黄泉の行人。ダンジョンに行く。   作:かまくら御前

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―好きだ

   

  「に、逃げろおぉっ!!」

 

 冒険者達が、大声をあげて何者かから逃げていく。

 

  「おやおや、逃げるのですか?亡骸なかまを置いて?本当に?それでよろしいので?」

 

 そこにいたのは、赤い髪をし鋭い眼光を見せている男だった。

 

  「そこは戦うべきでしょう!"英雄"とまでは言わなくとも!攻めて"冒険者"の名に恥じぬように!それができないと言うのなら...失望する私を、どうか血の宴で楽しませてもらいたい!!」

 

 そう、逃げた冒険者に対する失望を吐露する男に迫る影があった。

 

  「させるか、阿呆」

 

  「っ!?」

 

 不意打ちのように、黒髪の女性が男に攻撃する。

 

  「まーた当たったぜ、フィンの読み!どうなってんだあいつの頭!マジで結婚してやってもいいぜ、一族の勇者様ぁ!」

 

 ピンク髪の小人族パルゥムらしき女性が興奮しているかのように、大声で言う。

 

  「超絶無理に決まってます、あなたのような狡い小人族パルゥムなどと。夢と現実の区別をつけてくださいまし。──あとうるさいから黙れ」  

 

 黒髪の女性がピンク髪の小人族パルゥムに毒を吐く。

 

  「はて、あなた方は...?」

 

  「非道の行いを見過ごすわけにはいかない、正義の味方よ!」

 

 赤髪の女性が男にそう宣言する。

 

  「正義...?ああ、アストレア・ファミリアの」

 

 俺はアストレア・ファミリアじゃないけどな、とついてきた一人の男はそう思った。

 

  「何故冒険者狩りなんてするの?お金や魔石が目的?」

 

 何故?アリーゼ...何を無駄なことを聞いてんだ全く,,,

 

  「おい、アリーゼ。そいつにそんなことを聞いても無駄だ」

 

  「どうしてよ?泉は何かわかるの?」

 

  「何故やっているかは分からんが、どうせ理由はろくでもない。こいつらは総じて破綻者だ利益が目的じゃねぇ、利己が目的なんだ」

 

 オラリオに来てから、嫌というほど分かった。

 

  「破綻者...ああ、実に歪で、心を打つ響きです。ええ、ええ、きっと永劫私に付き纏う愛しき称号なのでしょう!」

 

  はぁ、だからこいつらのことが嫌いだ俺は。破綻していること、自らが常識から外れていることを自覚していて、でもそれよりも己の正義を成す。善を敷く俺たちよりよっぽど自由で楽しんで生きている。

 

  「泉...そうね、私が間違っていたわ。──よし。あなたみたいな人は、一生牢獄の中にいた方がいいわ。うん、決まり。私が決めたわ」

 

  「それはご免です」  

 

  「なら。力づ...」

  

  「いや、あいつは俺がやる。お前らじゃあ荷が重い」

 

 あの時の()ほどじゃないが、こいつも死の気配が濃い。おそらくLvは4、リオンもいれば何とかなったかもしれんがこの3人じゃ無理だろう。

 

  「え!?ちょ、ちょっと、泉!?」

 

  「お前らは雑魚をやれ」

 

  「あなたが来ますか」

 

 先ずは挨拶代わりの一撃。斬。

 

  「ふむ、お強い」

 

 まあ、受けられるか。当然だな。だが近づけた、これは受けれるかな!

 

  「しっ!」

 

 斬!斬!斬!男に向けて神速の剣を放つ。だが、その全ては男の剣に止められる。

 

  「あの人泉と切り合いになってるわ!もしかして、闇派閥イヴィルスの幹部?でもあなたみたいな人、情報も二つ名も、聞いたことがないわ!」 

 

 ほかの信者たちと戦っていたアリーゼが、俺達の戦いを見て疑問を投げる。

 

  「私は覚えにくい顔をしているそうでして。特徴がないのか"顔無し"などと呼ばれている有様です」

 

  ...それだけじゃあねえだろうな。

 

  「あとは、そう...関わららせて頂いた方は、ほぼほぼ始末してきましたので──」 

 

 ち!やっぱりそうか。

 

  「アリーゼ!泉さん、ライラ、輝夜!」  

 

 ...リオンが来たか。なら、あいつをやれるな。

 

  「...お仲間ですか。あなた達に加え、援軍となると流石に分が悪い」 

 

 こいつ...撤退するつもりか!

 

  「それでは、正義の名に踊らされるお嬢さん方、ごきげんよう」

 

 追いかけるのは無理か...

 

  「待ちなさい!」

 

  「...待て、アリーゼ。罠だ」「...待て、団長。誘っている」

 

 俺とセリフが被ったな、輝夜もさすがに分かっているか。

 

  「大丈夫ですか?四人とも」

 

  「ああ、俺達は全員無傷だ」

 

  「だが、せっかくの幹部を逃がしちまった。...そっちは?」

 

  「逃げてきた冒険者は、全員無事。今は宿場街リヴェラに避難させてる。」

 

 逃げてきた冒険者は...か、ならそれ以外は全員死んでいるか...だが、俺達ではそれは救えねぇ、逃げてきたやつらが無事ってのを喜ぶしかねえか。...輝夜とリオンが喧嘩し始めやがった。

 

  「おい、お前ら、喧嘩はやめろ。言いたいことはあるんだろうが俺たちが出来ることは助けられた奴らがいることを喜ぶことだ」

 

  「ええ、そうよリオン。私たちが救えた命がある。それだけは忘れないで、失ったものばかり見ていたら苦しいでしょう?それでも気分が落ち込むなら、寄り道しましょう。あの場所に」

 

 ん?どこかに行くのか、だったら俺は一度帰るか。イザナミ様にも聞きたいことがあるしな。 

 

  「俺は一度、地上に戻るぞ」

 

  「ええ、分かったわ。今日はありがとう、泉」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「濃厚な死の気配を纏った神か...」

 

 ダンジョンから帰り、俺達のホームに帰って来た。そして、イザナミ様に今日あった神について聞いてみる。

 

  「ああ、軽薄で()()のふりをしている神だ。演技を隠す気がねぇ」

 

 神が本気で演技をしたら、俺達下界の人間でわかるはずがねぇ。

 

  「むぅ...エレンか。すまんな、わしの知る神にそのような名の者はおらぬ」

 

 神でも聞いたことがない。おいおい、それって...

 

  「偽名じゃねぇか。一気にきな臭くなりやがったなあの神」 

 

 何か暗いことをしているのは確定だな。おい、じゃあ...

 

  「リオンがあぶねぇ」

 

  「リオン...アストレアの眷属か...」

 

  「ああ、あいつはその神に目をつけられてる。リオンの身に何かが起きるぞ」

 

 これは...余計離れなくなったな、あいつらと。命を懸ける覚悟をしないといけない。じゃないと俺は、あいつらを守れない。

 

  「...のう泉?少しワシの話を聞いてはくれぬか?」

 

 ?珍しいな、こんなに気の弱いイザナミ様。いつも、気丈にふるまっているのに。

 

  「ああ、いいぞ」

 

  「助かる...」

 

  何か、イザナミ様から"覚悟"を感じる。どうやら、真剣な話みたいだな。

 

  「泉を運命の人じゃと思った。わしの神性その要素をふんだんに取り込んだ子など、泉以外でおるはずもないからの」

 

 運命...そういえば、出会った時も運命を感じたって言ってたな。

 

  「時が経つにつれその思いは強くなっていった。死が身近にあるわしが、いつしか泉の死が怖くなったんじゃ」

 

 黄泉の国の女王。そんな人が、たった一人の人間の死を恐怖する。それはまるで、神ではなく人間のような考えだ。

 

  「いつも、ダンジョンに潜り傷を負って帰ってる。レベルアップの時なんか死ぬかもしれない傷を負ってわしのもとに来る。いつか泉がいなくなってしまうかもしれない、ずっとそう思いながらわしは泉の帰りを待っておった」

 

 それは...だいぶ気苦労をかけているな。耐久を上げるためにわざと攻撃を食らっているからな...それも毎日。

 

  「...好きなんじゃろう、泉のことが。じゃから、本当はダンジョンには行ってほしくはない。ずっと、わしと一緒にいてほしい」

 

 好き...まさか、イザナミ様からそんな言葉が出てくるなんて...それに、ダンジョンに行ってほしくないか...

それは...

 

  「無理だな」「無理じゃろう」

 

 むぅ、分かっているじゃないかやっぱり。

 

  「じゃから何度だって言う、死ぬでない。死なないでおくれ」

 

 それは、イザナミの魂からの叫びだろう。好きな人には死んでほしくない、そんな、神など関係ないただ一人の女性としての叫びなんだろう。

 

  「...なら、俺だって何度だって言ってやる。死ぬつもりはねぇよ、命は懸けるかもしれねえが死ぬ気で懸けるつもりじゃねぇ」

 

  「それは...誓いのためか?」

 

 だぁぁ...!いつもは俺のことを見透かしてるくせに、こんなことも分かんないのかよ。

 

  「それもあるけどなぁ!イザナミ様を置いて死ねるわけがねぇだろ!確かに、誓いは大事だがそんなのはただの約束だ、過去なんだ。俺は、イザナミ様が好きだから言ってんだ!それに...あいつも、目の前のやつをほっておいて過去に囚われるのはだめよ!なんて、言うだろうからな...」

 

  「そうか...そうか...わしが大事だから...」

 

 イザナミは怖かった。泉が死ぬこともそうだが、自分が思っているこの感情を吐露して嫌われることが。重い女だと鬱陶しいと、そう思われることが嫌だった。イザナミは自分に向けられる感情には鈍い。だから、泉が自分のことをどう思っているかなんて知らなかった。だから、好きだと聞かされてわしは...

 

  「泉...わしのこと好きか...?」

 

  「ああ、好きだ。少し子供っぽいところも、本当はさみしがり屋なところも、そのしゃべり方も。全部好きだ」

 

 ──ああ、わしは世界で一番幸せじゃ。

 

 

 

 ココノエ・泉 Lv.3

 

  力  D511→D514

  耐久 D542→D543

  器用 C637→C642

  敏捷 C618→C622

  魔力 C600→C600

  

 感知:F

 魔刃:H

 

 『魔法』

 【ゴウカ】

 ・不治の炎

 ・対象の選択

  『黄泉の炎を現し世に。罪、肉体、魂、癒えることは無い裁きの炎。美しき炎。顕現せよ。』

 ・追加詠唱 『この身に宿れ、美しき炎よ。悪善は我が裁こう』 

 

 『スキル』

 【黄泉の行人】

 ・生と死の気配の知覚

 ・死に近づけば近づくほどステイタスの上昇。経験値増加

 ・炎への完全耐性

 

 【弥生の誓い】

 ・誓いが果たされるまで経験値増加

 ・誓いが途切れると消滅 

 

 【イザナミの加護

 ・状態異常無効

 ・雷の行使権

 

 

 





 状態異常の無効化。
 イザナミは道敷大神ちしきのおおかみとも呼ばれ、穢れや疫病などを封じる役割を持っていたとされる。
 
 雷の行使権。
 黄泉津大神よもつおおかみはイザナギを追いかける際、八雷神をけしかけたとされる。
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