青い空と赤い星   作:(눈_눈)

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#5  天に届かぬ赤い光

翌朝、俺は紹介してもらった空き家の天井を見上げながら目を覚ました。

静かだった、本当に静かだった。

前の世界なら朝から車の音だの人の声だのが聞こえていたはずなのに、

ここでは風の音しかしない。異世界に来たんだなぁ、と改めて実感する。

いや、今さらか。空から落ちて翼生えてる時点で十分実感してるわ。

そんなセルフツッコミをしながら身体を起こす。

背中の傷は痛みは無くなったがまだ違和感が残る、しかし普通に飛べる程度には回復していた。

カーテンの隙間から差し込む朝日を見ながら軽く伸びをする。

 

「……今日もいい天気!」

 

思わず呟く。

紹介された家は一見砂まみれだったが、中を見るととても綺麗だった。

正式にアビドスの生徒になった後、住む場所を提供してもらえた。

紹介された家は思ったよりちゃんとしていた。もっとこう、廃墟寸前のボロ家を想像していたのだが普通に住める。むしろ快適だ。

待てよ。

アビドスって借金まみれなんだよな?なんで家あるんだ?

いや聞くのやめよう。「この家も借金の担保です」とか言われそう。

いや流石にないか。

そんなことを考えながら学校へ向かう。

____________________________________________

 

生徒会室に着くと、ユメ先輩とホシノが待っていた。

 

「おはよう、彗斗くん」

 

「おはようございます」

 

朝から通常運転である。

その後、俺は二人に連れられて街へ出た。目的は武器。

当然だ、この世界で武器なしは自殺行為に近い。

武器がないという時点で不良のカモにされてしまう。

銃器店へ入り、壁一面に並ぶ銃を見た瞬間、

内心興奮しまくってテンションがおかしなことになっていた。

男の子だから仕方ない。

 

「何か欲しい武器ありますか?」

 

ホシノが聞く。

俺は考える。

銃は確かに強い。そしてかっこいい。しかしどうせなら、自分の強みを活かした武器を使いたい。

なら自分の強みは何だ。

翼、機動力、身体能力…つまり、接近戦。

結局、俺が選んだのはホシノの盾と同じくらいのサイズの盾と太刀だった。

 

「ずいぶん変わった組み合わせですね」

 

「なんかしっくり来た」

 

本当は違う。俺の頭の中には一つのイメージがあった。

銀色の翼、赤い龍気、圧倒的スピードで潰す戦闘スタイル

そう…男の子のロマン全部乗せである。

 

____________________________________________

 

学校へ戻る途中、ホシノがぽつりと言った。

 

「試してみます?」

 

学校へ戻る途中。

 

ホシノがぽつりと言った。

 

「試す?」

 

「さっきから使いたくてウズウズしているように見えますよ…」

 

「そんな分かりやすかったか?」

 

「ちゃんと顔に出てたよぉ〜」

 

「はぁ…模擬戦がしたいなら相手になってあげますよ」

 

その瞬間、俺の中の戦闘本能が反応した。

 

____________________________________________

 

校庭へ移動する。砂漠の風が吹く。

向かいにはホシノ。肩にショットガン。

しっかりとこちらを捉えている。油断は一切感じない。

 

「始めます?」

 

「いつでもいいですよ」

 

その瞬間。

 

ダンッ!!

 

地面を蹴り、翼が開く。

 

キィィィィン――

 

翼から赤い粒子が出て、舞身体が一気に加速する。

ホシノとの距離が一瞬で消える。

 

ガキ!!

 

刀を振り下ろす。ショットガンで弾かれる。

手が痺れる。だが止まらない。

盾を叩き込む。

ホシノは横へ回避する。

回避したホシノへ向かって翼をを突く。

 

ドゴォッ!!

 

ホシノは後ろにへ滑り、砂が舞う。

 

(お?効いた?効いたぞ?)

 

「…なるほど」

 

ホシノが少し驚く。

その瞬間、ホシノのギアが上がった。

それに喰らいつくようにこちらも再び加速する。

 

ダンッ!!

 

再加速。

 

ヒュンッ!!

 

刀を横薙ぎ。避けられる。

なら盾。

 

ガァン!!

 

振り抜く。

避けられる。

さらに踏み込む。

 

ギィィン!!

 

キィン!!

 

ガガガガガッ!!

 

金属音が連続する。

押している。

間違いなく押している。

ホシノが距離を取る。

追う。

逃がさない。

完全に近接戦へ持ち込めていた。

翼の機動力と盾の防御性能が想像以上だった。

しかしホシノも負けじと反撃する。ショットガンが火を吹く。

 

ドォン!!

 

盾で受けきるが衝撃が走り腕が痺れる。

 

(…っ危っぶねぇ〜、さすがブルアカの最強格というだけあるわ〜)

 

しかし、ここからだった。

ホシノの動きが変わる。さらにギアが上がる。

避けられる。また避けられる。さらに避けられる。

 

(あれ?さっきまで当たってたよね?)

 

ヒュンッ

 

空振り。

 

ヒュンッ

 

また空振り。

 

ヒュンッ

 

また。

おい待て。なんか学習速度おかしくない?

いや違う、経験の差だ。

俺が戦闘をした回数なんてせいぜい数回。この人は何千回何万回と戦ってきている。

格が違う。

 

ダンッ!!

 

全力加速。勝負を決める。

正面突破。盾を前へ。

刀を振り上げる。

次の瞬間。

ホシノが半歩ずれた。本当に半歩。

それだけ。

視界から消える。

 

「え?」

 

ゾワッ――

 

背筋が冷える。反射で盾を回す。

 

ガァァァン!!

 

衝撃。

吹き飛ぶ。

 

ゴロゴロゴロゴロッ!!

 

砂の上を転がる。

痛い。普通に痛い。

何今の。

漫画なら「見切った」って言われるやつだ。

立ち上がるが、息が荒い。

ホシノはほぼ無傷。嫌になるくらい余裕そうだった。

その後も続けた。

 

ダンッ!!

 

ギィン!!

 

ガァン!!

 

ドォン!!

 

ヒュンッ!!

 

キィィン!!

 

攻撃、回避、防御、反撃

全て読まれる。全て捌かれる。

全ての行動が読まれている。

 

(まだだ…まだ終わらんよ…!)

 

龍気を翼に溜める。おそらく自分に出来る最後の一撃。

翼の先端へ圧縮された龍気。

赤い光、脈動。

そして、放つ。

 

ドォォン!!

 

当たった。そう思った。

だが。爆煙の中から。

 

「今のは少し危なかったですね」

 

ホシノが現れる。服を少し焦がしながら。

紙一重、本当に紙一重。

そして、次の瞬間ショットガンの銃口が額に当たっていた。

終了。

完敗だった。

悔しい。めちゃくちゃ悔しい。

だが納得もしていた。

身体能力だけじゃ勝てない。

戦闘経験の差。

それを嫌というほど思い知らされた。

 

____________________________________________

 

静寂、風だけが吹いていた。

 

「負けた……」

 

地面に座り込みながら呟く。

悔しい、本当に悔しい。あと少しだった。

ほんの少し、ホシノが笑う。

 

「初心者にしては強かったですね」

 

「最後のどうやって避けたんですか?」

 

「予備動作があったのでそれでもギリギリでしたが

 

本当にギリギリだったらしい。ユメ先輩も苦笑している。

 

____________________________________________

 

その後、校舎へ戻る。

そして、アビドスの現状について説明された。

借金、莫大な借金、国家予算かよって額。

もちろん俺は知っている。ゲーム知識だ、だが知らないふりをする。

 

「つまりお金がない」

 

「そういうことだねぇ」

 

「なるほど」

 

少し考える、そして言う。

 

「賞金稼ぎやりません?」

 

沈黙、ユメ先輩が即答した。

 

「ダメ」

 

早い、光の速さだった。

 

「危険すぎるよ」

 

「でも金は必要ですよね」

 

「それでも」

 

ユメ先輩は首を振る。

当然だ、俺はまだ転入したばかり。

だが、そこで意外な人物が口を開いた。

 

「私は賛成ですよ」

 

ホシノだった。ユメ先輩が振り向く。

 

「ホシノちゃん?」

 

「さっき戦ったから分かりますよ」

 

ホシノは珍しく真面目な顔をしていた。

 

「この人は強いですよ」

 

「でも」

 

「少なくとも普通の賞金首相手なら問題ありませんよ」

 

ユメ先輩は黙り込む。しばらく悩み長い沈黙の末、小さく息を吐いた。

 

「……絶対に無茶しないこと」

 

「了解」

 

「危なくなったら逃げること」

 

「了解」

 

「定期連絡」

 

「了解」

 

ようやく許可が下りた。俺は思わず笑う。

ゲヘナ…問題児の巣窟、トラブル製造機のテーマパーク。

賞金首も多い。稼ぐならあそこだ。

 

(さて…まずは小遣い稼ぎといきますか)

 

そうして俺はアビドスの借金返済への第一歩としてゲヘナへ向かうことになった。




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