「いたぞ!」
アゲセーヌを追って路地裏を抜けた先で彼女を見つけた悠達。当のアゲセーヌは誰かと話していたのか、その場に立ち止まっているようだった。
(…誰かと話してる様だったな)
「…面倒だけど、ウソノワール様の為なら相手してやるっしょ!」
「ウソノワール…それがお前達の親玉の名前か?」
「その通りだし!」
そう言ってアゲセーヌはどこからかハイビスカスを取り出した。
「噓よ覆え!チョベリグにしちゃって、ハンニンダー!」
「ハンニンダァーーー!!」
アゲセーヌはハイビスカスを亀の置物に向かって吹きかけ、ハンニンダーへと変えた。しかし悠達はそのハンニンダーを見て違和感を感じていた。
「亀の置物なのに…花なのか?」
「アゲからしたら花にしか見えないし!」
「だから、亀だって言ってるでしょ!?」
「!?…悠さん、みくる、ジェット先輩!周りを見て!」
あんなにそう言われ、周りを見る三人。辺りの雰囲気も先程と変わり、人の気配も感じられなかった。
「フフン♪これがファントムの新技術!あんた達以外誰もいない密室の出来上がり。これで事件は迷宮入りっしょ~!」
「「っ…!」」
「…それなら好都合だ」
「ハァ?」
「俺達以外誰も居ないって事は…あんなとみくるがプリキュアになるところも、俺のこの力も、見られる事がないって事だ」
そう言いながら悠は降りてきたタロットカードを握り潰した。すると悠の背後にはイザナギの姿が現れた。
「へぇ~、それがペルソナって奴?ま、アゲからしたらヨユーで倒せるし」
「みくる!私達も!」
「えぇ!」
あんなとみくるもプリキュアに変身し、ハンニンダーに向かっていった。
「ハンニンダァー!」
ハンニンダーは太い腕を使って襲い掛かって来るが、アンサーとミスティックはその攻撃を避けた。
「ハァァーーッ!!」
アンサーは回し蹴りでハンニンダーのバランスを崩し、ミスティックがハンニンダーを踏みつけた。
「イザナギ!」
続けてイザナギがジオダインをハンニンダーにぶつけた。
「何やってんのハンニンダー!マジチョベリバ~!」
「チョベリバ?」
「『最悪』って意味だ…少し前に流行ってた言い方だな」
「ハイカラ以前の問題だな…」
「アゲ的には今もブームだし!ハンニンダー!」
「ハンニンダァーー!!」
ハンニンダーは蔓の形をした手を伸ばして攻撃してきた。イザナギ、アンサー、ミスティックはそれを避けていく。
「ハンニン…ダァーッ!!」
「「「うっ…!」」」
ハンニンダーの顔から光が放たれ、眩しさのあまり悠達は目を瞑ってしまった。その隙をハンニンダーは見逃さず、蔓をアンサーとミスティックに向けて伸ばしてきた。
「くっ…!」
なんとか目を開いていた悠はイザナギを二人の元へ行かせた。これにより二人は助かったが、代わりにイザナギが捕らえられてしまった。
「イザナギが!」
「一番ヤバそうな奴捕まえたっと!ハンニンダー!」
「ハンニン…ダァーッ!」
「ぐぅ…っ!」
ハンニンダーがイザナギを捕らえている蔓に力を入れ、イザナギを握り潰そうとするとイザナギの使用者である悠が苦しみ始めた。
「まさか、ペルソナのダメージはそのまま使用者にも伝わるのか!?」
「大変!アンサー!」
「うん!」
「問題ないっ!!」
アンサーとミスティックがイザナギを救出しようとするが、それを悠に止められてしまった。
「俺なら大丈夫だ…だから、お前達はハンニンダーを浄化できる様に準備しておけ!」
「悠さん…でも!」
「このままだと悠さんが!」
「…俺を、信じろ」
悠は苦しみながらも笑みを浮かべ、アンサーとミスティックにそう口にした。
「何ごちゃごちゃ言っちゃってんの?ハンニンダー!さっさとトドメ刺しちゃって!」
「ハンニンダァーーー!!」
ハンニンダーは更に力を強くし、イザナギを握り潰そうしていた。一方悠は苦しみながらも不敵な笑みを浮かべてハンニンダーを見ていた。
「…チェンジだ」
悠が手を掲げてそう口にすると、イザナギはタロットカードへと変化した。イザナギが消えた事で蔓も解けていた。
「…タロットカードの絵が違う?」
「あれは…『刑死者』か?」
そう、そのタロットカードに描かれているアルカナは『刑死者』。イザナギ召喚の際に描かれていた『愚者』のアルカナではなかった。
「アティス!!」
悠が手を握るとタロットカードが砕かれ、そこから刑死者のペルソナ・アティスが現れた。
「悠さん、他にもペルソナを使えたの!?」
「そうみたいだね…あっ、ミスティック!」
「う、うん!」
アンサーとミスティックはジュエルキュアウォッチの針を動かし、いつでもハンニンダーを浄化出来るよう準備に入った。
「うげっ!?ミイラとかマジチョベリバ~!ハンニンダー、さっさとやっちゃって!」
「ハンニンダァー!」
ハンニンダーはアティスに向けて蔓を伸ばし、もう一度捕らえようとしていた。
「アギダイン!!」
悠の叫びと同時にアティスが炎攻撃のアギダインを放った。
「ハンニンダァァァーーーー!?」
これによりハンニンダーが炎上し、そのまま地面に膝をつけて動かなくなった。
「ちょ、ハンニンダー!?」
「今だ!」
「「これが私達の、アンサーだぁーーー!!」」
アンサーとミスティックはハンニンダーをパンチで貫いた。
「「キュアっと解決!」」
無事にハンニンダーは浄化され、亀の置物を取り戻すことが出来た。
「ポチポチ!キュアキュア~!」
手に入れたマコトジュエルはポチタンのリボンに吸い込まれていった。
「う~!超ムカつく~!覚えてなよ!」
アゲセーヌは捨て台詞を言い残し、この場から撤退していった。
一方、ビルの屋上から悠達の様子を見ている者達がいた。一人はアイスを食べている少女で、もう一人…否、もう一匹は紫色の妖精だった。
少女と妖精の正体は、以前悠にキュアット探偵事務所の存在を教えたるるかとるるかが抱いていたぬいぐるみ、マシュタンだった。
「フーン…中々やるじゃない。特に助手さん」
マシュタンは悠達を見ながらそう口にする。
「彼、アゲセーヌの手口を最初に見抜いた訳だし、かなり頭の切れが良いみたいね…まぁ、るるか程じゃないけど」
「…それでも、彼の推理力と観察眼は中々の物。当然あの子達より上だし、私の事も超えかねないと思う」
「るるかがそこまで言うなんて…余程あの子に興味を持ったみたいね」
「…それにしても、あのペルソナっていう力はとても厄介ね。それもペルソナはあのイザナギだけじゃなさそう…」
「大丈夫なの?そんなに弱気で」
「…私がいつ弱気になったの?」
アイスを食べ終えたるるかはマシュタンを抱き上げた。
「安心してマシュタン…私に失敗はない」
るるかとマシュタンはこの場を後にしていった。
あれから亀の置物を返した悠達は改めてインテリアを買いあさり、キュアット探偵事務所をオシャレな空間に変える事が出来た。その代償としてジェットの財布がすっからかんになってしまったが。
「良い感じに出来たね!」
「えぇ!」
「ハイカラだな」
悠、あんな、みくるは外から事務所の外観を眺めていた。
「さて、後は依頼が来るのを待つだけだな」
「うん!最初はどんな依頼が来るのかな…」
「…その事なんですけど」
あんながいずれ来る最初の依頼に胸躍らせていると、みくるが二人に話しかけてきた。
「私、最初の依頼人はもう決めてるんです」
「えっ、もう!?」
「それって誰なんだ?」
「…悠さん、あんな。私の最初の依頼人は、あなた達二人です」
「え?」
「私と悠さん!?」
「うん、自分で決めたの…悠さんとあんなを、元の時代に戻すって…だから私に、小林みくるに依頼してください!」
「みくる…わかった!」
「お前の気持ち、確かに伝わったよ」
「それじゃあ…!」
「ああ、俺を…」
「私を…」
「「元の時代に戻して(くれ)!」」
「…その依頼、確かに引き受けました!あなた達の事件を解決する為に、頑張って立派な名探偵になってみせる!」
「その意気だ」
こうして、悠達は更に絆を深めたのであった。
―今回手に入れたアルカナ―
正義:小林みくる