やはり俺の界境防衛生活は間違っている。 作:RAKU0221
ボーダーにはランク戦という制度がある。
3部隊から4部隊でのバトルロワイヤル方式で、ランク戦で勝ちまくると、B級はA級への昇格戦に挑むことが可能となる。A級は固定給が出るし、トリオン兵が出てくる穴の向こう側への遠征に選ばれるための必須要素でもあるため、自然とやる気になる奴は多い。
もちろんやる気が湧かない隊員も存在する。そう、俺である。
ランク戦に参加している数部隊はその時間帯の防衛任務に参加できないため、フリーの隊にお鉢が回ってくるが、人手不足を補う形でフリーの隊員も少しだけ仕事が増えるのだ。
そして今がまさにそのランク戦の時期である。
「………はぁ、憂鬱だ」
『ヒッキー、やる気出してー。後で飴ちゃんとあの甘いコーヒーあげるからさー』
今日は諏訪隊との合同での見見回りだ。耳元で俺より無気力そうに音声を飛ばしてくるのはオペレーターの小佐野瑠衣、元読者モデルらしく男子からの人気が高い。
コイツ距離感近いから苦手なんだよ。思春期の男の子は女の子に近づかれるとドギマギしちゃうからやめてねと前言ったら、余計にウリウリと近づいて来る。もうどうしろってんだ。
「比企谷!ぼさっとしてねーで仕事しろ!キビキビ歩きやがれ!!」
「うぃっす」
隊長である諏訪さんとは、読書という趣味が合う。たまにオススメのミステリーを貸してくれるし飯にも連れてってもらったことがある。この人この感じで読書が好きだと分かった時は心底驚いた。金髪にタバコに粗野な言動とはあまりに結びつかん。
「あぁそうだ比企谷、今俺がお前に借りてる新作なんだがよ、草壁に貸してもいいか?又貸しになっちまうけどよ」
「草壁?あー、A級の………別に良いですよ。俺はもう読み終えてますし」
「おう、わりーな。読み終わったら直接返すように言っとくからよ」
「え、いや、諏訪さんが回収しといてくれれば俺取りに行きますよ」
「んなのメンドクセーだろうが!お前初対面の女子と話したくないだけだろ!」
「うっ……」
なんで分かるんだよ。まぁこの人には入隊直後くらいから世話になってるし、流石に俺の人間性が分かられてきたということか………。
聞くところによるとその草壁ってやつは銃手からオペレーターへ転校したらしい。戦闘員からオペレーターに転向するとは、なにか壁にぶつかったかと勘ぐってしまうがこれは悪い癖だ。
知らない女子というか基本知らない人と話すの自体苦手なので、このミッションは俺にとって厳しい物になりそうだ。
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ランク戦期間中は、ボーダー本部内でランク戦についての話題が飛び交う。特にC級の連中は、やれどこどこ隊が熱いだの、誰々が熱いだのとよく個人戦ブースで話しているのを見かける。
君たち訓練しなさいね、B級上がりたくないの?
まぁ俺は俺で今日もそんな感じで雑談してるC級らをぼーっと見ながら優雅なマッカンタイムな訳だ。今日は防衛任務のシフトも入ってないし、プライベートな予定もないのでふらっと本部に寄ってみたが、そういえば特に気軽に個人戦誘える相手も居ないのだと気づき、途方に暮れているのである。
「…………狙撃手の訓練場でちょっと撃って帰るか」
「お疲れ様、比企谷くん」
「ンなんッ…………なんだ、三上か」
頭上が急に声をかけないでほしい、変な声出ちゃったじゃねーか。なんだよンなんッ!て、萌えキャラか。
「フフッ、聞いたことない声出てたね」
「お前が急に声をかけるからだ、ボッチの後ろから不用意に声をかけるな」
「比企谷くんがボッチかはもう怪しいと思うけど…………それより、この後って時間あるかな?」
とてつもなく申し訳なさそうな顔をした三上にそう言われてしまっては、流石の俺も断り辛すぎる。まぁ早く帰ってもアニメ見るかゲームするかしかやることないな。
「どした、なんか頼み事か?」
「うん、それが、最近ちょっと忙しくて書類が溜まっちゃってて………比企谷くんには何回か手伝ってもらったことあるから頼みやすくて………ダメかな?」
「破壊力………」
「え?」
「いやなんでも」
危なかった、そんな顔で頼み事されたら普通絶対手伝うしなんなら作業を通して好きになってそのまま告白してめちゃくちゃ優しく振られるまである。振られちゃうのかよ。
「手伝うのは構わんが、終わるのか?」
「うん、それは大丈夫だと思う。真木ちゃんも応援に呼んでるから」
あっぶねぇ。
断ってたら十中八九俺は東京湾にでも沈められてただろこれ。
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それから時間にして数十分ほど、俺は風間隊の隊室にて三上の書類仕事を手伝っていた。過去手伝ったことがあるといっても、普段書類仕事なんてしないし全てのやり方を把握しているわけでは勿論ない。そのため俺は区切りがついたところで三上に確認を取る方式にしていたが、三上の隣で仕事をしている真木はとんでもないスピードで仕事を片していく。
「俺要らなかったんじゃねぇの?」
「ううん!すごく助かってるよ?」
「ぼやく暇があったら手を動かしたほうが良いね」
俺を一瞥することもなく仕事しながらのご指摘ありがとうございます。
真木の事を一言で表すとすれば同性にモテる女だろう、凛とした雰囲気や整った顔にすらっとした立ち姿。さながら姫に使える騎士のような雰囲気である。実際、三上のセコムだしな。
「つっても、お前がやってる分でもう終わりだろ。じゃあ三上、俺上がるわ」
「あ、うん!ありがとうね比企谷くん!また明日」
「おう」
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比企谷くんが帰ってからすぐ、真木ちゃんがやっていた仕事も終わった。この後は特にお互い用事もなかったから、うちの隊室でお茶でもしてから帰ろうかと言う流れになった。
「…………相変わらず、死んだ魚みたいな目だね。アイツは」
「確かに、後輩の子達は目付きとかで怖がってる子もいるね。関わってみたら良い人なのに」
「『そんなにDHA豊富そうか?』って言ってきた時はハッ倒そうかと思ったよ」
「意外とそういうこと言うんだよね、比企谷くん」
「人の揚げ足を取るのが得意なだけだよ」
真木ちゃんと比企谷くんが知り合ったのは、比企谷くんがB級に上がって少し経った頃。比企谷くんはB級に上がってから、トリガー構成にイーグレットを取り入れたらしい。それで、狙撃手の訓練場で1人黙々と訓練していたところを、当間先輩に捕まった。それから当間先輩が比企谷くんに時々狙撃を教えるようになったと聞いた。
その流れで、冬島隊の隊室に比企谷くんが招かれて真木ちゃんに出会ったらしい。その時の会話が……………
『よぉ真木ちゃん。あ、コイツ比企谷、本業は銃手らしいんだけどたまに狙撃教えてんだ。中々面白いやつだぜ」
『いや、俺が面白かったら多分売れない芸人なんて存在しませんよ』
『な?この顔でサラッと卑屈なこと言うのよ』
『確かに死んだ魚のような目が特徴的ではあるね』
『そんなにDHA豊富そうに見える?賢そうだな…………てかアンタら酷すぎない?こっちの人に関しては初対面なんですが?』
だったらしい。
ちなみにその話を比企谷くんが奈良坂くんにしたら、『あの人に何かされたら俺に言え、頭を一撃で撃ち抜いてやる』って言われたそうだ。
奈良坂くんは狙撃手2位、当間先輩は1位のライバルだからか、当間先輩が絡むとちょっと過激になるんだよね、奈良坂くん。
「でも、真木ちゃんと比企谷くんは相性いいと思うけどな。ほら、2人とも頭良いし、読書もするし、たまにチェスとかしてるよね」
「王子先輩や水上先輩とやるのとは、また違った感覚になるからね。ひねくれた性根がゲームに投影されてる。その点はおもしろい………だけど」
真木ちゃんは紅茶に口をつけて、静かに息を吐く。まるで、至極残念だと言わんばかりだった。
「隊員として、もっと上を目指せる素質はありそうなのに、フラフラしているところを見ると当間を思い出して気に入らない」
「なら、当間先輩みたいに真木ちゃんが発破をかけてあげれば良いんじゃない?」
もし、冬島隊に比企谷くんが入ったら、A級ランク戦でうちも奈良坂くんが居る三輪隊も比企谷君と戦うことになる。比企谷くんは知らないと思うけど、A級隊員やランク上位の人達の多くは彼を高く評価してるし、みんなやる気になる気がするんだけど………。
「私にストレスで倒れろって?」
「あはは………だよねぇ」
あんまりそれは、期待できないかなぁ。
ぼちぼち原作時間軸に向けて行きたいですね