第8章「分岐」
ガイガンの襲撃以降、戦場は立て直されることなく、そのまま歪んだ状態で動き続けていた。
部隊は再編され、LCとHCによる新しい陣形も維持されている。だが、どこか噛み合っていない。連携は成立しているはずなのに、戦場全体としては“機能していない”感覚が残っていた。
その違和感の中で、ガイガンが再び姿を現す。
ガイガン(FW)
これまでと同じく高速で接近し、正面からではなく側面へと回り込む。その動きは予測されていたはずだったが、実際には一歩遅れる。LCの間を抜け、HCの射線から外れ、最も薄い部分へと自然に入り込んでくる。
迎撃に出たのはストライカー・エウレカだった。
ストライカー・エウレカ
今回は単独ではなく、周囲をLCが固めている。空間を制限し、逃げ場を削ることで、動きを“狭める”狙いだった。
実際、その効果は出る。
ガイガンの動きは完全ではないにせよ制限され、これまでのように自由には動けなくなる。そのわずかな遅れを捉えて、ストライカーが踏み込む。
正面から接触する。
だが、それでも決定打には至らない。浅い打撃の直後にガイガンは体勢をずらし、逆に斬撃を返してくる。
ストライカーが距離を取り、戦線は再び膠着する。
捕まえきれない。だが、自由にもさせきれない——そんな中途半端な均衡が続いていた。
同じ頃、別の戦場ではまったく異なる異変が進行している。
崩壊した都市の内部。
そこでは戦闘の痕跡がほとんど残らないまま、機能だけが静かに失われていた。
ジラ
姿を明確に捉えた報告は少ない。だが確実に、補給拠点や通信設備といった“戦場を成立させる要素”が優先的に消えていく。
HC部隊が投入され、索敵と迎撃が試みられる。
しかし、接触が成立しない。視認した時点ですでに位置が変わっており、追撃は常に一歩遅れる。
セブンガーも投入されるが、同様だった。
近接戦に持ち込めない。そもそも戦闘の間合いに入らせてもらえない。
この段階で、ようやく一つの違和感が共有される。
ジラは、戦っていない。
正確には、“戦う必要がないように動いている”。
都市は破壊されていない。
だが、機能しない。補給も指揮も成立せず、結果として戦場そのものが維持できなくなる。
ガイガンが戦線を壊し、ジラが戦場を消す。
二つの脅威は性質こそ違うが、結果として同じ方向へと収束していた。
司令部には、ほぼ同時に二つの報告が上がる。
一つはガイガンによる戦線の崩壊。もう一つは、原因不明の拠点機能停止。
関連性は明確ではない。
だが、それでも結論は早かった。
戦場が分かれている。
それも、単純な距離の問題ではない。“性質の異なる戦い”として分離している。
その認識のもと、指揮系統は即座に再編される。
戦力を分ける。完全に。それぞれに対して、別の戦い方を組み立てる。
一方に集中すれば、もう一方が崩れる。
ならば両方を同時に維持するしかない。
それは、防衛ではなく“運用”の問題だった。
戦場をどう保つか。どう機能させ続けるか。
だが、そのどちらの戦場にも、まだ決定打は存在しない。
ガイガンは捕まらず、ジラは捉えられない。
戦いは続いているが、解決には至らない。
戦場は分断されたまま、さらに深く沈んでいく。
■第8章「分岐」 終