第18章「到達」
戦線は、崩れかけていた。
ガイガン(FW) はすでに戦い方を変えている。一度通じた動きには付き合わず、その先を潰す。踏み込みも間合いも噛み合わず、前線は確実に押し込まれていた。
「下がれ!一度切る!」
G4ヴォルタ の指示に、
「チッ……分かってる!」と G5イグアス が返すが、流れは変わらない。
司令部が静かに告げる。
「前線維持不能域に到達……崩壊します」
その中で、ただ一機だけが違う動きをしていた。
「……まだだ」
V.Iフロイト はすでに“先”にいる。追うのではなく、先に立ち、流れを止めている。踏み込み、正面から衝突する。押し切れない。だが崩れない。
「……いいな。それでこそだ」
その拮抗が、戦線の最後の支点だった。
「V.Iが戦線維持中……しかし限界です!」
一拍の沈黙の後、司令部が決断する。
「最終手段を投入する」
地面が弾ける。
轟天号 が地中から突き上がり、地盤ごと抉る。ガイガンの足場が崩れ、巨体がわずかに揺らぐ。
「撃て撃て!!止めるな!!」
G1ミシガン
砲撃が集中し、一瞬だけ押し返したように見える。だが次の瞬間、振り下ろされた刃が衝撃となって前線を薙ぎ払う。
「……来るぞ」
G4ヴォルタ が前に出る。
「ここで受ける。下がるな!!」
正面から迎え撃つ構え。
「馬鹿者が!!受けるな、崩されるぞ!!」
G1ミシガン の怒号が飛ぶ。
間に合わない。衝撃が直撃し、ヴォルタの機体が押し返される。それでも姿勢を崩さず踏みとどまり、「……なめんじゃねぇ!!」と食いしばる。
「空域確保——特空機、投入」
上空から降下する二機、特空機1号 セブンガー と 特空機2号 ウインダム。セブンガーがブースターを噴かし無理やり間合いを詰め、「……持つ」と低く言い放って掴みかかる。そのまま腕部を回転させ、削りながら押し込む超硬芯回転鉄拳で動きを縛る。
完全には止まらないが、確実に鈍る。
「角度取る、撃つよ」
ウインダムが高速で回り込み、レーザーと誘導弾を連続で叩き込み、さらに接近して高回転硬芯鉄拳で削る。
「いい連携だ。少しはやるじゃないか」
V.IVラスティ
「ですが……まだ足りませんね」
V.IIスネイル
確かに削れている。だが決定打にはならない。
やがてウインダムの出力が落ち、「出力落ちる……!」という声と同時に動きが鈍る。
「……持たせる」
セブンガーが即座にバッテリーを接続し、出力を回復させる。その間も拘束は解かない。回転を止め、距離を詰めたままブースターを最大まで吹かし、硬芯鉄拳弾を叩き込む。
その衝撃で、ガイガンの巨体がわずかに沈む。
その瞬間を、誰よりも早く捉えたのが V.Iフロイト だった。
轟天号が崩した足場、特空機が削り拘束した動き、前線が繋いだ時間——すべてを前提に、一直線に踏み込む。迷いはない。
衝突の中で放たれた一撃は深く通り、ガイガンの動きを初めて明確に止めた。
「……通るな」
その一言とともに、戦場の空気が変わる。確かに流れは傾いた。あと一歩で届く——誰もがそう感じた次の瞬間、ガイガンの眼が光り、すべてを振り切るように再加速する。
衝撃が走り、フロイトは弾かれ、セブンガーの拘束は引き剥がされ、ウインダムも距離を取らされる。
静寂が落ちる。
誰もすぐには動けない。
「……ここまでか」
G1ミシガン が低く呟く。
轟天号、特空機、前線、そしてフロイト。人類が出せる力はすべて重なっていた。それでも、届かない。
確かに届いていた。あと一歩のところまで来ていた。だが、その一歩が遠い。
ガイガンは、まだ立っている。
■第18章「到達」終