アロナは紫封筒を出してください。
アビドスへ帰った頃には、空はすっかり夕焼けに染まっていた。
シュゥゥゥ……
翼を広げたままゆっくりと着地する。
「おかえり、彗斗くん!」
真っ先に出迎えてくれたのはユメ先輩だった。
「初仕事どうだった?」
「何とかなりました…」
そう言ってスマホを取り出し、振り込み画面を見せる。
「おおー!」
ユメ先輩が目を輝かせる。
「すごいすごい!ちゃんとできたんだね!」
「まぁ……色々ありましたけど。」
「怪我は?」
「ありません」
正直言って、ゲヘナに賞金狩りに行って怪我をせずに帰ってくる自信は、
いくらこの体でもなかった。だから怪我をせず、帰ってこれたのは幸運だと言える。
とまあれ夕食を済ませ、自室へ戻る。そしてベッドへ座り、翼を眺めた。
「さて」
賞金稼ぎは成功。初めてにしてはよくできたと思う。
だが、
(俺、自分の身体のこと何も知らなくね?)
思い返す。ホシノと戦った時に咄嗟で出た、謎の弾。
賞金首を狩りに行こうとした時に出た、全身に龍気が巡る感覚、そして赤く光る胸。
すべてバルファルクがやっていた行動と似ている。いや完全に一致している。
(あれを自分で制御できれば、ホシノに…いやもっと高みへいけるはず…)
窓を開け、外へ出る。人気のない砂漠。
翼を広げる。
キィィィン……
(まずはホシノと戦った時に出た、謎の弾?を練習するか…)
あの時の記憶を思い出し、咄嗟にした行動を再現する。
龍気を流す。胸から翼へ。そして留める。
すると翼がだんだんと赤く、光が強くなっていく。熱が籠り始める。
自然と翼が形を変える、いや体が覚えているように勝手に動く。
そして翼の先に赤い粒子が集まる。
「…今!」
バスケットボールくらいの大きさの赤い光が翼から放たれる。
バシュン!!
飛んだ、赤い光が一直線に砂丘へ向かう。
ドォン!!
砂が大きく舞い上がった。
「……」
しばらく黙る。着弾した箇所を見る。直径2mくらいのクレーターができており、
直撃した場所には龍気がバチバチと火花を散らしている。
「…これは、中々…」
思っていたより簡単にできた。難しい技だと思ったが予想に反して楽にできた。
やっていることは簡単だ、飛ぶ時は龍気を翼から放出し続け、推進力を得て飛んでいる。
さっき放った弾は龍気を翼に留めて圧縮し、放っている。
(バルファルクも放っていたな…名前は確か龍気弾だったな)
そう思いながらを龍気弾を放った翼を見る。
何もない。さっきまで赤く光り輝いていたのが嘘のようだ。
「……」
(これかなり便利だな、銃とは違ってリロードがない、つまり龍気が途切れない限り無限にうてる、これは練習のしがいがありそうだ)
そして練習を続け数時間が経つ。
さっき身につけた龍気弾はかなり上達していた。
身につけた当初より、溜めてから放つまでの間隔がとても短くなっており、
威力も見違える程高くなっていた。具体的にはバスケットボールくらいの大きさがバランスボールくらいになっており、クレーターの大きさもほとんど二倍くらいの大きさになっていた。
(こんな感じかな、そろそろあっちの技も練習するか)
今度は大きく息を吸う。
キィィィィン!!
胸が赤く光り、赤い粒子が溢れ出す。龍気が活性化している。
暖かい、全身に龍気と共に熱が流れる。翼の先もうっすらと赤く光っている。
一歩踏み出す、その瞬間分かった。
力が増している。そのまま辺りを走る。
(体が軽い、向かい風を受けているようだ)
どうやら身体能力が上がっているようだ。それなりの距離を走ったのに、疲労を感じない。
翼を使った飛行はどうだろうか。
キィィィィンーー!
いつもより音がでかく、翼も赤く光っている。龍気にいつも以上のエネルギーを感じる。
そして飛ぶ、速い、いつもより加速力が高い。最高速度も速くなってる。
(バルファルク…!すごい!!君の翼は僕の持っていた両手両足より自由だ…!)
まずいまずい、あまりの開放感にテンションがおかしくなっていた。
しかし、これだけ出力が上がっているなら龍気弾の威力も上がっているだろう。
そう思いながら、ゆっくりと着地する。
「……ふぅ」
身体を落ち着け、活性化している龍気を翼へ流し込む。
その瞬間——、
翼が赤く、眩しいほどに光る。今までにないほど翼から熱を感じる。
(圧縮、圧縮、龍気を圧縮!)
翼の先端に龍気が圧縮される。そして狙いを定める。
衝撃に備え、体に力をこめる。
「…っ」
そして限界を迎える。
ギュィィィン!
放った龍気弾はもはや弾と呼べるものではなかった。
線——。
そう放ったものは光の線だった。
(何だ今の…かっけぇ!)
自分がビームのようなものを出したという事実に興奮する。
興奮が収まらないまま、着弾した場所は熱によって若干光っており龍気も相まって赤くなっている。クレーターの大きさは予想より小さかったが、龍気弾のクレーターより深さが3倍ほどになっていた。ちなみに直径は5mくらいだ。
(さすがに生徒相手に放てる威力ではないな…)
その瞬間、体からみなぎっていた熱が引いていくのを感じた。
(…そろそろ限界か)
あれだけ上昇量が多いのだ。効果時間が限られているのは当たり前だ。
事実、無限と言える生命エネルギーを持つ古龍のバルファルクでさえ、
龍気活性状態を長時間維持できないのだ。
(この技?いや形態か?とりあえず名前はどうしようか…、龍気活性形態…いや安直すぎるな、何かいい名前は…そういやバルファルクの装備スキルにいい感じの名前があったな、名前は確か…)
(…龍気変換)
そう呼ぶことにした。
龍気をそのまま身体へ流すのではなく、龍気を圧縮してから身体に流す技
これもまた便利だ。制限時間は10分くらい。しかも制限時間を過ぎた後、疲労感が一気に押し寄せてくるなどといったデメリットもない。まさに使い得といった形態だ。
そうこう考えているうちに身体の熱が完全に引く。
「まぁ」
空を見る。そこには夜空を埋め尽くすほどの星が見える。
「今日のところは終わりかな」
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翌朝。
アビドス高校、生徒会室。
机の上には、山のように積まれた書類があった。
「……うぅ」
小さく唸りながら、ユメはペンを置いた。
「ひぃん…疲れたよぉ…」
「まだ半分も終わってませんよ、ユメ先輩」
こんなことを言っているが、ホシノも退屈そうにしている。
その隣では、彗斗が黙々と書類を書いていた。
(流石にずっと書類と睨めっこはキツイな…)
判子を押しながら、心の中で呟く。
(シャーレの先生はこの量の書類を毎日のように捌いているのk?)
そう思いながら、手を動かす。
ペラッ…ペラッ…
判子、サイン、判子、サイン
ひたすら同じ作業を続けているうちに、彗斗は考えるのをやめた。
その時だった——。
「よし!」
ユメが勢いよく立ち上がった。
「休憩にしよう!」
ホシノも顔を上げる。
「まぁ…いいでしょう、かれこれ3時間も書類を書いていますしね…」
「残っている書類はいいんですか?」
彗斗が尋ねる。
「根を詰めすぎても効率が悪いよ!適度な休憩は必要なんだから!」
ユメ先輩は胸を張った。
「それもそうですね」
珍しく、ホシノもユメ先輩の提案に賛同した。よほど書類仕事がキツかったのだろう。
「というわけで!」
ユメの目が輝く。
「甘いものが食べたいな!」
「いいとは思いますけど、このアビドスにスイーツを売ってる場所なんてありませんよ」
ホシノが事実を突きつける。
「」
固まるユメ。
「…もしかして、また何も考えずに言った…とかでは、ありませんよね…」
ユメ先輩が冷や汗をかいている。
(助け舟を出した方が良さそうだな)
「……そういえば、トリニティはスイーツが有名でしたよね。」
その瞬間、ユメとホシノの目が丸くなった。
「正気ですか?」
ホシノが思わず聞き返す。
「ここからトリニティに行くまで何時間かかると思っているんです?帰ってくる頃には夕方ですよ?」
「それは電車を使った場合だ」
「アビドスからトリニティに行くのに1番時間がかからないのは電車ですよ?」
ホシノは事実を言う。そう、それは事実なのである。一般キヴォトス人の場合は—。
「ホシノ…お前は一つ見落としているものがある」
「…っは!」
どうやらユメ先輩は理解したようだ。
「この翼は何のためにあると思っているんだ?」
「なるほど…」
どうやらホシノも気づいたようだ。
「俺がトリニティまで買いに行ってやるよ、この翼ならトリニティまで二十分くらいで着く」
ユメ先輩とホシノが期待に満ちた顔でこちらを見ている。
彗斗は立ち上がり、財布を確認する。
(賞金首の金が残っててよかった〜、これだけあればお嬢様学校のトリニティのスイーツも買えるでしょ)
「じゃあ、買ってきます」
ユメが満面の笑顔を向ける。その後ろでホシノも照れくさそうにしている。
「お願いね」 「…お願いします」
「任せてください。」
そう言って、生徒会室を出た。
廊下を歩きながら、一人考える。
(さてトリニティか、男ということがバレたら流石にまずいか)
(とは言っても顔を隠せる物ないんだよなぁ…、フードで何とかするしかないか…)
そうしてなるべく見られないように上着のフードを被る。
そうこうしているうちに校舎を出る。
砂漠の風が吹いた。
「よし。」
空を見上げて、彗斗は呟く。
「行くか…トリニティ」
そして彼は、トリニティ自治区へ向けて、飛んだ。
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その頃、生徒会室ではユメ先輩が空に飛んでいった赤い光、天宮彗斗を見ていた。
「彗斗くん、無事に買えるかなぁ」
「どうでしょうね」
ホシノは椅子に戻り、また書類を進める
「ですが」
「うん?」
「彼は大丈夫ですよ、強いですから」
ユメも小さく笑った。
「そうだね。」
二人は再び机に向かった。
「帰ってくるまでに、書類を進められるだけ進めましょう」
「えぇ~」
「ユメ先輩」
「ひぃん」
そうして、アビドスのいつもの日常は続いていく。
バルファルクの設定が便利すぎる!
やろうと思えばヒノム火山からデカグラマトン編で出た氷海地域にまで出せます。
さすが古龍やね。