魔法少女のマスコットになったと思ったら、魔法少年(女装)だった話   作:らくべえ09

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05、わりと地味なあ?

 

 

 

 解離性同一性障害。

 簡単に調べたところ、こういう言葉が出てきた。

 

 

 確かに、今の自分には的確かもしれない。

 『前世』で生きて、経験したことはハッキリと記憶にある。

 しかし、これも病人が頭の中で作り上げた妄想かもしれない。

 

 自分の意識などが、単なる虚構で造りものだという可能性か。

 良い気分はしない。

 だが、恐れるほどではないか。

 まして絶望など程遠いものだった。

 

 手のひらに魔力を集中し、イメージしてみる。

 すぐに、圧縮された魔力の玉が浮かんでくる。

 不安定ではあるが、『前世同様』に使いこなせる。

 これが幻覚でなければ、だが。

 

 〝俺〟の人格、それとも魂か。

 それが憑依したから魔法が使えるのか?

 確かに魔法と魂は切っても切れないものだ。

 脳ですら端末の一部に過ぎないとも言う。

 

 近くにあった空き缶を魔力で浮かせてみる。

 拳を握れば、一気に圧縮して潰れた。

 操作は問題ない。

 だが、肉体は飢えていた。

 

 魂に肉体へ最適化しようとしている。

 そのためには、燃料がいる。

 つまりカロリーだ。

 痩せたこの体では、それが圧倒的に足りない。

 さっき飲んだコーラがなければ、もっと足りなかっただろう。

 

 幸い、この世界には無駄にカロリーの高い食物であふれている。

 安くて太りやすいモノには事欠かない。

 補給は容易だ。

 

 

 ・  ・  ・

 

 

「あれ?」

 

 出たところは、魔法協会やなかった。

 どっかの、廃ビル? みたいな……。

 暗いし、汚いし、夜には幽霊でも出てきそうな雰囲気やで。

 

「お待ちしてました」

 

 そこにおったのは、スーツ姿の切れ者っぽい男。

 例えるなら、せやな。

 大手企業勤務のエリートサラリーマンちゅう感じやのう。

 

「あんたは?」

 

 溝出が聞くと、

 

「魔協の現場担当をしている、日野です」

 

 男はぺこりと一礼。

 

「さっそくですが、あなたたちには魔法少女の仕事をしていただきます」

 

「……俺は【少女】じゃあないがな?」

 

 溝出は、背筋の冷たくなりそうな、怖い顔で笑いよる。

 

「え、えーと、モンスターの退治とか、捕獲? でしたか?」

 

 わいは昨日のことを思い出しながら言った。

 

「はい、その通りです。溝出くんの魔力は……未知数、といいますか。ともかく、まだ新人ということで相応の仕事をお願いすることに」

 

「具体的には?」

 

 溝出が腕を組んだ姿勢で、冷たい目で言いよった。

 

「――それは、あなたがたならもうおわかりだと思いますが」

 

 何意味深なこと言うてるのん、この人……。

 わいが首を傾げそうになった時や。

 

「……?」

 

 妙な違和感? いや、臭い? いや、なんやろう……肌とかにピリピリくる感覚やった。

 

「なんかおる……。ん? いや、おるっちゅうか、これ……」

 

 言葉に困ってると、

 

「なるほど。わかった」

 

 溝出がニヤリと笑って、片腕をあげる。

 と、思った途端や。

 黒い蛇みたいなもんが、とにかくえらいたくさん出てきて、溝出の体中に巻き付いて。

 

「え? え? え?!」

 

 驚いてると、溝出は例の【魔法少女】姿に……。

 

「……ポーズとか、アイテムとか決め台詞とか、そういうのないんやね?」

 

「俺の場合はな。他は知らん」

 

 てなことをやってるうちにや――

 周りに、なんか赤黒い(もや)みたいなもんがあちこちわいてきたで……?

 

 うむむ。

 

 この感じは、そうや!

 昨日の、魔法少女関係にかかわることになったきっかけの――

 

 赤黒い気持ちの悪い空間やで!

 

 むう?

 な、なんや? 靄の中にまたおかしな感じが……。

 そうか! きっとあの変な異空間につながる入口があるんやな!?

 

「いくぞ。お前もさっさと変われ」

 

 横に立った溝出に、肩をつかまれたで。

 せやけど、変わるって。

 

 ……おおう、そうか!

 

 わいは腹に力を込めて、意識を集中して、変身のイメージをしてみた。

 

 そしたら。

 体がボンヤリ光って、縮んで……。

 あのマスコット姿になった!

 

「――あなたがたの仕事は」

 

「言わんでもいい。こっちに入り込もうとする異界のモノを駆除するんだろ」

 

 溝出は、日野さんの言葉をさえぎって歩き出した。

 

「そうです。異界とこちらとつなぐ空間……我々は魔空間と呼んでいますが、そこからやってくるモンスターが相手です。可能なら、捕獲を優先してください。今回の対象は、危険度が低いですから」

 

「ああ、そういえばそんなことも言われたな。つかまえて、どうする? 動物園にでも売るのか? それとも、解剖して標本か?」

 

「まあ……似たようなものです。異界のモンスターはいまだに未知の存在ですから」

 

 

 そしてや。

 わいらは魔空間に突入したで!

 

 

「な、なんじゃこりゃ……」

 

 そこにおったのは、

 

「す、スライムか、これ……?」

 

 灰色っぽい、ブヨブヨとしたモンスターやった。

 しかも、たくさん……10匹近くはおる。

 

「……鬱陶しい」

 

 溝出は不愉快そうに言って、手からビームを連射した。

 

 バババババババッ!!

 

 まさに、あっという間や。

 スライム? は1匹を残してみーんな焼き払われた。

 あれ? わいの出番は?

 

「――おい。捕獲するのにお前の協力がいる」

 

「え?」

 

「昨日やったろう。装備になれ」

 

 おお、そういえば無意識やけどやったなあ!

 うまくいくか不安やったが……。

 

 すんなりいけたで。

 

 ガントレットになったわいを装着した手。

 溝出はそれを残った多分スライム? に向けた。

 

 ん? んんん???

 

 なんか頭の中に聞こえるような。

 声と顔とちゅうよりも、こう電波でも感じるような?

 

 言葉にしてみるとやな――

 

 【捕獲】

 

 【(おり)

 

 そしたらや。

 スライムの上に緑に光る魔法陣が浮かんだ。

 で、スライムはアクリルみたいな半透明の箱に閉じ込められたで。

 その箱も緑色や。

 

「片づいた」

 

 溝出はちょっと首をななめにして、つまらなそうに言った。

 

「え、もう終わり?」

 

「新人用の簡単な仕事なんだろ」

 

「そういうもんか」

 

 うーん……。

 

 なんちゅうか、けっこう地味なもんやな魔法少女って。

 安全とも言えるか?

 まあ問題なく終わったんなら、ええことや。

 

 

 さて、それで。

 魔空間から箱詰めスライムを持って帰ると、

 

「……早い、ですね」

 

 日野さんはちょっと驚いた顔で言った。

 やれやれ。

 これで初日の仕事は終わりかなあ。

 

 

 と、思ってたんやが。

 

 

 

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