黄泉の行人。ダンジョンに行く。   作:かまくら御前

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 ごめんなさい!遅くなりました。
 色々、並列して書いているものがあるので時間が掛かりました。
 イザナミ様との絡みが見たいと、リクエストもあったので近々幕間で出します。 
 まあ、もしかしたら今日出せるかもしれないですが。


正義参上、才禍への挑戦

 

   ――空気が変わった。

 この場を絶望たらしめていた存在、オリブァスが蹴り飛ばされた。

 

  「貴様ぁ!【鬼じ...】」

 

  「話している暇があんのか?」

 

 何を...と思う暇も無く。

 ボトッと、()()()()()()が地面に転がる。

 

  「がぁぁぁ...!?」

 

  「...間一髪避けたか。腐ってもLv.3。だが、次で終わらせる。()()がいるんだお前みたいな小物に割く時間はねぇ」

 

  「ど、同士よ...!私を助けろぉ!」

 

 言うやいなや、背後から魔剣による爆炎。泉は動かず直撃する。

 

  「泉さん!」

 

  「はははは!油断したな【鬼人】!脅威にならぬと信者達を視界に入れなかった貴様の負け...」

 

  「――お前、学習しないのか?」

 

 “無傷“爆炎が晴れ、泉は無傷でその場に立っている。

 

  「は?な、何故だ...!?」

 

  「生憎だが...俺に炎は効かねぇ。俺を燃やしたいなら神の炎カグツチでも持ってくるんだな」

 

 理不尽。余りにも理不尽。オリブァスは恐怖する。()()してしまう。

 

  「リオン。民衆のところに行け、奴らの目の前でお前の正義答えを見せつけてやれ」

 

  「っ...!?はい!聞けぇ!エレボス!私の答えを聞かせてやろう!」

 

 民衆のもとまで駆け、いるであろうエレボスに向けて裂けんばかりの声を張り上げる。

  ――正義は巡る。たとえ誰からも感謝をされず、理解もされずこの身が朽ち果てようとも。正義の意思を継ぐものが必ず現れる。一人でも多くのものを救い、“正義“を託す。

 正義を途絶えさせない、と。

 

  「この期に及んでまだ綺麗事を!だが!ヤツ一人で民衆全員は守りきれまい!」

 

  「だから、誰が一人だって?――来るぞ。バカ共正義が」

 

  「――正義、参上!」

 

 ほら来た、悪を許さず善を尊ぶ。正義の眷属アストレア・ファミリアが。

 

  「よぉー、家出エルフ。散々迷惑かけやがって、アタシ達に何か言うことはあるか?」

 

   ――ライラが笑いながらリオンに問いかける。

 

  「わたくしは謝罪ではなく、誠意を示して頂きたいですねぇ...しばらくお前の仕事は、我々の下僕だ。ぶぁーかめ」

 

   ――輝夜が何時ものように毒を吐く。

 帰ってきた。アストレア・ファミリアが。

 

  「ライラ、輝夜...ええ、いくらでも借りを返しましょう!」

 

 コイツらがいるなら、ここは十分だろう。行くか、“本命“に。

 

  「アストレア・ファミリア!後は任せたぞ!」

 

  「ええ!任せてちょうだい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「...来るか」

 

 エレボスとの“契約“のためアルフィアは冒険者の足止めをしていた。

 

  「私達を相手に余所見とは、余裕だなアルフィア」

 

  「...でも隙がない」

 

 傷だらけになっている二人、リヴェリアとアイズがそう零す。一向に動く気配がないアルフィアが気になり、アイズは視線の先を見てみる。

 

  「?何か...来る」

 

 見てみた先、音がする。バリバリ!と、まるで...“雷“みたいな音が。近づいてくる、途轍もないスピードで。

 

  「【美しき炎、顕現せよ】【ゴウカ!】」

 

 現れた少年は黒い髪を()く染め、魂まで焼き尽くす漆黒の炎をアルフィアへと向ける。

 

  「【魂の平静アタラクシア】」

 

 手が前に出され、黒炎が消滅する。

 

  「っ!?魔法が消えた!マジかよ!?」

 

 魔法は無駄。そう、瞬時に判断し自らの間合いまで接近する。 

 

  「はぁ!」

 

 斬る、斬る、斬っていく。神速の剣技。並の冒険者なら即細切れになっているであろう連撃。だが、アルフィアはその全てを避けていく。するりとほんの僅かな隙間を狙い、最小限の動きで避けていく。

 

  「いい剣技だ。ここまで極まった“技“は久しく見た。褒美をやろう。【福音ゴスペル】」

 

 っ...!ここっ!斬!

 詠唱が聞こえた瞬間全力で横に飛び、直撃を避ける。だが、あの時も体感したように余波だけでも重症を負えるレベルの攻撃...それでも余波なら一度受けている。なら、斬れない道理はない。

 

  「ぐっ...!ふぅ...斬れたぞ」

 

 少し掠り、肉が裂ける。だが、軽傷で抑え切れた。

 

  「ほう?余波だけだが私の魔法を“斬る“か、面白い。何処まで斬れるか試してやろう。【福音ゴスペル】」

 

 不可視の弾丸が迫る。

 

  「【福音ゴスペル】」

 

 避けた先にもう一発。

 不味い...!これは当たる!せめて、被害を最小限に!

 

  「がぁぁ...!」

 

 吹き飛ばされ、まるで臓物が飛び出るような衝撃が、身体中を迸る。

 

  「ごふ...“超高威力“の“超短文詠唱“飛んでいるのは音だから見えもしない。チートすぎだろ」

 

 何処かしらの骨が折れ、口から血がを吹き出す。

 あの時、ダンジョンで俺を襲ってきた“冒険者狩り“の男の魔法も大概だったが、この女の魔法の方がさらに理不尽だな。

 これがLv.7か...今まで戦ってきた奴らとは訳が違う。

 

 “ステイタス“が、“経験“が、“技“が違う。

 

 俺がこの女を倒すには...限界を超えねぇといけない。

 

  「なんだこれで終わりか?なら、――ここで果てろ小僧」

 

 ふぅ...集中。まだ慣れてないんだ。時間をかけて確実に発動させる。

 

  「【福音ゴスペル】」 

 

 死が目の前まで迫る。ギリ、間に合った。

 

  「【八雷やくさいかづち】【起動】」

 

 姿が消える。その場に音だけを置き去りにして。

 

  「...まさか傷を付けられるとは。油断しているつもりは無かったが」

 

 ツーと、頬に血が伝う。何をやっても変らなかった顔が少しの驚きに染まる。

 

  「やっと表情を変えやがったな」

 

 後ろに振り向く。そこには、バチバチといかづちを迸らせた泉が立っていた。

 

  「それに...お前、何か纏ってるな?さっき俺の魔法を消した時、手を翳して発動していたが...ブラフか。本当は身体全体に纏っていて、手をかざす必要なんかない」

 

  「...よく暴いたが、それを知ったところで差は埋まらん」

 

 Lv7.とLv.3どう足掻いても絶対的なステイタスの差がある。

  

  「ああ、知ってる。今の俺は、勝つためにお前に挑んでるわけじゃねぇ」

 

  「じゃあ何だ?お前は死にに来たのか?」

 

  「死に来る馬鹿が何処にいる?――“経験値“、寄越せよ。俺はそれでレベルを上げる。お前は踏台だ、俺のな」

 

 ランクアップに必要な経験値エクセリアは溜まっている。後は、偉業を成すだけ。

 

  「Lv.7。さぞやいい糧になってくれるんだろうな」

 

  「お前はLv.7を踏み台と言うか...その目は何を見据えている?」

 

 そんなもの決まっている。

 

 

 

  「――黒竜を討つ

 

 

 

 三大クエスト、その最後の一つ。世界を滅ぼす、隻眼の竜。そして...俺の故郷を燃やし尽くした張本人。

 その威光を、その恐怖を絶望を覚えている。忘れはしない。忘れてやるものか。

 だが、復讐はしない。思わない。復讐、その動機で強くなるなら、俺は“約束“を破ることになるから。

 

  「あの恐怖に比べれば、お前Lv.7なんぞ踏み台だろ?」

 

 この言葉を言っている時の、アルフィアの感情は分からない。だが、俺の勘違いじゃ無ければ、少し――笑った気がした。

 

  「だから...少しは食らいつかせて貰う!」

 

 バチ!と、音と共に泉の姿が搔き消え、いつの間にかアルフィアの眼の前にいた。

 

  「しっ!」

 

 斬!先程とは違い、雷を伴った連撃。それでも...

 

  「くっそ...!当たらねぇ」

 

 結果は服を少し裂いた程度。最小限の動きではなく、少し無駄が見えたが些細なことだろう。

 

  「【福音ゴスペル】」

 

  「ち!」

 

 直撃は避ける。余波を斬り捨て、反撃をしようと近づいていく。 

 次はもっと速く、もっと鋭く!

 

  「――【炸裂ルギオ】」

 

 は?死っ――

 

 

 

  「...原型を留めているな」

 

  「ぐっ...!」

 

 やべぇ...今の。魔法を使った後に残った魔力を“炸裂“させやがった...!間一髪、俺の周りの魔力を斬れたおかげで直撃だけは避けたが、それでも食らってしまった。

 負った傷がさらに深くなる。全身血だらけ、もう次は食らえない。――これで終わせる。

 

  「【黄泉の炎を現し世に。罪、肉体、魂、癒えることの無い裁きの炎】」

 

 アルフィアは行動を起こさない。待ってくれている。邪魔しなくても問題ないと思っているのか、それとも...何か別の意図があるのか。

 

  「【美しき炎。顕現せよ】【この身に宿れ、美しき炎よ】【は我が裁こう】【ゴウカ】」

 

 雷を迸らせた身体に黒炎を纏う。刀を鞘に戻し、腰を深くまで落とす。

 

  「待ってくれたんだ。俺の今出せる全力、見せてやるよ」

 

 身体は重症。スキルによりステイタスはLv.4に届きうる。炎を刀に集約し過去最高の一撃を放つ。

 

  「【居合】ココノエ」

 

 逃げ場をなくす九つの斬撃。

  ――これで...!

 

 

 

  「惜しいな小僧」

 

 九つの斬撃。それは、すべて避けられ脇腹を掠るだけで終わった。

 

  「掠った、だけ...か」

 

 悔しさを残し、泉は地面に倒れ伏して動かなくなった。

 

  「私に2度傷を付けるLv.3。【鬼人】レコードホルダーか...オラリオにまだこんな有望な小僧がいるとは。失望するには早かったかもしれんな」

 

 そう言い、泉に背を向け歩くアルフィア。

  

  「貴様...帰るつもりか」

 

  「お兄さん...」

 

 背を向け去っていくアルフィアに、リヴェリアが声を掛けアイズは泉に思いを馳せる。

 

  「止めるか?お前達が私を。過去、何度も挑みその全てにおいてに蹂躙されたお前達が?」

 

 殺気。自分たちと戦い、【鬼人】と戦い尚、これほどの余力を残している。対して、自分達はボロボロの満身創痍。

 

  「く...!」

 

  「冗談はそのくらいにしておけ。貴様の言葉は雑音にしかならん」

 

 殺気を消し、それだけを言い残しアルフィアは去って行った。

 

  「見逃されたか...アイズ。【鬼人】を運ぶ、手伝え」

 

  「分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夢を見ている。誰か大切だった人との夢を。

 

  『ねえ、泉?』 『ん?何だ』 

  

  『私ね、いつか“英雄“になりたいの』 

 

  『あん?英雄ぅ?何でまたそんな事急に?』  

 

  『急じゃないもん。だって泉、今日同い年の子を魔物から助けてたでしょ?それを見てまた思ったの。ああ、やっぱり“英雄“になりたいなって』 

 

 『なんで、英雄何だよ?別に英雄じゃなくても人は助けれるぞ』

 

  『そうね、でも...多くは救わない。英雄にならないってことは、大を切り捨てて小を助けるってことだから』

 

  『まあ...誰だって身近な人を助けたいからな。天秤にかけたらそりゃあ俺だって小を選ぶ。でもそれじゃあ“英雄“は小を切り捨てるってことにならねぇか?』

 

  『いえ、それは英雄とは言わないわ。現実主義者って言うの。泉、私が考える“英雄“はね。天秤なんか作らない、大も小も纏めて救うの。そこに貴賎なんか作らないわ』

 

  『それは...確かに“英雄“だな。だか、理想論だ。それも高すぎる、な』

 

  『そうね。()()()()()無理だわ、だから...泉も一緒になりましょう“英雄“に』

 

  『俺も?』

 

  『ええ、そう。私は、戦うのが苦手だから。アルゴノートみたいに民衆を元気づける“英雄道化“に泉はアルバートみたいに悪を倒す“英雄“に』

 

  『おいおい...ほとんど俺に投げやりじゃないか』

 

  『あら!そうでもないわよ。だって泉、人を笑顔にさせるの苦手でしょ?その仏頂面、少しでも変えてみなさいよ』

 

  『ぬ、そう言われると痛いな...』

 

  『その点、私はユーモアがあるわ!なにせ、超絶美少女で可憐な私ですもの!』

 

  『...』

 

  『フフン!私が美し過ぎて声も出ないのね』

 

  『あーあーそうですねー』

 

  『そうよ!だから、二人なら成れるの全てを救う“英雄“に。だから、大きくなったら一緒にオラリオに行きましょう!』

 

  『はー...たくっ。分かったよ。なってやろうじゃないか“英雄“に』

 

  『!本当!?やったわ!』

 

   ――これが原点。“英雄“を目指す始まり。

 そうだ、だから俺は...俺の正義は...

 

  

 

 

 

   「は!」

 

 目が覚める。何か、懐かしい夢を見ていたような...そんな気がする。

 

   「ここ...は、俺達のホームか...」

 

 確か...アルフィアと戦って、それで...

 

  「!そうだ!あの後どうなって!っ...!」

 

 ぐっ...!痛ってぇ、全身傷だらけだな。だが、ある程度治療は済んでる。ホームにいる気配、イザナミ様か。また、心配をかけてしまったな。

 

  「泉!起きたか...!」

 

  「ああ、すまん。心配をかけた」

 

 俺が起きていることに気付いたイザナミ様が、駆け寄ってくる。

 

  「本当じゃ...!バカモノめ!じゃが...無事でよかった」

 

 涙を流し、俺に抱きついくるイザナミ様。

 

  「無事を喜びたいのは山々だが、状況が知りたい。俺はどうやってホームまで来たんだ?」

 

 すまん、イザナミ様。泣いて喜んでくれるのは有難いが、先ずは俺が生きている理由を知りたい。

 

  「ロキ・ファミリアじゃ...緑髪のエルフと金髪の娘が泉を運んできよった」

 

 そうか、アルフィアに集中し過ぎているのを忘れていた。アイツラのおかげだったか...今度、礼を言いに行かないとな。

 

  「成る程...分かった。助かる」

 

  「うむ。それじゃあ...もう少しこのまま居させてくれ」

 

  「ああ」

 

 5分程そうしていただろうか。イザナミ様は多少満足したのか抱擁をやめた。

 

  「もう大丈夫か?」

 

  「そうじゃの。ある程度は」  

 

  「それじゃあ、悪いが。――ステイタスの更新を頼む」

 

  「あい、分かった。背を向けよ」

 

 俺は背中に巻いてある包帯を取り、ベッドにうつ伏せになる。

 

  「おめでとうじゃ、泉。――レベルアップじゃ」

 

 

 

 『ココノエ・泉 Lv.3

 

  力  C670→B713

  耐久 B743→A806

  器用 B762→A829

  敏捷 B755→A841

  魔力 B731→B799

  

 感知:G

 魔刃:I

 

 『魔法』

 【ゴウカ】

 ・不治の炎

 ・対象の選択

  『黄泉の炎を現し世に。罪、肉体、魂、癒えることは無い裁きの炎。美しき炎。顕現せよ。』

 ・追加詠唱 『この身に宿れ、美しき炎よ。悪善は我が裁こう』

 

 『スキル』

 【黄泉の行人】

 ・生と死の気配の知覚

 ・死に近づけば近づくほどステイタスの上昇。経験値増加

 ・炎への完全耐性

 

 【弥生の誓い】

 ・誓いが果たされるまで経験値増加

 ・誓いが途切れると消滅 

 

 【イザナミの加護

 ・状態異常無効

 ・雷の行使権

 

 

 

 『ココノエ・泉 Lv.4

 

  力  I0

  耐久 I0

  器用 I0

  敏捷 I0

  魔力 I0

  

 感知:E

 魔刃:G

 忍耐:I

 

 『魔法』

 【ゴウカ】

 ・不治の炎

 ・対象の選択

  『黄泉の炎を現し世に。罪、肉体、魂、癒えることは無い裁きの炎。美しき炎。顕現せよ。』

 ・追加詠唱 『この身に宿れ、美しき炎よ。悪善は我が裁こう』

 

 【アメノ・ヌボコアマノ・サカホコ

 ・生命操作

  『神器疑似再現。国生み、それ即ちの創造である。我はイザナミノミコトの眷属。国を生み、神を生む原初の神の一柱。その権能、愚かにも人の身で再現せん。我は黄泉の行人、生と死、その両方を身に受けし者、生命の神秘を知る者。来たれ』

 

 『スキル』

 【黄泉の行人】

 ・生と死の気配の知覚

 ・死に近づけば近づくほどステイタスの上昇。経験値増加

 ・炎への完全耐性

 

 【弥生の誓い】

 ・誓いが果たされるまで経験値増加

 ・誓いが途切れると消滅 

 

 【イザナミの加護

 ・状態異常無効

 ・雷の行使権

 

   

 

  「来たか、とうとう...Lv.4。上級冒険者」

 

 正義も息を吹き返している、決戦が近い。

 

 

 

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