青い空と赤い星   作:(눈_눈)

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1日一話ペースといったな…あれは嘘だ…


番外編2  メガネと猫娘と赤い彗星と

シロコとノノミがアビドス高校へ入学してから、一年という月日が流れた。

再び、アビドスに春が訪れる。

砂漠を吹き抜ける風はまだ少し冷たい。けれど、冬の厳しさを越えた風には、どこか穏やかで優しい温もりが混じっていた。

アビドス高校の体育館では、小さな入学式の準備が進められている。

決して豪華とは言えない。生徒の数も少なく、飾り付けも質素だ。

それでも、仲間を迎えるために皆が力を合わせて準備をする光景は、どこか温かかった。

彗斗は体育館の入口に看板を立てながら、小さく息を吐いた。

 

「去年は、ノノミとシロコの入学式だったな」

 

その言葉に、近くで飾り付けをしていたホシノが笑う。

 

「早いねぇ~もう一年経っちゃったよ」

 

シロコも作業の手を止め、小さく頷いた。

 

「ん、一年前は、記憶もなかった」

 

その言葉には、少しだけ懐かしさが滲んでいた。

ノノミもくすりと笑う。

 

「私も、最初はホシノ先輩を怖がっていましたね~☆」

 

「うへ~あれは若気の至りってことで勘弁してほしいかな~」

 

「去年の話だろ」

 

彗斗が苦笑しながら突っ込むと、その場に小さな笑い声が広がった。

その穏やかな光景を見つめながら、彗斗は胸の内で静かに呟く。

 

(……もう少しか)

 

去年の秋頃から、カタカタヘルメット団が頻繁にアビドスへ現れるようになった。

砂漠ではカイザーが不穏な動きを見せ始めている。

そして、自分は知っている、この先に何が起こるのかを。

やがて連邦生徒会長は姿を消し、一人の「先生」がキヴォトスへやって来る。

それをきっかけに、多くの出来事が動き始めることも。

本編の未来を知る彗斗だからこそ、この何気ない日常がどれほど大切なのか理解していた。

仲間たちが笑い合う時間、何気ない会話、平和な入学式。

そんな当たり前の日々は、決して永遠ではない。

だからこそ、彗斗は、目の前の光景を静かに目に焼き付けた。

春風が体育館を吹き抜け、色とりどりの飾りが小さく揺れた。

そして、新たな仲間を迎える入学式が、もうすぐ始まろうとしていた。

準備が終わり、各々待機場所で待っていたその時。

体育館の扉が開いた。

 

「失礼します!」

 

元気よく入ってきたのは、黒い髪のボブで赤いウェリントン眼鏡をかけたエルフ耳を持つ少女。

奥空アヤネ。

その隣には、腕を組んだツインテールに結んだ綺麗でしなやかな長い黒髪、

そして可愛いらしい猫耳の少女。

黒見セリカ。

 

「入学おめでとう!」

 

ユメが卒業している今、その役目を引き継いだホシノが前へ出た。

 

「今日から二人はアビドス高校の仲間だよ。」

 

アヤネは深く頭を下げた。

 

「よろしくお願いします!」

 

セリカも照れくさそうに言う。

 

「……よろしく」

 

拍手が響いた。

ノノミもシロコも笑顔だった。

彗斗も自然と笑う。

 

(ようやく揃ったな…)

 

本編の対策委員会。その全員が、ここにいる。

記念写真を撮り終え、生徒会室へ向かう。

そして、アヤネとセリカはアビドス高校最大の問題と向き合うことになる。

ホシノが資料を机に置いた。

 

「さて、まずはアビドスの現状説明かな~」

 

アヤネは真剣な顔で資料を手に取る。

一枚目。

 

「……」

 

二枚目。

 

「……え?」

 

三枚目、四枚目。

 

「えええええええ!?」

 

生徒会室にアヤネの絶叫が響いた。セリカが慌てて資料を覗く。

 

「何よ何よ!」

 

借金、借金、借金、また借金。

 

「嘘でしょ!?」

 

思わず立ち上がる。

 

(いやいやいやいや、こんなの冗談よね!?)

 

アヤネとセリカは何度も数字を見直した。

一回目、二回目、三回目。

いくら見返しても数字は変わらない。

 

「本当……なんですか?」

 

ホシノは苦笑した。

 

「本当だね~」

 

セリカは頭を抱えた。

 

「終わってるじゃない!」

 

ノノミも困ったように笑う。

 

「私も最初は驚きましたね〜」

 

シロコが小さく頷く。

 

「ん」

 

彗斗は二人を見て苦笑した。

 

「安心しろ」

 

「安心できる要素ある!?」

 

「俺たちも同じ反応だった」

 

アヤネは思う。

 

(帰っていいですか……)

 

だが、向かいを見る。

ホシノ、ノノミ、シロコ、彗斗。

皆、笑っていたがそれでも真剣にアビドスの問題に立ち向かっていた。

 

(……逃げてない、こんな状況でも)

 

その姿を見て、アヤネは深呼吸した。

 

「分かりました、私も頑張ります!」

 

セリカも頷いた。

 

「アヤネがそう言うなら、九桁の借金くらい返してやるわ!」

 

ホシノが笑う。

 

「頼もしいねぇ」

 

そして会議が始まった。

会議が始まるとシロコが先陣を切る。

 

「ん、銀行を襲う」

 

「ブフォッ」

 

いきなりぶっ飛んど提案が出てきて、思わず飲んでいた水を吹き出す。

まさか生でその発言が聞けるとは思わなかった…場所を考えて欲しいけどね!

ホシノが慌てて、シロコを止める。アヤネとセリカは完全に引いていた。

流れを変えるためにノノミが案を出す。

 

「スクールアイドルなんてどうでしょう〜☆」

 

お前もそっち側か。

 

「ちょうど可愛い新入生もいることですし…」

 

「入学初日の子をスクールアイドルにさせるな…」

 

流石にアヤネとセリカが可哀想になってくる。

アヤネとセリカの方へ目を向けると、二人で身を寄せ合いながら震えている。

 

「なら彗斗先輩はどうなんですか〜☆」

 

唐突にノノミは俺に質問を投げてくる。

流石にこれ以上ぶっ飛んだ回答をするわけにはいかない。

そう思いながら答える。

 

「ゲヘナで賞金首をかることだろ、あそこなら路地裏に入って出てきたやつを出会い頭にぶっ

 飛ばしてヴァルキューレに突き出せば、九割で金になるぞ」

 

その発言に、彗斗以外の全員が固まる。アヤネとセリカはさらに震えが大きくなっている。

 

「…なんだ、そんな変なこと言ったか?」

 

彗斗は、その様子を見ていった。

ホシノはこちらを見ながら、呆れたように笑った。

 

「……いやいや、彗斗くん、それも十分ぶっ飛んでると思うよ~?」

 

「そうです!」

 

アヤネが勢いよく立ち上がる。

 

「初めて聞きましたよ!?『路地裏から出てきた人を殴って賞金を稼ぐ』なんて案!」

 

「ゲヘナだから問題ない」

 

「一割は一般人じゃないですか!」

 

「残念ながらその一割は賞金首じゃない不良だ」

 

「それ自治できてるって言えるんですか!?」

 

アヤネの鋭いツッコミが生徒会室に響く。

その様子を見て、セリカが小さく呟いた。

 

「……あれ?この人、シロコ先輩と同じ種類?」

 

「ん、私の師匠」

 

シロコは静かに頷いた。

 

「彗斗は、私の目標」

 

「なんでこんなのを目指すの!?」

 

アヤネは思わず頭を抱えた。ノノミは楽しそうに微笑む。

 

「ふふっ♪でも、賑やかでいいですね~☆」

 

「良くないわよ!」

 

セリカが即座に否定する。

 

「この学校、大丈夫なの!?」

 

「大丈夫大丈夫~」

 

ホシノはのんびりと答えた。

 

「なんだかんだ言って、みんなアビドスのために考えてるからねぇ」

 

「そういう問題ですか!?」

 

アヤネが突っ込む。

彗斗は腕を組みながら少し考えた。

 

「……まあ、冗談はさておき」

 

「冗談だったんですか!?」

 

「一厘くらい」

 

「ほとんど本当なんですか!?」

 

またアヤネの叫びが響いた。

シロコが静かに手を挙げる。

 

「ん、真面目な案」

 

全員がシロコを見る。

 

「依頼を受ける」

 

「おっいいね」

 

彗斗は感心したように頷いた。

 

「砂漠の調査、護衛、荷物運び」

 

「それなら、ちゃんとした仕事ですね!」

 

アヤネの表情が少し明るくなる。ノノミも賛成する。

 

「地域の皆さんのお手伝いもできますし、一石二鳥ですね~☆」

 

セリカも腕を組んだ。

 

「……まあ、それくらいなら悪くないわね」

 

ホシノも笑顔で頷く。

 

「うんうん、それがアビドスらしいかな~」

 

アヤネは急いでメモを取り始めた。

 

「依頼の募集、収支の管理、必要経費の計算……!」

 

その真剣な姿を見て、彗斗は小さく笑った。

 

(やっぱりアヤネはアヤネだな。)

 

本編で知っている、何度も頭を抱えながら皆を支えてきた少女。

その姿は、入学初日から変わっていない。

一方。

 

セリカは資料を見ながら、ぽつりと呟いた。

 

「……でも、これだけ借金があるなら、本当に大変よね。」

 

その言葉に、部屋が少し静かになる。ホシノは窓の外を眺めた。

広がる砂漠。かつては栄えていたアビドス自治区。

今は、そのほとんどが砂に飲み込まれている。

 

「うん」

 

ホシノは静かに答えた。

 

「大変だよ~」

 

「……」

 

「でもね」

 

ホシノは皆を見渡した。

 

「一人じゃないからね」

 

ノノミが微笑む。

 

「はい♪」

 

シロコが頷く。

 

「ん」

 

彗斗も腕を組んだまま言う。

 

「借金なんて、ゲヘナの賞金首を1万人くらいヴァルキューレに突き出せばいいだけだ」

 

「ゲヘナから人がいなくなっちゃいますよ!」

 

アヤネのツッコミがまた炸裂する。

 

「1日で10体ぐらい倒せばいけるか?」

 

彗斗は真っ直ぐ答える。

 

「もはや人として数えていないじゃないですか!」

 

またもや、アヤネのツッコミが炸裂した。

セリカも黙って聞いている。

 

「まあ、一人だったらこの借金を返済するのは無理かもしれない」

 

彗斗は皆を見る。

 

「でも、今のアビドスには六人いる」

 

ホシノ、ノノミ、シロコ、アヤネ、セリカ、そして、自分。

 

「だから、何とかなる」

 

しばらくの沈黙。やがて、セリカがふっと笑った。

 

「……そうね」

 

アヤネも資料を抱きしめながら頷く。

 

「はい!頑張りましょう!」

 

ホシノは大きく伸びをした。

 

「よーし、それじゃあ対策委員会の初会議、終了~。」

 

その瞬間。

 

ぐぅぅぅぅ……

 

可愛らしい音が部屋に響いた。全員の視線が、一人に集まる。

 

「…………」

 

セリカが顔を真っ赤にして固まっていた。

 

「み、見るなーっ!」

 

慌てて叫ぶセリカに、部屋中が笑いに包まれる。

ノノミはにこにこしながら言った。

 

「お昼にしましょうか~☆」

 

「ん、賛成」

 

シロコが即答する。ホシノも立ち上がった。

 

「今日は新入生歓迎ってことで、みんなで食べようか~」

 

アヤネとセリカは顔を見合わせる。

借金だらけの学校。少し変わった先輩たち。

銀行強盗を提案する人もいれば、賞金首狩りを勧める人もいる。

それでも、笑い合い、助け合い、誰一人として諦めてはいなかった。

セリカは小さく息を吐く。

 

「……変な学校」

 

アヤネは微笑んだ。

 

「でも、悪くないですね」

 

春の陽射しが生徒会室に差し込む。

こうして、アビドス対策委員会の六人は、ようやく全員が揃った。

そして誰も知らない。

この穏やかな日々の先に、キヴォトス全体を揺るがす大きな運命が待っていることを。

ただ、この日の彼らは、新しい仲間と共に、笑いながら昼食へ向かっていた。

 

____________________________________________

 

それから数日後。

春の穏やかな空気が流れるアビドスの砂漠。

対策委員会の面々は、いつものように依頼をこなしていた。

そんな時だった。

 

「ホシノ先輩!」

 

アヤネが慌てて通信機を手に走ってくる。

 

「カタカタヘルメット団です! 大部隊がこちらへ向かっています!」

 

「うへ~、また来たの?」

 

ホシノは大きくため息をつく。シロコはライフルを構えた。

 

「ん、返り討ちにする」

 

セリカも銃を手に取る。

 

「やってやるわよ!」

 

ノノミはにこりと笑った。

 

「皆さん、頑張りましょう~☆」

 

彗斗は砂丘の向こうを見つめる。

砂煙。その向こうから、バイクや装甲車に乗ったカタカタヘルメット団が押し寄せてくる。

 

「ヒャッハー!」

 

「アビドスはカタカタヘルメット団がいただくぜ!」

 

その数は軽く数十。

アヤネが素早く状況を確認する。

 

「数が多いですね……!」

 

彗斗は静かに前へ出た。

 

「アヤネ、指揮を任せる」

 

「え?」

 

「全員を見て、一番効率よく動かせ」

 

アヤネは驚いた。入学してまだ数日の自分に指揮を任せるのか。

だが、彗斗は迷いなく言った。

 

「大丈夫だ、お前ならできる」

 

その一言で、不思議と緊張が消えた。

アヤネは深呼吸する。

 

「……分かりました!」

 

そして、大きく声を上げた。

 

「彗斗先輩とホシノ先輩は中央でターゲットを集めてください!」

 

「了解~」「了解した」

 

「シロコ先輩とセリカさんは左右の迎撃!」

 

「ん」

 

「任せなさい!」

 

「ノノミ先輩は後方支援! 逃げる敵を逃がさないでください!」

 

「はい~☆」

 

「私が全体を見ます! 行きますよ!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

次の瞬間。彗斗が地面を蹴った。

 

ドンッ!!

 

砂煙が舞う。

 

「なっ!?」

 

カタカタヘルメット団が目を見開いた。

 

「速っ!?」

 

一瞬で中央へ飛び込む。

拳、蹴り、盾、刀、そして翼。

使えるものを全て使って、次々と敵を吹き飛ばしていく。

 

「ぎゃあああ!」

 

「強すぎる!」

 

中央の陣形が一気に崩れた。

 

「今だよ~!」

 

ホシノが飛び出す。

巨大なシールドを構えながら敵の攻撃を受け流し、彗斗が戦いやすいように敵を誘導する。

 

「こっちこっち~」

 

「ぐわっ!」

 

二人の連携で、中央は完全に混乱していた。

それを見てアヤネがすぐに指示を飛ばす。

 

「右翼が崩れました! ノノミ先輩!」

 

「了解です~☆」

 

ドドドドドドドッ!!

 

ノノミのミニガンが火を吹く。

逃げ出したヘルメット団の足元へ、正確な掃射が叩き込まれた。

 

「ひぃぃぃ!」

 

アヤネはさらに叫ぶ。

 

「左へ三人抜けました!」

 

「ん」

 

シロコが駆け、敵の前へ回り込む。

 

「通さない」

 

パンッ!パンッ!

 

正確な射撃で二人を無力化。

残る一人。

 

「甘いわ!」

 

セリカが飛び込み、見事な一撃を叩き込んだ。

 

「ぎゃあっ!」

 

敵は転がるように倒れた。

 

「やった!」

 

だが。

 

「中央! 増援です!」

 

アヤネの声が響く。

見ると、十数人の敵が彗斗へ向かっていた。

 

「囲め!」

 

「一気にやれ!」

 

アヤネが息を飲む。

 

「彗斗先輩!」

 

だが。

 

「ちょうどいい」

 

彗斗は静かに笑った。

次の瞬間。砂煙が爆ぜた。

敵の真ん中へ突っ込む。

一人を投げ飛ばし。二人目を蹴り飛ばし。三人目を盾で殴り飛ばす。

さらに翼で、そのまま横薙ぎ。

 

「うわぁぁぁ!」

 

「ば、化け物だ!」

 

中央の敵が次々と吹き飛ぶ。

ホシノが苦笑した。

 

「うへ~、相変わらずだねぇ。」

 

「ホシノ先輩!」

 

「はいはい~。」

 

倒れた敵をさらに拘束し、彗斗を援護する。

気が付けば、敵の陣形は完全に崩壊していた。

 

「に、逃げろー!」

 

残ったヘルメット団が一斉に逃げ出す。

 

「ノノミ先輩!」

 

「はい~☆」

 

掃射。

 

「シロコ先輩!」

 

「ん」

 

狙撃。

 

「セリカちゃん!」

 

「逃がさないわよ!」

 

迎撃。

逃げ場を失ったヘルメット団は、次々と武器を捨てた。

 

「降参だー!」

 

「もう勘弁してくれ!」

 

数分後。

砂漠には、縛り上げられたカタカタヘルメット団だけが転がっていた。

アヤネは呆然としていた。

 

「……勝った」

 

セリカも目を丸くする。

 

「しかも、圧勝……。」

 

彗斗は砂を払った。

 

「終わったな」

 

「終わったな、じゃないですよ!」

 

アヤネが思わず叫ぶ。

 

「中央に一人で突っ込むなんて!」

 

「やられる前にやれば問題ない」

 

「そういう問題じゃありません!」

 

セリカも頷く。

 

「というか、あんた……」

 

彗斗を見る。

 

「本当に強いのね」

 

「伊達にゲヘナで賞金狩りをやってないからな」

 

「えぇ…ゲヘナってそんなにやばいの?」

 

アヤネも困惑している。

 

「ホシノ先輩たちから話は聞いていましたけど……」

 

戦場を見渡す。

中央を壊滅させた彗斗。それを支えたホシノ。逃げる敵を制圧したノノミ。

撃ち漏らしを確実に仕留めたシロコとセリカ。

そして、自分はその全員を動かしていた。

 

「……これが」

 

アヤネは小さく笑った。

 

「アビドス生徒会なんですね。」

 

ホシノがのんびり笑う。

 

「そうだよ~」

 

セリカは腕を組みながら、少し照れくさそうに言った。

 

「……最初は変な人たちだと思ったけど。」

 

彗斗を見る。

 

「少なくとも、あんたがシロコ先輩の師匠っていうのは納得したわ。」

 

シロコが静かに頷く。

 

「ん、彗斗はすごい」

 

「そうか?」

 

「褒められてるんだから、もうちょっと嬉しそうにしなさいよ!」

 

セリカが呆れる。そのやり取りを見て、皆が笑った。

春の風が砂漠を吹き抜ける。そしてアヤネは胸の中で思う。

 

(借金はたくさんあるし、先輩たちはちょっと……いえ、かなり変です、でも…)

 

ホシノがいて、ノノミがいて、シロコがいて、セリカがいて、彗斗がいる。

 

(この人たちとなら、きっと、アビドスを守れる)

 

そうして、新しく加わった二人は改めて知ることになる。

アビドス生徒会とは、借金に苦しむ弱小組織などではない。

仲間を信じ、それぞれの役割を果たし、どんな困難にも立ち向かう――。

砂漠で最も頼もしい、六人の仲間たちなのだと。

 

____________________________________________

 

砂漠に、夕日が沈む。

依頼を終えた彗斗は、一人、静かに空を見上げていた。

乾いた風が吹く。その風に紛れて、小さく呟く。

 

「……もうすぐか」

 

不意に、携帯端末が震える。

 

《速報》

――連邦生徒会長、消息不明。

――現在、キヴォトス全域で行方を捜索中。

 

画面を見つめたまま、彗斗は静かに目を閉じた。

 

「始まるな」

 

誰に向けるでもない、その一言。砂漠の風が、足元の砂をさらっていく。

遠く、誰もいない地平線の向こうを見つめながら、彗斗はそっと呟いた。

 

「……先生」

 

その名だけを残して。春の静寂は、ゆっくりと終わりを告げた。




ここの世界線はユメ先輩が死んでおらず、誰一人として生徒会のメンバーが欠けなかったため、
対策委員会はなく生徒会のままです。
ちなみにユメ先輩は連邦生徒会の事務員です。ネタバレになりますがシャーレに所属します。
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