トリニティ自治区上空。
赤い光を引きながら、天宮彗斗は空を駆けていた。
「おぉ……」
眼下に広がる景色に思わず声が漏れる。
白を基調とした建物。綺麗に整備された街並み。噴水に花壇、そしてあれは…教会だろうか。
(同じキヴォトスとは思えねぇ……アビドスなんて砂と借金と廃墟だけなのに……)
少しだけ理不尽を感じながら、人目につかない路地裏へ着地する。
翼をしまい、風圧で捲れたフードを再び深く被る。
「さて」
目的は一つ。
ユメ先輩とホシノへのスイーツ。
(確かトリニティはスイーツが有名だったな、ミラクル5000とかもここのどこかで売ってんのかなぁ…まぁ問題はどこに売ってるか知らないことだけど)
適当に歩き始める。その時だった。
パンッ
乾いた銃声がかすかに聞こえた。
「……?」
続けて声が聞こえる。
「金を出せって言ってんだろ!」
彗斗は音の方向を見る。
路地裏で三人の不良生徒が、一人の少女を囲んでいた。
(……またカツアゲか、やっぱトリニティもキヴォトスなんだな…)
少し考える。
(放置するのは後味悪いな)
ため息をつく。
「はぁ……」
路地裏へ入る。
「おい」
不良たちが振り向く。
「あ?」
「何だテメェ」
「その子、嫌がってるだろ」
「関係ねぇだろ!」
銃口が向き、マズルフラッシュが見える。
パンッ!!
銃弾が飛ぶ。
彗斗は半歩横へ動く。
「遅い」
一人の懐へ飛び込む。
ドゴッ!!
腹に拳を叩き込む。
「がっ!?」
一人脱落。
「この野郎!」
二人目が突っ込んでくる。
バシィッ!!
翼で叩き飛ばす。
直撃。壁に激突し、動かなくなった。
残る一人。
「ば、化け物……!」
逃げようとする。
「逃がすか」
地面を蹴る。
一瞬で距離を詰める。
首根っこを掴み、そのまま地面へ叩き込む。
ドスン!!
「降参する!」
「…まぁいいか」
三人は泣きながら残り二人を担いで逃げていった。
助けられた少女は何度も頭を下げる。
「あ、ありがとうございました!」
「気をつけて」
少女も路地から去っていく。
(さて、スイーツ探しに戻るか)
その時。
「少し、お待ちください」
後ろから声がした。
振り向く。
そこには一人の少女がいた。
黄色味がかった薄い茶色の長い髪、優雅な立ち姿、そして腰あたりから生えた翼。
「私は桐藤ナギサ、トリニティ総合学園ティーパーティーの一員です」
(マジか…ここで出会うのか)
ナギサは静かに言う。
「先程の戦闘、見させていただきました」
「……」
「あなたは何者ですか。」
「アビドス高等学校、天宮彗…子*1です」
ナギサは少し驚いた。
「アビドス……」
「それで、何の目的でトリニティへ?」
(誤解されてるよなこれ…)
彗斗は正直に答えた。
「スイーツを買いに来ました」
「……」
「甘いものが食べたいなと、アビドスにはスイーツがあまり売ってないので」
「……」
少しの沈黙の後、ナギサは小さく笑った。
「ふふっ予想外でしたね、いきなり空から現れたのですからもっと重要な目的があるのかと」
「どうして俺が空から来たと…?」
「私の近くでトリニティの対空防御システムに何かが引っかかったと、連絡が来たので」
(やらかしたぁ〜!そういやあったな対空防御システム!エデン条約編で巡航ミサイルを素通りさせてたから、印象になかったよ!)
ナギサは微笑んだ。
「まぁその程度ならいいでしょう…私がご案内しますよ」
「え?」
「トリニティのスイーツなら、多少は詳しいので」
こうして二人は街を歩く。
「あのお店はケーキ、こちらはクッキー」
そしてナギサは一軒の店を指差した。
「私のおすすめとしてはこちらの店のロールケーキです」
(まぁ、ナギサならやっぱロールケーキだよな)
店へ入り、一本丸ごとのロールケーキを購入。
「案内してくださり、ありがとうございます」
「いえ、皆さんで楽しんでください」
買い物を終えた彗斗は頭を下げた。
「助かりました」
「また機会がありましたら」
「はい」
彗斗は再び路地裏へ。誰もいないことを確認し、翼を広げた。龍気が流れ翼の先端が赤く光る。
キィィィィン――!
赤い光が空へ駆け上がる。
____________________________________________
その後、ティーパーティーの会議*2が終わった後、ナギサは窓から空を眺めていた。
「やっほ〜☆ナギちゃん」
聞き慣れた声を聞き振り向く。
「…ミカさん」
ミカが近付いてくる。
「どうしたの?そんな考え込んだ顔をして」
「今日、不思議な方に会いまして」
「へぇ?」
ミカが首を傾げる。ナギサは少し笑った。
「翼を持った子でした、トリニティのような翼ではなかったのでゲヘナの生徒がまた入ってきたのかと思いましたが、どうやらアビドスの生徒のようで…」
「アビドス?どこ?それ」
「昔はとても栄えていましたが、砂漠化の影響で廃れた場所ですよ」
ミカの質問にナギサが答える。
「話を戻します、そのアビドスの生徒が不良に絡まれていたトリニティ生を助けたのです」
「そのときに彼女は翼から赤い光を出して、銃を使わず肉弾戦だけで三人の不良を制圧したのです」
ミカは少し考えこむ。
「へぇ…強いんだその子…今度会ってみたいな~」
ナギサは空を見る。
「縁があればまた会えますよ」
____________________________________________
その頃、
アビドス高等学校。
キィィィィン――
赤い流星が帰ってきた。
「戻りましたよ〜」
「おかえりー!」
ユメが駆け寄る。
「買ってきた?」
「モチのロンですよ」
箱を机へ置く。
「おぉ~!」
ユメの目が輝く。ホシノも覗き込む。
「これは……ロールケーキですね。」
「案内してくれた子が教えてくれたんだ、『ここのロールケーキは絶品です』ってね」
「へぇ」
切り分けて、三人で席につく。
「いただきます!」
一口。
「おいしい~!」
ユメが満面の笑みを浮かべる。
「これは……確かに美味しいですね。」
ホシノも驚いていた。彗斗も一口食べる。
(うまっ…何これ、ちょっと砂漠育ちには刺激が強すぎるな…)
「彗斗くん!」
「はい?」
「また食べたい!」
「ユメ先輩。」
ホシノが満面の笑みで答える。
「その時はまた彗斗くんに買ってきてもらいましょう。」
「なんか俺、パシリにされてません?」
「嫌?」
「……」
二人を見る。嬉しそうにロールケーキを食べている。
「はぁ…わかりましたよ…また今度、買ってきますよ」
「やったー!」
夕日が差し込む生徒会室、甘いロールケーキを囲みながら。
今日もまた、アビドスの穏やかな一日が過ぎていくのだった。
なぜ、トリニティの対空防御システムに引っかかった、不審人物をナギサは案内したのか…答えは彗斗が助けたカツアゲされていた子が正実に連絡し、主人公とナギサが会話している途中で到着していて、ナギサがそれに気づいたから。なぜ出てこなかったのか、理由はティーパーティーフィリウス代表候補のナギサの近くで戦闘するのは危険だから。ロールケーキを買った後人気のない路地に行ったところで捕縛しようとしていたが、路地に入った時には飛んで行ってしまった。みたいなことが裏では起きていました。
後書きが長くなってしまいすみませんm(._.)m