「...ふ!」
前に飛び出す!拳を前に!避けられる。分かりきったこと。そのまま、回し蹴り。しゃがみで避けられる。体勢が悪い、まずい...!
「ほれ、隙だらけじゃ」
くっ...!早っ。腕を掴まれた。投げられる...!
「あべし...!」
痛っ...!あーもう!
「勝てねー!」
「そう、簡単に勝たれても困るわ。まだまだ甘いの」
村を出て1ヶ月。移動している合間を縫って、俺はイザナミ様に鍛錬をしてもらっている。イザナミ様は、武の伝承は聞かないが。それでも神、無茶苦茶強い。
「刀は上手いんじゃがな〜。如何せん、体術が微妙じゃな」
「刀は父さんに、教えてもらったんだ。体術はそもそも、やれてない」
「うむ...どうりで、振るう刃に術理があると思うわけじゃ」
この世界には、娯楽がなかったから、父が刀を振っているのを見て、やりたくなってしまった。
「それで...イザナミ様。オラリオへは、後どれくらいなんだ?」
「そうじゃな...後、少しで着くな。3日以内、くらいじゃろう」
「じゃあ、もうすぐだな」
楽しみだな。英雄が生まれる都市、オラリオ。
「ほれ、話は終わりじゃ。鍛錬を再開するぞ。少なくとも、泉のそのへっぽこ体術を、普通には持っていこうぞ」
ああ、また投げ飛ばされるのか...
「着いたぞ」
3日後。俺たちは、大きな城門の前に立っていた。
「ここが...迷宮都市オラリオ」
「む、検問があるみたいじゃ」
入口近くで、衛兵が検問している。
「そちらの方は...女神様ですか?」
「うむ、そうじゃ。わしと、眷属が一人じゃ」
「そうですか...オラリオへ来た、目的は何でしょうか?」
「冒険者になりにな」
「成る程...分かりました。お通り下さい」
ええ...結構雑だな。こんな簡単に通して、大丈夫か?
「感謝する。行くぞ泉よ」
「は、はい」
門を抜けて、ある程度歩く。さっきの疑問をイザナミ様に聞いてみるか...
「検問をあんな簡単にして、大丈夫か?」
「大丈夫じゃろう。神も見ておったしな。ある程度は、それで篩に掛けているのじゃろう」
神が見ていたのか...成る程。イザナミ様が言うには、神は嘘などが見抜けるって言うからな。
「ふむ...」
ん、イザナミ様?
「どうしたんだ?」
「いや、なに...もう少し活気があると思っておったが、何やら空気が淀んでおるな」
確かに、言われてみれば。人の喧騒なんかも、あっていいと思うがそんな音はしない。
「まあ、よい。とりあえず、冒険者ギルドに向かうぞ」
「分かった」
イザナミ様に連れられてギルドに向かう。
ん?これは...
「イザナミ様。前から、人が複数走っできる気配が来ます」
「む、なんじゃ?」
近づいてきたな。
「おい!そこの二人組どけ!」
「ちょっと!止まりなさい!」
あー、窃盗とかか?一番前の男が逃げていて、赤髪の女性達が追いかけてるな。
「ちっ!こうなったら...」
「なんじゃ?ぬぉ...!」
あ、イザナミ様が捕まった。
「アリーゼ!大変だ!」
「ええ!分かってるわ!」
「...あのお方」
「お前ら!この女が、どうなってもいいのか!」
イザナミ様を捕まえるとは、運が悪いなあの男...ん?なんか、イザナミ様こっちを見てるな、サッサッと抜け出せばいいのに、まさか...
「あ~、なってことじゃ~、つかまってしもうた~」
「へへへ、おとなしくしやがれ」
あー...はいはい、分かりましたよ。俺が助ければいいんでしょ?
「っ...!どうしまし...」
「あー。悪いんだが、お前が捕まえてる人は俺の大事な、神なんだ返してもらう」
「っ...!動く...」
「遅い」
刀は抜かなねぇよ。だが、これでも食らっときな。鞘での当身ってな。
「が...!」
「全く、お遊びが過ぎますよ。イザナミ様」
「くはは!すまぬな。泉がどうするか、見たかったんじゃ」
「ったく。さっさとギルドに、行きますよ」
「あい、分かった」
全く...捕まる前に対処できたのに...
「ちょ!ちょっとまって!」
ん?なんだ。先頭を走っていた赤髪の女性が、話しかけてきたぞ。
「なんだ?悪いんだが、こっちも用事があるんだが...」
「いえ、時間は取らせないわ!それで...あなたの名前は?」
名前?
「ココノエ・泉」
「泉ね!私はアリーゼ・ローヴェルよ。ありがとう!あの男を止めてくれて。助かったわ」
「いや。こっちも正当防衛だから、感謝はいらない」
「それでもよ!あなたが居なかったら、被害が出ていたかもしれないから。だから、ありがとう
!」
成る程、我が強い人だな。
「団長様、この男をガネーシャファミリアまで運びましょう」
「ええ、そうね。じゃあ私達は行くわ。もし、私に助けてほしい事があるなら、星屑の庭まで来て頂戴!それじゃあ。また、会いましょー!」
「...」
「くはは!嵐のような童じゃったな!」
ああ、本当に...三月を思い出すな。
「なんじゃ...?知り合いに似ておったか」
...やっぱり、隠し事はできないな
「ああ、似ているよ。本当に...また、会うかもな」
「それは、わしも同意見じゃな。あの童とは、また会うじゃろう」
アリーゼ・ローヴェルか...覚えておこう。
「女神様ですか?ギルドへのご用件は、何ですか?」
「うむ、ファミリアの登録にな」
「ファミリアの登録ですか?でしたら、こちらの方に記載をお願いします」
「あい、分かった」
「はい、はい。確認しました、イザナミファミリア...団員は一人でよろしかったですか?」
「うむ。問題ない」
「それでは、イザナミファミリアを受理します」
うーん、もう少しで終わるかな。
「泉。終わったぞ」
あ、イザナミ様が帰ってきた。
「イザナミ様。終わりましたか?」
「うむ。ファミリアの話も聞いてきたぞ。まあ、とりあえずじゃ宿を取りに行くぞ」
まあ、流石に今日、ダンジョンに潜るわけにはいかないか...
「じゃあ、探しに行くか,,,」
「じゃあ、俺はダンジョンに行ってくる」
あの後、宿を取り夜を明かした。だが、予定より宿の金額が高く、長く持ちそうもない、早めにお金を稼ぐしかない。
「うむ、気を付けて行くとよい」
さて...初めての魔物との戦闘か。
ギルドに着き冒険者登録をし、講習を受ける。講習を受け終わり、とうとうダンジョンに向かう。ダンジョンの中に入ると、雰囲気が変わった。
「...死の気配がするな」
地上とは違い、いるだけで死の気配が少しする。成る程...これがダンジョン。何が死につながるか分からない迷宮。
「さて...魔物の気配がする方に行くか」
気配がする方に歩く。
あれは...ゴブリンか。まずは一匹。
「グギャ!?」
ふむ...一撃か。この階層では、こんなものか。もう少し降りるか...
2...3...4
足りない。まだ、足りない。全然強くないな...この程度じゃあ、経験値も溜まらない。まだ降りるか。
そして...7階層。
「でかいな...やっとましなのが出てきたな」
ギルドの講習で見た。ウォーシャドウか...死の気配がする。
「kyuaaa!」
抜くか...鞘から刀を抜き、こちらに向かってきたウォーシャドウを切る。
「一」
「kyuaaaaa!!」
「遅い」
こちらから近寄り、もう一匹。そして、後ろから来た攻撃を避ける。
「三」
避けたついでに切りつける。
「「ktyuuuu!!」」
群れで来るか...!
一匹、また一匹攻撃を紙一重で避け、相手を切っていく。
「終わりだ」
最後の一匹を切る。これで終わりと。さて、魔石が結構落ちたな。今日はこのくらいにするか。しかし...
「これが戦闘か...いいな」
戦いとはいいものだな。気分が高揚する。だが、闘争に酔わないようにしなければな...
魔石を拾い終わり、ダンジョンを出る。魔石を受付に持っていき、換金をする。
「換金を頼む」
「ええ、分かりまし...た?」
「?どうした」
なんか、固まったぞ...
「こ、これ...ウォーシャドウの魔石ですか...!?」
「ああ、そうだが」
「あなた...今日冒険者になったばかりですよね...!?」
「あなたが俺の講習を手伝ってくれたんだろう?何を当たり前のことを...」
「いや、ウォーシャドウが出現するのは、7階層付近からですよね!?あなた...まさか7階層付近まで行ったんですか!?」
「行ったな。上の階層では、経験値にならなかったからな」
「もう行ったらだめですからね!?」
なぜ?行ったらいけないんだ?別に俺は死んでいないぞ。何なら無傷だ。
「なぜだ?」
「なぜって...ステイタスが足りないでしょ!」
「だが、俺は無傷だ」
「それは、そうだけど...」
「なら問題ないだろう。別にあの程度だったら死にはしない。引き際は弁えている」
なんだ?そんなに顔を顰めて...まるで俺があほうみたいな見方をしてるな。
「はぁー...何を言っても聞かないようですね。分かりました。魔石を換金しますね」
「感謝する」
3万ヴァリスか...まあまあだな。お金も受け取ったし、そろそろ帰るか。
「じゃ。また来る」
「帰ったぞ。イザナミ様」
「おー!帰ったか。泉」
宿に帰ると、イザナミ様が出迎えてくれた。
「これ、今日の収入。3万ヴァリスは入ってる」
「結構稼いだの」
まあ、受付嬢のあの慌てようを見た感じ、始めたてにしては稼いだほうなんだろう。でも...
「でも、宿代で資金が尽きる。今はまだ貯蓄があるからいいけど。いずれ、立ち行かなくなる」
宿が、思ったより高いのが痛いな。
「そうじゃ。わしの方も情報を集めてきたぞ」
情報?
「おかしいと思っての。街の活気のなさに、宿代の高さ。」
話を聞いてみると、どうやら今のオラリオは暗黒期と言って、最強の眷属。ゼウスとヘラのファミリアが黒龍討伐失敗の責を問われ追放され、抑止力が居なくなった闇派閥が暴れているということらしい。
「じゃから、宿に泊まるものも少なくなり、値段も上がっているというわけじゃ」
はぁー...なんというか...
「大変な時期に来たな」
「まったくじゃな。まあ、よい。ほれ、背中を見せよ」
ん?ああ、ステイタス更新か。
「これが、更新後のステイタスじゃ」
『ココノエ・泉 Lv.1
力 I0→H173
耐久 I0→H156
器用 I0→G227
敏捷 I0→G212
魔力 I0→I51
『魔法』
【ゴウカ】
・不治の炎
・対象の選択
『黄泉の炎を現し世に。罪、肉体、魂、癒えることは無い裁きの炎。美しき炎。顕現せよ。』
・追加詠唱 『この身に宿れ。美しき炎よ。悪は我が裁こう』
『スキル』
【黄泉の行人】
・生と死の気配の知覚
・死に近づけば近づくほどステイタスの上昇。経験値増加
・炎への完全耐性
【弥生の誓い】
・誓いが果たされるまで経験値増加
・誓いが途切れると消滅
「恩恵を刻んで、1回も更新をしておらんかったから結構上がっておるな」
ふむ...器用が一番上がっていて、魔力が一番低いと。まあ、魔法は数えるほどしか使っていないから、しょうがないか。
「...次は魔法も使うか」
明日から楽しみだ。