"……成程?要するに、マキ達が見つけたヤツを見て欲しいって事でいいのかな?"
ヴェリタスのみんなからの連絡を受け、事情を軽く聞きながら部室に私は向かっていた。なんでも、不可解なヤツを見つけたのだとか。
『そーそー!もしかしたら、これは世紀の大発見なんじゃないかって私思うよ!』
『流石に大袈裟すぎじゃない?』
『ハレの言う通りです。ミレニアムで発見された物の大半はガラクタですから。今回のもそれに該当するのでは?』
『もー、みんなロマンを求めようよ!それに、色んな人たちに聞いてみたけどだも見たことないって言ってたじゃん!』
『……まあ、それはそうかも』
『一理ありますね』
『でしょー!先生もそう思うよね?』
"……確かに、ロマンがあるかどうかって言われると、そうなのかも"
探検とかした時に見つけたお宝的な感じかもってことでしょ?ならロマンに感じちゃうかもね。
『ほらねー!……あ、そうじゃん!先生来るんだったらパーティーの準備でもしとこうよ!』
『良いですね。なら、私はピザでも注文しておきます』
『……これまた大袈裟な。……まあそれじゃあ先生、一旦ヴェリタスの部室まで来てね』
"あ、うん!じゃあね!"
そうハレが言葉を告げた瞬間、ホログラムは消え、私は一人になった。
……それにしても、見たことのない形状をしたモノ、か。どんな感じなんだろう。なんかハレ達曰く、言葉じゃ形容できないらしいし……気になるな。
それに、同じ形状のヤツが複数個あるみたいだしね。
……こういう時に、エンジニア部の子達がいたら何かわかる事があったりするかも。ただの勘だけど。
そう思った私は、エンジニア部のみんなの元へ行く事にした。
「………ふむ。確かに私達も一度ハレ達に『これって何だと思う?』と聞かれた事があってね。確認してみたんだが……残念ながら、私達にも何も分からなかった」
「不覚です……!!これでもマイスターを名乗っているというのに……」
「うん。私達がどれだけ確認してもまるで何も分からなかった。……一つだけ分かるのは、アレが私達の埒外にあるという事」
"………ウタハ達でもそう思うんだね"
「ああ。……だが、もう一度見てみるというのも、悪くはないかもしれないね」
「ですね!時間をおいて確認すれば見方が変わる事もあります!よければ、私達もお供させていただければ!」
「……そうだね。私もみんなの意見に賛成」
"心強いね。………ん?そういえばゼハートは?今日はいないみたいだけど"
「それについては私から説明を!なんでもここ数日は個人的な用事があるらしく、こちらに来れないとのことです!」
"……個人的な用事、か。確かにそれなら仕方ないか"
普段はこの部室に入り浸ってるイメージしかないんだけど、何かあったのかな。この前は何もなかったっぽいし……いや、きっと大丈夫だよね。
少しの不安を薙ぎ払いながら、私はヴェリタスの部室にエンジニア部のみんなと向かった。すると……
「あれっ?先生じゃん!何ならエンジニア部のみんなもいるし!」
「むむっ?……確かに先生です。これはレアエンカウントですね!」
「………久しぶり、っていう点では、そうかも?あ、お久しぶりです。先生」
"うん。久しぶり。みんなは、ヴェリタスのみんなに呼ばれてここにいるの?"
「うん!何でもよく分からないヤツ?が見たかったみたいだし、これは……いんすぷれーしょんを得られると思って来たってわけ!」
「インスピレーションね、お姉ちゃん。……とまあ、私達が来たのはそういう理由です」
ふむふむ。理由は私達と同じく、ヴェリタスのみんなに呼ばれたって事が大元なんだね。
「………こ、ここまで来るのは結構大変、でしたが、そういう訳で、私もいます」
"……ホントだ。あんまり考えてなかったけど、そういえばユズが部室以外の場所にいるのって相当珍しいよね"
「はい!先生とエンカウントする確率より低い可能性があります!」
「いや、流石にそれは言い過ぎじゃないかなー……というか、コトリちゃん達も来てたんだ」
「はい。てっきり忘れ去られたのかと思いましたが、そうです!今回は───」
「ちょっと待ったコトリ。ここで話をしていてもキリがないし、一旦部室の中に入ってみないか?」
「うん。それはそうだと思う」
"だね。一旦部室に入ってみようか"
ヒビキとウタハがそう提案したので、私達はヴェリタスの部室に入る事になった。
「お、みんな集まったねー!……ん?ウタハ先輩達って私達呼んでたっけ?」
「いや、前は何も分からなかったが、改めて見ると何かわかる事があるんじゃないかと思ってね。お邪魔だったかい?」
「いやいや!そんな事ないよ!寧ろ頼もしいって感じ」
「ですね。人手が多い方が意見交換も捗ります」
「うん。……これで全員かな。それじゃあ、早速例のブツを見せていこうと思うんだけど、大丈夫かな?」
そう言いながら、何やらスイッチを押そうとしているハレを見て、モモイは質問をした。
「……それは別に大丈夫なんだけどさ。結局どんなヤツが見つかったの?」
「あー……そういえばゲーム開発部のみんなには説明してなかったかも」
「まあ、簡潔にいうと、ロボット………なのだとは思うのですが、形状が少し、言葉にし難いモノなんですよね」
「私も結構アートには自信あるんだけど、流石になんて言うか、奇抜というかなんというかーって感じのやつなんだよね!」
ヴェリタスのみんなが思い思いの感想を口にすると、ウタハもそれに便乗し、モモイ達に提案した。
「それには私達も同意だ。まあだから、言葉にするより、まずは見たほうが早いはずさ」
「……それもそうですね。それじゃあハレ先輩。お願いします」
「りょーかい」
ウタハの台詞に納得したのか、ミドリがそう言うと共に、ハレは保管庫を開けた。
ガレージの先にあったのは、彼女達の言葉の通り、言葉にし難いモノだった。形状は球体で、所々に配線……いや、恐らく四肢に当たるであろう箇所があった。
「………うおぁ……何これ?思ってたのと違いすぎてビックリなんだけど……」
「…………私も、お姉ちゃんと同じ意見かな。こんなの見た事ない」
「ホントにそれ!なんなのこの、如何にも『敵ですよー』って感じのフォルム!明らか悪役が使うやつじゃん!」
「………た、確かにそう言われてみれば、そうかも?」
「お姉ちゃんにしては的を得た意見な気がする」
「言い過ぎじゃない!?」
顔を思わずクワッとしながらミドリに突っ込むモモイ。その一方で、ウタハ達も観察を続けていた。
「……………駄目ですね。やはりどれほど観察しても、既存のロボットとは違うのだろう、という推測しかできません」
「うん。どうやって作ったのか、何のために作ったのか、まるで分からない」
「…………二人の言う通りだ。二度見れば流石に何かわかるんじゃないかと、そう考えていたんだが……やっぱり駄目だね。見るだけでは大して何も分からない。それに確か……内部に干渉する手段もないのだろう?」
検証を頭の中で重ねながら、ウタハがハレにそう質問した。
「うん。装甲に隙間がないし、螺子みたいな固定するためのパーツも見当たらない。だから、無傷でこれに干渉するのは不可能」
「おまけに動力源もまるで分かりませんし、電源を入れるボタンのようなものもまるで見当たらない為、起動条件すらわかりません。故に、こうして皆さんに見て貰えば何かわかるかと思ったのですが……そう上手くは行かないようです」
「だねー……こういう時、部長がいたらなぁ………なんかこれオカルトっぽいし……」
「ここにいない人の事を考えても仕方ありません。副部長も今日は来ていないようですし」
「まあ、それもそっかー……なら、ピザ来るまで休憩でもする?」
「そうですね。一度休憩を挟んでから検証するとしましょう」
と、もう少しでお昼という事で、一度お昼ご飯でも食べようとみんなで提案していたその時───
「………アリス、これ見た事あります」
いつの間にか、ロボットのそばに近寄っていたアリスが、そう呟いた。
それに驚いたのか、モモイがビックリしたと顔に書いているかのような表情で質問した。
「え!?これ見たことあるのアリス!?………アリス?」
そして、それと同時に、少し困惑したようにモモイは問いかけた。
だが、アリスはその質問に返事もせず、光に集まる蛾のように、そのロボットへと足を進めていた。
………様子が、変だ。
"………アリス?"
ほんの少し悪寒を覚えた私は、アリスの側へ近寄ろうとした。が……既にアリスはそのロボットに接触していた。
次の瞬間────今まで何をすれば起動するかすら不明だったロボットに、紅い光が灯った。
「え!?普通に光付いてるじゃん!?何でー!?」
「………接触しただけで起動した……?今まで私達がどれだけのアクションをしようと何も起きなかった筈だ。……なら、まさか────」
みんなが驚愕に包まれている中、事態はさらに混沌めいてきた。
「……ん?」
「どうしたのお姉ちゃん?」
「いや、今まで起動もしなかったゲーム機が、いきなりピピピってなって………」
だが、何よりも異質なのは。
「…………………」
みんながこうして騒いでいるのにも関わらず、謎のロボットに触れてから黙り込んでいるアリスだ。明らかに普段の様子とは違う。
その姿を見た私の悪寒は更に増し、感覚のままにタブレットに手を掛けた瞬間─────全てのロボットに光が灯り。
「起動開始」
「コードネーム──AL-1S、起動完了」
「プロトコル────ATRAHASISを実行します」
アリスは淡々とした口調で、攻撃の狼煙を上げた。
◯
周囲が煙に包まれ、私は咳き込みながら状況の確認に努めた。
"………これは、一体……"
『先生!アリスさんが突然あのロボットに指示をしたかと思えば、突然爆発した、という状況です!』
"ありがとう、アロナ"
……そうだ。辛うじてみんなあのロボットの攻勢を凌いだ。でも、建物がそれに耐えきれなくて、瓦解したんだ。っていや、そんなことを考えてる場合じゃない!!
"マキ、コタマ!アリスの攻撃を妨害して!!他のみんなは周囲の敵性ロボットに対応!"
「……おっけー!!何が何だかわからないけど、取り敢えずアリスは───頭を、冷やして!!」
「はい。一度、そのようにされたほうがいいかと」
銃声が鳴り響き、アリスの武器のチャージを妨害する二人。
だが─────その妨害はまるで効かないと言わんばかりに、アリスは処理をした。
「………妨害を確認。充電の一時中止。並びに───妨害要因の、排除を実行」
アリスが選んだのは、単純で、それでいてそう簡単に対処ができないもの。それ即ち────『光の剣』による、質量攻撃だ。
200kgから繰り出される攻撃という、キヴォトス人でも対処が困難な攻撃手段をもって、アリスは瞬く間にマキ、コタマの二人を吹き飛ばした。
"マキ!!コタマ!!"
……駄目だ。さっきから止まる気配がまるでない……!!どうすれば……!!
そう私が考えた次の瞬間────
「…………ヒビキ!その角度です!!」
「オッケーコトリ………!!」
コトリ、そしてヒビキによって完璧な角度で発射されたグレネードが『光の剣』に直撃し、アリスは体勢を崩した。
「最悪……!光の剣を傷つけちゃった!」
「構わないさ、今はそれどころじゃない!!先生!!隙は作った!一度体勢を立て直そう!!」
"うん!そうしよう!!"
エンジニア部が冷静に対処をしてくれたことによって、少しの光明が見えてきた。これなら、と考えていたその時。
「いや、その必要はねえ」
謎のロボット、そしてアリスの監視網を見事に潜り抜け────ネルが、肉薄していた。
「眠ってろ、チビ」
「………!?」
そう言いながら、ネルはアリスを気絶させた。
こうして、指揮官を残った謎のロボットはネルの後に来たC&Cのみんな、そして既にこの場にいた余力があるみんなでなんとか対処することができた。
「………にしても、何があったんだよこりゃ?なんでチビがあんな……」
ネルは目を細め、崩壊したヴェリタスの部室を見てそう呟いた。
……けど、その質問に答えられる人はその瞬間、誰も居なかった。自分たちも何故こんな事が起こったのか、まるで理解ができていないからである。
ただ、一つだけ分かるのは。
"………私達にも、さっぱり分かんないんだ。なんでアリスがああなったのか………"
アリスがあの奇怪なロボットに触れた瞬間、様子がおかしくなった、という事だけである。
"………そうだ!マキ達は大丈夫!?"
「………だ、大丈夫…‥内臓飛び出るかと思ったけど………」
「……比喩抜きで私もそう感じましたね………中々の、パワーです」
瓦礫からエンジニア部のみんなの手を借りながら、なんとか抜け出すことに二人は成功していた。どうやら、怪我もそこまでしていないようだ。瓦礫から抜け出した後はピンピンしている。………良かった。
なんとかこの事態を乗り切れた、そう、思ってしまった。
「あ、ああ………そんな、モモイ………」
「先生!!お姉ちゃんが……!!」
"………モモイ!!"
切羽詰まった二人の声を聞き、頭から血を出しながら地に伏せている、モモイの姿を見るまでは。
◯
「………これはこれは、珍しい来客ですね。よもや貴方がここに来るとは、流石の私でも想定外でした」
普通なら誰も知る筈のない場所。それでいて暮らす分にはそこそこ快適な場所。一輪の白花が咲き誇る場所。……そんな場所に、一人の足音が響いた。
光が当たらず、影に隠れたその姿はやがて顕になり───彼が現れた。
「普段はAMASが監視しているそうだが、流石にこの目で確かめておきたかったのでな。故に俺が一時的に、こうして監視に来たのだ。後は…………単純に、お前に興味があっただけだ。──明星ヒマリ」
ゼハート・ガレットさん。私とリオ、両方が目に置いている数少ない人物です。
「………私に興味を持つのは当然の事ではありますが、嬉しいものですね。貴方はお世辞などはせず、ただありのままに相手を評価するタイプだと推察します。そうでしょう?」
「そう心掛けてはいるな。………それにしても、随分と人間観察が得意なようだ。以前俺に会った事があるのか?」
「いえ。ただ、貴方は入学して間もない頃から、あの
最初はただの興味でした。基本的に他者に興味を持つことなど、よほどな事がない限り無い筈のあの女が、わざわざ観察している人物とはどの様な人物なのか?そして、私も観察し始め、その理由が分かりました。
「分かった事はとてもシンプルです。……貴方はとても優秀だ、という事です。私やリオとは異なり、頭脳面だけでなく、類稀な対応力を持ち、そしてあの『ガンダムレギルス』とやらを装着した際の貴方は………それこそ、キヴォトス最強を名乗っても良いレベルです」
ネルを差し置いて尚、その称号が相応しいと思った理由はただ一つです。一時的にリオと休戦していた時に、エデン条約の際に彼が戦闘していた映像を見せてもらった事がありました。………圧巻、その一言に尽きます。戦闘に対する造詣がないこの私でさえ、その異質さは分かりました。
戦闘方法、反応速度など、戦闘訓練をまともに受けていない筈のそれでは明らかにありません。特に反応速度は異常です。確実に目視出来ていないはずの攻撃を、さぞ見たかの様に回避する。それこそ、未来でも見ているかのように。
これを異常と言わずに、なんと表現するのか、私は知りません。
「……………喜ぶべきか、それとも監視されていた事を困惑すればいいか、悩ましいな」
「喜ぶべきでしょう。何せ、この超天才清楚系病弱美少女ハッカーである私が貴方を高く評価しているのです。寧ろもっとテンションを上げて欲しいものです」
「………そうか」
「真面目に引かれるとそれはそれで傷つきますね。………所で、一つ質問しても?」
「別に構わないが、それは何だ?」
……この場所は、リオ、或いは彼女、トキぐらいしか知らなかった筈です。そして、トキはリオの従者。つまり共犯者です。なら、ここを知っている彼も………共犯者と言える。それは脅迫されているからなのか、或いは……
「ここを知っているという事は、あの女の意見に賛同したという事でしょうが……それは、心からのものなのですか?」
「ああ。心からのものだ」
淀みない答えに、私は顔を顰めてしまった。彼の答えが嘘ではないと理解してしまったからだ。それはつまり。
「……なら、貴方は──────」
「俺はアリスのヘイローを壊せるのか、そう問いかけたいのだろうな。無論、出来る。俺は……そういう人間なのだからな」
そう言い、彼は背を向け、足を進め始めた。どうやら、これ以上の会話はせず、私の視界から外れた所で監視をするつもりの様です。
…………私は、見誤ってしまったのですね。彼は優しい、それは間違いないのでしょう。ですが………
「………成程、あの女も大概ですが……貴方も、冷酷になれるお方なのですね」
………流石にまずいですね。もし、一度でもアリスが『兵器』だと見なされてしまえば………私も、何とかしてこの場から抜け出さなくては。
既に私の視界から消え去った彼を警戒しながらも、私はこの場を脱出する手筈を整えるのでした。
「もしもし、ああ、俺だ。要件は…………そうか。なら、作戦は決定事項になった、というわけか」
「なら私情を抜きにし、俺は、俺の責務を全うするとしよう」
決戦の日は、近い。
さて、そろそろ楽しみが近づいてきたので少しワクワクしてます。早くゼハートみんなの前に出したいなぁ……
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それでは、また次回お会いしましょう!
アビドス過去編の後に何書いて欲しい?
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ミレニアム編一章(時系列的には過去編)
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ミレニアム編二章