していた5体の大型ロイミュードはすべて、紫苑の前に、まるで赤子の手を捻るような容易さで撃破されたのである。

 

一方、この激闘の片隅では、蒼もまた自らの限界に挑み続けていた。

 

彼が変身する仮面ライダーインフェルナスの全身には、今までにないほど激しく蒼い炎が滾り、体を覆う装甲の隙間から立ち上っていた。手にしたシフトブレードは、その刀身に力が込められるたびに、より鮮やかな青に輝きを増していく。

 

相対するは、ロイミュードの幹部であるクライ。長大な大鎌を軽々と振り回し、これまで余裕たっぷりに戦っていた彼も、今はもうその面影はない。蒼の放つ一撃一撃があまりにも重く、鋭く、そして確固たる意志を宿しているために、防戦一方となり、時折大きく体勢を崩す場面さえ見られた。

 

「俺だって、インフェルナスだ!」

 

蒼は雄叫びを上げ、シフトブレードを大きく振りかぶり、クライの大鎌と激しく打ち合わせる。金属同士がぶつかり合う耳をつんざくような音が響き、火花が雨のように降り注ぐ。力と力のぶつかり合い。そのどちらもが、決して一歩も引くことなく、互いの力の限界を試し合うかのように攻撃を繰り出し続けた。

 

蒼の猛攻は留まることを知らず、クライはついに大きくのけ反り、体のバランスを完全に崩して後方へとよろめいた。その隙を見逃す蒼ではなかった。

 

「決める……! これが、俺の力だ! 」

 

蒼はシフトブレードの持ち手部分にある装填口に収められたシフトカーに、自らの全身から流れ込む力を集中させ、力強く、そして何の迷いもない確信を持って押し込んだ。

 

『LIMIT RELEASE!』

 

高らかで荘厳な電子音声が戦場全体に響き渡ると同時に、シフトブレード全体が強い光に包まれた。刀身を中心に、灼熱の青いエネルギーが渦を巻くように収束し、周囲の空気さえも歪ませながら、一箇所に凝縮されていく。

 

蒼はもはや恐れも、躊躇いも、迷いも持ってはいなかった。彼はただ、目の前の敵を打ち倒し、この街を、そして自分の信じるものを守るために、青い光を放つ刀身を携え、風を切るようにしてクライの懐へと深く斬りかかった。

 

その動きとほぼ同時に、紫苑もまた次なる行動へと移っていた。彼は腰部に装着した変身ベルト、エクスドライバーのグリップ部分に手をかけ、それを無機質ながらも全身の力を込めて、一気に捻り上げる。

 

『FULL THROTTLE!』

 

重低音の電子音声が、漆黒の戦士の力を最大限まで引き出す合図となった。

 

GT-Xの右足先端に、高密度に圧縮されたエネルギーが一気に集中し、周囲の地面や空気中には赤い放電が激しく走り、まるで足元に小さな稲妻が生まれたかのような光景が広がる。

 

先ほどのダメージからようやく立ち直り、再び憎悪のこもった目で向かってくるレイジに対し、紫苑は無駄のない動きで体を大きくひねり、全身の力を一点に集約させた鋭く重い回し蹴りを、渾身の力で叩き込んだ。

 

「ぐああああっ!」

 

レイジの口から断末魔のような叫び声が漏れ、彼の体は先ほどよりもはるかに激しい勢いで、地面を転がるようにして吹き飛んだ。

 

「っ、このままでは……! これ以上の損害は回避しなければ……! 我々の真の目的のためにも、ここで力を使い果たすわけにはいかない!」

 

クライとレイジ、二人の幹部ロイミュードは、紫苑と蒼の同時の猛攻によって凄まじい衝撃波を周囲にまき散らしながら、それぞれ大きく吹き飛ばされ、地面に激しく叩きつけられた。

 

土煙が辺り一面に立ち込め、視界が悪くなる中、ようやく体勢を立て直したクライが、忌々しげに顔を歪め、自分たちを打ち負かした二人の戦士を鋭く睨みつける。その瞳には、怒りと共に明らかな計算違いと、今は戦うべきではないという冷静な判断が浮かんでいた。

 

「くっ……計算外だ。まさかこれほどの力を持つ者たちが、同時に現れるとはな。これ以上戦っても我らに利はない。撤退するぞ……!」

 

レイジもまた、体のあちこちから火花を散らしながら立ち上がり、悔しそうに舌打ちをする。だが彼の瞳の奥には、敵ながらも紫苑たちの力を認め、またそれをさらに上回る力を得ることへの渇望が燃え上がっていた。

 

「ちっ……面白くなってきやがった。また会おうぜ! その時こそ、徹底的に叩き潰してやる!」

 

レイジは不敵な笑みを浮かべると、クライと共に体を黒い靄のようなものへと変化させ、まるで影に溶け込むかのようにして、一瞬のうちに戦場から姿を消した。風が吹き抜けると同時に、彼らの存在した痕跡さえもが、まるで最初からなかったかのように消え去っていく。

 

敵の気配が完全に街の中から消え去り、先ほどまでの騒がしさが嘘のように、再び静寂が街に戻ってきた。

 

あれほどまでに絶望的な数の敵に包囲され、もはやこれまでかと誰もが思っていた状況は、蒼という新たな戦士の覚醒、そして帰還した伝説の亡霊、紫苑の介入によって、完全に一転した。破壊された建物や道路、そして地面に残された無数のクレーターだけが、先ほどまで行われていた壮絶な戦いの名残りとして、静かにそこに存在していた。

 

蒼はシフトブレードを地面に突き立て、それを支えにしながら肩で大きく息をしていた。全身から力が抜けるような感覚を覚えながら、彼はゆっくりと顔を上げ、目の前に立つ存在へと視線を向けた。

 

そこに立っていたのは、漆黒の装甲に身を包み、冷たい赤い光を放つ瞳で蒼を見つめる男——仮面ライダーGT-Xへと変身した紫苑だった。

 

まさかこの状況で、自分以外にこれほどまでの力を持つ戦士が現れるとは想像もしていなかった。思わぬ形で現れた助っ人の介入により、絶望的だった戦況は一変し、新たな時代の戦いは、彼ら二人にとって劇的な勝利という形で、一つの大きな幕を閉じたのであった。

 

だが、この場に立つ二人の戦士はまだ知らない。この突然の出会いが、これから始まるさらなる激動の運命の、ほんの小さな、しかし決定的な始まりに過ぎないことを。

 

互いに何も語らず、ただ互いの姿を見つめ合う二人。その視線の先には、まだ見えない未来へと続く、長く険しい道のりが静かに広がっていた。

 

 

#2完

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