翌日、501基地滑走路-----。
滑走路から空を見上げた位置に、一機の輸送機が目に入る。その輸送機を見上げているのは、ミーナ中佐と坂本美緒少佐。
「来たわね。」
「ああ。」
2人が短い会話を交わした目の前に、輸送機が着陸する。輸送機のハッチが開き、レンが現れる。今日は、レンがこの基地に到着する日なのだ。
「お待ちしておりました、レン・アルシヴァス大佐。第501統合戦闘航空団隊長、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケです。」
代表してミーナがそう挨拶し、レンからの発言を待っていたが、言葉を発するどころか基地に目線を向けており、一向にこちらを向く気配がない。一時待っていると、突然声が飛んでくる。
「ミーナ中佐、お出迎えご苦労様です。異動の辞令をいただき、本日よりこの部隊に転属になりました。これからよろしくお願いします。」
それを聞き届けた美緒が口を開く。
「ミーナ、レン大佐も。ブリーフィングルームに皆集まっています、今から顔合わせをしますので、こちらに。」
美緒の言葉をきっかけに、足を基地内部に向け歩き出す。ミーナもレンも先ほどの喧騒がなかったかのように足を進める。
「ミーナは元気そうだな。」
「あら、ほんとにそう思ってるのかしら。でもレンも元気そうでよかった。レンは相変わらずなの?」
「何のことだ?」
「まだ周りに冷たく当たって、他人を遠ざけたりして、冷酷人間を演じてるの?」
一時沈黙が流れる。3人の規則的な足音だけが通路に響き、あっという間にブリーフィングルームの前に到着する。ミーナが扉に手をかけ、開けようとした瞬間に後ろから声が飛んでくる。
「俺は演技なんてしていないし、今の俺が本来の俺だよ、ミーナ。こんな俺に関わっても、良いことなんてないんだから。」
「・・・・・・それはレンが決めることじゃないわ。」
ミーナは少し言葉を交わした後、返事を待たずに扉を開く。扉の中には、ストライクウィッチーズ全員が揃っていた。その全員が扉の音がしたほうに目を向ける。ミーナ、レン、美緒の順番に部屋に入る。壇上に上がり正面にミーナ、左側に美緒、右側にレンが立つ。皆の視線がレンに向き、レンは全員の視線を見ずに、ハルトマンの方に視線を向ける。ハルトマンはその視線を見た後、笑顔を浮かべ口を開く。
「レン、久しぶりだね!元気そうでよかった。」
そう言葉を紡ぐと、見計らったかのように、ミーナが口を開く。
「皆さん、昨日話した新しい仲間です。こちらがレン・アルシヴァス大佐、本日よりここで皆さんと任務に当たります。色々教えてあげてくださいね。ではレン大佐、一言お願いします。」
「只今紹介に預かりました、レン・アルシヴァスです。よろしくお願いします。」
「ではこれで顔合わせは終わりです、解散。」
ミーナの解散の言葉を皮切りに、部屋にいる人間がバラバラと立ち上がり、レンのほうへ向かう。
「レン大佐。」
呼びかけられた方へ視線向けると、青の服に身を包んだ少女が立っていた。
「自由ガリア空軍所属、ペリーヌ・クロステルマンです。これからよろしくお願いしますわ。」
それを聞いたレンは、興味がないかのように視線を外す。それを見たペリーヌは少し苛立ちを露わにし、部屋から立ち去る。それを見ていたカールスラント勢は、揃ってため息をこぼす。
「大佐!私はシャーロット・E・イェーガー、こっちがフランチェスカ・ルッキーニ、よろしくな。」
「よろしくね、レンたーいさ!」
レンの視線の先に立ち、元気よく挨拶した二人は、すぐに部屋を出ていく。出ていったかと思えば、レンにまた声がかかる。
「私はスオムス空軍所属中尉、エイラ・イルマタル・ユーティライネンで、こっちが「オラーシャ陸軍中尉、サーニャ・V・リトヴァクです。夜間哨戒が主な任務なので、あまり接点がないかもしれませんが、よろしくお願いします。」・・・・・・よろしくな。」
挨拶を終えると、サーニャがあくびをしながら扉へ向かう。それを見たエイラが、サーニャの名前を呼びながら追いかけていき、また二人、部屋から出ていった。
この部屋に残っているのは、カールスラントの三人と、出迎えの時にいた扶桑の軍人と、知らない二人。レンは二人のほうに顔を向ける。
「私は宮藤芳佳っていいます、これからお願いします。」
「私はリネット・ビショップです。あの、よろしくお願いします。」
控えめに挨拶を終えた二人は、他の人達と同じように部屋を後にする。次に声をかけてきたのは、出迎えの時にいたもう一人。
「私は扶桑皇国海軍少佐、坂本美緒だ。これからよろしく頼む。ミーナ、私は一足先に訓練に向かう。久しぶりの再会なんだ、ゆっくり話すといい。」
美緒はそう言い残し、部屋から出ていった。ミーナ、バルクホルン、ハルトマンがレンのほうを向くと同時に、レンの体も三人の正面を向く。
「久しぶり、レン!久しぶりに会えて嬉しいよ!」
ハルトマンが本当に嬉しそうな顔でそれを告げると同時に、レンに抱き付く。レンは、それにどう反応するわけでもなく、目線だけをハルトマンに向ける。なにも動じないレンを見たハルトマンは、顔をたちまち不機嫌な顔に変化していき、レンから体を離す。それを見届けたミーナは、タイミングを見計らい、声をかける。
「ここで話すのはゆっくりできないから、場所を移しましょう。」
「私もお前と久しぶりにゆっくり話したいし、名案だな。」
「そうだね。」
バルクホルン、ハルトマンの順に同意の意を述べると、移動しようと歩き出す。
「俺は何も話すことはない。部屋に案内してくれ、荷物を片付けたい。」
レンだけが反対の意見を出すが、ミーナがそれを許さなかった。
「駄目よ、隊長命令って言ったらいいの?」
半ば強制的にレンの意見を却下し、暗に久しぶりの再会に付き合いなさいというのを伝えると、レンは観念し足を部屋の外へ進めた。それを見た三人は、顔を合わせ、笑いあいついていく。こうして、全員との顔合わせが無事に終了し、ストライクウィッチーズの一員になったのだった。