曇りすぎたTSエルフは弟子たちに救われますか?   作:もぬゆ

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書きだめから切り崩して投稿しているので相当なスローペースで投稿します。


1話 エルフに転生?した

 

 目が覚めるとそこには知らない天井...いや、見知った天井があった。

 

 どうやら私は転生、と言うよりは前世の記憶を思い出したらしい。

 

 

「なるほど前世か…」

 

 

 この状況でも割と納得しているのは、男の記憶にもそういうラノベの知識があるからだ。

 

 しかし2人分の人格というか知識があるのはあまり気分の良いものではない。

 

 転生でお馴染みの要素といえば剣と魔法だが、この世界も例に漏れず剣と魔法が存在し、魔物と戦う。魔物の脅威は大きく、女子供関係なく小さい頃から何かしら教わるようで、私も剣と魔法の両方を習っていた。

 と言ってもどちらも初歩中の初歩でなんかそういう実感は無いのだけれど。

 

 

 

 リファ・へスフィア、女

 22歳

 長耳族(通称エルフ)

 

 身長は176cmとエルフの中でもやや高め、色素が薄くすぐ先が透けて見えそうなほど透明感のある銀髪ロングヘアーに深緑の大きな瞳がよく映える。スタイルはモデル並によくスレンダー体型で胸は大きくも小さくもない。

 

 何より表情筋が固い。全力で笑顔にしても普通の笑顔未満に収まる固さだ。デフォルトは仏頂面で、前世の私が真正面で向き合ったら(怒ってるんじゃ...?)って不安を感じるレベルの真顔。

 

 

 

 

 それが今の私だ。既に前世よりも5年長生きしている状態で自己もだいたい確立されていたのに、他人であり自分、違う思考を持つ自分を思い出すのは気持ちが悪い。

 

 だと言うのに違和感とか、全くの別人であるとかは感じないから不思議だ。

 

 

 頭の中で基本情報を整理していたら、徐々に現状に慣れてきたし、辺りを見るくらいの余裕が生まれ出した。

 

 私の記憶と男の記憶を照らし合わせていく、部屋には電気などは通っておらず、魔物を倒すことで得られる魔石というものがその代わりを担っている。一応、非常用に1つあまり使っていないランプがベッドの横のサイドテーブルには置いてある。

 

 あとはキッチン、冷蔵庫、剣、机、椅子、乾燥させた果物や茶葉を入れている棚……水道?も通ってるし生活レベル的には割と近代くらいらしい。

 

 

 

 何故かいつも使っているはずの私の部屋がどこか寂しく感じる。他のエルフの家の事などは知らないがあまりにも物が少ないのではないか。

 

 今までは気にしてなかったことに気が向いてしまう。

 

 エルフである私に確かな変化があることを実感せざるを得なかった。

 

 情報を整理しているうちに気づいたのは、男の記憶は無駄に膨大で色んな要素がごちゃ混ぜになっていることだ。

 

 そのせいで現世の記憶が相対的に非常に少なく感じる。

 

 まあ私が知識をつけようと動いていなかったからだが、そのせいか自分の中で男の影響が結構大きい気がする。

 

 今まで持つことのなかった承認欲求も生まれたようだが、生憎エルフの私としての人生にはまるで他者との繋がりが無い。前世では随分拗らせていたもののここでは抑えさせてもらおう。

 

 

 

 そうやって基本情報から順々に整理していた時に、コンコンというノックの音と共に私を呼ぶ声がした。

 

 

 

「リーちゃん、起きてる?今入っても大丈夫?」

「ええ。入っていいわよ。」

 

「お邪魔しま〜ッッへ?!??」

 

 

 

 ドアを開け変な声を出して入ってきたのはニーチェ・エルスタイン。

 

 エルフの集落で唯一の同世代、唯一の友達で1番信頼しているエルフだ。

 

 身長は150と少しでエルフの中ではだいぶ小柄、茶髪のボブヘアにサイドテール、毛先はカールがかかっていて少し大人っぽいが可愛らしい。スタイルはとても美しいし私はそのままでいいと思っているが大きくならない胸を割とよく気にしている。

 

 私と違って表情豊かでコロコロと表情が変わりその度に大きな茶色の瞳は光の反射を変えてキラキラと光っている。

 

 

 そんな彼女の表情は今頬を赤く染め驚きと羞恥心に満ちていた。

 

 

 

 

「ちょ、リーちゃん!服着て!服!全然入って良くないじゃん!!」

 

 

 わたわたと慌てながら大きな声で伝えて来た内容は想定外のものだった。

 

 あら?と思いながら自分の姿に目を向けると、黒のブラジャーに黒のパンツだけという、全く人に見せられる格好ではなかったことに気づいた。

 

 ニーチェに目を戻すとハッとしたようで大慌てで踵をかえし大きな音を立ててドアを閉め「なんで下着姿なの...?」と言っているのが壁越しに聞こえてくる。

 

 別にニーチェに見られるのは構わないが常識的に考えれば良くないのでベッドから出て服を着る。

 

「入っていいわよ」

 

「服着たんだよね?」

「着たから」

 

 念の為の確認に対して、少し食い気味に答えるとニーチェが部屋に入り直した。まだ顔から赤みは抜けきっていない。それに私の顔をチラチラ見ては目を逸らしており、空気感が何やら変になっている。

 

 が、そのままでは話が進まないと思ったのかたどたどしいながらもニーチェが話し始めた。

 

「あの、ね、ほんとに心配したんだよ?昨日急に体調悪いって言って訓練から抜け出したんだから」

 

「心配かけてごめんなさいね」

 

 

 私は昨日、前世の記憶が戻ってき始めたことによる違和感で訓練を途中で抜け出していた。

 

 

 

 このエルフの集落は30歳まで訓練するのが習わしだ。そこそこの頻度で魔物が現れるため、魔物に対して最低限の自衛手段を得るために、必ず行われている。エルフの寿命は長く、一生魔物と対峙しないなんて不可能だから必須だ。

 

 基本は魔法と弓、志望すれば一応剣も習うことができ、私は志望して剣を習っていた。

 ちなみにエルフとドワーフが不仲だとか、鉄は使わないとかそういった種族特有の変な文化は少なくともうちの集落にはない。すこし魔法が上手くて寿命が長いだけだ。

 

 

 

 訓練を抜け出す際、本来は訓練を見守っている族長に伝えるべきなのだが、私はニーチェ以外のエルフとはまるでコミュニケーションを取ることが出来ない.....というかしてこなかった残念コミュ障エルフのためニーチェに代わりに伝えてもらっていた。

 

 ニーチェからすると族長に伝える暇もないくらいの体調不良に思えるのも必然。

 

「もう体調は大丈夫なの?ご飯はちゃんと食べてる?普通に立って歩ける?あ、ご飯は私が作っちゃおうか。訓練は少しの間休んだ方がいいよね。あと────」

「落ち着いて」

 

 だから私がこうやって質問攻めされているのも必然だった。

 

「そんなに深刻じゃないから。でもそうね、訓練は少しだけおやすみしようかしら。」

 

 友達が自分のことを心配してくれていることに嬉しくなって頬が緩んでしまう。

 

 しかし、ただ図書館に行きたいから休もうという、いわばサボりも説明しなければ当然違う意味に捉えられる。

 

「え!?やっぱまだ体調がわる んむっ」

 

 お休みをとると私が言ったときのニーチェの慌てぶりは凄くまた質問攻めに遭ってしまいそうな気がしたから、ニーチェの唇に人差し指を押し当てて無理やり口を止めた。セクハラかもしれないが私は女だからセーフだ、と思いたい。

 

「体調は大丈夫だから、そんなに心配しないで」

 

 なるべく安心させるために自分は問題ないことを伝える。ただ指を押し当てたあたりからニーチェは完全に固まり動かなくなってしまった。

 

 その様子にちょっとだけ心配になったが、少しすれば静かではあるものの心配性な目線をこちらに向け、ニーチェ自身が持つ不安をこちらに訴えかけながら近づいてきた。

 

 エルフの私の性格は、お世辞にも良いとは言えなかった。それなのにここまで心配してくれる友人が居ることに嬉しさを覚えつつ、自然な上目遣いのニーチェに思わず可愛いなどと場違いなことを考えてしまう。

 

 その後どうにかニーチェの心配がほどけるまで一緒にいながら説得し、何とか家に帰って貰った。

 

 あのままでは1日看病するなんて言い出しかねないから一安心だ。

 

 

 

 

 ニーチェが家を去ったあとは情報を整理することにした。

 

 明日から図書館に行って頑張ろうというのに、記憶がぐちゃぐちゃのままでは新しい情報が入ってこないと思ったからだ。

 

 今の私は基本情報のみを整理した状態、例えるならプリント類で足の踏み場がない部屋で、重要書類だけを整理したような有り様なのだ。

 

 当然全体から見ればほんの僅かの情報量。散らかった部屋が綺麗になることは無い。

 こんな状態で追加の知識を入れても紛れてむしろ整理時間が伸びるだけ、ならせめて足の踏み場くらいは作らなければ、という訳だ。

 

 

 風呂に入った後ラフな服装で布団に包まり生理を始める。当然、散乱した情報の整理などすぐに終わるわけもない。

 

 

 結果、次の日の朝まで整理し続けて居たせいで最悪のコンディションで図書館に向かう事になったのだが。

 それはただ単に私がアホなだけだ。途中で切り上げないのが悪い。

 

 

 

 ◆

 

 sideニーチェ

 

 

 私はリーちゃんのお見舞いをしたあと自分の部屋まで帰ってきてから枕に顔を埋めて悶えていた。

 

 顔は未だに熱を帯び心臓が揺れている感覚が脳にも届いている。

 

 思い出すなと言われても思い出してしまうだろう今日の記憶は、未だ脳裏に鮮明に焼き付いている。

 

 

 

 思えば今日のリーちゃんはなにか変だった。

 

 いや、昨日の体調不良あたりから変わっていたのかもしれない。訓練が始まった頃から10年間、感じたことの無い急激な変化があったように思った。

 

 いつもの鉄のような表情に凍えるような雰囲気、周りに人を寄せ付けることのない2つの要素。その両方が少し融けていた。

 

 

 それに加えて今までに無かった積極性は、私の心にダイレクトなダメージを与えてきていた。

 

 もちろん嫌だとかそんなことは考えてない。

 むしろ私としてはめちゃくちゃ好ましい.........けど……いかんせん心臓に悪すぎだと思う。致死量のギャップを正面から受けて耐えられるほど私は強くないのだ。

 

 そもそも今日の初手で見た下着姿──決してわざとじゃない──の時点で相当ペースを乱されていたのに、当のリーちゃんは欠片も気にした様子もなく、隠しもしなかった。

 

 そのせいで脳内は一瞬でリーちゃんに染められてしまい、今でもあの光景を思い返しては悶えてを繰り返している。

 

 それに本人の目の前で明らかに挙動不審な状態で顔を真っ赤にして出ていってしまったのも、良くなかったよねとは思う。

 

(私かなり動転した反応しちゃった......でもしょうがないじゃん...あんな格好だとは思わなかったんだし……ていうかあれ以外の反応とか無理だし………)

 

 とは思うけどそれはそれだ。

 

 リーちゃんが下着姿でいたのが悪いんだし、でも下着姿を見てしまった私も悪いし……

 心の中で誰に話す訳でもないのに言い訳を並べてしまうのも仕方無い、よね?

 

 

 今でも勝手に思い出してしまう光景のせいで、私はベッドの上から身動きが取れなかった。ジタバタと足を動かしていなければ死んでしまう。

 

 でもそれだけなら私の顔が赤いだけで済んでいた。

 

 それだけならば……

 

 問題なのはむしろこの後だった。心配しすぎて質問攻めしてしまった私、1度目の静止でも止まらなかった私を止めるために

 

「体調は大丈夫だから、そんなに心配しないで」

 

 リーちゃんは至近距離まで近づいて人差し指を私の唇に当てて微笑みながらそう言って止めてきたのだ。

 

(えっ?!あっちょっ……?指……?!)

 

 突然のことに理解が及ばなかった私も、少しすれば今がどんな状態かはわかる。ただ仕草1つ1つに色気を感じてしまい胸がドキドキしっぱなしだった。

 

 目と鼻の先までリーちゃんの顔が近づいており、長いまつ毛と優しさを感じる瞳に、顔が熱くなっている最中だったにも関わらず目を離すことができないでいた。

 

 その時から今の今まで心臓はバクバクだ。

 

 

(リーちゃんは私をどうしたいんだろう。今ならなんでも許しちゃう気がする.....)

 

 今でも脳裏に思い浮かぶ光景。目を瞑れば唇にまだ感触が残っている錯覚に襲われる。それほどまでに威力の高い行動だった。

 

 

 

 今まで私から抱きついたことはあってもリーちゃんから触れられたことは1度しかなかった。年中無表情で微笑みどころか違う表情も見たことがなかった。

 

 そんな私にリーちゃんの方から触れてきた場所が唇だなんて。10年間一緒にいた間見たことの無かった微笑みを至近距離で見てしまうなんて。私は、もうずっと脳裏にその姿が焼き付いたままだった。

 

 明日の訓練が無くなり、リーちゃんに会わなくてもいいことに安堵を感じつつ、少しではない寂しさを抱えて夜を迎えた。

 

 寝ようとして瞼を閉じるとリーちゃんしか見えなくなるせいで今日は眠れなかった。

 

 

 

 

 

 自分が持つ感情がなんなのか考える暇すらなくただただ悶え続けたまま朝を迎えてしまった。

 

 寝不足で頭が痛い中カーテンを開けて陽の光を浴びる。眩しさに目を細めながら外を眺めていると、目を擦りながら出歩いているリーちゃんを見つけた。

 

 ただボーっとリーちゃんの姿を見ていたら不意にこちらを見て小さく手を振ってくれた。

 

 なぜだか昨日の今日でリーちゃんとの距離が急激に近づいたらしい。

 

 

 その不意打ちの動作に思わず心臓が跳ね上がる。

 

 

 一応いつも通りを意識して大きく手を振り返す。

 こちらを見なくなるまで振り続け、その後身を隠すようにしゃがみこんだ。

 

 速くなった心臓の鼓動は制御することができずにひたすら私の中で存在を主張する。

 

 顔を真っ赤にして手で覆うように隠している私は、周りからはどう見えてるんだろう。

 自分自身、薄々そういうことなのかな、とは勘づいているものの、気付いていないフリをして平静を装う。

 

 だって認識してしまったら、もう後戻りできそうにないから。

 




百合が好き。元気系とクール?ダウナー?系の組み合わせって素敵ですよね。

そういえばこの子ニーチェって言うらしいですよ。
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