魔法少女のマスコットになったと思ったら、魔法少年(女装)だった話 作:らくべえ09
あの時――
自分は確かに死んだ。
そういう実感、感触はあった。
満足した死ではなかった。
未練も不満もあったし、屈辱も恨みをあった。
かといって、泣き喚くような類のものではない。
どこかで、
(ああ、これで終わりか)
と、何となく理解もした。
してしまったというべきなのか。
血液と共に、生命が流れ出して消えていく感覚。
死にたいなどとは思ったこともない。
死ぬくらいなら、相手を、誰かを殺してやる。
そう思っていたし、実践もしてきた。
だが、現実は無情に俺に死を与えてきた。
意識がボンヤリとした、底なしの闇に落ちていく。
寒さと孤独感。
心地良くはない。
しかし、恐怖もなかった。
やがてその意識も消えて――
妙なことに、死んだと意識したのはその意識が戻った時だった。
いや意識などあったのか?
暗闇の中に、誰かがいる。
死神か、それとも冥府の裁判官なのか。
詩人的なことを思ったが、いずれでもなかった。
何となく、年の近い同性だと理解する。
つまり、相手は少年らしい。
――誰だ?
警戒しながら手を伸ばす。
相手は無反応だ。
膝を抱えて、顔を膝にうずめている。
まるで死にかけの野良犬みたいだった。
――お前は誰だ?
もう一度問いかける。
その直後だった。
強烈な光と、肉の重みを感じた。
顔を上げる。
知らない光景だ。
いや、知らないはずなのに知っている。
頭の奥から、様々な知識、『常識』が流れ込んできた。
『最適化』している。
そんな感覚だろうか。
気づけば、俺は『溝出 間宮』となっていた。
・ ・ ・
「……ううううむ」
目を覚ますと、いつも通り? のワイの部屋やった。
昨夜のアレって……。
やっぱり夢か?
そんなことを思いながら、ちょっと鏡を見ている。
うーん。
いつもと変わらんブサイクやん。
けど、高校生に戻った……ちゅう現状は変わっていない。
もしかして。
オッサンになってた記憶が夢かもしれんで。
まあ、それはええとして。
昨夜のことがホンマなら、マスコットになれるはずやん?
ちょっと試してみると、
「うわっ」
わいは、小さいブサイクなタヌキっぽいぬいぐるみたいになった。
……夢やないのん?
驚きながら人間に戻ると、スマホにメッセージが来てる。
誰やろと思って確認したらやね……。
<溝出――今日放課後に会おう。場所は***>
……あいつかい。
そういや別れる時に連絡席交換したわ。
待ち合わせ場所は、うん、わりと近くのファミレスやな。
で……。
放課後。
こうやって戻ってはみたけど……。
高校生活もあんまり代わり映えせんなあ。
彼女もおらんし、できる気配なし。
まあ、
変わってることと言えば。
わいの生活ちゅうより、世の中?
技術的なもんが全体的に上がっとる感じがするで。
とはいえ、わいの直接的な生活にはさほど影響しとらんけど……。
約束しとったフェミレスに行ってみると。
溝出は、すぐに見つかったんやが。
「……」
わいは絶句してもうた。
溝出のヤツは、テーブルに並んだ料理を一人食っとる。
いや、それだけならどうでもええんやが。
問題はその量や。
カレーライスやら、サラダやら、ハンバーグステーキやら。
何人前かもわからんような料理を一人もくもくと食事中。
がっついとる感じはない。
むしろ、フェミレスに似合わんような優雅さ? 上品さ?
とにかく、こう……気品みたいなもんがあった。
せやけど、テーブルの料理はどんどんなくなっていく。
「来たか」
溝出は食べる手を止めてこっちを見る。
「あ、ああ。うん」
わいは脱力したような気分で溝出の前に座る。
「もう少し待て。まだ食実中だ」
「いやそら、見たらわかるけど……」
わいも一応ドリンクバーを頼んだ。
緊張でちょっと喉も渇いてるしな?
カルピスとコーラを混ぜ合わせたヤツを飲みながら――
自然と、溝出の観察することになった。
しっかしなあ……。
どういう胃袋してるんや、こいつ?
わいが見ただけでも軽く10人前は食ってるんと違うか?
「よう~~食うなあ~~~……」
「ああ」
やっと食事を終えたらしい溝出は、水を飲みながら言った。
「そんなに食って体壊さんの?」
「いいや? むしろまだまだ必要だ。体づくりのためにな」
「筋トレでもしてるんか? せやけども……」
こいつの食ってたもんはあんまりそういう感じに思えんかった。
そういうのは確か……。
卵の白身だけとか、ゆでたブロッコリーとか、鶏のササミとかやないのん?
いや、よう知らんけど。
「少し違うが……まあ似たようなものだ」
「ふーん?」
そこで、わいは気づいた。
溝出のヤツ、店の中でだいぶ注目集めとるわ。
ムチャクチャな量の食事もそうやけど。
それをどけても……こう、マンガみたいちゅうか。
非現実的な美少年やからのう。
「えーと、それで今日は?」
「もうすぐわかる」
「ほえ?」
わいのスマホが鳴ったのは、溝出が意味深に笑った時や。
<MAGI-ASSOCIATION――10分後に**のコンビニ前>
まぎ……? あそしえーしょん?
「じゃ、いくか」
「ど、どこへ?」
「行けばわかる。それと、お前のドリンクバーは俺のおごりだ」
言いながら、わいに千円札を渡してきよった。
気前がええというんかなあ?
まあ、そういうわけで……。
わいらは男ふたりづれでその場所に行った。
そしたら?
……なんやろ?
うまくは言えんけど、こう……なんか妙な違和感がある。
空気っちゅうか、雰囲気がどっかおかしいっちゅうか。
「あそこだ。行くぞ」
溝出が指さしたところには、光の輪っか? みたいなもんが浮かんでた。
光ってるいうても、ぼんやりとしてて頼りない。
そう思ってる間にも溝出はズンズン輪っかにほうへ。
しゃーないので、わいもついていくと――
「あれ?」
気づいたら、真っ暗な道に出てた。
いや、この場所見おぼえあるで。
確か昨日魔法協会へ行った時に通った場所や。
ふーん。
多分これって転移魔法かなんかやな。
どっからでも、あの輪っかに入れば魔法協会へ行けるんやで。
これからどないなるんや?