青い空と赤い星   作:(눈_눈)

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#6  ゲヘナに瞬く赤い閃光

翌朝、目が覚める。

天井を見上げる。……うん、知らない天井だ…。

 

「いや違う違う、今アビドスにいるんだぞ…」

 

昨日から住み始めた住居はやはり慣れないな、と寝ぼけながらしみじみ思う。数日前まで普通に学校行ってゲームして漫画読んでた一般人だったはずなのに、今では砂漠の学校に住み、翼を生やして、借金まみれの学校のために賞金稼ぎデビューしようとしている。

 

(高校生になってこんな砂漠で一人暮らし、そして学校は借金まみれ…、うーんこう考えるとやっぱアビドスて過酷すぎない?アビドス生は逞しいんだなぁ)

 

そんなことを思いながら身体を起こし、背中を軽く動かす。

 

シャッ

 

銀色の翼が広がる。

痛みはない、違和感もほとんど消えた。龍気も問題なく流れる。

昨日ホシノに散々吹っ飛ばされたはずなのに、一晩寝たらほぼ回復している。

 

「これが若さか…」

 

思わず呟く。昨日のような激しい動きをしたのに朝起きると疲労感が全くないという感覚は小学生以来だ。いや、擦り傷とか打撲痕はどこいった?明らかに怪我の治る速度が早すぎる。

まるでゲームのようにベットで寝たら、HPが完全に回復する仕様そのものだ。

やはりこの体は便利だなぁ、としみじみ思う。

 

(喉乾いたな…)

 

ベッドから降り、体を伸ばした後キッチンへと向かい水を汲み窓へ向かう。

窓を開け、風を浴びながら水を飲む。朝日が眩しい。

 

「ぷはー今日もいい天気⭐︎」

 

そう呟きながらも窓から見える景色は未だ慣れない。

雲ひとつない快晴の空、太陽に照らされ熱気を感じる砂漠、そして遠くに見える白い柱、

サンクトゥムタワー。日本の住宅街に住んでいた俺には想像もつかない景色だ。

そう思いながら今日すべきことを思い出す。

 

(そういや今日はゲヘナで賞金首狩りか…)

 

ゲヘナ学園。学園都市キヴォトスでトリニティ総合学園、ミレニアムがk*1……コホン

ミレニアムサイエンススクールに並ぶキヴォトスTOP3のマンモス校。

自由と混沌を校風としており、銃撃戦が日常茶飯事に起きているためキヴォトスの中でも

治安は非常に悪い。説明するだけで頭痛くなってきた。あの学園だけ雰囲気が世紀末だろ。

ともあれアビドスの借金を減らすため、ゲヘナへ向かうための準備を済ませる。

盾、太刀、スマホ、賞金首を縛るための縄、財布——。

 

(そういやポケットの財布に金いくら入ってたっけ?)

 

財布を開く。

 

「……うーん、スッカスカ!」

 

閉じた。

見なかったことにしよう。アビドスの借金も大概だが、俺の財布もかなり深刻だった。

今日の目的は一つ。賞金首を捕まえ、金を稼ぐ。

借金返済への第一歩である。

そう意気込み、駅へ向かった。

 

____________________________________________

 

電車に揺られる。窓の外をぼんやり眺める。景色が流れていく。

アビドス。どこまでも見える砂漠。

改めて思う。

キヴォトスって広い。

ゲームだとマップをポチッと押したら移動していたが、実際は普通に電車移動である。

前世の知識だがシロコは4000kmを3週間で走破できるらしい。そのシロコが縦断するには数ヶ月かかるらしい*2。ちなみに過酷な自転車ロードレースとして有名なツールドフラ◯スは23日間で約3500km移動するらしい。

やっぱキヴォトス人っておかしいわ。

そんなこんな考えているうちにゲヘナ自治区に入っていたようだ。

自分一人しかいなかった車内にも人が数人いた。

女子高生、ロボット、犬——。

…いや待て。

女子高生が銃持って犬が新聞読んでる光景をなんで受け流そうとしているんだ?

やっぱりこの光景に違和感なく受け入れてる俺もだいぶ毒されてる。慣れって怖いな。

そのまま揺られていると、アナウンスが流れた。

 

『お客様にお知らせいたします。ただいまゲヘナ中央駅において線路が爆破されたため、当電車は南ゲヘナ駅に停車した後、運転を見合わせします。運転再開見込みは13時40分頃の予定です。お急ぎのところ大変ご迷惑をおかけします。』

 

「はぁ…またか…」

 

新聞を読んでいる獣人が言う。

 

(え?今またかって言った?これが「またか」って言える頻度で起きるの?)

 

駅に着いたらすぐに爆発音やら銃声が聞こえるだったり不良に絡まれるくらいは覚悟していた。

しかし、目的の駅にすら着けないのは予想外だった。

(予定通りに進んでる。順調だな)と思っていたさっきまでの俺の姿はお笑いだったぜ。

どうやら自分は思っていたよりゲヘナを舐めていたらしい——。

 

____________________________________________

 

その後南ゲヘナ駅で降りた俺は、空を飛んでゲヘナ中央駅まで向かった。

……電車より飛んで向かった方が早かったな。

空を飛び目的地に向かって数分、ゲヘナ中央駅に到着する。

 

「……。」

 

爆発音、発砲音、怒号

 

「治安終わってない?」

 

思わず口に出た。知ってた。でも実際見ると破壊力が違う。

想像の三割増しくらい治安が終わってる。学園自治区って何だっけ。

これ自治できてるって言えるの?北斗の拳のモヒカンが走ってても違和感ないぞ。

 

「……帰りたい。」

 

まだ到着して十分経ってない。しかし帰れない。

アビドスの借金、ユメ先輩、ホシノ、そして俺の財布。

働かなければ。

人通りの少ない路地へ入る。目的は高い場所へ飛ぶこと。屋上から賞金首を探す。

この体になってから視力もかなり良くなった。今なら1km先にある黒板の内容を板書できそうだ。

これだけの視力があるならやはり高いところから一望できた方が見つけやすいと思った。

何より、効率的、目立たない、「合理的ね」と心の中の会長が言う。

 

(計算通り、完璧〜♪)

 

と心の中で呟いたその時。

 

「おい。」

 

はい、知ってた。ここはゲヘナ、人気のない路地に入ったらそりゃ絡まれるわ。

とりあえず振り向く。

三人、見るからに不良。ニヤニヤしている。明らかにカツアゲ目的だろう。

 

「あー……。」

 

思わず空を見た。そして心の中でつぶやく。

 

(次にお前は「そこのお前、痛い目見たくないなら金置いていけよ」と言う!)

 

「そこのお前、痛い目見たくないなら金置いていけよ」

 

まじか。どこかのジョジ◯と似たようなことをしようとしたらガチでできたぞ。

やっぱスケバンやらヘルメット団やら考えてることは同じだな。

俺は少し考えた。

盾を見る。そして太刀を見る。

……使う必要ある?

正直この程度の相手なら、翼だけでやれると思った。

そう言い翼に力を込める

 

「悪い」

 

翼を広げる。

 

キィィィンーー

 

銀色の翼が広がり、赤い粒子が舞う。

 

「俺も金ないんだわ」

 

ダンッ!!

 

地面を蹴る。

 

キュィィィィン!!

 

身体が前へ飛ぶ。速い。

地面と壁が近いためいつもより速度を感じる。

 

「なっ!?」

 

懐へ潜り、翼を半分畳む。そして身体を回転。

 

ドゴォッ!!

 

翼の側面が腹へ叩き込まれる。

 

「がっ!?」

 

吹き飛び壁にめり込む。

 

ガァン!!

 

ヘイローが消えた。気絶したようだ。

 

リーダーっぽいやつがこちらに銃口を向ける。

冷静に考えろ。昨日ホシノが言っていた。

 

『彗斗』

 

『どうしたんです、ホシノさん』

 

『明日賞金首を狩りに行くんですよね』

 

『まぁ…はい』

 

『相手が銃を持っている時は銃口の向き、そして相手の手の動きを意識した方がいいですよ』

 

『…ゲヘナに向かう俺を心配してくれるんですね!』

 

『違います!!』

 

今思うとあれって照れ隠しだよな。ハッ!もしかしてホシノは俺に惚れてる*3!?

ホシノに言われた通り銃口の向きそして引き金を引く時の些細な手の動きを見る。

 

(右)

 

ヒュン!!

 

顔のすぐ横を弾が掠める。

翼を薙ぐ。

 

バシィッ!!

 

手首に直撃させる。

 

「…っ痛!」

 

銃が宙を舞う。

間合いを詰める。

 

ゴッ!!

 

首筋に当たる。

その場に倒れる。気絶したようだ。

 

一瞬で二人がやられた様子を見た三人目は逃げた。

賢い、でも。

 

キュィィィンーー!!

 

飛ぶ。

翼から赤い炎が出る。

狙いをつけそのまま直進する。

 

「うわぁぁぁ!?」

 

ドガァァッ!!

 

勢いのまま翼で叩きつける。

砂煙が舞い、静寂が戻る。

戦闘終了。

 

「……。」

 

倒れた三人を見る。一応加減はしたが死んでないか確認する。

三人とも息はしている。全員一撃で倒れてしまったため、正直死んでないか不安だった。

この光景を見たら面倒なことになるのでそのままビルの屋上へ飛ぶ。

風が気持ちいい。そして景色がいい。ゲヘナが一望できる。

スマホを取り出す。昨日買ってもらった物。文明の利器最高。

ヴァルキューレ警察学校の賞金首情報を開く。

顔、特徴、賞金額を確認する。

スマホから目を離し、賞金首を探す。

人、車、ロボ、屋台、喧嘩、人、犬の獣人、バイク、賞金首。

 

「あ」

 

いた、普通にいた。取り巻き付きで、歩いている。

緊張する。こういう時は深呼吸。

 

 

キィィン

 

うん?今なんで翼が反応した?ていうか胸が赤く光ってるんだけど!?

え、怖…、いや今は考えなくていいや、賞金首をどう狩るか考えないと。

正面突破か?いや却下だな、あの路地は狭すぎて速度を活かせない。逃げられる可能性がある。

大通りでたら捕まえられるけど、その場合目立ってしまう。今はまだ姿を晒したくない。

考えろ。周り観察しろ。経験不足を勢いだけで補うな。

あの場所は死角が少ない、あるとするなら…上空!

ならやることは一つ。

 

ダンッ!!

 

飛ぶ、高く、もっと高く、そして狙え。

賞金首に目を向ける。一気に決めるため龍気を翼へ流す。

 

キィィィィン!!

 

いつもより赤い粒子が溢れ、一気に加速する。

落ち着いて、ズレを修正する。

距離…300、280、240、200、

シールドを構え、落下に備える。

150、90、

賞金首が振り向く、しかしもう遅い

30、

取り巻きも気付く。

10、

シールドに力を込める。

 

ドゴォォォォォン!!!

 

空気が震え、砂煙が舞い、地面が揺れる。

取り巻きが吹き飛ぶ。

一人。二人。三人。そして四人

賞金首に完全直撃。

静かになり、砂煙が晴れる。

倒れている四人に近付く。息をしている。全員気絶しているようだ。

スマホで再度賞金首の顔を確認する。

完全一致。

 

「よし」

 

(早く賞金首をヴァルキューレに持っていかないと)

 

これだけの音を出したら爆発音が当たり前のゲヘナでも人が集まる。

流石に四人全員を担ぎながら飛ぶのは無理なため賞金首だけ縄で縛って担ぐ。

思っていたより軽い。これならいつものように飛べる。

翼を広げる。

 

キィィィンーー

 

そのまま空へ。

ヴァルキューレへ向かう。

初仕事成功。

そう思いながら、俺は赤い粒子を空へ散らして飛び続けた。

 

____________________________________________

 

 

ヴァルキューレに着き、腕で担いでいる気絶している賞金首を下ろして、肩に担ぎ直し

ヴァルキューレ警察学校の中に入る。

中に入った途端、入り口近くの見知った顔の職員がこちらに駆け寄ってくる。

薄い金髪に大きなケモミミそして特徴的なギザ歯、尾刃カンナだ。

 

「そちらの担いでいる方は?」

 

賞金首を下ろす。

 

「賞金首です。」

 

「なるほど…そちらの方はこちらで回収するのでこちらでお待ちください」

 

「ありがとうございます」

 

カンナさんは礼をして、賞金首を担ぎ奥の方へ行ってしまった。

 

(焦った〜!ここで原作キャラと会うのは予想外だったわ〜!)

 

内心ものすごい興奮している。小さくガッツポーズをした。

そうこうしているうちにカンナさんが戻ってきた。

照合が済み、情報と一致していることが確認されたらしい。

ピロン

通知が来た。事前に登録していた口座に入金されたらしい。スマホで入金額を見た。

 

「おお。」

 

思わず声が出た。初めての賞金狩り、かなりの量をもらえた。

それでもアビドスの借金に額に比べると焼け石に水。

それでも、一歩進んだ。この事実が少し嬉しかった。

出口へ向かう。

翼を広げ、空を見る。

帰ろう、アビドスへ。

ユメ先輩に報告しよう。ホシノにも。

初めての賞金稼ぎ。初めての報酬。初めて、アビドスの借金返済に貢献できた日。

 

「さて。」

 

赤い粒子を空へ散らしながら、俺は翼に力を込め空へ向かって加速する。

*1
ミレニアムガクエンオトセコタマ

*2
シロコ(ライディング)の絆ストーリーより

*3
違います




なんてことだ……!一話の文字数増加が止まらない…!加速する!
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