第9章「収束」
ガイガンへの対策は、確実に前へ進んでいた。
LCによる空間制御と、イェーガーによる捕捉。この二つを軸にした新しい戦術は、少しずつ形になり始めている。
戦場。
再編された部隊が展開する中、ガイガンが現れる。
ガイガン(FW)
これまでと同じく、高速で戦線を横断する。
だが今回は違う。LCがあらかじめ配置され、動線を絞っている。完全には止められないが、進めるルートは限られている。
そのわずかな制限を捉え、ストライカー・エウレカが踏み込む。
ストライカー・エウレカ
正面からではなく、進路の先で待ち構える形。
逃げ道を読む。
接触。
これまでよりも、深い。
だが——
決定打には届かない。
ガイガンは体勢を崩しながらも、そのまま軌道を変える。強引に抜けるのではなく、“崩しながら離脱する”。
追撃は入る。
だが、捉えきれない。
あと一歩。
確実に近づいている。
それでも、届かない。
戦線は維持される。
だが、“勝ててはいない”。
同じ頃、別の戦場では、まったく異なる異変が広がっていた。
最初は、小さな違和感だった。
補給が遅れる。
通信が不安定になる。
拠点が一時的に沈黙する。
どれも単体では説明がつく。
だが、それが“繋がり始める”。
地図上に並べると、線になる。
消えた拠点。
途切れた通信。
補給の断絶。
すべてが、一定の方向へと伸びている。
さらに奇妙な点があった。
発生時間が偏っている。
夜。
視界が落ち、監視が弱くなる時間帯に集中している。
そして決定的な報告が入る。
同時刻、別地点。
“同じ規模の被害”。
あり得ない。
一体では、起きない。
ここで初めて、その名前が再び浮かび上がる。
ジラ
だが、以前とは意味が違う。
“あれが一体だという前提”が崩れる。
複数。
あるいは——
増えている。
その仮説は、否定できなかった。
状況はさらに悪化する。
ガイガンの出現エリアと、ジラの侵食ラインが交差し始める。
偶然ではない。
だが、連携しているわけでもない。
同一エリア。
二つの脅威が同時に存在する。
その中で、異様な光景が確認される。
ガイガンが進路上の個体を切り裂く。
ジラ。
反応は一瞬だった。
散る。
逃げるのではない。
分散する。
ガイガンは追わない。
そのまま前へ進む。
優先順位が違う。
ここで、はっきりする。
ガイガンは、“戦場そのもの”を見ている。
ジラは、“戦場を成立させるもの”を狙っている。
種類が違う。
その違いが、最悪の形で重なる。
前線では、ガイガンによって防衛が崩れる。
その後方では、ジラによって補給が断たれる。
戦える。
だが、続かない。
戦線は維持できない。
ここで初めて、司令部は結論に至る。
「……単体で見ていたら負ける」
ガイガンだけを追えば、後方が崩れる。
ジラだけを潰そうとすれば、前線が押し切られる。
戦場は、一つではない。
同時に、別の形で壊されている。
必要なのは、個別の対処ではない。
“全体としての戦い方”。
その方針が決まった瞬間、戦争の形が変わる。
局地戦から、全域戦へ。
だが、そのどちらにも——
まだ、決定打はない。
ガイガンは捕まらず、
ジラは捉えられない。
戦いは収束しない。
ただ、繋がっただけだ。
そしてその先で——
まだ触れられていない領域が残っている。
海。
そこでもまた、異変が進行していた。
まだ誰も、それを“同じ戦い”だとは認識していない。
だが確実に、
すべては一つに繋がろうとしている。
■第9章「収束」 終