辛いですね…苦しいですね…
(ᓀ‸ᓂ)<だがそれは毎日投稿を諦める理由にはならない。
――意識が浮かび上がる。
深い水の底からゆっくりと浮上していくような感覚だった。
身体が重い。
頭もぼんやりする。
夢を見ていた気がする。
砂漠。空。赤い光。そして巨大な翼。
だが次の瞬間、全身に走った鈍い痛みによって意識は一気に現実へ引き戻された。
「っ……」
思わず顔をしかめる。
特に背中が痛い。
翼の付け根付近が熱を持ったように疼いている。
無理やり飛行したことと、銃弾を受けたこと、さらに墜落したことが原因だろう。
ゆっくりと目を開く。最初に見えたのは白い天井だった。
見覚えはない。当然だ。
彗斗はここへ来てまだ一日も経っていない。
「……ここ」
喉が渇いていた。掠れた声しか出ない。
首を動かして周囲を見る。
白いカーテン。棚に並ぶ医療用品。
簡易ベッド。窓から差し込む夕陽。保健室のような場所だった。
「生きてる……?」
思わず呟く。
墜落した時は本気で死んだと思った。
あの高さから落ちたのだ。普通の人間なら助からない。
だが生きている。
手も足も動く。翼もちゃんとある。
痛みは酷いが致命傷ではない。
「キヴォトス人みたいに固くなっているのか……?」
そんなことを呟きながら身体を起こそうとする。
だが。
「いっ!?」
背中に激痛が走った。慌ててベッドへ倒れ込む。
無理だ。
今はまだまともに動けない。
「最悪だ……」
ため息を吐く。
その時。
窓の外に広がる景色が目に入った。
砂漠。埋もれた建物。アビドス自治区の景色。
「……アビドス?」
思わず声が漏れた。そこで記憶が一気に蘇る。
カイザーPMC。追跡。飛行。銃撃。被弾。墜落。
そして――。
気を失う直前にうっすらと見えた緑がかった薄い水色の髪の少女。ピンク色の髪の少女。
「ユメ先輩とホシノ……」
ゲームの中でしか知らなかった人物。
特にユメは、原作開始時には既に故人となっている存在だ。
そのユメが目の前にいた。生きていた。
その事実だけで未だに現実感がない。
すると。
ガラッ
部屋の扉が開いた。彗斗は反射的に身体を強張らせる。
だが入ってきた人物を見て少し安心した。
「起きたんだね」
優しい声。緑がかった薄い水色の長い髪。柔らかな笑顔。
梔子ユメだった。
両手にはトレイがある。
その上には水と軽食が乗っていた。
「……ユメ先輩」
思わず呟く。
ユメはきょとんとした。
「私のこと知ってるの?」
「あ」
まずい。やってしまった。
初対面のはずなのに名前を知っている。
どう考えても不自然だった。
彗斗は慌てて誤魔化す。
「あ、いや、その……アビドスの生徒会長だったから…」
「ふ〜ん?」
ユメは首を傾げる。
どうやらそこまで疑われてはいないらしい。
助かった。
ユメは椅子を引き寄せるとベッドの横へ座った。
「気分はどう?」
「痛いです」
「だよね」
苦笑する。
「空から急に落ちてきたもん」
「やっぱり落ちてきたんですね……」
「うん」
ユメは頷く。
「ものすごい音だったよ」
「空から赤い光が落ちてきたと思ったらドーンって」
「ははは……」
笑うしかなかった。
完全に落ちてきた流れ星扱いである。
ユメは水の入ったコップを差し出した。
「飲む?」
「ありがとうございます」
受け取る。
喉がカラカラだったので一気に飲み干した。
生き返る。本当に生き返る。
「ふぅ……」
一息ついたところで、ユメが優しく微笑んだ。
「それで」
来た。
彗斗は直感する。
絶対に来ると思っていた。
「君のことを聞いてもいいかな?」
やはりそうだった。ユメの表情は柔らかい。
だが生徒会長として必要な確認はするつもりらしい。
「名前は?」
「天宮彗斗です」
「年齢は?」
「16歳です」
「ふむふむ」
メモを取る。見覚えのある手帳だ*1。
――なんだか事情聴取みたいだ。
「どこから来たの?」
その質問に詰まる。答えられない。
正確には答えても信じてもらえない。
異世界から来ました。ゲームの世界に転生しました。
そんな話を誰が信じるのか。
「……分からないです」
結局そう答えた。
ユメは少し驚いたようだった。
「分からない?」
「気付いたら砂漠にいました」
これは嘘ではない。本当にそうだ。
「その前の記憶は?」
「あります」
「じゃあ家族は?」
「います」
「帰る場所は?」
「あります」
「でも帰れない?」
「……はい」
部屋が静かになる。
ユメはしばらく考え込んだ。
そして。
「そっか」
それ以上追及しなかった。彗斗は少し驚く。
もっと問い詰められると思っていた。
だがユメは違った。
「言いたくないこともあるよね」
そう言って微笑む。
その優しさが逆に胸に刺さる。
「ありがとうございます」
思わずそう言っていた。
ユメは少し照れたように笑う。
「お礼を言われるほどじゃないよ」
その時だった。
ガラッ!!
勢いよく扉が開いた。
「ユメ先輩!」
聞き覚えのある声。ピンク色の髪。ショットガンを背負った少女。
小鳥遊ホシノだった。
「ホシノちゃん!」
ユメが立ち上がる。
「大丈夫だった?」
「もちろんです」
ホシノは即答した。
だが制服は砂まみれだった。肩にも小さな擦り傷がある。
どう見ても無傷ではない。
「それ怪我してるよね?」
ユメが指摘する。
ホシノは視線を逸らした。
「気のせいです」
「気のせいじゃないよ」
「気のせいです」
「嘘だ」
「嘘じゃないです」
いつの間にか漫才みたいになっていた。彗斗は思わず吹き出しそうになる。
ホシノはそんな彗斗に気付いた。
「……起きてたんですね」
警戒心の混じった視線。やはり簡単には信用していないらしい。
当然だろう。空から翼の生えた男が降ってきたのだ。
怪しくないわけがない。
「助けてくれてありがとうございました」
彗斗は頭を下げた。
ホシノは少しだけ目を丸くする。予想外だったらしい。
「別に」
ぶっきらぼうに答える。
「助けたのはユメ先輩です」
「でもホシノも守ってくれたんだろ?」
そう言うと。ホシノは少し黙った。
そして。
「……聞いてたんですか」
「なんとなく」
「面倒ですね」
そう言いながらも、どこか照れているように見えた。
ユメはそんな二人を見て笑う。
「仲良くなれそうだね」
「なれません」
「なれないです」
見事に声が揃った。数秒の沈黙。
そして。
「ふふっ」
ユメが笑う。つられて彗斗も笑う。
ホシノだけが不満そうな顔をしていた。
だがその空気はどこか心地良かった。異世界に来てから初めてだった。
安心できる場所にいると思えたのは。
外では夕陽が沈み始めている。砂漠が赤く染まる。
天宮彗斗くんの見た目は、
青い目で赤い瞳孔をしています。バルファルクと同じですね。
髪の毛は黒色ですが、一部銀色となっています。身長は175です。
他に気になることは気軽に質問してください。