お久しぶりです。ちょっと忙しかったのでお休みしてました。多分これからまた忙しくなるので、投稿の期間は空くと思います。
よければ、気長にお待ちください。
今回のお話は、前半部分が過去、後半では視点が現代に帰って来ます。ご了承ください。
それでは、どうぞ!
椅子に座り、外にいる子供達の事を見ながら、俺はシスターが席に来るのを待っていた。
外には小さいながらも遊具や、そこそこのスペースがある事もあって、元気よく遊び回っているのが分かる。……酷く穏やかだな。長い事この世界にいるが、それでもいまだに慣れない。
椅子に体重を預けていると、間も無くしてシスターはコーヒーが入ったコップを持ち、こちらへやってきた。
「………それで、どうだった?体験入学は?」
コトン、とコップが机に置かれる。
「そうだな。とても有意義で……楽しかった」
孤児院でシスターが淹れてくれたコーヒーを飲みながら、俺はシスターと話をし始めた。
結局、あれから少し考え、俺は体験入学を辞めることにした。
理由は色々あった。借金が何故か半額減っていたこともあって、利子の負担がかなり減っていた事。……これに関してはユメとホシノが苦い顔をしていたが、まあ本人達曰く納得はしているようだ。気になるかと言われれば、当然気にはなるが……まあいいだろう。
後は、ホシノとユメの関係もより良好になり、もう俺が必要なくなっていた事。それから……
『ゼハートくんってさ、やりたい事はないの?もしまだ決まってないならさ、これから見つけていこうよ!!アビドスでも良いし、どこでも良いからさ!』
やりたい事を、見つけたいと思ったからだ。
……思えば、俺は「何かをしたいから」行動するのではなく「何かすべきだから」行動する事が大半だったような気がする。それは前世でも、今世でもだ。
その生き方が間違っているとは、今でもあまり思えない。癖というものはそうそう抜けるものでは無いと、俺は知っているからだ。だが……自然にそれが出来るようになれば、きっと何かが変わるような気がした。
だから、これは言わば、自分探しのようなものなのだろう。
「そっか。それは良かった!……そう言えば、ゼハートは最近ミレニアムプライスあったの知ってた?」
考え込んでいると、シスターが共用スペースにあるテレビをつけながら俺に話しかけてきた。
「……ああ。そう言えばもうそんな時期だったな」
ミレニアムプライス。ミレニアムサイエンススクールで開催される、様々な部活がその成果物を発表し合うコンテストだ。これが中々人気で、毎年奇想天外な物を作る人物が一人はいるというのがその面白みを増していると言えるだろう。
とは言え、今年は綺麗に見る事を忘れていた。最近はアビドスに行ってばかりだったからな。仕方がないと言えば仕方がないだろう。
これまでの事を少し振り返っていると、少し興奮したようにシスターは椅子から立ち上がり、俺に近づきながら話しかけてきた。
「そうそう!いやーやっぱりみんなすごいよね!!私じゃ絶対思いつかない事ばっかり実現させてるんだもん!」
発想力が違うのかなぁ……なんて事を呟きながら、シスターはニュースを見ていた。
「まあ、人に向き不向きはあるからな。彼女達は発明という点においては優れているが、家事などのあらゆる面ででシスターに優れているかは分からないだろう。だから、そう自分を卑下する必要はない」
「………たまに思うけど、本当に15歳なんだよね?実はかなり歳をとってたり……なんて、流石にないか!」
「…………流石にそこまで歳は取っていないな」
勘が鋭いな……やはり侮れない。いや、別に年齢に関しては隠す必要はないのかもしれないが、それでもやはり言いずらさはある。
「あ!で、話戻すんだけどさ?エンジニア部って部活良いよねー!ロマンを追求し続けるってカッコ良過ぎでしょ!」
「ああ、エンジニア部か」
確か、常人では到底思い付かないような発明をしている部活だった筈だ。便利な物を作ったのかと思えば『本当にその機能は必要だったのか?』と言いたくなってしまう発明をしていると……
「今年は特にすごかったよ!ビームが出る銃作っちゃったんだって!」
「……それは、凄いな」
俺はヴェイガンとして技術を保有しているのもあって、ビームライフルは恐らく機材があれば作れるが……それにしても、だな。
「でもやっぱりエネルギー効率?が悪かったりするんだって。それでも入賞してたんだけど、それで終わりじゃなくて────」
『いやー1年生なのにも関わらず凄まじい技術力ですね!何か今後の意気込みとかありましたら、ぜひ教えてください!』
『そうだね。やはりロマンを追求する者としては、こんな所では終われないというのが本音だ。どうせ作るならこう……アニメに出てくるような、戦艦に取り付けるようなサイズのレールガンとか作ってみたいものだ』
『それはまた……でもそれだと、使えないような気もするんですが……』
『………それは……ほら。こう、いずれそれを使いこなす子が出てくるかもしれないからね。それに、それは作ってから考えたら良いさ。何故なら、考え込むより、まずやってみるのが私の流儀だからね』
「いやー良いよね!こういう自分の道を真っ直ぐ進んでる子って!カッコいい!」
再び席に座り、ミレニアムのホームページに載っている部活動紹介のサイトを俺に見せながら話すシスター。
「……確かにな」
彼女達こそ「自分達がやりたい」からこそあらゆる発明を創り出しているのだろう。その点においては、学ぶべきことがたくさんある。
……やりたい事、か。人を助ける以外であるとするなら、それは一体何なのだろうか……
『ゼハート。これからよろしくな!』
………いや、そうか。やりたい事はずっと前から決まっていた、な。
……分かっている。幾らそんな事をしても、あの頃に戻れないというのは十分に分かっている。だが、あの試行錯誤しながら正解に辿り着くまでの過程が、とても楽しかった。
だから───
「……シスター。今更だが、頼みがある」
「ん?どうしたの?」
……柄にもなく緊張しているな。
少し自嘲しながらも、俺は一度席から立ち、シスターの前に向かってから自分の意見を伝える。
「……俺は、漸く自分のしたい事が定まってきたような気がする。……だから、それを為すために、ミレニアムサイエンススクールに入学したいんだ。……無理を承知で頼みたい。行かせてくれませんか?」
丁寧に頭を下げる。……正直、これで行けなくとも仕方がないと俺は思っている。だが、だとしても──
「え?全然良いよ?……というか、寧ろやっと言ってくれたかって感じだねー」
即答だった。早押しクイズでこの速度で回答できれば、間違いなくどの分野でもトップになれると思ってしまう程早かった。
「お金は……確か、特待生の制度があった気がするから、それを目指してほしいかな。勿論、取れなくても大丈夫!取れたら良いなってぐらいだから」
「………本当に、良いのか?」
素直に嬉しいが、それはそれとして本当に大丈夫なのか心配になる。確かミレニアムは学生寮だ。それはつまり、ここに帰る事が殆ど無くなり、シスター達の助けになれないという事だ。
「……今ゼハートが考えてる事当てよっか?あの子達、どうしようって事でしょ?」
窓の外に広がっている庭で遊んでいる子ども達を見ながら、シスターは話した。
「……………そうだな」
「心配しなくてもさ。私一人で十分お世話出来るよ。それに、あの子達だってただお世話されるだけの子じゃない。成長していくんだから。いずれ、私を助けてくれるよ。だから……自分の心に従って、それで困ったら、私に相談してよ!」
……ここまで背中を押されたのなら、それには応えなければな。
「……ありがとう」
「良いよ全然!それじゃあまずは、教材から準備しないとね!」
さあ。自分のやりたい事は分かった。後は、進むだけだ。
そしていつか、自分のやりたい事が終われば……ホシノ達にも会いにいくとするか。それまでは、会わないでおくとしよう。友達とはいえ、いつか来る後輩達からすれば俺は部外者だ。困惑させるだけだろう。
………後輩、か。果たして、俺が再びアビドスを訪れた時、彼女達はどの様な様相を描いているのだろうか。
とても、楽しみだ。
「…………懐かしい夢、だったな」
そうか、あれからもう2年は経ったのか。早いものだ。ホシノ達は今頃はどう過ごしているのだろうか。……ユメはどうしたのだろうか?何か仕事についたのだろうか?借金はどうなっているのだろうか?後輩はどんな子達なのだろうか?
……柴関ラーメンも食べたくなってきた所だ。
それに、覆面水着団という謎の集団もアビドスに現れたそうだ。アビドスも、随分賑やかになってきたものだな。………それにしても、覆面に水着とは、中々奇抜なファッションだ。最近はその様な流行もあるのだろうか……?
こうして考えてみると、話したい事が沢山出来ていた事に気が付いた。……レギルスの作成に熱が入り過ぎてしまったからこそ、ここまで意識する事がなかったのだろうが……一度意識してしまうと駄目だな。
「……そうだな。近い内に故障したレギルスの整備も終わる。改修も済む筈だ。その頃には会いにいくとしよう」
不格好ではあるが、外付けのバッテリーも付けられたのだ。これで稼働時間もさらに増加させられる。
……ふむ。だが、流石にこのままの格好で行くのが無難だな。レギルスを装着すれば流石に目立つ。成果物を見せるのはいつでも出来るという事も考慮すれば、やはりこれがベストだろう。
いつ会いに行くとしようか?その時までには、土産話も持って行かなければな。
そんな事を考えながら、俺は授業を受ける準備をするのだった。
◯
「………そんな事があったんですか……?知らなかったです」
「まあ、今初めて話したからねー」
少し、いやかなり驚いているのか、目を少し見開いているアヤネちゃん。
「ん、私も初めて聞いた」
「私もですねー……」
シロコちゃんとノノミちゃんも席に座りながら思わず驚いていた。セリカちゃんは柴関ラーメンでバイトだ。
「というか、男子生徒がこのキヴォトスにいる事自体初耳ですね……」
「………だよねぇ……」
少しため息を吐き、頬杖を突いてしまいたくなる衝動を抑えながら、何とか話を続ける。
「そうなんだよ!私もホシノちゃんも探したんだけど……見つからなかったんだよねー……」
少し気を落としながらも、何とか話を続けようとしている先輩。因みにユメ先輩も柴関ラーメンで働いてますが、今日は休みだそうです。何故柴関ラーメンで働く事になったのかと言えば────
『いつかゼハートくんが帰ってきたら、真っ先にここに来ると思うからね!……それに、美味しい料理はみんなの心を笑顔にするから!』
との事だそうです。……確かに、ここだけの話ですが、ゼハートは当時、かなりの頻度で柴関ラーメンに行っていた様な気がします。案外ユメ先輩の考えも間違っているとは言えないですね。
ユメ先輩自身も、このアビドスで人の笑顔を守りたかったそうですし、案外合っているのではないでしょうか。
……話を戻しましょう。
「正直、アビドスに来るんだろうなぁって勝手に思い込んでたから、かなりショックだったんだよね……しかも音信不通だし……」
確か、連絡先は交換した筈なんだけど、ゼハートが借りてた携帯電話はあの『ビナー』との戦闘で故障しちゃったらしいんだよね。だから、結果的に連絡先は交換出来てないんだよねー……その時は完全に忘れてたよ。
……関係を切る前に黒服にでも聞けばよかったかな?いやでも、アイツのことだし、対価求めて来そうだからなー……うーん……
悶々とした感情が胸の中を渦巻く中、みんなは少し気を遣っているのか、心配そうに私に話しかけて来た。
「それは、残念でしたね……ですが、聞いている感じかなり目立ちそうな見た目な気がするのですが……何故ここまで情報が無いのでしょうか?」
「確かに、男子生徒で高身長となるとかなり目立ちそう。仮にその……亡くなっていたとしても、ここまで情報が無いのは流石に不自然」
アヤネちゃんとシロコちゃんは疑問に思ったのか、首を傾げた。
「………そう言えば、そのゼハートさんがいたであろうミレニアムの孤児院には行けなかったんですか?そこなら何か聞ける様な気がしたんですが……」
「それがねノノミちゃん。………ミレニアムに孤児院は
「…………そんな事があるんですか?なら、移転……?いやでも、何のためにそんな事を………」
そう、コレが事態をややこしくしている原因のもう一つ。ゼハートについて確実に何かが聞ける筈の場所である孤児院が、ミレニアムに存在していないという事。コレが面倒だった。
お陰で今でも尚、ゼハートがどこにいるかは分からずじまい。……会いたいなぁ……会えたら、私はこうやって私なりに先輩やってるんだって、伝えたい。………もっと、一緒にいたかった。
そう思っているのは事実だけど、これ以上考えてもキリがないので、一度話題を切り替えてみる。
「まあまあ、そこらへんで難しいお話はやめにしよっか。……そう言えば、今頃先生は何してるのかな?」
「ん、確かに。最近あの何とか条約を巡ってよく分からない奴とも戦ってから会ってない」
「エデン条約ですよーシロコちゃん。………それにしても、確かにそうですね?仕事に追われているのでしょうか?そうなのだとしたら、お手伝いに行きたいです♧」
「………エデン条約、ですか……そう言えばホシノ先輩、ユメ先輩、あの戦場に、よく分からない人?がいたのはご存知ですか?」
「ん?そんな子いたかな?……分かんないなー……」
シロコちゃんやノノミちゃんが会話をしている中、アヤネちゃんがふとそんな事を私達に話しかけて来た。ユメ先輩はどうやらわかっていない様だ。
「…………多分だけど、あの赤いヤツだよね。アヤネちゃんが言ってるのって」
あの赤いロボット。アレだけは明らかに異質だった。トリニティにそんな物があるなんて話は聞いた事がなかったし、そもそもあんなお堅い場所であんな物を作ってたら異端者扱いされそうだって事で、陣営が全く分からなかった。
かなり上空を飛んでいたのも相まって、気付けていた人はおそらくそういないと思う。……多分、古聖堂付近にいたんだろうけど、生憎私達は別の場所で戦ってたから、接触もできなかったんだよね。
……まあ、明らかにアレは触れたらまずいタイプのヤツな気がしたから、仮に古聖堂にいても見て見ぬ振りしてたと思うけどさ。
「そうです。私は戦場を俯瞰してサポートする立場なので、たまたま目に止まったのですが……何故あんな高所で佇んでいたのかが気になったんです。結局とてつもないスピードで何処かに行きましたし……」
「だねー」
何よりも危惧しているのは、あの機動力なんだよね。ハッキリ言って、このキヴォトスでも最速と言っても過言じゃない。実力は……分からないけど、それこそ、下手したら私よりも………
………もしもアレと敵対するとなったら、覚悟を決めておいた方がいいのかもしれない。そう思っちゃう程だ。
そんな事を考えていると、ユメ先輩がハッとした様な表情で私達に話しかけて来た。
「…………あ!多分だけど、その赤いロボットさんのお話聞いたことあるよ!お客さんからだけど」
「え!?そうなんですか?!……すみません。少し大声になってしまいました……」
「大丈夫だよアヤネちゃん!といっても、よく分かんないものから凄そうなものまで一杯あったんだよねー」
「………ど、どんな噂なんでしょうか……」
「私も気になるなー」
思わず私もそう呟いてしまう程に、私も気になった。
そして、ユメ先輩が話し始めた。
「んーっとね、何でも、中にはちゃんと人が入ってるだとか、何かの実験場としてエデン条約を利用したとか、色々だね」
「実験場、ですか?」
「うん!何でも、あのロボットを運用する為のテストをしてたとか」
「………確かに、それなら納得できますね」
アヤネちゃんが納得した様に頷く。
確かに、良くも悪くも、あの時はキヴォトス中の戦力が大体集まっていたと言っても過言じゃなかった。なら、そのタイミングでテストをするのは合理的だと言えるねー。
……なら、あの時上空に佇んでいたのは、戦況を俯瞰して、より強い強者と戦う為だったのかな?
少しずつパズルのピースがはまっていく様な感覚に陥る。危ないヤツだって、思ってたしね。それくらいの事はしてもおかしく無い。……でも───
「でもね。多分そのロボットさんは、悪い子じゃない気がするんだ。……ただの直感だけどね?」
「……私も、そう感じました」
本当にテストをしていたのなら……観察なんてしなくても、手当たり次第に戦闘すればデータも取れる筈なんです。……なのに、それをしなかった。
そこには、きっと意味がある筈。
そう考えていると、再びユメ先輩が話し始めた。
「あとはねー……異名、っていうのかな?一回そのお客さんから聞いた名前は────」
「赤い彗星、っていうみたいだよ?」
「……赤い、彗星………」
……成程、確かに言い得て妙ですね。あのスピードを彗星に例えたと言うわけですか。……だんだん気になって来ましたね。なら───
「提案なんだけどさ、一回先生に話でも聞いてみよっか?そしたら、何かわかるかもだし」
「……確かに、このまま考え込んでいても埒があきませんしね。一度、聞いてみるというのはアリだと思います」
「じゃあ私が連絡しよっかな?丁度聞きたい事があったし」
ユメ先輩がスマホを片手にそう言うと。
「ん、私も連絡したい」
「私も、久々に先生とお話がしたいですね」
いつの間にか話を終えていたのか、すぐに話に食いついたノノミちゃんとシロコちゃん。………相変わらず先生の事が好きなんだねぇ……青春って感じするよ。
「ま、待ってください!そんなに複数人に電話されても先生が対応できませんから!誰か代表を決めましょう!」
「なら、ジャンケンで決めよう。今日の私は無敵」
「いいですねー。私も今日は負ける気がしません♧」
「私も当然参加するよー!質問したいことあるし!」
「………わ、私もやらせて頂きます!」
………賑やかだなぁ……ここにゼハートが居てくれたら、どんな反応するのかな。……いるなら、早く会いに来てよ。
「うへー、元気だねーみんな。それじゃあ、私も参戦しよっかな?」
そんな思いは隠しつつ、私も先生に聞きたい事はあったので、ジャンケンに参戦するのだった。
無事アビドス過去編も終えられました。いよいよミレニアム編ですね。皆さんの投票の結果、ミレニアム編一章→ミレニアム編二章の順でやっていこうかと思います。それが終われば、最終編って感じですね。
やりたい事もそろそろ近づいて来ましたし、最後まで走り抜けたいですね。……デカグラマトン編は、やるかは今のところ不明なので、最終編をゴールとさせてもらいます。
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それでは、また次回お会いしましょう!
アビドス過去編の後に何書いて欲しい?
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ミレニアム編一章(時系列的には過去編)
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ミレニアム編二章