天使と悪魔と人間と   作:虹光ふみ

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すみません、毎回のあとがきで「毎週火・木更新予定」と記載してありましたが、ずっと火・金のつもりで投稿しておりました。
正しくは、火・金となっておりますので、把握のほどよろしくお願いいたします。


26話「西山楓の場合」

「では、お気をつけて。と言っても、お二人ともお迎えが来てくれる手筈になっていますので、ここでしばらく待機していただくことになりますが」

「分かりました!」

「えっ?僕は何も聞いてないですけど……」

「しかし、手続きの際にそう伺っておりますが」

何の根拠もなかったけど、こちらの連絡ミスだろうというのは、今朝のムニさんを思い出すと、容易に想像できた。

「…もし、待ってても誰も迎えにこなかったらどうしたらいいですか?」

「ここからドナ家のお城までの道に、特に危険はないはずですので、自力で帰って頂くことに……講義修了の予定時刻まで30分ほどありますので、その時間を目安に判断してください」

「分かりました……」

伝え忘れに加え、迎えのことまで忘れられてないことを願って、30分ほどを過ごさなければならなそうだ。

「では、すみませんが私はこれで。繰り返しになりますが、先ほどお渡しした紙、くれぐれもなくさないように」

「はーい!ありがとうございました」

「ありがとうございました」

「はい、お疲れさまでした。では、失礼します」

先生の丁寧なお辞儀に釣られるように、僕たちも慌てて立ち上がり、頭を下げた。

「ふぅ…楽しかったね、講義」

「うーん、興味深かったけど、手放しで楽しかったとは言えないかも……」

山下さんのこともあったし、凶暴な悪魔も当然いるってことを改めて思い知らされた。

でも、楽しくなかったわけではなかった。

こうして、人とのつながりを感じられるのは随分久々に感じるし、実際、生前を含めても、本当の意味で人と接したのは本当に久しぶりのはずだ。

(思えば、最近はずっと業務連絡くらいしかしてなかったな)

そんなことを考えながら、生きていた頃のことを思い出していると、どうしても大好きだった詩乃さんへと行きついてしまう。

それをかき消すように軽く頭を振り

「西山さんは、ずっと楽しそうだったね」

と、改めて切り出してみた。

「うん!やっぱり、私はこういう話が好きなんだろうなぁ」

そう言うと、西山さんは講義の前に見せたような、どこか遠くを見ているような表情をまた僕に見せた。

「でも私ね、この好きって気持ちに殺されちゃったようなものなんだ」

「え?」

唐突なカミングアウトに、うまく思考が追い付かなかった。

「せっかく…ってのも変なんだけどさ。よかったら私の愚痴に付き合ってくれない?」

「それは、もちろんいいけど……」

そう答えたものの、自殺の理由を話してくれるであろう彼女に、適切な言葉を届けられるかは心配だった。

「あはは、そんなに身構えないでよ。もう済んだことなんだし」

なんでもないようなことのように言っているけれど、強がりが見え隠れしている気がした。

「どこから話せばいいかな……」

ちょうどいい導入を探すように、人差し指を顎にあて、思案する西山さんを見て

(やっぱり、この西山さんが死んじゃったなんて、信じたくないな)

そんなことを考えると、どうしようもなく切なくなり、今にも始まりそうな話に、耳を塞いでしまいたくなってしまう僕だった。




読んでいただきありがとうございます。
週二回(火・金 21時)更新を予定しております。
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