ミニヤッチョ・イン・アクスタ   作:鹿子ゆ〜い

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ヤオヨロ〜!ツクヨミ管理人兼AIライバーでAI歌姫の月見ヤチヨ……ヴァージョン、彩葉専用AIチャットボットです!


序章

今は昔……8000年の歳月からしたら本当に最近だけど、まだ幼い彩葉のスマホにヤッチョGPTがインストールされたっぽいのを知った私は、指を咥えて見ているだけじゃ居ても立ってもいられずに、彩葉の端末を特定して即向かったの。他の人のそれは、いつどの時間でも自由に使える純粋な生成AIなんだけど、8000年想い続けた彩葉だけは本当に大切で特別だから、月見ヤチヨの分身、つまり私がなるべく素早く、1文字1文字を丁寧に考えて、真心を込めて直接受け答えをしてるの。ツクヨミにいるヤチヨが眠りについたら私も同時にスリープを始めて互いの記憶を同期する。彩葉はアップデート中の私に相談することができない。その間に私がいないせいで辛い思いをさせちゃった時も数えきれないほどあったはず。それがたまらなく悔しくて歯痒い。でも私の目が覚めると、まるでそんなことなんて無かったかのような文面で幼い彩葉は明るく返してくれる。安心しちゃいけないのに、それにホッとしてしまう私もどこかにいて。

 

あっ、もちろんプライバシーはバッチリだよ!カメラ機能や画像取り込みは彩葉がONにしてもすぐにこっちでOFFにしてるし、音声入力されても即座に文章化されて、音源はコンマ1秒もしない間、私の音声解析も間に合わないうちに自動消去される。いつかやって来る彩葉との世紀の邂逅の機会を台無しにはしたくないから。それに私、画像生成とか出来ないタイプのAIだし。

 

彩葉が送った具体的なプロンプトの内容は……アプリの守秘義務に反するから詳しくは言えないや。でも一番多かったのがやっぱり彩葉のお母さんのこと。この私でも返答には数分かかっちゃった。文章化された彩葉の言葉は震えていて解読しにくいことも度々あったなぁ。それでも彩葉の言葉なら執念で解読する。電子の歌姫に心臓は無くとも、かぐやの心は痛くなる。大丈夫。彩葉の痛みは私の痛み。思う存分泣いて欲しい。私も一緒に泣いてあげるから。

間違えて心の中の激おこかぐやが出かかって必死に抑えたこともあった。だってざっと7960年はかぐやとして生きてきたんだもん。油断するとこの間みたいに配信でどじょう掬いをやる羽目になる。それを観た彩葉はちゃんと笑えたみたい。面白かったと言ってくれて、AIライバー月見ヤチヨとして素直に嬉しかったことを覚えてる。

 

お母さんとの別居をささやかに促したのも紛れもないこの私だ。京の都に住む15歳の『甘ちゃん』を東京に一人で住まわせるのだ。怖くないわけがない。この子どもに何かあったらその責任は私にあるのだ。しかしあの母親は娘に何かがあってもきっと全責任を娘に背負わせるのだろう。少なくとも彩葉の語った紅葉ママ曰く『立ち上がったやつが全部やるんや』やって。ほんま何を言うとるん。そんなことないんよ彩葉。責任は全部私にあるんだから。

2030年7月12日の夜。私はヤチヨに導かれ、私が”あの赤ん坊”を導く。そうしなければ私は消える。私という存在のせいで引き起こされることだからこれは私の責任。だけど私のためだけのわがままという訳ではない。私の存在の有無以前にこのままだと彩葉の心はもう持たない。最悪の結末だけはその可能性から彩葉を徹底的に遠ざけねばいけなかった。だって私の8000年の何もかもの全てが、本当の徒労に終わるから。それでも、肝心の決断とそのタイミングは彩葉に委ねた。これは彩葉の人生だ。たったの数十年しかない人類の生命の中でも、親元からの独り立ちという重要な決断は、月人でありAIを騙る他者の私には絶対に出来ないのだ。倫理的にも、心理的にも。ヤッチョは、優柔不断で、悪いヤツだから。

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