正しくは、火・金となっておりますので、把握のほどよろしくお願いいたします。
「では、お気をつけて。と言っても、お二人ともお迎えが来てくれる手筈になっていますので、ここでしばらく待機していただくことになりますが」
「分かりました!」
「えっ?僕は何も聞いてないですけど……」
「しかし、手続きの際にそう伺っておりますが」
何の根拠もなかったけど、こちらの連絡ミスだろうというのは、今朝のムニさんを思い出すと、容易に想像できた。
「…もし、待ってても誰も迎えにこなかったらどうしたらいいですか?」
「ここからドナ家のお城までの道に、特に危険はないはずですので、自力で帰って頂くことに……講義修了の予定時刻まで30分ほどありますので、その時間を目安に判断してください」
「分かりました……」
伝え忘れに加え、迎えのことまで忘れられてないことを願って、30分ほどを過ごさなければならなそうだ。
「では、すみませんが私はこれで。繰り返しになりますが、先ほどお渡しした紙、くれぐれもなくさないように」
「はーい!ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「はい、お疲れさまでした。では、失礼します」
先生の丁寧なお辞儀に釣られるように、僕たちも慌てて立ち上がり、頭を下げた。
「ふぅ…楽しかったね、講義」
「うーん、興味深かったけど、手放しで楽しかったとは言えないかも……」
山下さんのこともあったし、凶暴な悪魔も当然いるってことを改めて思い知らされた。
でも、楽しくなかったわけではなかった。
こうして、人とのつながりを感じられるのは随分久々に感じるし、実際、生前を含めても、本当の意味で人と接したのは本当に久しぶりのはずだ。
(思えば、最近はずっと業務連絡くらいしかしてなかったな)
そんなことを考えながら、生きていた頃のことを思い出していると、どうしても大好きだった詩乃さんへと行きついてしまう。
それをかき消すように軽く頭を振り
「西山さんは、ずっと楽しそうだったね」
と、改めて切り出してみた。
「うん!やっぱり、私はこういう話が好きなんだろうなぁ」
そう言うと、西山さんは講義の前に見せたような、どこか遠くを見ているような表情をまた僕に見せた。
「でも私ね、この好きって気持ちに殺されちゃったようなものなんだ」
「え?」
唐突なカミングアウトに、うまく思考が追い付かなかった。
「せっかく…ってのも変なんだけどさ。よかったら私の愚痴に付き合ってくれない?」
「それは、もちろんいいけど……」
そう答えたものの、自殺の理由を話してくれるであろう彼女に、適切な言葉を届けられるかは心配だった。
「あはは、そんなに身構えないでよ。もう済んだことなんだし」
なんでもないようなことのように言っているけれど、強がりが見え隠れしている気がした。
「どこから話せばいいかな……」
ちょうどいい導入を探すように、人差し指を顎にあて、思案する西山さんを見て
(やっぱり、この西山さんが死んじゃったなんて、信じたくないな)
そんなことを考えると、どうしようもなく切なくなり、今にも始まりそうな話に、耳を塞いでしまいたくなってしまう僕だった。
読んでいただきありがとうございます。
週二回(火・金 21時)更新を予定しております。