「色々ありがとう!今度会う時まで、元気でね!」
「センセイは、ずっとクマのセンセイクマーー!!」
「忘れないでください、僕らの事!」
「先輩!愛してるーー!!」
「俺頑張っから、先輩も逃げんじゃねーぞ!」
「君の事、いつも想ってるから!」
「距離なんて関係ねぇ!離れてても、仲間だかんなーー!!」
(みんな…ありがとう)
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かくして少年、鳴上悠を乗せた電車はこの地を後にした。
八十稲羽…悠は両親の仕事の都合で一年間をこの地で過ごした。元々転勤族の子であった悠は、ここで過ごす事に期待感を持っていなかった。いつものように何人かと仲良くなり、すぐに別れて疎遠になる。そう思っていた。
だがこの一年で八十稲羽は悠にとって、第二の故郷とも言える場所になった。かけがえのない仲間達とも巡り合えた。そしてもう一つの家族も出来た。悠にとってこの場所で過ごした日々はかけがえのない思い出となったのだ。
悠を乗せた電車は現在トンネルの中を通っており、やがて出口となる場所から光が見えてきた。
「え…?」
トンネルの先に広がる光景を見た悠は唖然とした表情になってしまう。
何故なら彼が目にしたのは、見た事もない町だったからだ。
(…つい電車を降りてしまったが、どこなんだここは?)
駅を出た悠は若干困惑しているものの、何とか状況を整理しようと頭を働かせていた。
(まことみらい駅…まことみらい…この町の名前か。けど、俺の地元と八十稲羽の間にそんな町はなかった筈だ…どうなってるんだ…?)
「あの~…」
(それにしても、周りを歩いてる人達もどこか変だ。何というか…時代遅れなファッションをしているし…)
「すみませ~ん…」
(よく見ると携帯電話も古いタイプばかりだ。段々スマホに移行してる人が増えてるのにな…そういえば陽介もスマホ使って)
「すみませーーん!!」
「…ん?」
突如近くから大声で呼ばれ、振り返ってみるとそこに居たのは悠より少し年下と思われる少女だった。
「ボーっとしてるようですけど、大丈夫ですか?…あっ、もしかして何か困りごとですか!?困りごとなら私に任せてください!」
少女がそう話している一方、悠はただ少女をジッと見ているだけだった。
「あの…さっきから私を見てますけど、顔に何かついてますか?」
「いや、ハイカラな格好をしてるなと思って」
「ハイカラ?…これは私が作った探偵衣装です!」
「探偵衣装?(直斗のファンなのかな?)」
悠の脳裏には仲間として共に戦ってきた探偵の顔が浮かび上がっていた。
「フッフッフ…これでも私は名探偵を目指しているんです!その為にキュアット探偵事務所の…」
「キュアット探偵事務所?」
「あっ!い、今のは忘れてください!」
「忘れられそうにない単語だから無理かも」
「今のはわかったって言う所じゃないですか!?」
「さっきから面白いリアクションをしてるな、君」
「誰のせいだと思って…あっ!こんな事をしてる場合じゃなかった!失礼します!」
「あっ、ちょっと…」
少女はそのままどこかへ行ってしまった。
(ここの事を訊きたかったんだけどな…少し町を見て回ってみるか)
悠は駅前を後にし、町を散策する事にした。
町にある建物はオシャレな物も多々あったが、通行人たちの雰囲気は先程思った通りどこか古臭い物だった。
「あっ…」
町を歩いていると、先程出会った少女と遭遇した。
「君はさっきの…」
「あっ、自己紹介をしてませんでしたね。私は小林みくるです!」
「鳴上悠だ。よろしく」
悠と少女、みくるは互いに自己紹介をする。
「ところで、小林はここで何をしてるんだ?」
「その…迷子の猫を探してまして…この猫なんですけど、どこかで見ませんでしたか?」
みくるは自身が探していた迷子猫の写真を悠に見せる。写真に写っていたのはカギ尻尾の黒猫だった。
「ごめん、見てない」
「そうですか…」
みくるは落胆した表情をしていた。この表情から察するに、ずっと探していたのだろう。
「俺も手伝うよ」
「そんな、悪いですよ!」
「大丈夫だ。実は後輩に探偵がいてな、時々依頼を手伝ったことがあるんだ」
「後輩に探偵!?有名な探偵だったりするんですか?」
「白鐘直斗、巷じゃ探偵王子って言われてる奴だ。聞いた事ないか?」
「白鐘直斗さん…すみません、聞いた事ないです…」
「あ、そうか…」
「とはいえ、とても心強いです!頼りにしてます、鳴上さん!」
「フッ、バンバン頼ってくれ」
それから悠とみくるは迷子猫を探し回ったが、中々見つからなかった。
「いないな…」
「そうですね…」
猫を見つけられないからか、みくるの表情はどこか落ち込んでいた。
「…小林は何で名探偵になりたいんだ?」
「…私も昔、助けてもらったんです。だから、今度は私がみんなを助ける名探偵になりたいんです!」
「そうか…良い夢だな」
「…でも、やっぱりそう上手くいきませんよね。猫一匹も見つけられないようじゃ…」
「…小林」
「なんですひゃっ!?」
悠は突然みくるの頬を両手で触れた。
「な、なにするんですか!?」
「意気消沈な小林に元気を注入したんだ」
「え…?」
「小林は猫を見つける為に色んな所をくまなく探してたし、しっかりと聞き込みもしていただろ?猫を見つけたいと心から思っているから、ここまで頑張ってきたんじゃないのか?」
「鳴上さん…そうですよね。ここで諦めたら、名探偵にはなれません!」
「元気が戻ったな。それじゃあ、猫探しを再開するか」
「はい!」
「にゃあ~!」
「あっ、黒猫ちゃんだ!」
「可愛いカギ尻尾だな」
「「…」」
「にゃ?」
「「いたぁぁぁーーー!!」」
「にゃにゃ!?」
逃げていく黒猫を二人はすぐさま追いかけていった。
「フゥ…見つけられて良かったですね」
「ああ」
みくるの腕には黒猫の姿があった。
「鳴上さん!手伝ってくれてありがとうございます!」
「大したことはしていない。それに、怯える黒猫を優しく説得したのは小林だろ?」
「それはそうですけど…」
「あまり謙遜するな。君なら必ず皆を助けられる名探偵になれる筈だ。頑張れよ」
そう言って悠はみくるの頭を優しく撫でる。
「な、なな、何をするんですか!?」
「あ、すまない。小林が可愛かったから…」
「もう…それじゃあ、私は猫ちゃんを帰してきます」
「ああ。頼んだ、小林」
悠はその場を後にしようとしていた。
「あの!」
「ん?」
「その…あなたの事、悠さんって呼んでも良いですか!?私の事もみくるで大丈夫ですから!」
「…いいよ。それじゃあな、みくる」
そう言って悠はこの場から去っていった。
「もう…何で私、こんなにドキドキしてるの…?」
「さて…本当にどうしよ…」
みくると別れた悠だったが、結局この町の事がわからずに困り果てていた。
するとアイス屋が目に入り、腹から空腹音が聞こえてきた。
「…とりあえず、何か食べるか」
空腹には勝てなかったようで、悠はひとまず腹ごしらえをする事にした様だ。
「あの…何ですかこのお金は?」
「えっ?」
アイスを購入する際に千円札を渡した悠だったが、どういう訳か店員からそう言われてしまった。
「えっと、千円札ですけど…」
「いやいや、これって野〇英〇ですよね?千円札に描かれているのは夏〇漱〇ですよ…もしかしてこれ、偽札!?」
「いやいやいや!偽札じゃないですって!それに夏〇漱〇の千円札はとっくに無くなってる筈ですよ!?」
「訳の分からない事を…とにかく警察に「はい」…え?」
何者かの声が聞こえ、その人物が千円札を店員に渡していた。
千円札を渡したのは不思議な雰囲気を纏った少女だった。少女の腕には紫色のぬいぐるみの様な物が抱かれていた。
「彼のアイスの分。間違えて玩具のお金を持っていってたみたい」
「なんだ、るるかちゃんの知り合いだったんだね。君、今度から気を付けるんだよ」
「あ、はい…」
警察沙汰になる事を回避出来たことで、悠は安心した表情になっていた。
「助かったよ、ありがとう」
「あなたの為じゃない。私もアイスを買う所だったから、そのついで」
「それでも君には感謝している。本当にありがとう」
「…あなた、変わってる」
「そうか?…ところで、ハイカラなぬいぐるみを持っているな」
「…意味はよくわからないけど、マシュタンは私にとって大切な存在」
「マシュタンって言うのか…よく見ると可愛いな」
「…あなた、さっきのお金は何?」
すると少女からそう訊かれた悠。
「何って…ただの千円札だけど」
「でもあなたの千円札に描かれているのは夏〇漱〇じゃない」
「…さっきの店員も言っていたけど、夏〇漱〇の千円札は2007年に発行が終わった筈だ。今は2012年なのにどうして…?」
「…何を言ってるの?」
次に少女が発した言葉に、悠は流石に動揺を隠せなくなる。
「今は1999年の3月28日。2012年じゃない」
「…えっ?」
裏話になりますが、直斗も主人公候補にいました。探偵王子ですし。