「はぁ!?お前らまたあの神にあったのか!」
あの日から3日。俺とアストレイア・ファミリアは炊き出しをしていた。そして、昨日知った神のことについてアストレア・ファミリアに話すと、どうやらまた会っていたようだ。
「ええ、会いましたねぇ。不快ないちゃもんをつけてきた男神様に」
「いいか、次そいつに会ったら捕まえろ。おそらく、闇派閥の神だ」
「「「!?」」」
まぁ、驚くだろうな。悪意もねぇ、敵意もない、ただの愉快神だと思うだろう。俺も偽名だけならそう思ったが...死の気配が強い。まるで、イザナミ様みたいだった。少なくとも、死に関係している神性の神だ。ろくなものでもないだろう。
「エレン。あの神はそう名乗っていたが偽名だ。つまり本当の名前は知られたくないんだろう」
「成る程...胡散臭ぇとは思っていたが、まさか闇派閥だとはな」
「分かったわ!次見つけたらとっつ捕まえてやるわ!」
アリーゼがやる気になったな。おそらく、リオンに接触してくるとは思うからな。逆に捕まえられるといいが...
「それじゃあ!炊き出しに戻りましょう」
アリーゼがそう言うとバラバラに分かれていく。そうして、アリーゼ、リオン、泉の三人だけが残った。
「しかし、炊き出しとはいえ...本当に活気がある。昨日まで沈んでいた街角とはとても信じられない」
ん?かなりの強者が近づいて来てるな。死の気配が少ないから敵ではないんだろうが...
「感謝をすれば人は幸せになって、感謝される方も笑顔になる!これが本当のオラリオの姿なのよ!ずっと塞ぎ込んでいた空も今日はこんなに晴れてる!太陽も一緒にみんなと笑ってくれているわ!だから、私達も灼熱よ!」
「なんじゃ、やけに威勢のいい女子がいると思ったら...お主達か、アストレア・ファミリア」
強者の気配の持ち主が俺たちにそう話しかけてきた。
ドワーフ...しかもこの強さ、Lv5か。じゃあこいつは...
「あ、ガレスのおじ様!」
ガレス・ランドロック、ロキ・ファミリアか。...何か変な話をしているなアリーゼ。ドワーフになりたかったとは、リオンもドン引きしているぞ。
「それにしても...お主、【鬼人】か?」
「?ああ、そうだが」
「そうか、あー、すまん。近々アイズそっちに行くかもしれん」
アイズ、【人形姫】かあの金髪のガキ。それがうちに来るって?強くなってモンスターを殺すことしか頭にない奴が?
「最悪すぎる...何とか止められないのか...?」
「...すまん」
いや、あんたが謝ることじゃないだろ。たく、あのガキ...同じファミリアの仲間に面倒かけやがって。うちに来たらたっぷり教え込んでやる。
「あんたが謝ることじゃない。だから、せめて日程だけで...っ!」
死の気配!まずいぞ、闇派閥だ!
「なんだ?」
「アリーゼ!リオン!敵襲だ、行くぞ!」
「!?分かったわ!」「!?分かりました!」
「儂も行く!」
「見つけた!あいつだ」
ピンク髪の女。強いな...Lv5。ガレスのじいさんと一緒か。だが、あの女以外は雑魚だ、たいしてこっちはガレスの他にLv.3が三人。行けるか...
「っ!【殺帝】か!」
「あぁん?ドワーフの糞爺じゃねえか!よく私の居場所が分かりやがったな!」
殺帝。闇派閥の幹部か...随分な大物が出てきたな。
「優秀な者がおるものでな!」
「はんっ!んなこたぁどうでもいい。それより、フィンの野郎はいねえのかぁ~!?」
?なぜ【勇者】を探している。
「生憎とここにはおらん。貴様の"陽動"を見越して、別の場所に網を張っておる」
...陽動。つまり、【勇者】は襲撃を予想し、敢えて、ガレスのじいさんしか置いてなかったのか。やり方が好かんな...
「あぁ~...萎えたぜ。おい、てめえら。あいつらを足止めしろ。私は帰る」
!?逃げるつもりか。今回ばかりは逃がさん!
「ヴァレッタ様!?いったい何...」
「邪魔だ」
斬。近くにいた闇派閥を斬る。
「ぎゃあ...!」
そのままヴァレッタも斬る!
「おいおい、速ぇな!Lv.4か?」
ち!さすがに受けられるか。
「私の相手をしている暇なんかあるのかぁ?周りを見てみろよ」
言われ、周りを見てみる。すると、どこかしこからも爆発の音と民衆の悲鳴が聞こえてきた。
っ!?魔剣での無差別破壊か!まずい、このままだと民衆が瓦礫に潰され死ぬ!
「ええい、兇徒どもめ!お主等、周りの者を助けろ!闇派閥は儂が何とかする!」
「俺も闇派閥をやる!お前らは他を頼んだ!」
俺はアリーゼ達にそう言い、近くにいる闇派閥から片っ端に斬っていく。
「すまんな。【鬼人】助かった」
「ああ、被害は最小限。犠牲者が出たのは俺達の力不足だが...大事にはならなくてよかった」
だが、また幹部を逃しちまったな。しかも今度は名も知られているやつを。捕まえられたら一気にこちら側に天秤が傾くんだが...そう簡単にはいかないか。
「泉さん。私は、回復魔法で民の治療に当たります」
「リオンか。分かった」
こいつ、回復魔法を持っていたのか。ふむ...こいつとダンジョンに潜ったら、マインドがある限り攻撃を受けれるってことか?今度、提案してみるか。
「それにしても...泉。よく闇派閥がいるってわかったわね?」
「アリーゼか、そうだな。俺はスキルで気配に敏感なんだ」
生の気配の知覚。生きている生物の気配が分かる。気配を隠されると少し鈍る。
死の気配の知覚。自らが死ぬほどの攻撃や力の差、相手がどれだけ人を殺しているかなど"死"を身近にし遠ざけるもの。
そして発展アビリティの気配察知。
この三つでほとんどの気配を見逃さない泉。神がこのことを知ると下手なロボットより探知性能あるじゃん、と思うことになる。
「ふふん!つまり、泉がいると隠れている闇派閥のアジトも分かちゃったりして?」
「ああ、ある"程度"はこれで潰してきた。だが、つい最近からぱったりとやつらの気配がしなくなった」
おそらく気づいたのだろう。街の近くにいると襲撃されるのが。...あの女だろう、多分。ここ数日だからな、見なくなったのは。
「そう、残念ね」
「成る程...頭のおかしい【鬼人】様は未来でも見えているのかと思いましたが...気配ですか...」
...輝夜はいちいち俺に毒を吐かないと気が済まないのか。いや、こいつは元々こうだったな。
「周りに怪しい気配はないのか?まだ闇派閥が潜んでるとか...」
「ライラ、いやそれはない。そういった気配はもうしないからな」
「そうか...ならいいんだが」
「みな、治療が終わりました」
ん、リオンが帰って来たな。
「それじゃあ、ガレスのおじ様。私達はもう行くわね」
「ああ、お主等。また明日会おう」
ギルドの一室。その部屋に壮観といえるほどの高Lvの冒険者たちが集まっていた。
ロキ・ファミリアにガネーシャ・ファミリア。あいつらは...フレイア・ファミリアか。それと...誰だ?眼鏡をかけたあの水色髪の女。あいつは分からないが、すごいな...複数人のLv5に都市最強のLv6...錚々たる面々だな。
「各"ファミリア"代表、揃ったな。ではこれより、定例の闇派閥対策会議を始める」
ギルド長のロイマンが、音頭を取り会議が始まる。
こいつ...さっきの襲撃に対するお小言から始めやがった。そんなことだから、無茶を押し付けられた猫に嚙みつかれてやがる。
「し、仕方なかろう!ゼウスとヘラが消えた今、都市の内外にオラリオの力を喧伝するのは急務!」
まあ、言ってることは理にかなってるな。俺らの力が強ければ闇派閥も今みたいに大暴れしてはいないだろう。ただ...
「てめぇの趣味の悪い席が後生大事だと、素直に吐きやがれ。その脂ぎった体で権力にしがみ付きやがって」
こいつが本当に思っていればだけどな。ん、【勇者】が【女神の戦車】を止めに入ったな。うげ~濃密な死の気配。都市最強派閥は仲が悪いな...
「もう既に帰りたい...何で初っ端から殺気で満ちてるんですか、この会議...」
あの青髪...苦労してそうだな。見た感じLvもこの中だと一番低い、気も休まらないだろう。
「ロキ・ファミリアとフレイア・ファミリアの険悪さはいつも通りでございますから。気にするだけ無駄かと~」
いつも通りか...一致団結しろとは言わないがせめていがみ合うのだけはやめてほしいが。
「だが、先の襲撃。これだけの被害で済んだのは【鬼人】のおかげじゃ儂だけじゃったら相当な被害が出ておっただろう」
いきなり俺の話になったな。
「君が【鬼人】かい。さっきの襲撃、ヴァレッタを見つけたのは君だって聞いたよ。感謝する、おかげで民の被害は最小限に済んだ」
「勇者か、感謝は不要だ。形だけの感謝など俺にはいらん」
襲撃が来ると知っていてファミリア総出ではなくガレスの爺さんしか配置してないんだ。こいつにとってあの襲撃は必要な犠牲として割り切ってるだろう。
「ちょ、ちょっと!?泉、何を言っているのよ!」
「ははは、手厳しいな。言い訳にしか聞こえないかもしれないけど、理由があるんだ」
ふぅ...つまり、魔石製品工場襲撃で"撃鉄装置"が奪われていた。こいつらは、それを爆弾の製造と判断し信者達が持っているかもしれないと警戒していた。俺たちに教えていなかったのは警備を厳重にするあまり、敵の動きを誘いにくくしたくなかったと...
「さっきの襲撃も被害の規模が分からなかったから、人を割くにも割けなかったと...」
「大した勇者がいたもんだな」
...合理的判断。理屈としては正解なんだろうが、人としては最悪だな。小を切り捨て、大を救う。一見してみればその方がいいかもしれないが、初めから見切りをつけて、救えるかもしれない奴らを切り捨てる言い訳にしかみえねぇな。
「――はい、この話題ヤメヤメ!私こんな不景気な話聞きたくないわ!嫌な気持ちになってお菓子をやけ食いしてしまいそう!」
「アリーゼ・ローヴェル...あなたという人は...」
「だってそうじゃない!みんな都市を守るために最善を尽くしているのに、それを責め合うなんておかしいわ!」
アリーゼお前...正論だな。人はそう都合のいい生き物じゃない、人のミスは蜜の味。人とはそういう生き物だ。アリーゼの言っていることは綺麗ごと、だが...
「くっくっく...ハッハッハ!相変わらず物怖じしない小娘よ!」
――空気を変えた。猫は悪態をつくが【九魔姫】に咎められた。綺麗ごとそれを言うだけの何かがアリーゼにはある。少なくとも現実だけを見る偏屈な爺より、よっぽど好感が持てる。
「清く正しい私の前に第一級冒険者さえひれ伏したわね!フフーン!さっすが私!!」
そうやって、調子に乗る癖だけはやめた方がいいと思うが...
「今日までにあった事件、及び伝達事項はこれくらいかな。誰か、ほかに共有しておきたい情報はあるかい?」
情報か...あの女と、死の気配を漂わせた男神の話はしていた方がいいだろう。
「...闇派閥側に最低でも一人、手練れがいる。恐らくは、生粋の戦士」
!?俺が会った女とは違う、別の強者だと...それも、都市最強が言うような。おいおいおい、これは...本格的にまずい。最低でもLv.7が一人、Lv.6以上が一人いるってことか!
「おい、猪」
「...【鬼人】か。なんだ?」
「そいつは、Lv.7なんじゃねえか?」
Lv.7の魔導士...恐らくヘラの残党。あれが生粋の闇派閥だったら、オラリオなぞ、既に滅んでいる。
「何故そう思う?」
「俺も会ってんだよ、Lv.7。それも、魔導士。そいつは多分ヘラの残党だ。だからその戦士の男、ゼウスファミリアなんじゃねぇの?」
活動のタイミングがかみ合いすぎている。なら、こいつらは最近オラリオに来てと考えるのが妥当だ。都市外でLv.6以上は学区のやつしか聞いたことがねぇ。
「...その魔導士の特徴は」
「性別は女、灰髪に黒のドレス。目は常に閉じていて、性格は天上天下唯我独尊の女王様。魔法の詠唱式は【福音】だ」
俺が女の特徴を言うと、ロキ・ファミリアと猪が何かに恐怖するように明らかに動揺し始めた。
「――アルフィアか!ヘラ・ファミリア【才禍の怪物】!」
あの女...アルフィアって名前なのか。
「我々も"倉庫"の制圧でその女と遭遇した。被害はなかったがガネーシャ・ファミリア総勢三十の団員が手玉に取られた」
ガネーシャ・ファミリアもか...
「...嘘じゃないみたいだね。でも、分からない。彼女が闇派閥に加担する理由が」
「分かってることは少なくとも都市を滅ぼすことが最終の目的じゃねぇってことだ。意図を隠し、質問をしたら吐いてくれた」
もう二度のやりたくはないがな。あの時の死の気配...まじで思い出したくないぜ。
「...だとすると、戦士の方はゼウス・ファミリア【暴喰】ザルドかもしれん」
「Lvは?」
「7だ」
最悪だ。最悪の予感が当たった、Lv.7が二人。俺らが勝つのは難しいぞ...
「だとしても...勝つのは僕らだ。過去の"英雄"達には負けはしない」
ち!薄っぺらいな、自分が一番思ってなさそうだぞその顔。
「さて、この話を聞いた後だが...闇派閥の新たな拠点が見つかった」
!!見つけれたということは、隠れる必要がなくなったてことか...拠点が三つ。分散しているな...戦力を集めさせないためか。
「この三つの拠点を同時に叩く」
くそ...上手く罠にかかってるようにしか見えねぇ。やっぱりいやがる、このくそみたいな脚本を描いた"神"が。
「勇者...一つの拠点に全員で仕掛けるのはだめなのか。嫌な予感がする」
「済まない。それでは本命を外した時に逃げられてしまう」
ああ、だめだ。俺たちは沼にはまっている。動けば動くほど沈んでいく沼に...
「一つはアストレア・ファミリアと泉が行くわ!」
「我々もアストレア・ファミリアと連携する。それならば頭数も十分だ」
話がどんどん詰められていく。――だが、俺にはまるで、首にある縄を少しずつ締めていくような感覚を感じてしまう。
「それでは、解散」
――大抗争まであと、3日。
ちなみに、原作だと炊き出しの襲撃の後エレンがリオンのもとにちょっかいを掛けに来ますが、エレンは泉にある程度正体がばれていると分かっていたので来ませんでした。
それと、会議でそのエレンのことを言うのを忘れていますが、Lv7が二人いるという衝撃で忘れています。