「叔父さん、ドライバーどこ」
「あー?赤箱の二段目」
「ない」
「じゃあ俺が昨日使ったままかも」
朝、分倍河原家。散らかっている。
工具、機械部品、コンビニ袋、設計図。一般家庭としては終わっていた。
「……あった」
灰斗はソファの下からドライバーを引き抜く。慣れている。小学一年の頃には、既に工具の場所を把握していた。
「学校は?」
キッチンから分倍河原仁が顔を出す。この世界の仁はヴィランではない。踏み外さなかった。理由は単純、甥がいたから。両親を事故で亡くした灰斗を放っておけなかった。
だから、壊れ切る前に踏みとどまった。今は配送業や修理業で食っている。不安定だが、ちゃんと働いている。
「今日試験」
「おっとそうだった!!」
仁が慌てて時計を見る。
「雄英の!?」
「うん」
「ヒーロー科?」
「サポート科」
即答。仁は少し黙った。
「……お前、ほんとヒーロー興味ねぇよな」
「危ないし」
灰斗は机の上の機械を触る。カチッ、と起動。小型四脚ドローンがギギギと歩き始める。
「また変なの作ってる!?」
「ゴミ捨て用」
「用途が地味!!」
ドローンは部屋の空き缶を回収し始めた。便利だった。
「個性使ったのか?」
「試運転で」
灰斗の個性は《複製》
触れた物を複製できる。
ただし制限がある。
複製品は一時間で泥になって崩れる。
人間も複製可能。
だがそっちは、もっと不安定だった。
仁はその個性を知っているからこそ、時々怖かった。この個性は使い方次第で簡単に壊れる。
人も。自分も。
「なぁ灰斗」
仁が少し真面目な声になる。
「雄英入るのはいいけどよ」
「うん」
「無理はすんな」
灰斗は少し考える。
「効率悪いし」
「そういう意味じゃねぇんだけどなぁ……」
時は経ち雄英高校。
受験生達がざわついている
「うわ本物だ……!」
「緊張する……!」
ヒーロー志望者達の熱気
「……でかい」
灰斗が見ていたのは校舎設備。搬入口、工房棟、外部クレーン、加工施設。目が少しだけ輝く。
「設備いいな」
完全に見る場所が違う。
「おお!?」
突然横から大声。
「その工具箱いいですねぇ!!」
振り向くとそこにいたのはゴーグル少女 発目明 。
彼女は灰斗の工具箱へ食いついていた
「軽量化してるのに耐久ありますよねそれ!?
自作ですか!?」
「……うん」
「いいですねぇ!!」
距離感が近くて灰斗は少しだけ引いた。だが嫌ではない。工具の話をする人間は珍しかったから。
「あなたサポート科志望ですよね!?」
「そう」
「ですよねぇ!ヒーロー科ならそんな工具箱見ません!」
発目は急に目を輝かせる
「何作るんです!?」
「色々」
「いいですねぇ!!私も作ります!!」
「……話合うかも」
発目は満面の笑みを浮かべる。
「はい!!」
トゥワイスの下位互換個性