第20章「異常」
ガイガンを撃破した戦場には、ようやく終わりの気配が漂い始めていた。しかし、誰一人として気を緩めてはいない。G1ミシガン は周囲の損耗を確認しながら戦場全体を見渡し、V.Iフロイト は機体を静かに佇ませたまま、まだ何かを見極めるように動かない。
勝利しているはずだった。だが、その実感だけがどこか遅れている。戦場そのものが、まだ終わっていないと告げているようだった。
その違和感を断ち切るように、司令部の通信が割り込む。
「別戦域にて緊急事態発生。地点D-7、前線部隊壊滅……繰り返す、壊滅です」
空気が一瞬で張り詰める。
「なんだと……?」ミシガン
送られてきた映像には、半壊した市街地が映っていた。炎と煙に覆われ、戦線の形はすでに崩れている。その中で、一つの巨大な影が確認される。
だが次の瞬間、それは画面から消えた。
ノイズ。カメラ切替。別の地点に、同じ影がすでに存在している。建造物が崩れ、地面が抉れ、被害だけが後から追いかけてくる。
「速い……いや、違う」
「位置が繋がっていません。追跡不能です」
さらに別の映像では、地面の下から出現し、わずかな時間だけ姿を晒すと、また消える。レーダーも熱源も一致しない。
「地下移動……それも不規則です」
「ガイガンとは別物だな」ヴォルタ
「なんだあれは……」イグアス
ミシガンは短く息を吐き、即座に命令を下す。
「通常部隊じゃ追えん。遊撃を回せ」
「了解。遊撃部隊ストーム、投入します」
戦場は切り替わる。
市街地はすでに崩壊寸前だった。煙が視界を遮り、炎が広がり、敵の位置が確定しない。それでも破壊だけは正確に進んでいる。
その中心で、一瞬だけ巨体が姿を現す。
ジラ
だが、その姿もすぐに消える。次の瞬間には別の建造物が崩れ、まるで戦場そのものを移動しているかのように位置が変わる。
そして、それだけでは終わらなかった。
瓦礫の隙間、崩れた道路、地下構造の裂け目——あらゆる場所から、小さな影が一斉に動き出す。同じ挙動、同じ速度、同じ消え方。それらが視界のあらゆる方向に散らばり、同時に消え、同時に襲いかかる。
幼体。
一体ではない。群れだ。
正面の敵を捉えた瞬間、別方向から衝撃が来る。迎撃が追いつかず、防御の意味が薄れていく。
「なんだよ……まだいるのかよ……!」
現地部隊の混乱がそのまま伝わる。
「小型個体を多数確認……数、把握不能!」
「増えてる……いや、最初からいたのか……!?」
戦場の構造そのものが崩れていく。敵の位置が確定しないまま、被害だけが積み上がっていく。
そのとき、一発の銃声が響いた。
幼体の一体が弾き飛ばされ、動きを止める。
「……ちょこまかと」
瓦礫の上に、一人の兵士が立っている。
「ストーム2より各員へ!!」
声が戦場に叩きつけられる。
「対象は群れだ!!だが関係ない!!」
わずかな間。
「まとめて叩き潰すぞ!!」
遠方から応答が返る。
「了解。問題ない」
(ストーム3)
「了解。ここは任せろ」
(ストーム4)
もう一人は何も言わない。
すでに前に出ている。
気づいた時には、最前線に立っている。
遊撃部隊ストーム。
戦場に、新しい流れが生まれる。
■第20章「異常」終