楽園に至るには   作:NTT.T

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休日なので、二連続行動しました。

取り敢えず、これでエデン条約編三章は完結です。

四章を書き切れば……ゼハートの過去とか、ミレニアム編とかやる感じですね。

一応最終編もちょっとは考えたので、多分書くと思います。いつになるかマジで分かりませんが……

それでは、どうぞ!



聖戦

 

「………どうやら、俺が出るまでもなかったようだな」

 

誰にも見つからぬよう、万が一の事態に備えて上空で待機していたが……まさか、こんな事が起こるとはな……

 

曇り空から一転して、少女達の門出を祝福するかのような青空を見て、俺はそう思わざるを得なかった。

 

いきなり晴天になった時は、流石に俺がいる場所がバレるかと思ったが……杞憂で何よりだ。

 

それにしても、だ。

 

「………ヒフミ。お前のそれは、ただの綺麗事だ」

 

そう、現実はそこまで甘くはない。甘くないだけではないのも確かだが、皆がそんな終わり(ハッピーエンド)を享受出来るというわけでもないのだ。

 

世界は平等などではない。どこまで行こうと差が生まれ、人生の終着点は千差万別だ。誰もが幸せに終われるというわけではない。

 

だが───この世界には先生がいて、俺がいる。

 

「生徒がやりたい事をサポートするのが、私のすべき事だから……だとか何とか、そのような事を言っているのが容易に想像できる」

 

俺が見て来た中でも屈指の甘さを持つのが先生という男だ。キオ・アスノに負けず劣らずといったところだな。

 

……まあ、それを是としている俺も、大概甘いのかもしれんが。

 

「………救世主、か」

 

存外、ヒフミにはその素質があるのかもしれんな。誰かに寄り添い、共に立ち、導く存在………本人はそんな事を一切考えていないのだろうがな。

 

「俺は、とんでもない奴と友達になったのかもしれんな」

 

俺はそう思い、上空から彼女達を見守っていた。

 

もはやETOは統制を失っている。アリウスが敗北するのも時間の問題というものだろう。

 

なら、彼女達の勝負の決着に俺が割り込むというのは流石に野暮という物だ。

 

ぶつかり合う事で分かる事も、確かにあるのだからな。

 

……だが、妙な胸騒ぎがする。

 

これだけで終わる訳がないと、俺のXラウンダーとしての直感がそう囁いて来た。

 

そもそもだ。アリウスの生徒はどこからやって来た(・・・・・・・・・)のだ?

 

現状、まだそれが明らかになっていないのはどこか薄ら寒さすら感じる。

 

それに、戦場を見渡せばわかる事だが───秤アツコがいない。

 

先生などから聞いた特徴に合致する生徒がいないのだ。既に最終局面を迎えている、この総力戦とも言える場面で出てこないなど有り得るのか……?

 

いや、或いは深刻なダメージを負ったからこそ戦場に出てこないという可能性はあるが……

 

と、俺が考え事をしていると、事態が動いたようだ。

 

「……………あれは、いや……」

 

古聖堂に逃げ込む錠前サオリを確認した。そして、その後を先生、白洲アズサが追跡していたのも確認した。

 

……古聖堂。第一回公会議の舞台となった場所。今回エデン条約がここで締結される事になったのは、その再現と聞いたが……

 

まさか、何か隠されているのか?アリウスにとって秘密兵器(・・・・)とも言える存在が。

 

隠されているとするなら………地下か。

 

あの場所の面積にそれほどの物が眠っているとは考え難い。つまり、彼女達は地下へ向かったのだろう。

 

……俺も行くとしようか。

 

そうして、俺は古聖堂へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は古聖堂へ向かい、地下へと通じる道を発見した。

 

少し手こずってしまったが………

 

「………どうやら、これがそうらしいな」

 

恐らく、先生達はこの道を通って地下まで行ったのだろう。急ぐとするか。

 

先に進むと、鍾乳洞のような構造をしている洞窟へ出た。

 

そして、先生達や錠前サオリ達を確認した瞬間───突如、地震のような揺れが発生した。

 

俺は即座に先生達の側へ駆け寄り、状況の把握に努めた。

 

「先生!!これはどういう状況だ!?」

 

"……!!ゼハート!!来てくれたんだね!!"

 

「ああ、事態が動いたのを感じたからな。万が一に備え、戦力として活躍する為に戦闘を避けていたが………これは一体……」

 

「………お前は……」

 

背後から錠前サオリが俺に話しかけて来た。かなりダメージを負っている。恐らく、ここで白洲アズサと決闘でもしたのだろう。

 

現に、白洲アズサは気を失っているのがその証拠だ。

 

また、錠前サオリの近くにはマスクを被った生徒も確認できた。……恐らく、彼女が秤アツコだろう。

 

周囲の状況を背後を見て判断し、そして前へと視線を戻す。

 

「すまない。今は対話をする余裕がないのでな。俺も、お前達と話がしたかったのだが………それは後にするとしよう」

 

そして、何が起こるか待ち構えていると───

 

"……どうやら、反則みたいだね"

 

そう呟いた先生。

 

「………何をする気だ、先生?」

 

"ん?いや、こっちも切り札(・・・)を切るしかないかなって思ってさ"

 

その言葉と共にポケットから取り出したのは───1枚のカード。

 

そして、カードが光り輝き始め───

 

 

 

 

 

 

「先生、やめておけ。それは使うべき物ではない」

 

 

 

 

 

 

俺は先生の腕を傷つけない様に掴み、制止した。

 

"………はあ、やっぱりバレちゃうか"

 

肩をすくめ、そういう先生。

 

カードの光も弱まっていき、やがて消えた。

 

「いや、ソレが何なのかは把握出来ていないが、使えば間違いなく良くない事が起きる、それだけは確信できた。だから止めたのだ」

 

"………でも、どうする気?このままじゃ───"

 

「何を言っている先生?ここには───()がいる」

 

"………まさか、ゼハート一人だけでやるつもり?"

 

「その通りだ」

 

"無茶だ!!一人で何もかもやろうとするのは間違ってる!!それに、ゼハートは私の生徒だ!!そんな事を容認するわけには───"

 

「だが、勘違いするな先生。───指揮は、貴方に任せる」

 

"…………私に?"

 

「ああ、先生の指揮能力、そして私のレギルスの力があればこの状況を打破できるはずだ」

 

それに───

 

「まさか……先生ともあろう者が、生徒の申し出を断るのか?」

 

"………参ったね。それを言われると何も言い返せないや"

 

そう言い、ため息をつく先生。

 

"分かった、良いよ。その申し出、受けて立った!!"

 

ああ、それで良い。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間。私達の先には───得体の知れない、バケモノが佇んでいた。

 

腕が四本あり、うち二本は祈るように指を重ね、頭上にはヘイローのような物を浮かし、司祭のような服を見に纏った異形。そうとしか形容できないナニカが、そこにはいた。

 

そして───

 

 

 

 

 

『⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

何かに例えるのすら烏滸がましい絶叫を上げ、こちらに敵意を見せて来た。

 

「先生!私を頼むぞ!!!」

 

"うん!分かった!無茶したらダメだよ!!!!"

 

そして、私は地面から飛び立ち、眼前の敵を見据える。

 

………不気味な敵だな。まるで神かのようだ。

 

なら、教えてやるとしよう。

 

「人は、神になどなれず───神を創る事も出来はしないのだと!!!」

 

そして私は即座にレギルスライフルで目の前の敵に照準を定めた。

 

狙いは───まず武器!!!

 

そして、両手で持っている杖のような物を狙おうとした次の瞬間───直感が私を襲った。

 

"ゼハート!!一度下がって!!!"

 

「っ!!!」

 

私の直感と先生の言葉を信じ、下がった次の瞬間───目の前に禍々しい、赤黒い光が立ち昇った。

 

………これは、喰らうと流石にまずいな。

 

そして、立て続けに足元が光るのを視認した私は再び回避体制を取った。

 

今度は神々しい光が私の横から立ち昇った。

 

「……成程。理解はできた」

 

奴が左手に持つ杖のような物を地面に突いた直後に赤黒い光、そして右手なら神々しい光が立ち上るという事だろう。

 

考察をしていると────

 

 

『─────────────』

 

 

先程の声とは違い、まるで祈るかのような響きをした声を、目の前の敵は発した。

 

間も無くして───奴の足元から、ユスティナ生徒会の複製(ミネシス)が出て来た。

 

「なっ…………!?」

 

馬鹿な……!!兵力の生成すら可能だというのか!?

 

不味い!!先生が……!!

 

そう言い、一度降りようとするが────

 

"ゼハート!!私の事はいい!!だから、ソイツを──ぶっ倒して!!"

 

「私が先生の事は守る!!だから、貴方はその敵を───!!」

 

先生の前には、いつの間にか気を失っていた筈の白洲アズサが立っていた。そして、その実力でユスティナ生徒会の複製(ミネシス)を撃破していた。

 

「……………!!感謝する!!」

 

なら、私は───目の前の敵に専念するとしよう。

 

そして、全力で目の前の敵に近づき、ビームサーベルでその首を落とそうとするが────

 

「………中々の反応速度だな……!!」

 

右手に持つ杖でそれを防がれた。どうやら出力を上げても切り飛ばす事は難しいらしいな………いや待て、不味い!?

 

左手に持つ杖を突くのが見えた瞬間───私の視界は、赤黒い光に包まれた。

 

「がっ………!?」

 

そして、私は天井に叩きつけられ、その衝撃で頭が眩みそうになった。

 

………クソッ……!!今のでレギルスにもかなりの損傷が……コレは、後数度食らえば私は戦えなくなるだろうな……

 

即座に体制を立て直し、私は考える。

 

どうすればいい……奴の反応速度を掻い潜るには、一体どうすれば────

 

"ゼハート!!"

 

「っ!?」

 

"ごめん!!頼っといてなんだけど、見てる感じ、ソイツは一人じゃ勝てない!!"

 

"私に策がある!!だから──ソイツの武器を、何とか使えないようにするか、もしくは体勢を崩して!!そこからは───私達(・・)で決める!!"

 

「……了解した!!」

 

そして、私は即座に攻撃を仕掛けた。

 

「ハアァァァァ!!!!!!」

 

光の柱で攻撃されないようにするにはどうすればいいのか───今思えば単純だった。

 

その場に留まらなければいいのだ。

 

私はビームサーベルで斬りかかり、反応されれば即座に離脱、そのままの流れで敵にビームを照射する事で狙いを定めさせないようにした。

 

だが、相手は即座に光の柱でそれを防御した。………クソッ、攻撃がまるで通らない。

 

ジリ貧だな。

 

……恐らくコレを続ければ、エネルギーの消耗が激しすぎるせいで、あと数分もすれば私は戦えなくなる。

 

なら、一気に決めるっ!!!!!

 

そして、私は天井を地面とし、蹴り上げることで加速しながら敵に到達し、幾度目かの剣戟を繰り広げた。

 

そして────未来を、視る。

 

「─────!!僅かだが、掴んだ!!レギルスの力ッ!!」

 

私は完全に敵の攻撃を見切り、懐に潜り込むことに成功。

 

そして────

 

「ウオオオオオオオォォォ!!!!!」

 

ビームサーベルで腹を刻み、深手を負わせる事が出来た。

 

だが────

 

 

『───────────!!!!』

 

 

苦痛にその身を委ねたのか、敵はその巨大な体躯で、その腕で私を押し潰そうとした。

 

だが、それも───視えている!!!

 

横に薙ぐ腕、そして杖を躱し切り、敵の頭上に出た。

 

隙を晒したなっ!!!!

 

私は即座にその隙に対応し────

 

 

 

 

 

 

「──堕ちろおおぉぉぉぉ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

その頭を───頭上から奴の頭を蹴り付けた!!

 

 

『───⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎!!!!』

 

 

余りの衝撃に、敵は地面に背を付けようとする勢いで倒れ始めた。

 

やるなら───ここしかないだろう!!!

 

「先生!!!やれええええっっ!!!!!」

 

"────うん!!アズサ、お願い!!!!!"

 

先生の側に佇んでいた少女は、万感の想いを込めて───

 

 

 

 

 

 

「──コレで、終わりだ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

多量の神秘が籠った決死の弾丸で、その頭を、撃ち抜いた。

 

 

 

 

『──────────…………』

 

 

 

間も無くして、敵、そしてユスティナ生徒会は───まるで何も無かったかのように、その姿を消した。

 

「…………」

 

終わり、か………

 

敵が消滅したのを確認した俺は、先生の元へ降り立った。

 

"ゼハートっ!!体は大丈夫!?攻撃喰らってたけど………!"

 

俺の側に駆け寄る先生。………流石に心配をかけすぎたか。

 

「ああ。この程度、造作も……とは、流石に言えないな」

 

少しよろけながら、俺はそう言った。

 

……やはり、レギルスがあれど、元々俺は他のキヴォトス人と比べるとどうしても肉体強度が低いからな。過信をしすぎないようにするしかない、か。

 

Xラウンダーの力も、昔と比べればかなり扱える様になっている。あとは、ビットの完成を………後一歩なのだ。

 

俺がそう考え込んでいると、先生の横にいた少女……白洲アズサが、こちらに視線を向けて来た。

 

「……ありがとう。貴方がいなかったら、あの敵……『教義』は止められなかった。本当に感謝してる」

 

俺に頭を下げながら感謝の意を伝えてくる少女。

 

「いや、こちらも決め手に欠けていたからな。見事な一撃だった」

 

"…………でも、なんかあのままだったら勢いで勝てそうな気もしたよ?"

 

疑問を隠しきれない様子で先生は俺にそう尋ねて来た。

 

「ああ。それなんだが………実は、最後の一撃を決めた後にエネルギーがほぼ底を尽きてな。あのまま戦闘を続けていれば、負けていたのは間違いなく俺だった」

 

"え!?そうだったの!?…………危ないなぁ全く………"

 

まるで駄目な子を見るかのような目で俺を見てくる先生。

 

「いや待て。コレでも一応ミレニアムに帰る為のエネルギーはギリギリあるのだ。だからそんな目で俺を見るな!」

 

"えーホントかなぁ………まあ良いや。どうせ何言っても帰ってくる言葉は同じだろうしね"

 

何故そこまで俺への信頼がないのだ……

 

"………いや待って!?サオリ達は!?"

 

その言葉に反応し、即座に周囲を見渡すが……彼女達は、どこにも居なかった。

 

「……どうやら、逃げられてしまった様だな」

 

"………そう、みたいだね。ゆっくり話がしたかったんだけど……流石に私も無理し過ぎたし、回復してからまた探そう。アズサも、良かったら手伝ってくれない?"

 

「………!!ああ、是非協力させてくれ!!」

 

……相変わらず、人に好かれるのが得意な奴だな。と俺は思った。

 

そして、少し会話をしながら俺達は外に出た。

 

……流石に、そろそろ限界だな。

 

「では、ここで俺は退散するとしよう」

 

俺がそう言うと、先生は『ガーン!』と擬音がついたかの様にひどく落ち込んだ。

 

"えー?折角そのレギルスについて詳しく聞こうと思ってたのに……だってそれ滅茶苦茶カッコいいじゃん!その目立つ赤色(・・)もそうだけど、この……なんとも言えない悪役顔!!ダークヒーローみたいじゃん!!"

 

…相変わらずの熱量だな。

 

「だが、現状レギルスはミレニアムでしか装着、脱着が出来ないのだ」

 

勿論、強制的に脱着する事も可能ではあるが……その場合、持ち運びが非常に困難になる。

 

……また今度、回収用のドローンでも作るとするか。

 

やる事を考えながら、俺は先生を宥めた。

 

「だから先生。それはまた後日ということにさせてくれ」

 

"………はーい。でも、次は絶対解説してもらうからね!!"

 

……もし先生が我々が居た世界にいれば、果たしてどんな反応をしたのだろうな。

 

つまらないもしもを想起した次の瞬間、俺はやらねばならない事がある事に気がついた。

 

………そうだ。忘れるところだったな。

 

白洲アズサの方を向き、言葉を発する。

 

「突然だが、自己紹介をさせてもらう。俺の名前はゼハート・ガレット。ミレニアムサイエンススクール所属の二年だ。白洲アズサ、良ければだが……また今度、アリウスについて聞かせてくれないか?」

 

「……それは、どうして?」

 

決まっている。

 

「知りたいからだ。他者に歩み寄るためには、まず知ることから始めなければならない。そう俺は学んだ。俺は……彼女達の事を知りたい。そして、叶うのなら───いや、これは傲慢か」

 

叶うのなら、憎悪から救われてほしいなどと……それが如何に難しいか、俺は知っている。

 

何故なら、それが中々叶わなかったからこそ、俺達は戦争を何度も繰り返していたのだから。

 

だが、いつかはそうなって欲しい物だ。

 

俺はそう思わざるを得なかった。

 

「………うん、分かった。それじゃあ、また。ゼハート」

 

俺を見てそう言うアズサ。

 

「ああ。また会おう」

 

その言葉を聞き、俺はトリニティを後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……流石、先生と言ったところか」

 

あの『カード』の煌めきを見る事が叶わなかったのは残念だな。

 

いずれ、再び会う事があるのなら、是非とも拝見させて欲しいものだ。

 

それにしても───

 

「………成程。彼がゼハート・ガレットか」

 

まさか、未完成とは言え私の作品をほぼ単騎で撃破するとは………素晴らしい!!

 

黒服(・・)から聞かされてはいたが、よもやあそこまでとは………

 

「……それに、彼が纏っていたあの鎧……アレもまた見事だった」

 

機械でありながら、それでいて何処か生物を感じさせる様な曲線美……更に、性能すら凄まじいという……完敗だな。

 

「やはり、私もまだまだと言ったところか」

 

これでも、人一倍芸術とは向き合ったつもりなのだがな……精進せねばなるまい。

 

私が今回披露した作品も、結局は未完の物だが……もし完成していれば、アレに勝つことは果たして出来たのか……本来なら勝敗に興味は無いが、少々気になるところだ。

 

それにしても───

 

「私が今回披露した作品と同時並行で制作していた、あの作品(・・・・)に欠けている物が分かったぞ………好敵手が必要なのだ」

 

単一で完成するのではなく、互いにその身をぶつけ、壊れていく様を見るのもまた、趣き深いという物。

 

その作品は、私がこれまで制作して来た物とは少し、いやかなりジャンルが違うが、これを創り出す事で新たな境地に至れる可能性はある。

 

……いや待て。私とした事が、完全に忘れていた。

 

「名称は如何にしようか………」

 

作品を展示する上で大事な物の一つは題名だろう。それを見る事で人は『この作品に込められた意味はなんなのだろうか』と考察するのだ。

 

どの様な意味を込めるか………

 

………いや、折角だ。たまには何も考えずに、己の内から出た物にしてみるというのも、良いのかも知れぬな。

 

そう、だな。……ならば───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シド(・・)………響きが良いな。名称はこれで行くとしよう」

 

さて、ならば最終調整に取り掛かるとしよう。そして──先生に、ゼハート・ガレットに、私の作品を見せるのだ。

 

あわよくば、感想でも聞かせて欲しいものだな。

 

そう言い残し、怪人はその姿を人知れず消した。

 





はい、という事で、この作品ではシドを出していこうと思います。

とは言え、流石に完全再現どころか、かなり型落ちになると思いますが……マエストロ先生の手腕にご期待ください!

それでは、また次回お会いしましょう!
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