EDF 怪獣戦記   作:究極神黎斗

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第25章「綻び」

第25章「綻び」

北米上空の戦線は、まだ崩れてはいなかった。

むしろ表面上は押している。低空を維持する大型武装ヘリ部隊は損耗を出しながらも編隊を立て直し、機銃掃射でラドンの小型個体を確実に押し返していた。撃墜に固執せず、進路を潰すことに集中している。その判断が効いている。地上への侵入は抑えられ、戦場の底はまだ守られている。

中空ではLCが空域を切り分け、HCがその“押し上げ”を支えていた。ラドンの群れは完全には崩れていないが、密度は確実に削られている。自由に飛べてはいない。進路は制限され、流れは人類側に寄っている。

その流れの中で、エクドロモイが確実に仕事をしていた。

MG型が弾幕を張り、空間そのものを狭める。PG型が上から圧をかけ、逃げ道を限定する。動きが鈍った個体は軌道が単調になる。その“先”にEP型が入り込む。止めるのではなく、通り道に立つ。勢いのまま叩き込み、体勢を崩させ、そのまま戦線の外へ押し出す。撃破ではない。だが、戦場から排除するという意味では十分だった。

実際、機能している。

誰が見ても、押していた。

その確信を決定的にしたのが、バルテウスの投入だった。

上空に浮かび上がった機体が、ほとんど間を置かずにミサイルを展開する。次の瞬間、空が覆われる。誘導は正確で、群れの逃げ道を先に潰す。直撃でなくともいい。爆発の圧で軌道を歪ませ、空間ごと削り取る。その連続によってラドンの密度が一気に落ちる。

空が開く。

それまで重なっていた影が剥がれ、視界が広がる。

この瞬間、戦場の誰もが同じことを思った。

——取り返せる。

だが、その感覚に最初に違和感を覚えたのは、前線のLCだった。

狙いは合っている。照準も問題ない。だが、撃ったはずの射線が、ほんのわずかに届かない。誤差と呼べる程度のズレ。それが一度ではなく、繰り返される。

機体の問題ではない。風でもない。

何かが、“外からズラしている”。

その違和感が言葉になる前に、別の形で現れる。

低空のヘリ部隊の一機が、不自然な挙動を見せた。回避ではない。衝突でもない。何もない空間で機体が弾かれたように揺れる。その直後、遅れて衝撃音が通り過ぎる。

そして後方の一機が、反応する暇もなく爆散した。

何が起きたのか、理解が追いつかない。

だがアースガロンだけは、すぐに反応した。

上空。

高速で接近する反応。

視界に一瞬だけ映る影。

デルタンダル

直線的な突入。しかし速さが違う。照準が追いつく前に通り過ぎ、掠めただけで装甲に傷を残す。

「……速いな」

それだけ言って、再び構える。

今度は追わない。視線を外さないまま、次に来る位置を読む。音の遅れ、空気の歪み、わずかな軌道の癖。その“先”に照準を置く。

二度目の突入。

今度は掠めるだけでは終わらない。

わずかに当たる。

完全な命中ではない。それでも十分だった。デルタンダルの軌道がほんのわずかに乱れる。そのズレが、次の進路を限定する。

「……そこか」

捉えられる。

そう判断した瞬間だった。

別方向から、もう一つの反応が来る。

同じ速度、同じ軌道。

別個体。

反応が遅れる。

衝撃が入り、アースガロンの姿勢が崩れる。そのほんの一瞬で、低空と中空の間に“穴”ができる。

そこへ、ギャオスが流れ込む。

これまで抑え込まれていた群れが、一気に圧を取り戻す。

エクドロモイが即座に対応に入る。弾幕を張り、進路を制限しようとする。だがギャオスの動きが変わっている。直線で来ない。散開し、個別に動き、狙いを絞らせない。

連携が、一拍ずつズレる。

そのズレが、致命的になる。

上空ではバルテウスが再び空域制圧に入る。ミサイルが展開され、発射される。しかしここで、はっきりと異変が出る。

弾道が揃わない。

誘導自体は機能している。だが精度が足りない。爆発が散り、空間を削りきれない。密度が落ちる。

「……誘導が乱れている」

その原因が、ようやく共有される。

遠方に浮かぶ影。

ガゾート

直接攻撃しているわけではない。だが、電波を喰い、ロックを狂わせ、戦場全体の精度をわずかに落としている。

完全な妨害ではない。

だが“完全でないこと”が、逆に厄介だった。

すべてがほんの少しだけズレる。

その積み重ねで、戦場のリズムが崩れていく。

LCのタイミングが合わない。

エクドロモイの連携が噛み合わない。

ヘリの回避が一瞬遅れる。

それまで“流れ”として成立していたものが、形を失い始める。

押していたはずの戦線が、目に見えない形で後退する。

誰かが呟く。

「……おかしい」

その通りだった。

だが、まだ崩れてはいない。

アースガロンは再び立て直し、上空を睨む。そこにはデルタンダルが旋回している。

一体ではない。

二体でもない。

三つの影が、同じ軌道をなぞるように動いている。

速さが増えているわけではない。

だが、“対処する対象”が増えている。

それだけで、戦場の難易度は跳ね上がる。

それでも、まだ止まってはいない。

人類側は、まだ戦っている。

だが確実に、何かが噛み合わなくなっている。

その違和感が、静かに戦場全体へ広がっていった。

■第25章「綻び」終

 

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