描いてる作品が行き詰まったので、書きました。
──燃えている。
轟々と村を焼き尽くしていく。家屋は灰に、人は炭化し性別の区別もつかない状態。
「ああ...また、死ぬのか...」
――転生して12年。まだ、生きたかった。
最後に残っていた少年も死に、村には生者がいなくなる。そして...少年は目を覚ます。
――見知らぬこの世のものとは思えない美しい川の前で。
...ここは、俺は死んだはず。ならあの川は、それに、白い玉のようなものが浮いている...それが川を渡っているし、もしかして...ここは俗に言う黄泉の国なのか。じゃあ、あの玉は魂か?まあ、いいか――俺も、川を渡ろう。
魂と共に川を渡る。渡り切ると、目の前には黒い炎のような者が揺らいでいた。それを見た俺は...
──美しいと思った。
その炎に触れる。
「がぁ...!」
痛い!痛い!さっきまで、炎で焼かれていたのに、それ以上の痛みを感じる...!同じ炎のはずなのにまるで、
あわや、このまま燃やしつくされるかと思った、その瞬間...
──これ、童。そちらに行くにはちと早いぞ...
「は!」
謎の声がし、目が覚める。するとそこには...到底人とは思えぬ美貌と、何故か安心する気配をした女性がいた。
「ぬ、起きたか...危うかったの、後少しで童の魂は永劫消え去るところじゃった」
「ここ...は。それに...あなたは」
「ここは、童のいた村から少し離れた場所にある平屋じゃよ。わしが天界から降りてすぐ、目の前に炎が上がっておってな。生き残りがおらぬかと探しておったところ、童を見つけたんじゃ」
炎...そうだ!
「む、村の人達は!いったいどうなっ...!っ」
「これ、安静にせよ...
火傷が治ってる...?そんなはずは...確かに俺は、焼かれて死んだはず...
「何がどうなって...」
「うむ、それをわしが説明しよう。先ず、結論から言うには、わしが見た限り、童以外全滅じゃ」
「そう...か...」
父さん、母さん、三月...なんで俺だけ、生きて...
「そして、童が生きている理由じゃが...童が一度死んでいるからじゃな」
俺が一度死んでるから...?
「た、確かに...俺は一度死んでる。どうして、貴女が知ってるかは知らないが...なぜ死んでるから死んでないんだ」
「それは別の世界で死んでおるからじゃよ。童は何の因果か、元の世界の輪廻から外れ、この世界に来たんじゃ」
ここで、まさかの転生の理由が明らかになった。
「俺の転生の理由はそうだったのか...」
「じゃから童の魂はこちらの世界のものではない、故に黄泉が童を拒絶したんじゃ、まったく知らぬ魂が来た故な...」
「ほれ、黒い炎があったじゃろ」そう言われて、ああ、あの炎は俺を追い出すためのものだったのかと思った。
「俺が生きている理由は、分かった...じゃあ、それを知っているあなたは...」
「わしか?わしは...神じゃ」
神、そう言えばミズキが言ってた。『ねえねえ!オラリオには神様がたくさんいるんだって!』『神様ぁー?』『それで、それでね!神の眷属になると、いっぱい!強くなれるんだって!』『はーん。そっか』『ねえ、いつか一緒にオラリオに行って眷属にしてもらおう!』
「神は、オラリオってところに居るはずじゃ...」
「まあ、だいたいはそうじゃな。じゃが、わしはさっき天界から降りてきたばかりでな」
「成る程...」
「それで、提案なんじゃが...」
提案?一体なんだ...
「提案ってのは...?」
「これも何かの運命じゃ。童──わしの眷属にならんか?」
「俺が...あなたの...?」
神の眷属...はは、悪いミズキ、どうやらお前の夢、俺だけ叶えることになりそうだ。
「そうじゃ。わしも降りてきたばかりで、頼れるものもいなくての、童も行く当てがないじゃろう?だからわしの眷属になってはくれぬかと思っての」
「だめか?」と、心配になっている神様を見て...
「なるよ...あなたの眷属。親友の夢を叶えるために...」
「おお...!本当か!それなら早速、っとそうじゃった童の名前を聞いておらんかった」
俺の名前...?そう言えば言ってなかったな...
「俺の名前はココノエ・泉です。よろしくお願いします。神様」
「泉か、よろしくの。わしはイザナミじゃ」
は?イザナミ...!?嘘だろ...日本神話の最高神クラスだろ...!それに...確かイザナミは黄泉の神だったか。だからさっき運命だと言ったのか...
「イザナミ様。あなた、俺の居た世界では相当位の高い神だったが外界に降りて大丈夫なのか?」
「ぐぅ...!だ、大丈夫じゃ...閻魔の奴に仕事を押し付け...じゃなかった。閻魔が仕事をかわりにやってくれての」
いや、今普通に押し付けたって...
「そんなことはよい!それより...泉はまず傷を治すところからじゃな。」
「っと。そうだ、なんで火傷が治ってるんだ?」
俺の体は、かなり燃えていたはずだが...
「それはの、泉が業火に焼かれたからじゃ。耐性ができたのじゃよ普通の炎にの」
「業火と言うと...あの黒い炎か...」
「魂に耐性ができたんじゃ。あれは魂を焼くからの。じゃから泉の身体は、業火以下の炎を無力化するんじゃ。故に火傷なんか負うはずがないじゃろう?身体が火傷をなかったことにしたんじゃ」
「成る程...」
「まあ、安静にしておるといい。身体の傷は治ってはおらぬからな」
「分かった。じゃあ...一度寝る。お休...み」
「うむ、お休みじゃ」
「うん...よし。イザナミ様、体の傷も癒えました」
「そのようじゃな」
あれから一ヶ月、やっと体の傷が癒えた。その間はイザナミ様に看病してもらっていたが、畏れ多すぎて気が気じゃなかった。
「では、恩恵を刻むとしよう。ほれ、背中を向けよ」
うつ伏せになり背中を向ける。そして、イザナミ様が血を垂らす。
「これは...」
「えっと...これで終わりですか?」
これで、恩恵は刻めたのか?
「あ、ああ。そうじゃな。少し待っておれ、ステイタスを紙に移そう」
「これじゃ」と、ステイタスが移された紙を渡される。
『ココノエ・泉 Lv.1
力 I0
耐久 I0
器用 I0
敏捷 I0
魔力 I0
『魔法』
【ゴウカ】
・不治の炎
・対象の選択
『黄泉の炎を現し世に。罪、肉体、魂、癒えることは無い裁きの炎。美しき炎。顕現せよ。』
・追加詠唱 『この身に宿れ、美しき炎よ。悪は我が裁こう』
『スキル』
【黄泉の行人】
・生と死の気配の知覚
・死に近づけば近づくほどステイタスの上昇。経験値増加
・炎への完全耐性
【弥生の誓い】
・誓いが果たされるまで経験値増加
・誓いが途切れると消滅
「...なんか、凄いな。これは、良いのか?悪いのか?」
「わしにも分からん。じゃが、悪いことはないじゃろう。それに...人の身で業火を使うのじゃからな」
イザナミ様が言うなら悪くないのだろう。それにしても...
「見事に黄泉にまつわる物だな...」
「まあ、そうじゃろうな。恩恵とは思いや経験がスキルや魔法に反映される。黄泉に行くなぞ、生半可な経験ではないぞ」
思い...三月との約束。誓いか...スキルに反映される程なのか。じゃあやっぱり、俺は三月のこと...
「好きだったものとの誓いか?」
──見透かされてる。凄いな、神様は。
「ああ、約束したんだ。“英雄“になるって。」
「スキルにまでなるとは、よほど思っていたのじゃな」
そうなんだろう。俺は三月の事が、ずっと好きだったんだ。なら、果たさなくちゃな...
「イザナミ様。オラリオに行けば、強くなれるんですよね?」
「そうじゃな。泉の努力次第では“英雄“になれるじゃろう」
なら、決まっている。
「俺は、オラリオに行きたいです。イザナミ様、お願いします」
頭を下げる。オラリオに行くならイザナミとがいい。それ以外は、何故か考えられない。
「泉よ、わしも元々そのつもりじゃった」
「じゃ、じゃあ...!」
「うむ、行くぞオラリオへ」
「父さん、母さん。いつか、黄泉で会おう」
本当は、ずっと生きてて欲しかった。
「三月...ずっと好きだった。お前の夢叶えてくるよ」
一緒にオラリオに行きたかった。一緒に"英雄"に成りたかった。
「この刀、貰うね父さん」
家宝の刀。お父さんが、ずっと大事にしてきた業物。村が焼かれ跡形もなくなっていても、これだけは残っていた。
「イザナミ様。準備が出来ました」
「うむ、では出発じゃ!」
12年。育った村を後にする。
──行ってきます。みんな。