黄泉の行人。ダンジョンに行く。   作:かまくら御前

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絶対悪

――時は来た、大抗争開始。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ!」

 

斬!次々現れる、闇派閥イヴィルスを片っ端から斬っていく。

アリーゼ達は大丈夫か?心配になり、ちらっと見てみるが...

 

「【空を渡り荒野を駆け、何者よりも疾く走れ】」

 

歌が聞こえる。妖精エルフの歌が...

心配は無用だったか。俺も目の前の敵に集中しよう。

 

「【星屑の光を宿し敵を討て!】【ルミノス・ウィンド!】」

 

まるで星のような光を帯びた緑風が闇派閥イヴィルスを蹴散らしていく。

 

「魔導士でもねぇのに相変わらず馬鹿げた砲撃!敵もあらかた吹っ飛ばしたし、こりゃ楽勝だぜ。と、言いてぇが」

 

本命はこの奥だろう。感じたことのある"死の気配"を感じる。恐らく、殺帝アラクニアだろう。それと、雑魚どもに、恩恵も持っていないやつらの気配もする。

 

「お前ら、本命はこの先だ。殺帝アラクニアの気配がする。気を引き締めろ」

 

「っ!殺帝アラクニアですか...広場に襲撃に来ていた」

 

「...!皆!道が開ける。最深部!」

 

いるな...今度こそは倒してやる。

目の前、ピンク髪の女が見える。

 

殺帝アラクニア!」

 

「フィンがいねぇ...ちっ、外れだぜ。あの女、てきとーな情報寄こしやがって」

 

情報だと...俺達がここを襲撃するのが分かっていたのか...?3日前だぞ、しかもギルドの中で。まさか...内通者か。くそ、これが終わったら一度ギルド職員を問い詰めねぇと。

 

「ヴァレッタ・グレーデ!施設内は制圧した、兵士もほどんどを捕まえている!大人しく投降しろ!」

 

  「ヒャハハハ!そのセリフにハイそーしますと頷く悪党がいるかよぉ!出ろぉ、てめぇ等!」

 

 雑魚どもか...相手をしている暇はない!俺は殺帝アラクニアをやる!

 

  「アストレア・ファミリア!雑魚は任せたぞ!」

 

  「ヒャハハハ!来いよ!遊んでやるぜ!」

 

 殺帝アラクニアの懐に一瞬で近寄り、首目掛けて剣を振るう。

 斬!斬!斬!全力の斬撃を放つが全て余裕を持って止められる。

 

  「【鬼人】!援護する」

 

 シャクティが後ろから猛スピードで斬り合いの中に混じっていく。

 

  「二対一か?いいぜ、相手になってやるよ」

 

  「シャクティか!助かる!」

 

 おかげで詠唱する時間を作れる。並行詠唱もできないことはないが、格上との、斬り合いの中でできるほどまだ上達していない。

 

  「【黄泉の炎を現世に。罪、肉た...】」

 

  「あ、ああああ!」

 

 魔法の詠唱をしようとしていた俺の耳に、悲痛な叫び声が聞こえる。振り返ると、ナイフを持っている少女がアーディのもとまで来ていた。

 っ...!不味い!死の気配がするぞ、アーディがあぶねぇ!

 

  「シャクティ!すまん、抜けるぞ!」

 

  ――間に合え...!【いかづち!】

 

  「...かみさま。おとうさん、おかあさんにあわせてください」

 

  「アーディ!」

 

 ドォオオオン!!

 

 アーディに近づいた少女が爆発した。床が崩れ、瓦礫ともに落ちていく。

 

  「うそ...」

 

  「..."自決"した?」

 

  「ヒャハハハ!見てるかぁ、死神タナトスの糞野郎!!てめぇがたぶらかしたガキが、冒険者を2人道連れにしたぞぉ!!」

 

 キャハキャハと、心底愉快そうに笑うヴァレッタ。

 そして、少女の爆発が合図となりほかの信者たちも次々と爆発していく。

 

  「シャクティ、ライラ、輝夜!脱出!!」

 

 アリーゼはこの施設が爆発によって倒壊する前に、仲間達に指示を出す。だが...

 

  「アーディっ、アーディ!」

 

 絶望の表情を浮かべたリオンはアーディが爆発に巻き込まれた場所に駆け寄ろうとする。

 

  「シャクティ!アーディがっ、アーディがぁぁ...!」

 

 アーディの姉であるシャクティに向けて悲痛の叫びをあげるリオン。シャクティはその叫びを受け、現実を受け止めきれないのか茫然としていた。だが、意を決したのか顔を鬼のような形相に変えリオンを連れ施設から脱出する。

 この施設に残ったのは生死不明の二人のみ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「死ぬな!アーディ!!」

 

 瓦礫中で、男の必死な声が聞こえる。近くにいる女は血を流し気絶してる。放っておくといずれ死に至るだろう。

 死なせねぇ...!絶対に、目の前に助けられる命があるんだ取りこぼすわけにはいかねぇ...!

 

  「――【黄泉の炎を現世に...】」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オラリオが都市が燃えている。周りからは悲鳴、爆発音、聞きたくもない音ばかりがする。

 

  「あぁぁ...うあああ...!!」

 

 リオンはその光景を見て、現実だとは思いたくもなかった。つい先日まで綺麗だった街並みが、暗くとも笑っていた民が、みな燃え尽きていく。まるで、地獄に来たかのような。

 

  「さっさと剣を執れ!何を木偶と化している!今、私達が愚図でいることは許されない!」

 

 輝夜に叱咤される。だがこんな光景、絶望してしまう。体が動かない。

 

  「現実から目を逸らすな、たわけぇ!絶望の虜になるな、青二才!考えるな!動け!戦え!一人でも多くの命を救え!」

 

 だが私は...アーディどうすれば。

 

  「これ以上――阿呆鬼とアーディの二の舞を増やすな!!」

 

  「っっ...!!うああああぁぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「お前はいいぞ。風のように速い。が、そよ風如く軽過ぎる」

 

  「どわぁぁ!ぐ...!」

 

 黒甲冑の大剣を持った大男がアレンを吹き飛ばす。アレンは男に何をされたのか分からず疑問を投げつける。

 

  「...ふざけるんじゃねぇ、何をしやがった!」  

 

  「()()()()()()、いちいち驚くな。冒険者ならば、さっさと"未知"を"既知"に変えろ」

 

 撫でただけ黒甲冑の男はそう言うがアレンのLvは5。撫でただけで吹き飛ばされるなら今頃オラリオは暗黒期になぞなっていないだろう。

 

  「やはりお前は...何故、お前がここにいる!――ザルド!」

 

 ゼウス・ファミリア。Lv.7【暴喰】ザルド

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「何をしている」

 

 路地の裏。緑が髪のエルフがフードを被った女にそう問いかける。

 

  「忌むべき雑音、だが二度と聞くことのない旋律。それに耳を傾けている。私なりの拝聴にして黙禱だ。いくら煩わしくても、いざ失われるとなると惜しむ。それが人だろう?」

 

 そう言う女の足元には屍が山のように転がっている。

 

  「――貴様の所業は人のそれではない。――貴様の足元に広がっているもの、それは何だ?」

 

  「沢山の屍ガラクタ

 

 人で合った死体の山をガラクタとのさばる女。緑髪のエルフ。リヴェリアはこれ以上の問答が無意味だと悟り、魔法を詠唱する。

 

  「――もういい、消えろ。己の命をもって、その非道を償え!【吹雪け、三度みたび厳冬げんとう】――我が名はアールヴ!【ウィン・フィンブルヴェトル!】」

 

 極寒の吹雪がフードの女を襲う。その魔法の威力は都市最高といっても過言ではないだろう。これで、フードの女も凍り付き死に絶えるだろう。

 

  「【魂の平静アタラクシア】」

 

 だが、そう唱えたフードの女の魔法によってリヴェリアの魔法は無効化された。

 

  「っ...!?この魔法、まさか...!」

 

  「おおおおお!」

 

 ドワーフの男。ガレスがフードの女に突撃していく。リヴェリアはその光景を見て、不味いこのままではガレスが死ぬ!と感じた。

 

  「止まれ!ガレス!」  

 

  「【福音ゴスペル】」

 

  「ぐあああああ!」

 

 不可視の攻撃がガレスを襲い、その重厚な体を吹き飛ばす。

 

  「相変わらず喧しい連中だ。()()()から何も変わってないと見える」

 

 その声音は、懐かしむような失望しているかのような声音だった。

 

  「やはり、その唯一の"異能"貴様は!!」

 

 女のフードが取れる。出てきたのは()()に黒いドレスを着た女。

 

  「【静寂】のアルフィア!!"才能の権化"にして、"才禍の怪物"!」

 

  「生きていたのか...最強の女神の眷属ヘラ・ファミリア!!」

 

 ヘラ・ファミリア。Lv.7【静寂】アルフィア

 

   ――絶望が胎動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「五つ」

 

 誰かの声がする。何かを数えているようだ。直後オラリオに光の柱が昇った。

   ――神が送還された。

 神の恩恵を無くしたものは一般人へと変貌する。その末路は...言わなくてもわかるだろう。神の送還により、オラリオは更なる混乱を巻き起こす。

 

  「六つ」

 

 一つ、また一つと、光の柱が昇る。神の送還が止まらない。数多の冒険者が恩恵を無くし血の海に沈む。

 

  「七つ、八つ、九つ..."生贄"は終わった。さぁ、行こう――」

 

 男。邪神は前に進む、――自らの目的を遂げるために。

 

  「神々の一斉送還...こんなことができるのは!」

 

  「――聞け、創設神ウラノス。時代が名乗りし暗黒の名のもとに、下界の希望を摘みに来た」

 

 神々の送還の光をバックに、邪神は悠々と語る。その姿にオラリオの者たちは戦慄する。

 

  「"約定"は待たず。"誓い"は果たされず。この大地が結びし神時代の契約は、我が一存で握り潰す。全ては神さえも見通せぬ最高の"未知"純然たる混沌を導くがため」

 

 その姿はまさに傲慢、正しく悪。あらゆるものが憎悪の視線で男を見る。

 

  「傲慢?――結構。暴悪?――結構。諸君らの憎悪と怨嗟、大いに結構。それこそ、邪悪にとっての至福。大いに怒り、大いに泣き、大いに我が惨禍を受け入れろ。」

 

 よし!アーディ、地上だ!待ってろ、もう少しで...来た!地じょ...

 

  「――我が名はエレボス。原初の幽冥にして、地下世界の神なり!」

 

 泉が地上に出て始めた聞いた言葉がこれだった。

 

  「あ?あの男神...エレボスだと...?それに...地上が無茶苦茶になってやがる」

 

 エレボス...ギリシャ神話の冥界の神か!だから死の気配が強かったのか、冥界って言ったら日本で言う黄泉の国と同一の場所じゃねぇか。

 

  「告げてやろう。今の貴様等に相応しき言葉を。――脆き者よ、汝の名は"正義"なり」

 

 ...こいつくそが、的確に嫌なところを突いてきやがる。民を守ってきた冒険者にこそ、その言葉は聞くぞ。

 

  「滅べ、オラリオ。――我等こそが"絶対悪"!!」

 

 させねぇ...絶対に。見てやがれエレボス!――お前が言った脆き正義が牙を剥くところを!

 

  ――この日、正義は敗北を喫した。

 

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