楽園に至るには   作:NTT.T

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鏡奪還作戦開始です。と言っても、戦闘の内容とか色々変わっているので、よければ楽しんでくれたらいいなと思います。

それでは、どうぞ!



作戦開始

 

「……さて、作戦も始まった事だ。私達も行動を開始するとしようか」

 

ミレニアムの校舎、その屋上に私とウタハは佇んでいた。ここなら、周囲の状況もある程度俯瞰出来る。私の目的も果たせるという物だ。

 

ゲーム開発部が収容所からヴェリタスが開発した『鏡』を奪還する為に始まったこの作戦。私達や、ゲーム開発部にはそれぞれ役割が与えられ、こうして作戦は開始している。

 

私達の役割はミレニアム随一のスナイパーであるカリン、爆弾を巧みに扱ってくるアカネの足止めや、天性の勘で最適解を導き出すアスナを足止めするという役割だ。

 

だが……私はここに一つの懸念点がある事に気がついていた。────美甘ネル、彼女の存在だ。

 

現在、任務に向かっているそうなのだが………私の感覚が訴えかけて来たのだ。必ず放置すれば危機に陥ると。

 

故に、万が一任務から早く帰って来た場合に備え、ヴェリタスの面々に警戒するようにしてもらっている。ゲーム開発部にも注意は促しておいた。これで少しは安心できるだろう。警戒しないよりはマシだ。

 

目的というのは、彼女の存在を警戒する事だ。こうして高い場所からなら、校舎に入ってくる人物も確認できるからな。

 

懸念点と目的を頭の中で整理していると、ウタハが少し冗談めいた口調でこちらを向き、話しかけて来た。

 

「そうだね。………それにしても、相変わらず頼もしい後ろ姿だ。君になら、背中を預けられるといった物だ。さながら騎士(ナイト)と言ったところかな?」

 

月夜に照らされ、夜風で長い髪を揺らしながらこちらに信頼を向けてくるウタハ。その姿は恐らく誰が見ても『綺麗だ』と言える物だろう。

 

「……些か誇張しすぎなような気もするが、そう思ってくれているのは光栄だな」

 

少し未来を見て、まだネルが来る気配はなさそうだと把握したと同時に、目的のターゲットがこちらへ来る未来が見えたので警戒をしていると───恐らくゲーム開発部からすれば、一番厄介である存在がドアを開けコツ、コツと音を鳴らし、こちらへやって来た。

 

「………どうやら、私がどうポジショニングするかはある程度想定されていたようだ。厄介だな」

 

……厄介、か。

 

「厄介だけで済むのか?こちらは2人、そちらは1人だ。状況的に不利なのは間違いなくそちらだぞ、角楯カリン」

 

角楯カリン。このミレニアムでも随一のスナイパーであり、その超遠距離の狙撃には彼女達ゲーム開発部も苦戦すると想定はしていた。故にこうして屋上で少しの間、待ち伏せをしていたのだ。

 

ここなら、向かい側の校舎にある差押品収集室の状況も把握でき、尚且つ一方的な狙撃も出来る。予想は当たっていたようだ。

 

私が煽るように言葉を発すると、カリンは表情を崩さずにこちらを見据え、遠くから冷静な口調で話しかけて来た。

 

「確かに、人数差的にも不利なのはそうだな。それに、私の持ち武器はスナイパーライフル、近距離戦に持ち込まれれば確実に厄介な事態になる。………が、その程度の事は想定してある。近距離戦が出来ないと思わない事だ。それと、無駄話もそろそろ終わりにしよう。これが時間稼ぎなのは知っているのだからな」

 

「……私としては、もう少し喋っていてもらいたかった物だが……ゼハート、いけるかい?」

 

「ああ。私とウタハ、2人がいれば……確実に倒せる」

 

遠くから爆発音がなった瞬間、私たちは行動を開始した。

 

「さて、それじゃあゼハート!前線は頼んだよ!!」

 

その言葉と共に、ウタハがあるもの(・・・・)を複数上空に投げた。

 

「…………成程、閃光弾か!!」

 

ヒビキが事前に制作してくれていた、時間稼ぎをするために少しでもと用意してくれていた閃光弾。これをウタハは全力で複数投げていた。

 

私はそれを事前に伝えられていたので、目を閉じながら、着実にカリンの方へと近づいていた。

 

そして、目眩しをする事で狙撃を妨害するという単純な狙いに気づいたのか、即座に目を覆ったカリン。それを遠くから確認できていたウタハは、目を閉じていたゼハートに状況を伝えた。

 

「ゼハート!カリンは片手を使って光を遮っている!そのままの速度で、目を開けて近づくんだ!!」

 

「………ああ、了解した!!」

 

その言葉を聞いた私は目を開きつつ背中に携えてあった、エンジニア部で開発した刀を抜き、斬りかかる準備をしながら着実に距離を詰めようとするが、どうやら相手もそれは読めていたようだ。

 

何も見ずに此方の位置を足音から推察したのだろう。光から目を守っていた片手でライフルのグリップを握り、万全とは言わずとも慣れたような手付きで即座に構え、私を狙い撃ってきた。

 

空気を振動させる轟音と共に、正確な銃撃が私に襲いかかるが……その未来は、視えている!

 

体を前傾姿勢にし、本来なら頭にあたっていたであろう攻撃を回避しつつ、距離を詰める。

 

「なら、これでどうだ!!」

 

だが、一度回避される事は想定していたのか、即座に第二射を放ってきたカリン。

 

それも先程とは違い、閃光弾などの妨害がない状態で、万全の状態で此方を狙い撃って来た。更に言えば、私とカリンとの距離は先程と違い近くなっている為、こちらが迎撃する為の準備時間も短くなっている。尤も────

 

「一度見た攻撃に当たる程、私は甘くはない!!」

 

今度はこれまたエンジニア部で開発されたシューズに補助された脚力、それによって実現した脅威の跳躍力を駆使し、上へと飛び上がる事で銃撃を回避した。

 

「なっ────!?」

 

驚きながらも至近距離の戦闘になることを想定したのか、カリンはライフルの銃身で無理矢理刀と鍔迫り合いをしようとしていた。

 

そして、私は落下時の衝撃を利用し、目の前の敵に向かって全力で力を込めた。

 

瞬間、ガギンッ!!という音と共に火花が飛び散り、互いに負けじと力を全力で込めていた。

 

「………まさか、あそこまで簡単に見切られるとはな………!!」

 

「簡単、というわけでは無いが……あれを見切れなければ、私が負けていたというだけの事だ!」

 

相手の武器を破壊しようとする勢いで力を込めながら、カリンを睨む。だが、それに負けずといった勢いでカリンも力を込めてきた。……くっ……!!力だけならやはり向こう側が上か!!

 

「……それはまた、手強い!!」

 

カリンはそう言い放ちながら右足を軸にし、左足でハイキックをしようとしていたので、相手の姿勢を崩すためにより強く刀身で銃身を押し、即座に距離を取りながら離れたが、その程度で私は倒れないと言わんばかりの体幹を駆使して姿勢を崩さずに、カリンはこちらを見据えてきた。

 

……厄介だな、あれで姿勢が崩れないとは。だが、距離は近い。戦闘開始時のかなり遠い距離から一転して、一度の狙撃すら許さない位置に立てている。

 

更に────

 

「ゼハート!こちらも迎撃体制は整ったよ!!」

 

予め戦闘の為に屋上にドローンで手配していた物資(・・)、そして『雷ちゃん』がここで数機登場した。

 

元々警戒されないように、確実にこちらに狙いを向けさせる為にわざと雷ちゃんは配置しなかったのだが……どうやら、正解だったようだな。

 

それに、本来ならここまで私は戦えないが、機動力をシューズで補う事でこの戦いをより有利に進める事が出来ている。……コレを開発していたウタハに感謝だな。

 

尤も、これを作った当の本人は速度が制御が出来ない為、放置していたようだが。

 

少し思考が逸れたのを自覚した私は、今も尚戦意を失わずに済んでいるカリンに話しかけた。

 

「さあ、どうする?このまま戦えば、負けるのはそちらだ」

 

私の意図を読んだのか、ウタハも私の言葉に便乗して説得を始めた。

 

「そうだね。私たちも無闇に誰かを傷つけたい訳じゃない。ここは降参するのがお勧めなんじゃないかな?………と言っても、私はそこまで何もしてないんだけどね」

 

少し冗談めいた口調で説得を試みたウタハ。私も説得を試みたのだが………どうやら、そう上手くは行かないようだな。

 

説得をしても尚、変わらない視線を受けながら私はそう実感した。

 

「……確かに、このままの状況が続けば、負けるのは私だろう。故に───一度、ここは引くとしよう」

 

そう言いながら、カリンは屋上に来るために開けていた扉を再び開け、下の階へと降りて行った。

 

「……さて、これは面倒な事になったね。ゼハート」

 

「…………そうだな」

 

このまま放置してしまえば、ゲーム開発部の進路を妨害されるのはほぼ確実だ。狙撃をするだけならガラスを割り、そこから無理矢理狙撃するだけで良いからな。何も屋上に拘る必要はない。

 

……そして、確実に相手にとって有利な状況へと持ち込まれた。向こうはこちらを待ち構え、狙撃すれば良いのに対し、こちらはそれを警戒しながら慎重に進まなければならない。

 

更に言えば、私達が慎重に行動するのを見越されて別の場所、それこそゲーム開発部と戦っているであろう誰かに加勢されるのが最悪のパターンだ。

 

「……どうする?このまま相手の誘いに乗るかい?」

 

こちらに歩み寄り、横に立ったウタハが質問して来た。

 

「………乗るしかないだろう。相手の思う壺だろうが、ここを制さなければ作戦が瓦解する。……それに、急がなければならないのは間違いないのだからな。迷っている暇はないだろう」

 

……もう、時間はかなり経過している。このままいけば───彼女が来てもおかしくはない。一刻も早く、この場を切り抜けなければ。

 

そう思いつつ、私はウタハと共に周囲を警戒しながら下の階層へと行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

………戦闘経験も、訓練もそこまで受けていない学生2人なら簡単に制圧できると思っていたが……私の想定とはかなり違うようだ。……特に、あの男子生徒。確か、名前をゼハート・ガレットと言ったはずだ。

 

聞いたことはある。このキヴォトスで唯一の男子生徒であり、ミレニアムでも高い能力を誇る生徒だと。

 

……それはあくまで、学力や知能の話だけだと勘違いしていた。だが……

 

……彼の動きは、明らかに戦闘に慣れている者の動きだった。それに……あの、まるで未来すら見えているかのような見切り。

 

末恐ろしいの一言に尽きるだろう。彼を止めなければ、それこそ作戦が瓦解してしまう。……単純な膂力なら勝てる辺り、恐らく脚力は何らかの補助装置によって補助されているのだろうが、それを制御できているのもまた……

 

「……貧乏くじを引いてしまったな」

 

甘い想定をしてしまった自分に不甲斐なさを感じつつも、敵の動向を考察する。

 

現状、勝ち目は薄い。まともに戦えば負けるのはほぼ確実に私だ。ただでさえ一対一であれなのだ。支援装置であるあのロボット、そしてそれをコントロールするエンジニア部のマイスターがいては、勝ち目がないと言っても過言ではないだろう。

 

……だが、この状況下においては私が有利だ。この闇夜に紛れ、敵を狙い撃つことができれば、確実に制圧出来る。……問題は、今の所当たるビジョンがまるで見えない事だろう。

 

と、あれこれ考えていた所────問題視していた彼が、足音を鳴らさずにこちらへとやって来た。

 

………来た。

 

……現在私がいるのは、一本道の廊下だ。それも、先程と違いそうそう私の銃弾を回避する事が出来ない場所。先程の上空へと飛ぶ回避方法には流石に驚かされたが……一度分かって仕舞えば、後は上空に飛んだ瞬間を狙い撃てばいいだけの事。

 

それに、近付かれても背後へと逃げればそれで済む。この廊下は長いからな。影に隠れるためにかなり後ろへと来たのも相待って、その必要性もないだろうが……

 

……さあ、始めるとしよう。

 

少し感じた違和感(・・・)を無視しながら、私は狙撃に集中した。

 

闇夜に紛れ、まともに向こうが知覚出来ていないこの瞬間を狙う───!!

 

引き金を引く。……そして、それと同時に、或いは少し前に、相手は目を見開きながら回避の体勢をとっていた。

 

ダァン!!と、聴き慣れてはいるが、凄まじい轟音を発しながら銃弾が走る。が……

 

「……馬鹿な、あそこから回避できるのか……!?」

 

完全に目視すらできていなかった筈だ!それなのに………いや、回避の体勢をとった瞬間も妙だった、私が引き金を引く前に回避しようとしていた。

 

……本当に、未来でも見ているというのか?

 

………いや、落ち着け、彼はかなり無理矢理な回避の仕方をしている。

 

故に、前傾姿勢になり過ぎてしまっている。あれでは前に倒れるだけだ。その隙を───

 

だが────そこから彼は摩訶不思議な体勢、ほぼ倒れているはずの姿勢で止まり、更にそこから走り出し、適切な角度の前傾姿勢になりながら加速して来た。

 

「………何だそれは!?」

 

「悪いが、敵に語る仕掛けは無い!!ここで倒れてもらおう!!」

 

………くっ!!だが、もう一度だ!!もう一度だけなら狙撃の体勢に移れる!!一度後退し、体勢を立て直す!!

 

……よし、ここだ。

 

「………ふぅ……」

 

そして私は、深呼吸し、今も尚迫ってくる彼に向かって────渾身の一撃を放った。

 

弾丸は着実に彼の元へと近づき、その意識を奪おうとする。……勝った!!回避体勢も取れていない!!刀を片手に構えているだけだ!!………待て、刀を片手に構えている?まさか────

 

最悪な未来を私が頭の中で描いていると────

 

 

 

 

「………悪いな。これを見切れないようなら、私はきっとどこかで死んでいた」

 

 

 

そんな意味不明な言葉と共に────彼は、走りながら銃弾を真っ二つに斬り捨てた。

 

「─────は?」

 

意味が、分からない。先程の回避はまだギリギリ納得が出来た。だが今のは────部長でも出来るのか分からない程、あり得ない事だった。

 

刀で銃弾を斬るという事は、完全に弾道が理解できていなければならない。………それを、ここまで簡単に?

 

……いや待て、落ち着け。再び退却してまた迎撃の体制を取れば────

 

「……悪いが、もう逃しはしない。ここで終わり────だ!!」

 

その言葉と共に、彼は刀を────投げて来た。

 

「────────」

 

どういう事だ?何故ここで武器を捨てたのだ?何か狙いがあるのか?………いやだが、ここで武器を捨てたのは悪手だ!次こそは必ず─────

 

私が再び敵を倒す算段を立て、刀を避けながら後退していると───背中に、壁がぶつかった。

 

「な!?しまっ─────」

 

「今だ!!やれウタハ!!!」

 

「ああ!!─────雷ちゃん!!一斉射撃!!!」

 

その言葉と共に、いつの間にか彼の背後に並んでいた大量のロボットが一斉に掃射を始め────私は、その弾丸の雨によって、撃ち抜かれた。

 

………そうか。先程感じた違和感は、もう1人いた筈だというのに、何故か単身で彼が私に向かって来たから、か………

 

恐らく、彼1人にヘイトを買わせ、そこから回避不可能な状況に持ち込んだ瞬間───背後に潜んでいた彼女の軍隊がトドメを刺す、と言った算段だったのだろう。

 

あの刀を投げたのも、理解不能な状況に追い込む事で、それ以外の情報を遮断する為。即ち、背後に壁が迫っている事に意識を向けさせない為、か。

 

………敵ながら、天晴れだった。

 

「……………見事、だ」

 

その一言を言い残し、私は意識を失うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………凄まじいの一言に尽きるね」

 

ウタハの言葉を聞きつつ、私は雷ちゃんの一斉射撃を回避するために伏せた為、その体勢から立ち上がった。

 

「いや、ウタハもよくあの状況まで音を立てずにここまでやって来てくれた。あれが無ければ、狙いに気付かれていた可能性があった」

 

……とは言っても、音を立てないだけでは確実に気付かれていた。そこで役に立ったのが────ウタハが開発していた、光学迷彩の技術だ。

 

この技術を搭載した布をウタハ本人、そして雷ちゃんに被せる事で、視認出来なくしたのだ。先程雷ちゃんと共に届いた物資というのは、これの事だ。他にも色々あったが、この状況下で使えそうなのがこれだったのだ。

 

と言っても、これは『光学迷彩下着』のプロトタイプのようなものらしく、被せても周りの背景とは完全に同化しないため、あの様に彼女の思考を逸らすことが出来なければ使い物にならなかっただろう。

 

と、先程の戦闘を振り返っていると、ウタハが称賛の声を送ってくれた。

 

「いやいや、君の刀捌きが見事だったからこそあそこまで焦ったんだと思うよ。………刀で銃弾を斬り捨てるなんて、アニメの世界だけだと思ってたんだけどね。どうやら、認識を改める必要がありそうだ」

 

「……それは素直に嬉しいな。ありがとう」

 

「こちらこそ、だ。その吸盤機能(・・・・)を見事に使いこなしていたのも流石だったよ」

 

「……ああ。これか」

 

そう、この靴には隠された機能が搭載されていた。脚力を増強するだけでなく、靴を履いた人物が倒れそうになった際に、靴の下を真空状態にする事で吸着効果を齎す事に成功していたのだ。

 

後は倒れないように無理矢理腹筋を使って体を起こし、そのまま機能をオートで解除してしまえば、訳のわからない体勢から姿勢を戻しつつ足を踏み出し、加速することができるという訳だ。

 

「………いや、自分で使っておいてだが、なかなかシュールな体勢になっていそうだな」

 

「ふふっ、そうだね。かなりシュールだったよ。思わず笑いそうになったからね、私」

 

「………まあ、いいとしよう。ウタハは彼女を確保しておいてくれ。私は────別の場所へと移動する」

 

「……そうか、ならゼハート。武運を祈っているよ」

 

「ああ、また後でな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………最悪の想定はしておくに限ると私は考えてはいたが、これ程当たってほしくは無い想定は無いな。

 

嫌な予感を感じながら、私は校舎を駆けていた。そして、鮮やかな橙色の髪を持つ少女を、見つけてしまった。

 

……全く、連戦とはな。これは本格的にまずい。

 

「ん?おいそこのお前、こんな時間に何してんだ………って、成程な。その格好から察するにお前、敵だろ?名前だけでも聞いてやるよ。名前は?」

 

「………ゼハート・ガレット。ミレニアムの2年だ」

 

「……あー、どっかで聞いたことある名前だと思ったが、そういや、ここ(ミレニアム)には唯一の男子生徒がいるとか何とかリオ(・・)が言ってたな。全く興味はなかったんだが……丁度いい。ここいらで降参してくれよ。そしたらゆっくり雑談でも出来るしな」

 

「…………もし、降参しないと私が言えば?」

 

私がそう言うと、先ほどまでとは違い、明らかに圧が増した。

 

「……へぇ?言っちゃ悪いが、アタシはお前に負ける気はしねえぞ?アタシが誰かぐらいは何となく知ってんだろ、その反応的に」

 

「ああ。知っていてそうすると、私は言っているのだ。美甘ネル」

 

「………年下だってのに、可愛げのねえ後輩だな。まあ、お前に可愛げなんて求めたことはねえし、そもそも初対面だしな。それは良い」

 

が、と言葉を区切り、敵意を増しながらこちらに銃を構えてくるネル。

 

「邪魔するって事は………掃除(・・)されても文句は言えねえって事だよな?」

 

……少しは会話で時間稼ぎができるかと思っていたが、それももう限界、一触即発の状況とはまさにこの事か。だがまあ、元よりそこまで時間稼ぎができるとは思っていない。

 

………正直、勝てる見込みはかなり薄い。先程の戦闘で体力を消耗したこともそうだが、何より………地力が違い過ぎる。Xラウンダーの力を持ってしても、その差は覆ることがないと、理解してしまっている。

 

だがここで足止めをしなければ、取り返しのつかない損害をこちらは受けることになる。それこそ敗北を導く様な、致命的な損害だ。

 

それに、退けない理由はまだある───一度己の体でどこまで彼女に抗えるか、確かめてみたいのだ。

 

少しの好奇心と使命感に駆られながら、私は銃口を宣戦布告として最強に向けた。

 

「ああ。それで構わない。尤も、私もタダで落ちる汚れではない。醜く、こびりつく汚れだ。───そう簡単に落ちるとは思わない事だな」

 

挑発する様に私が言うと、凶悪な笑みを浮かべながらこちらを睨むネル。足元を見てみると、どうやらこちらへ飛び出す準備が出来ている事が確認できた。

 

少しの痛い沈黙が場を支配し、何処からか響く銃声が虚しく響き渡る。そして………何を合図にしたかは分からないが、互いに全く同じタイミングで駆け出した。

 

「そんじゃあ、簡単に落ちてくれんなよ!!」

 

……さあ、抗うとしよう。

 

こうして、コールサイン00、約束された勝利の象徴とも謳われている少女────美甘ネルとの戦闘が、幕を開けた。

 





脚力増強シューズ

ウタハが過去に開発した靴。どんな人でも超加速ができるが、コントロールが難しい。が、ゼハートはこれを難なくクリアした。あと、絶対にコケないようにする為、地面に靴が吸着する機能もついている。



イメージはゼダスRがつけてるアレっぽい感じの奴。実は、この戦闘の時にはガンダムレギルスのプロトタイプとしてゼダスRを登場させようとしていたが、作者が考えなしに『発明したのはレギルスとシミュレーション装置だけ』とゼハートに言わせてしまっていた為、このような形で登場となった。因みに作ったのはウタハ、デザインはゼハート。みんなはちゃんと考えてキャラクターに発言させよう!お兄さんとの約束だぞ!!

とまあ、こんな感じです。流石にこれぐらいしないとC&Cと戦闘にならないと思ったので、少しゼハートの性能を盛りました。

銃弾を斬り飛ばしたのは……まあ、銃弾よりも確実に早いビームを簡単に回避したりしてますし、多分これくらいは出来るやろという事で、やらせてみました。

それでは次回、ネル戦と多分先生視点です。またお会いしましょう!

アビドス過去編の後に何書いて欲しい?

  • ミレニアム編一章(時系列的には過去編)
  • ミレニアム編二章
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