猫は狼と遊びたい   作:酢酢酢酢酸エチル豆腐

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ヒロイン出したかったんすよ


猫は狼と遊びたい4

ホワイト・ウィドウの一閃がまた一体ドラウナーを両断する。事前に塗布しておいたオイルは既に効果を失っているだろう。岩礁の辺り一面、ドラウナーの内蔵と血液でぬめるほどだった。

 

血と臓物の臭いがますます周囲のドラウナーとウォーター・ハグを引き寄せている気もする。恐らくこの営巣地のボスはあの一際大きなウォーター・ハグだろう。

 

「下がれ!半日経っても俺が戻らなければすぐに他のウィッチャーを呼べ!この群れは危険だ!」

 

ここまで案内してくれた漁師を逃し、判断の甘さを恨む。最初はゴーズ・ヴェレンに程近い海岸、岩礁地帯にドラウナーの巣が出来て漁民や貝や海藻の類を採りにきた女子供が行方不明になっているとの依頼だった。そこまで大きくない、ゲームで言うところの"怪物の巣"レベルであれば5〜10匹程度片付ければ済む話かと思っていた。だが、もう何匹斬ったか分からない。

 

ヴェセミルか誰かが言っていたが、変異の試練を乗り越えても初仕事のドラウナー狩りで死ぬウィッチャーもいるという言葉を嫌というほど実感していた。全く初仕事ではないが。

 

「せめて死因はワイルドハントだろ…!」

 

ひたすらクェンでドラウナーの爪を弾き、アードで叩き伏せる。

ただのドラウナーだけでなく攻撃的な形状をした背びれが特徴的なマックニッサーが何匹も混じっている。

 

「アァァードォッッッ!!!!」

 

最近、魔術師たちが呪文を唱えるようにデカい声を出しながらアードの印を切るようにしている。これが中々馬鹿にしたものでもなく、印力が上がっているのか威力を増しているようだった。アードを正面から食らったドラウナーの身体が衝撃波でズタズタになる。

 

どれほどの時間が経ったのか分からないが、残りはあのウォーター・ハグを残すのみ。全身血みどろドラウナーの内蔵と体液まみれで酷い状態だろうがもはや気にもならない。イオルヴェスから譲り受けた千の花の鎧もズタズタである。剣を右側頭部に構え、切先をウォーター・ハグに向ける雄牛の構え。ウォーター・ハグも爪や泥かけで牽制してくるが、慎重に間合を詰め、右からの攻撃を繰り返す。右中段、下段、中段、上段と攻撃を散らしていく。相手からの攻撃は剣先とクェンで弾く。爆発盾に力を割いているので、大型の怪物でなければ隙を作ることができる。

 

ウォーター・ハグの大振りが剣の無い俺の左側面から迫る。

敢えて受けると衝撃と共にクェンが光と音と共に弾けて割れる。割れた盾の印の破片がウォーター・ハグに傷を与え、一瞬の隙が生まれる。

 

「ヤアァーッ!」

 

気合一閃。身体を一回転させ回転剣舞の要領でウォーター・ハグの首を刎ねる。ホワイト・ウィドウをめり込ませる。さながら身体全体を用いたムリネ(注:サーベルを手首で回転させ、剣の重量も用いて斬る技術)である。

 

「はあ…はあ…死ぬかと思った」

 

ウォーター・ハグの首を切り取ってフックに突き刺し、腰に吊るす。その後はドラウナーのヒレを切り取っていく。討伐した証拠が必要だ。寝床にしたり、"獲物"を捌くのに使っていたと思しきちょっとした洞窟があったので爆破した。これで海中はともかく地上に営巣することは無くなるだろう。

 

「ありがとう!ありがとうウィッチャーさん!よくやってくれた!」

 

あの逃した漁民から急報が入っていたようで、帰還すると港の顔役たち、漁師のまとめ役や船乗りや船長たち、荷運びの人夫たちのまとめ役たちから盛大かつ大騒ぎで迎えられた。報酬もオレンではあるものの相当な額を得ることができた。出来ればノヴィグラド・クラウンで欲しかったがしょうがない。その後、宿泊している旅籠で報酬の幾らかを使って安ワインを一樽買って振る舞い酒を船乗り共に飲ませ、吟遊詩人にも金を握らせておいた。

 

宴席で出た酒にも不審なものは混ざってなかったし、念のため霊薬で血中の霊薬の残りとアルコール分を排出し、春ツバメを服用してベッドに腰掛け、対人用の千の花の剣の方を抱いて瞑想したが寝込みを襲われることも無かった。完全にただの英雄扱いである。世紀の悪書「ウィッチャーの肖像」の発刊はいつの話だっただろうか。あれがまだ世に出てないからか、それとも北方戦争がまだ起きていないから人心が荒廃しきっていないからなのかは分からないが、どうやら港町の英雄"血塗れ"タデウスとして人間を相手にもう一戦交える心配はしなくていいらしい。

 

ちなみにゲームだと装備の耐久度が下がっても鍛冶屋で修理が可能だったが、イオルヴェスから譲り受けた千の花の鎧は再起不能でした。そこはリアル寄りなのか。どうしようも無かったので海岸でイグニを使って燃やす。

 

ぼんやり考えていたのだが、防具の見た目的に軽装よりの軽装と中装寄りの軽装があると思う。千の花の谷の鎧はどう見ても軽装だが、今着用してるトゥサン衛兵隊将校の鎧はゲーム内では中装扱いだが、普通に軽装と同じ感覚で着用できている。そこは割とファジーというか判定が厳密ではないらしい。逆にゲームでのゲラルトのようにいきなり重装鎧(トゥサン騎士の黄金の鎧みたいな)を着用しても満足に動ける気がしない。

 

猫流派のアダン=ニニエ的動きをしたければ猫流派の装備か、見た目が軽装に近い中装、あとはオフィルシリーズかな。居つくな、動け。攻め続けろが猫流派の剣術のモットーだから鎧が重いと疲れちゃうし、強みを殺しちゃうんだよな。時代のせいか、まだオフィルのサーベルとか防具とかあまり見ないし。というかゲラルトが手に入れるレリックのオフィル装備はその土地の王に献上する用の特別なモノだから、その辺の兵士の装備を手に入れたってしょうがないんだよな。

 

トゥサンの方はともかく、あっちのDLCには関わりたくないからルーン細工師への投資だけやろう。せいぜい金貯めといて切断のルーンとか保持のルーン刻めるようにしよう。ピエロギうまいしピエロギのルーンもあり。

 

傷を癒すため、ゴーズ・ヴェレンの旅籠に逗留して5日目。

かの有名なアレツザ(アレトゥーザ)から手紙が届いた。

俺も後から知ったのだが、基本的にアレツザ魔法学院のあるサネッド島には女魔術師・生徒・下働きの者以外は入れず、ゴーズ・ヴェレン側の島に渡るための窓口となるデカい建物(何とかいう宮殿みたいなところ)でやり取りするらしい。

 

で、手紙の差し出し主はというと、シルヴィア・ロス・イグニスという女魔術師未満の生徒?弟子?みたいだ。聞いたことない名前なんでモブ生徒っすね。とはいえゲーム内に出てきたキヤンみたいな例もあるので相手がモブ魔術師見習いであっても油断は許されない。彼女たちは生殖能力と引き換えに、幼い頃から親元を離れ魔力に敏感なフォースセンシティブならぬ魔力センシティブとして魔術師の教育を受ける。

 

逗留している旅籠の1階が酒場も兼ねているので酒場の主人にもきいてみたが、特に有名な生徒でもないらしい。研究のため、ヴェレンの山中にあるエルフの遺跡を探索するための護衛を雇いたいとのことだった。

 

例のサネッド島との窓口になる館に呼び出されてやってきた。

複数ある応接間のような部屋の一つに通されると件の女魔術師だろう、肩口まであり燃えるような波打つ赤毛、碧眼、頬の周りや目元に可愛らしいそばかす、真紅のドレスに土埃除けの地味な色合いのフードつきローブ、女魔術師の常として長身で美しくグラマラスな、若い(若く見える)女性が待っていた。近づくと香水?香油を使っているのか薔薇の香りが強く香った。この世界で臭くない女久しぶりに見たわ。なんか宴席に呼ばれてきた娼婦とかは香水の匂いで体臭誤魔化してたけど、元現代人ウィッチャーにはキツいっす。ほんでトリスとかとはまた違った感じでかわE。いや油断したらマッド・キヤンルートよ。こいつの前では絶対眠らんとこ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「はじめまして。シルヴィア・ロス・イグニスよ。ここアレツザで学ぶ女魔術師…正確にはまだ女魔術師の資格は得ていないけど」

 

「初めまして。ノヴィグラドのタデウス、ウィッチャーだ」

 

「噂は聴いてるわ。吟遊詩人が貴方の詩を歌ってるのを聴いた。赤ら顔の英雄"血塗れ"タデウス馬に乗ってやってきた〜ってやつ、知ってるでしょ?普段はそんな風に蒼白なのね」

 

「ああ、ウィッチャーだからな。普通の人間とは代謝が違う。その詩も宴席で何回か聴いたよ。とはいえ霊薬とドラウナーの血、自分も出血してる状況でワインを浴びるように飲めば赤ら顔にもなる…が珍しい光景なのは間違いないだろうな」

 

「それで腕の立つウィッチャーさんがゴーズ・ヴェレンに逗留しているなら好都合だと思って手紙を書いたの」

 

「俺に何を頼みたい?女魔術師から怪物退治の依頼があるとは思えないが」

 

「貴方に頼みたいのは私の護衛よ。ヴェレンの山中にとあるドラゴンスレイヤーが埋葬されたとされるエルフの遺跡があるの。その遺跡の様式や石棺の紋様、副葬品の力あるルーン石なんかに興味があるの。財宝やら何かが出たら山分けね!」

 

「興味深いな。ドラゴンスレイヤー?」

 

「昔のウィッチャーで名声のある人だったみたいよ。で、エルフの遺跡に怪物はつきものでしょ?貴方が来てくれればこの計画を実行に移せる。他の…例えばオクセンフルトの学院や発掘隊に先を越される前に行ってみたいの!」

 

「なるほどな、山分けは結構だが報酬はそれだけか?」

 

カゲンのジョージやんけ!グリフィン流派のドラゴンスレイヤー、グリーンドラゴンとほぼ相討ちになって絶命した貴公子然とした男、カゲンのジョージの墓やんけ!あっ、やっぱこの時代よりも前の人かカゲンのジョージ!

 

猫流派の鎧の改良の依頼はラファーグ氏に頼んでるし、手紙と金のやり取りはしてるけど、グリフィン流派の防具の設計図が手に入るのは美味しいな!というかウィッチャー世界も馬鹿にしたもんでもなくて現金を預けて手形を発行してもらい、ラファーグ氏宛にそれを送って現地の銀行や両替商に引き換えてもらえば、長距離送金可能なのよな。やっぱそこはリアルと同じような進化をするんだなって。

 

「そんなわけ無いわ!ウィッチャーは報酬無しでは仕事をしない、常識ね。ちゃんとノヴィグラド・クラウンで50用意してるわ」

 

「分かった。引き受けよう」

 

「あと、もう一つだけ…」

 

「聞こう」

 

「私がアレツザにいる理由でもあるんだけど、驚いたり恐慌に陥ったり感情が不安定になると魔力の制御が甘くなっちゃうの。昔よりは遥かに良くなったんだけど…それで私の得意な魔術って炎だから…その…」

 

「炎が出る?」

 

「そういうこと」

 

「分かった。遺跡の中では盾の印を切らさずに纏っておくことにしよう」

 

「移動方法はどうする?こちらには馬があるが」

 

「馬術の嗜みはあるんだけど、この体質のせいであまり上手くはなくて…」

 

「分かった。では俺の馬に乗れ。賢い馬だし、俺が手綱を引くから問題は無い」

 

「ありがとう。出発は明後日の朝、7回目の鐘の頃でいい?師にも良い護衛を雇えたらこの夏期休暇を使って、ちょっとしたフィールドワークに出ることは伝えてあるんだけど準備があるから」

 

「分かった。ではまた明後日に」

 

そんなこんなでこちらも準備を整え、汎用性優先で鋼の剣と銀の剣に首吊りの毒を塗布し、保存食や度数の高い酒、飲むパンであるところの麦酒やら何やら旅の準備をした。世話になった旅籠の主人にも幾らか金を握らせて女魔術師の依頼で何日か空けるが、また戻ってきて準備を整えてから南に旅立つ旨を伝えた。

 

朝から強い日差しが差し込む中、俺と女魔術師はヴェレン-まだ主ある地へと旅立った。ちなみに言っておくと、現時点でもゴーズ・ヴェレンが栄えているだけでヴェレン地域はテメリア王国最貧困地域です!盗賊も出ます!当然ながら食い詰め農民が逃散しただけの盗賊がほとんどなのでイグニと剣の一振りで潰走します!こりゃ騎士が強いわけだわ。弩を持っててちゃんと狙ってくる盗賊(つまり脱走兵とか敗残兵や傭兵くずれ)はこの時期滅多にいません!はい!

 

道中何かあってもほぼ撫で斬り&必ず宿屋か酒場で休むようにしていたので疲労はほとんど無い。女魔術師を寝かせてから数時間腰を落ち着けるか瞑想するかで身体の疲れはそこそこ取れた。ドラウナー狩りの後に旅籠でしっかり休めたからだと思う。

 

途中船も使ってファイアバースト波止場まで行き、あのムルブリデールにたどり着いた。さすがこの辺りで最古の村だけあってそれなりに栄えているし、波止場からの人や物の行き来があるから賑わっている。

 

それを横目に川を渡って湿地帯方面へ。今更ながら妖婆の力が及ぶエリアに近づきたくないんですが。ま、リンデンヴェイル経由でドラゴンスレイヤーの洞窟行って帰るだけだから…

 

怪訝な顔をするリンデンヴェイルの長老に挨拶して金を渡し(ゴーズ・ヴェレンで稼いだオレンが役に立った)、道案内の若者を付けてもらって洞窟へ行く。

 

ここが!かの有名なカゲンのジョージが眠るドラゴンスレイヤーの洞窟か!女魔術師も一緒だから多分大丈夫だけど、最深部にエキムマーラかなんかいるんだよなここ。もうウィッチャー3の記憶もあやふやだけど最速でいい防具手に入れたい時はレベル低くてもグリフィン流派の設計図取りに来てたから間違いないと思う。

 

手慣れた感じで洞窟の中を進み、本来の通路が崩れて埋まっているので空気の流れを感じる壁を見つけてアードで吹き飛ばし、幽鬼を何体か斬り倒し(女魔術師には背中合わせになっていつでも炎出せるように言って)、奥へと進んでいった。

 

なんか盗賊を撫で斬りにして、女魔術師の方に飛んできた矢を弾いてた辺りから気になってたんだけど、幽鬼の攻撃をクェンで弾いてサクサク斬り倒してると尊敬の眼差しなのか甘い眼差しを向けられているのが怖い。もう隠す気無いやん。

 

まあこの女魔術師が見た目どおりの年齢で、男性との接触も少ないなら分からんでもない。この身体、猫みたいな目と目の周りのクマがアレだけど、そこまで顔悪くないし。ゲラルトほど渋くないけどうちのダリウスニキやゲータンほど凶相じゃないからね。まだ男らしいとか精悍で済む範疇、髪型も変異のせいで側頭部ツルツルだから強制的に謎モヒカンみたいになっちゃってるけどまあ悪くないよ。いい研究材料を見る目じゃない事を願う。騙して悪いが、はやめてください。

 

ゲームでもあったキノコガス地帯は炎の専門家がいるので焼き払ってもらいガス爆発にビビりつつ、何とか2人して無事に最深部へとたどり着いたのであった。

 




オリジナルヒロインどや?
ウィッチャーサーガ内のキャラクターをヒロインにすると、年代的に整合性を取るのが難しいのでオリジナルヒロインとなりました。また、挿絵をAI出力してみたのですが画風が安定しません。

ウィッチャーといえばロマンスが付き物なので、次回R15に収まる範囲の三人称でロマンスに挑戦します。
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