ストックがなくなってきたので、過去編が終わった後2日ほど投稿が空くかもしれません。
アビドス高等学校、生徒会室。
「ふぅ……終わったぁ……」
彗斗は机に突っ伏した。
ロールケーキを食べ終えてから数時間。待っていたのは、甘い余韻ではなく現実だった。
借金の明細、依頼書、経費報告。
ふと壁にあるポスターが目に入る。
(……砂祭りか)
何気なくその文字を見る。
ブルーアーカイブを知っている彗斗にとって、その単語は少しだけ胸をざわつかせた。
(確か、この辺りって……)
思い出そうとする。
しかし、ゲームで見た物語だ、細かな日付までは覚えていない。
(まぁ、今できることは特にないか…)
そう思いながら、手を動かす。
「終わった〜!」
「じゃあこれで今週の分の書類は終わりだね!」
「そうですね、今日のところはこれで終わりにしましょう」
外を見る。夕日はすっかり沈み、空には星が瞬いていた。
「それじゃ、お疲れ様です。」
「お疲れー!」
「お気をつけて」
彗斗は校舎に背を向け、家に向かって歩き出した。
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砂漠の夜は静かだ。風が砂を運ぶ音だけが聞こえる。
今日は空を飛ぶほど急いでいるわけでもないし、何より疲れた。
のんびり歩いて帰る。
その時だった。
「誰だ」
「おやバレていましたか」
振り返るとそこには黒いスーツの男が立っていた。
右目は白く発光しており、そこから全身に向かって亀裂が走っている。
ゲーム知識がある彗斗は、一発で正体を理解した。
「うわ、出たよ黒服」
「初対面でそれは酷くありませんか?」
「ゲマトリアはヤバいやつの集まりなんだから扱いは雑でいいんだよ、雑で」
「おや、私だけではなくゲマトリアについても認知していると」
「まぁ、色々と」
黒服は興味深そうに見つめる。
「あなたは実に興味深い、神秘を持たずとも翼を持ち、未知の力を操る」
「そして、我々を知っている」
彗斗は肩をすくめた。
「で?何の用…いやお前のことだからどうせ契約か」
黒服は一枚の紙を取り出した。
「ずいぶん私のことを理解しているようで」
(やっぱり来たか。)
「私は観察者であり、探究者であり、研究者です。あなたの持つその未知の力に興味があるのです」
彗斗は紙を見る。
「だが断る」
即答だった。
黒服が少し驚く。
「理由を聞いても?」
「契約の穴とかをついてきて取り返しのつかないことになりそうだから」
「……」
「あと、赤ババアに目をつけられたくない」
「……。」
「それに」
彗斗は真面目な顔になる。
「俺には守りたい人がいるからな」
「だから、お前らの都合で動く気はない」
黒服は静かに頷いた。
「なるほど、にしてもマダムも知っているとは…ますます興味が湧きました」
少しの沈黙、彗斗は考えた。
(待てよ、完全に敵対する必要はないよな…)
(この人、騙すことはするが嘘はつかないんだよな…)
「なぁ、条件付きなら受けてやらんこともない」
黒服が目を細めた。
「…聞きましょう」
「俺はあなた達の仲間にはならない」
「俺の体を調べてもいいが、命の危機になるようなことはしない」
「アビドスや俺の仲間に危害を加えない」
「そして、俺の体について知ったことがあれば報告」
「あとは…、あぁ大事になことを忘れていた…ベアトリーチェに俺の存在を明かさない」
黒服は考える。
数十秒。
「面白い。」
黒服は笑った。
「いいでしょう、契約成立です」
新しく渡された、契約書にサインし黒服に渡す。
その瞬間、砂漠の風が吹いた。
「また会いましょう。」
黒服は影へ溶けるように消えた。
(……ゲーム知識持ちって、やっぱ便利だなぁ)
そう呟き、家へ帰った。
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翌朝。
「おはようございまーす。」
生徒会室へ向かう途中。
「お」
ホシノがいた。
「おはよう」
「おはようございます…」
しかし、様子がおかしい。
いつもの攻撃的なホシノが、シナシナになっている。
「どしたん?」
「……」
「ホシノ先輩?」
「そのユメ先輩と喧嘩しちゃって。」
「え?」
彗斗の心臓が止まりそうになる。
(待て待て待て)
ゲームの記憶。断片が繋がる。
砂祭り、喧嘩、ユメ、砂漠、遭難。
「ユメ先輩は?」
「そのまま一人で出ていっちゃって……」
彗斗は走った。
生徒会室の扉を開く。
ガチャ!!
誰もいない。
(うっそだおい……!)
血の気が引く。
窓を開け、外へ飛び出す。
翼を広げる。
キィィィィィン!!
赤い龍気が溢れる。
空へ、そして砂漠へ。
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何時間飛んだだろう。
砂漠を探しているがどこにもいない。
汗が流れる。
(くそっ!)
空を飛び続ける。
その時、遠くに巨大な砂煙が見えた
ゴォォォォォ!!
砂嵐だ。
(!!)
嫌な予感がした。理屈じゃない、直感だった。
「あそこか!?」
翼を大きく広げ、龍気を流し込みそのまま突っ込む。
ゴォォォ!!
砂嵐の中は砂で視界がゼロ、そして風の音で聴覚が機能しない。
顔に砂が当たり、風が身体を押し戻す。
「ぐっ!」
龍気を翼へ流す。
前へ、前へ。
数十分。
どれだけ飛んだか分からない。
そして。
「……いた!」
そこにいた。
「ユメ先輩!」
制服はボロボロになっており必死に銃を撃っている。
その視線の先には——。
ズズズズズ……
巨大な白い機械の蛇。
砂漠を這うデカグラマトン第三の預言者。
(あれが……!)
ゲームで見た。
「っビナー…!」
ビナーの口が光る。
ギィィィィィ……
空気が震える。その口が開く。
アツィルトの光だ。
(まずい!!)
ユメ先輩は動けない。間に合わない。
考えるより先に身体が動いた。
(間に合え、間に合え、間に合えぇぇッ!)
龍気を限界まで解放。今まで見たことのないほど濃い赤い光となる。
キィィィィィィィィィン!!
音速を超え、さらに加速する。甲高い音が限界まで高まり――
一瞬、世界から音が消えた。
ドォォォォォォォォンッ!!!
地面が揺れ、砂塵が巻き上がる。
そして、
轟音、爆炎、衝撃波。
舞い上がる土煙の中心から、ゆっくりと一つの影が立ち上がる。
赫い彗星と白い巨蛇。
二つの怪物が、砂嵐の中心で、正面から激突した――。
もうそろそろ過去編が終わりますね〜