EDF 怪獣戦記   作:究極神黎斗

3 / 29
第3章 優勢

第3章「優勢」

初撃破の報告が広がってから、戦場の空気は確実に変わっていた。

怪獣は、止められない存在ではない。

時間と手段さえ揃えば、対処できる対象だという認識が広がっていく。

もちろん被害が消えたわけではない。だが、防衛線は以前よりも長く持ちこたえ、崩されても立て直せるようになっていた。

“戦い方”が、ようやく形になり始めていた。

都市外縁の防衛ラインでは、その変化がはっきりと現れている。

バルガを前面に据え、その後方に火力を集中させる陣形。怪獣の進行を止め、その間に一点へ攻撃を集める。単純だが、確実に効果のある戦術だった。

そこへ、新たな個体が現れる。

ゴロザウルス

地面を蹴り上げながら高速で接近してくるその姿に対し、防衛線は崩れない。

進路上にバルガが踏み込み、正面から受け止める。完全に止めることはできないが、速度は確実に落ちる。

その一瞬で、砲撃が集中する。

側面、脚部、関節。動きを削ぐことだけに狙いを絞る。

ゴロザウルスは体勢を崩し、そのまま方向を変える。

撤退だった。

撃破には至らない。

だが、防衛線は維持されている。

この結果が意味するものは大きかった。

人類はついに、“戦場をコントロールし始めている”。

この流れをさらに押し進めるため、EDFは新たな戦力を投入する。

バラム

歩行要塞。

単体で戦うのではなく、“戦場そのものを作る”ための兵器だった。

展開と同時に、周囲一帯に火力が行き渡る。死角はなく、近づけば確実に削られる。怪獣にとっては、ただそこに存在するだけで進路を制限される領域となる。

やがて、その効果ははっきりと現れ始める。

怪獣が近づかない。

あるいは、近づいても押し返される。

こうして、人類は初めて“守れる場所”を手に入れる。

“制圧域”の成立だった。

制圧域は一箇所で終わらなかった。

主要都市を中心に展開され、それぞれが点として機能する。そして次第にそれらが繋がり、線となり、面となっていく。

避難は進み、補給も安定する。

人類の活動圏が、わずかずつ取り戻されていく。

それは確かに、“優勢”と呼べる状態だった。

だがその一方で、別の変化が進んでいる。

制圧域の外側。

そこでは、怪獣同士の接触が明らかに増えていた。

これまで互いを避けていた個体同士が、ぶつかり始めている。縄張りの境界が曖昧になり、競争が激化しているのだ。

その戦いは、人類の戦闘とは規模が違った。

地形が変わり、環境そのものが書き換わる。

だがその変化は、制圧域の内側には届かない。

人類は、“見えている範囲”で勝ち始めていた。

そして、それが錯覚であることに気づかない。

ある制圧域。

バラムが展開し、安定した状態が続いていた。

避難も完了し、補給も機能している。

戦線は落ち着き、久しぶりに“日常に近い時間”が戻りつつあった。

そのときだった。

地面が揺れる。

小さな振動ではない。

明確な“下からの圧力”。

一箇所ではない。

複数地点で、同時に。

次の瞬間、地面が割れた。

出現する。

メガロ

防衛ラインの“内側”から。

想定外だった。

制圧域は外からの侵入を前提に設計されている。内側からの出現には対応していない。

至近距離。

回避も展開も間に合わない。

バラムが砲門を向ける。

だが近すぎる。

直撃。

構造が大きく揺れる。

同時に、外側からも怪獣が接近してくる。

制圧域は二方向から圧力を受ける。

それまで“絶対”だった防衛が、音を立てて崩れ始める。

人類はまだ知らない。

これは偶然ではないことを。

そして、この一撃が“崩壊の始まり”であることを。

■第3章「優勢」 終

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。