よくよく考えたらエンジニア部がミレニアム編一章で絡む事ってそこまで無いので、こんな感じのオリジナルストーリーが生えて来る事が結構あります。……そのまま進めると、出番がC&C戦しか無いんですよね多分……
まぁそんな訳で、ストーリーに沿わせるより、こっちの方が私は筆が進むのは不思議だなぁと思いながら書いていました。
それでは、どうぞ!
「………こうして歩いてみても、やはり栄えているのが分かるな」
俺が前いた孤児院付近と比較しても、かなりここは栄えている。キヴォトスで栄えている地区が何処かと問われれば大半の人々は『ミレニアム』と答えるのではないだろうか。
ミレニアムサイエンススクール付近の場所を散策しながら、俺はそう考えていた。
少し見渡してみると、モノレールが各地を巡り、近未来的な建造物が建ち並んでいる。雲ひとつない青空なこともあって、その風景はより親しみのあるものになっている。きっと、多種多様な人や動物がいて、俺が想像もできないような事を考えているのだろう。
……たまに発明の息抜きでこんな事をすることもある。そこまで高頻度ではないが、こうして色んな人の様相を見ていると不思議と心が落ち着く気がするのだ。
最近は根を詰めすぎだとウタハにも言われたので、こうして休憩がてら散歩をしている。………風が心地いいな。
そして、そんな慣習とギリギリ言えそうな事を続けていると───見覚えのある武器を持っている少女がいる事に気が付いた。
「………あ!アリスはレアモンスター、ゼハート先輩とエンカウントしました!こんにちは!」
相変わらず元気な口調、そして笑顔でアリスは俺に挨拶をして来た。
「ああ、こんにちは。アリスはここで何をしていたんだ?」
「アリスは……経験値稼ぎです!モモイ達が言うには、こうして外に出て色んな人と触れ合う事が、より良いレベルアップの仕方なのだそうです!」
「……成程な。確かに、一理ある」
他者と触れ合い、交流を深める事は、互いに理解を深め合い、見識を広げる為に必要不可欠なプロセスだ。モモイ達が言っている事は何も間違っていないだろう。
俺が感心していると、気が付けば近くまでアリスが寄って来ていた。
「ゼハート先輩!私のパーティーに加入し、新たな旅路へと向かおうではないか!」
……成程。要するに『一緒にどこか行きませんか!』という事か。
自分なりにアリスの言語を解釈する。そして。
「俺でいいのなら是非。それに、ここら一帯の事はまだ俺の方が詳しいだろうからな。お前が楽しめそうな所へ行くとしよう」
「………!!パンパカパーン!ゼハート先輩が新しく仲間になりました!」
他の学生と比べても、人一倍元気なアリスを見て少し笑いながら俺は───
「そうだな。仲間として、よろしく頼む」
と一言告げ、ミレニアム探索を始めるのだった。
◯
少し移動し、かなり大きい規模のゲームセンターにやって来ていた俺達。レースゲームやリズムゲームなど、多種多様な物がここにある。ゲーム好きな者なら来ても損はないとはモモイの一言である。
その中には当然───クレーンゲームもある。
「………ぐぬぬ……!!」
そう言いながらクレーンゲームに向き合い、剣を模したモノが入った箱を何とかクレーンで掴もうとする為に、アリスは真剣に、慎重にボタンの操作をしていた。
クレーンと対象物の縦軸を合わせ、そして感覚のまま横軸を合わようとする。きっとこの数秒は、辺りの喧騒など聞こえていない事だろう。
そして、クレーンが降ろされ、箱を掴んだ。
「…………やりました!アリス、任務達成です!」
そう言いながら後ろで見守っていた俺に振り返り、勝利宣言をしたアリス。だが………
「言いにくいが……アリス、後ろを見た方がいい」
「え?………ああー!!?全然上手くいってなかったです!」
背後を振り返ったアリスは、箱を穴の中に落とせていなかった事に漸く気づき、悲しみの悲鳴を上げた。それどころか、穴の近くまでは寄せられていたが、大して動かせていない事にも気付いたのか、絶望した顔にもなった。
「……で、ですが、これ以上は流石にこの先へ進む為の資金が無くなってしまいます……!!ど、どうすれば……」
……仕方ない、か。
「アリス。ここは俺に任せてくれないか?」
「ゼハート先輩!?危険です!このクエストは大変困難です!引き返しましょう!」
俺を心配してくれているのだろう。俺の服の裾を掴みながら上目遣いでそう訴えかけてくるアリス。
「安心してくれ。確かに経験自体はそこまでないが………やり遂げてみせる」
頭を優しく撫でながら、俺は未だ心配そうにするアリスにそう言う。
「……分かりました!このクエストに挑むにはまだ私のレベルが足りていないようです。助けてください!ゼハート先輩!」
「承った」
その言葉と共に、筐体に向かい、情報を確認する。
……先程の動作を見た限り、アームの強さはそこまで強くはない。だが、先程のアリスが積み上げた
これなら………いける。
実はだが、たまにモモイやミドリに誘われてゲームセンターには行く事があった。
その時にモモイがクレーンゲームをしていたのを見ていた。……かなり酷い結果に終わっていたが、どうすれば良いのかは大凡分かった。
更に、Xラウンダーの能力を駆使する事でどのルートなら成功するのかを確実に検証する事で、必然性を高める。
未来を見ようとも、身体がついていかなければ意味がないと言うのはその通りだが……俺はこれでもモビルスーツに乗っていた身だ。
そう自分に言い聞かせ、未来を視る。
ボタンを押すタイミングを見極める……ここと、ここだ。
その意思の通りに、俺はボタンを操作し終わる。
ふと後ろを見てみると、アリスが目を閉じ、両手を握り締めて祈っているのが分かった。
そして、そのままアリスを見ていると……ガタッと言う音が聞こえ『おめでとうございまーす!!』という音声が背後から聞こえた。……どうやら、付け焼き刃だが何とか上手くいったようだ。
「………すごいです」
いつの間に目を開いたのか、俺の事を見ながら簡単したかのようにそう呟くアリス。そして、早歩きで俺のそばまでやって来たかと思えば、俺の手を優しく握って来た。
「すごいです!あんなに難しかったのに、こんな簡単にクリアしてしまうなんて……ゼハート先輩は歴戦の戦士なのですね!」
「……そういう訳ではない。見様見真似というやつだ。それに、アリスがあそこまでお金をかけなければこう上手くはいかなかった」
そう言いながら、模造剣が入った箱を取り出す。さて───アリスにこれは譲るとしよう。
「だから、これはアリスが受け取ってくれ。お前風に言うなら『クエスト報酬』だ」
「………本当に良いのですか?このクエストはゼハート先輩がクリアしたのに………」
少し遠慮気味にアリスはそう呟いた。………そこまで罪悪感に駆られなくとも良いのだがな。
そんな想いを込めながら、俺はアリスに話しかける。
「それは違うな、アリス。これは俺とお前、二人でクリアしたのだ。更に言うなら、取り分的に言うならアリスの方が多くて然るべきだ。だから、これはお前が受け取ってくれ」
「……はい!アリス、クエスト報酬を受け取ります!ありがとうございます!ゼハート先輩!」
アリスは大事そうに胸に箱を抱え込み、何度見ても見飽きないだろう笑顔を俺に向けた。
「ああ。……さて、まだまだ時間はある。ゆっくり楽しむとしよう」
「はい!私達の冒険は、まだまだ終わりません!」
そこからは色んなゲームを楽しんだ。音ゲーをしたり、シューティングゲームをしたりと、普段はまるでゲームなどしない俺がここまでゲームをしたのは初めてかもしれないと思う程に、だ。
そして、お互いに少し疲れたと言う事で、ゲームセンターの中にあった休憩用のスペースで話をしていた。
「───それでですね、アリスが説明の通りにボタンを押せば『ゲームオーバー』になってしまったんです!あの時はどうすれば良いのか分からなくてどうにかなりそうでした…………それに、最近はユウカが襲来して来ましたし、イベント祭りでした……」
「……中々大変だったのだな………ふむ、ならそのゲームはプレイしてみてどうだったのだ?」
テイルズ・サガ・クロニクル。評判はかなり悪く、ネットではあらゆる罵詈雑言が飛び交うレベルで酷い作品なのだそうだ。……俺はプレイした事がない為分からないが、こうしてアリスの話を聞いていると、かなり、いや物凄く癖のあるゲームなのだという事が分かった。
故に、こうして本人から感想を聞いてみたのだが……
「ですが…………」
どうやら、それだけではないようだ。
アリスが何かを言いかける様子を見て、俺はそう思った。
「それを抜きにしても、クリアした時の達成感は、とてつもないものでした!!あの瞬間、言葉で表現し難い感情が私を襲って来たんです!」
「達成感、か」
「はい!アリスは本当に、本当に感動しました!……だから、私もそんなゲームが作りたいと思ったんです!」
……そうか。
「……良い目標だな。俺も発明家の端くれとして、より良い物を作ろうとする心意気は共感できる」
と言っても、作った作品はそこまで多くはないが、な。
自分を少し自嘲しながら、俺はアリスの気持ちに共感していたが……どうやらアリスには、まだ言いたい事がある様に感じたので、話を聞く事にした。
その予想通りに、アリスは『なりたい自分』を語り出した。
「そして、それと同時に……ゲームに出てくる、勇者になってみたいとも思ったんです!」
「……それは、何故だ?」
「………えーっとですね。理由と言われると、少し難しいのですが……アリスがなりたいと思ったからです!みんなと一致団結して、魔王を倒す、そんなカッコいい勇者に!」
………勇者になりたい、か。
「それはまた、難しい目標だな」
「………難しい、ですか?」
首を傾げながら、椅子に座っていたアリスはそう俺に問いかけて来た。
「ああ。勇者と偏に言っても、場合によってはそれが誰かにとっての魔王になる事だってある。……完全な正義、完全な悪など、そう存在はしないのだ」
「……勇者が、魔王になる事もあるのですか?」
少し声を小さくし、アリスが俺に再び問いかけて来た。
「絶対にそうなる。という訳ではないがな、そうなる可能性もあるというだけだ」
………俺も、ヴェイガンを率いる者として、数多の連邦軍の兵士を殺して来た。何の罪も持たない一般人も、きっと大勢殺した。
あれが正義の行いだと、俺は口が裂けても言えない。
だが、ヴェイガンの民にとっては救世主の様に見られていたのかもしれない。………連邦軍からは、俺が殺した者からは……魔王のように見られていても、おかしくはないだろう。
立場が変われば、正義や悪など、簡単に入れ替わってしまうのだ。
「………なら、アリスはどうすればいいのでしょうか?勇者になっても、それが正解でないのだとすれば……」
戸惑いながら、アリスは俺にそう話しかけて来た。……そうだな。簡単でもあり、難しいが、答えはある。
「そうだな……お前が選んだ選択肢が間違いなのか、そうでないのかを仲間に聞けば良い。そうすれば、正解を選べる確率も上がるだろう」
「仲間……モモイやミドリ、ユズにですか?」
そうだ。
「一人で考え込むと、碌な事が起こらないからな。まず自分で考え、どうすれば良いか分からないなら周りにいる信頼できる人物の意見を聞く。……だが、そこで他人に流されるのはダメだ。最後は、己の意思で決めなければならない」
「…………うーん?難しいです………」
「……そうだな。難しい話だ。俺も、誰であろうと、選んだ選択肢が100%正解かはきっと分からない。だが、だとしても選ばなければならない時が来る。……自分の人生を左右するような、そんな選択肢を」
………あれこれ言い過ぎたな。これでは余計に惑わしただけだ。
少し反省しながら、いまだに唸り続けているアリスに話しかける。
「………まあ、何が言いたかったかと言えばだな。絶対の正解など存在はしない。だが、その中でも選ばなければならない時は必ず訪れるという事だ」
「……選ばなければならない時、ですか。ゼハート先輩には、そんな時があったんですか?」
「………ああ、あったな。………そして、俺は失敗した」
何度後悔しただろうか、あの砂漠に至るまでに。何度夢に見ただろうか、あの地獄を。あそこで俺が俺を少しでも認めならなければ、きっと俺は……この場にいなかった。それ程、深い後悔を味わった。
「……………失敗の先駆者から言える事としてはただ一つだ。誰かを頼れ。……簡単で、とても難しい事だが、だとしても、一人で走り抜くのは無理なのだから」
それが、このキヴォトスで、そしてアセムに教えてもらった事だ。
そう俺が言い切ると、パッと椅子から立ち上がり、俺の前に立つアリス。その目は何処か怖がりながらも、期待するような目つきだ。
「……分かりました!……アリスは、もしかしたら間違うかもしれません。それこそ、誰かにとっての魔王になってしまう事だってあるかもしれません!だから、その時は──アリスを、止めてください」
「…………本当に良いのか?俺でなくとも、モモイやミドリに頼めば良かったんじゃないか?」
「……何ででしょうか?アリスにも分かりません。ですが、ゼハート先輩なら、アリスの事を止めてくれる気がしたんです。……引き受けて、くれますか?」
………そう、だな。
「…………俺で良いのなら、その役目、承ろう」
………引き金を引きたいか引きたくないかで言えば、当然引きたくはない。だが、俺は感情を抜きにして引き金を引く事が出来る。出来てしまう。
それは昔も今も、変わっていない俺の本質なのだろう。更に言えば、アリスが何処か怪しいという点は幾らでもある。
俺がこれまでに一度も見た事がないという事。ユウカがわざわざ面接らしき物に来た事。キヴォトスの人間からしても異常だと断定出来る程の凄まじい耐久性能、身体能力。
話を聞いたウタハ曰く────
『まるでロボットのようだと感じたよ。それこそ、君が開発しているガンダムレギルスを彷彿とさせるような、そんなイメージだ』
との事だ。………イメージは俺と殆ど合致している。だが……俺もウタハも、無闇矢鱈にアリスを疑いたい訳ではない。
だからこそ、叶うのなら────アリスが想定している最悪の事態が、起こる事のないようにあって欲しいものだな。
俺はそう思いながら、アリスと話を続けたのだった。
◯
ゼハート先輩と話を終え、パーティーを一時解散してから、アリスは先程していた話について考えていました。
「………アリスが、魔王に……………」
……考えるだけで怖いです。もし、アリスが魔王になって、モモイを、ミドリを、ユズを……アリスのパーティーメンバーを傷付ける事があると考えるだけで………とても怖いです。
でも、ゼハート先輩が約束してくれました。『俺が止めてみせる』って。だから、ちょっとは安心できた気がしますが……
………そうは言っても、完全に安心できている訳ではないです。………時折、変な感覚がするんです。自分の役割がこうではないと、誰かが訴えかけて来るような感覚に陥る事があるんです。
例えるなら、誰かにこの身体をハッキングされているような、そんな感覚です。
もし、そのまま声に身を委ねてしまったら………きっとその時、アリスは魔王になるのだと思います。
そうなってしまったら、どうなるのかアリスでさえも分かりません。それに………
「……もしアリスが魔王なのだとして、それを伝えたら、モモイ達はどう感じるのでしょうか………」
怒るのでしょうか?悲しむのでしょうか?………怖がるのでしょうか?嫌われるのでしょうか?
そう考えてしまうと、胸の奥がズキンと痛くなったような気がしました。…………それは、とても嫌な事だと、アリスは思いました。
「………嫌です。嫌われたくなんか………ないです」
まだまだきっと短い付き合いなのかもしれませんが、それでも、アリスはあの場所にいたいです。
………でももし、アリスがいるだけでモモイ達を傷付けてしまったら?そうなれば、アリスは…………
考えがどんどん新しく出て来る中で………聞き覚えのある声が、遠くからアリスの耳に聞こえました。
「おーい!アリスー!?そんなとこで何やってるのさー!?早くこっち来てゲームしようよー!」
「…………はい!アリス、クエスト受注します!」
言葉と共に走り出す。
…………問題はきっと何も解決していません。この事も、モモイ達には言えません。………嫌われたく、ないからです。
……ゼハート先輩は、アリスの事を受け入れてくれましたが……モモイ達がそうとは限りません。
信じたいです。信じたいんです!!………でもやっぱり、一歩は踏み出せなくて。
でも、そうなのだとしても、分かる事は一個だけありました。
それは─────
「おっ!やっと来たよー!ミドリ達も待ってるからさ!早く行こうよー!」
モモイの横と並び、顔を見る。
「……ん?どうかしたー?私の顔に何かついてたりする?……ハッ!!もしかして、お菓子食べまくってたから顔につきまくってるとか!?マズイよそれー!!ミドリに絶対どやされるー!?」
「………そうなんですか?」
「そうだよ!!怒った時のミドリはほんとに怖いんだから!!早く顔洗わないと……!!ってそうじゃん!よくよく考えたらゴミも片付けてない!!ヤバいー!!?」
アワアワしながら、部室にミドリがまだ居ませんように………!!と祈っているモモイを見る。
「なら、これは緊急クエストという事ですね!急ぎましょう!モモイ!」
「うん!早く行こう!!本当に死ぬから!!」
………こうしてモモイ達と話をするだけで、声を聞くだけで、不安が無くなるような、悩みが無くなるような、そんな気がする。という事です。
モモイと一緒に部室に向かって走りながら、アリスはそう考えるのでした。
………これって内容的にミレニアム編二章じゃね?って思った人。安心してください。私もそう思いながら書いていました。でも、多分ゼハートならアリスが『勇者になりたいんです!』って言ったらこんな事言いそうだから……って言い訳しながら書いてました。
多分ここで素直にアリスが『アリスは魔王かもしれません!』って言ってたらモモイ達に理解らせられて、アリスが迷うフェーズがなくなるのでミレニアム編二章崩壊してるんですけど……アリスも一人の人間ですから、こうやって迷うよね?って事で、心の内は隠してもらう事にしました。
まあ、そこら辺はミレニアム編二章を楽しみにしておいてください。
それでは、また次回お会いしましょう!
アビドス過去編の後に何書いて欲しい?
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ミレニアム編一章(時系列的には過去編)
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ミレニアム編二章