「みくる、その恰好…」
「学校の制服ですよ?今日から新学期ですから」
「今まで着てた服って、制服じゃなかったんだな」
「そこですか!?」
今日から新学期が始まるらしく、みくるは学校の制服を身に着けていた。
「そもそも休日に制服を着る訳ないじゃないですか?」
「俺や友達は時々着てたぞ」
「悠さん今までどんな経験してきたんですか!?」
「それは私も気になるけど…ほら、早くしないと遅刻しちゃうよ?」
あんながみくるにそう言うが、当のみくるはどこか心配そうだった。
「あんな、本当に大丈夫…?」
「大丈夫!悠さんとジェット先輩、それにポチタンがいるし!」
「う~ん…悠さんが一緒なら大丈夫そうだけど…」
「ジェット先輩とポチタンは大丈夫そうじゃないか?」
「そういう訳じゃないんですけど、ジェット先輩はずっと研究室に籠ったままだし、ポチタンは赤ちゃんだし…」
「ポチ~!」
一方ポチタンは色々な小物を自分の中に収納している様子だった。どうやら昨日からハマっているようなのだ。
「とにかく行ってこい。本当に遅刻するぞ?」
「…わかりました。あんな、何かあったらボイスメモで連絡してね」
「わかった!」
「…遅いな」
あれからみくるが学校に行き、この場にいたのは悠とあんな、ポチタンだけになってしまった。しばらくすると雲行きが怪しくなってきた為、あんながポチタンと一緒にみくるに傘を届けに行ったのだ。
「あれ?あんなはまだ帰ってないのか?」
ソファに座って読書をしていた悠の元にジェットがやって来た。
「ああ…ん?ジェット先輩、あんなが出かけた事を知ってたのか?」
「ああ。新しいプリキットがようやく完成してな、みくるにプリキットを届けるよう頼んだんだよ」
「そうか…」
すると悠は本を閉じ、ソファから立ち上がった。
「おい、悠?」
「心配だから、ちょっと行ってくる。傘を二本借りるぞ」
「あ、ああ…」
そう言って悠は事務所を出ていった。
「ここがみくるの通う学校か…」
悠はみくるが通うまことみらい学園の校門前まで来ていた。みくるが言うには中高一貫の学校だそうだ。
悠は辺りを見回したが、あんなとポチタンの姿はどこにもなかった。
「あの…」
すると一人の女性が悠に話しかけてきた。
「もしかして、あの探偵さんのお友達ですか?」
「探偵さん…もしかして、あんなの事ですか?」
「はい…これ、さっき貰った名刺です」
そう言って女性はあんなの名刺を見せてきた。
「そうですか…俺は助手の鳴上悠です」
悠は女性に名刺を渡し、事の経緯を女性から聴いた。
この女性は大学生の北村真理子という名前で、ロンドンに留学中の妹を見かけたという不可解な事が先程あったようだ。それを聞いたあんなが真理子の妹である恵子を探しに学校へ入っていったそうだ
「そういう事だったのか…ところで、その傘は?」
「あの探偵さんから貰ったんです。雨が降りそうだったからって。でも、何だか悪いと思って返しに来たんですけど…」
「いえ、貰ってやってください。その方があんなと傘も喜びます」
「そうですか…じゃあ、ありがたく貰っておきます」
真理子がその場から去っていくと、悠は校門の塀を登って敷地内に入り込んだ。それから生徒や警備員に見つからないように悠はあんなを探していた。
「一人で依頼を引き受けたの!?」
「この声…」
聞き覚えのある声が聞こえ、そこへ向かってみるとあんなとみくるの姿があった。
「わかってるでしょ!?私には学校も探偵も、どっちも大事だって!一人で調査して、失敗しちゃったら依頼人に迷惑をかけるでしょ!?」
「みくるだって、一人で依頼引き受けたでしょ!?」
二人の間にある雰囲気は、いつもの様に楽しそうなものではなかった。
「落ち着け!」
「「っ!」」
悠がハッキリと二人にそう言うと、思わず二人は驚いてしまったようだ。
「ゆ、悠さん…?」
「どうしてここにいるんですか!?」
「そんな事、今はどうでもいい。それより何で喧嘩してるんだ?」
「だって、あんなが勝手に依頼を引き受けてたから!」
「それはみくるだって同じでしょ!?みくるに迷惑をかけたくなかったから、私が一人で解決しようと…」
「そこまでだ」
悠は再びヒートアップしそうな二人の間に入る。
「…確かに連絡もせずに、一人で依頼を引き受けたのは不味いかもしれない」
「悠さん…」
「ほら!悠さんだってそう…」
「だからと言って、あそこまで怒鳴る事はないんじゃないのか?」
「えっ…?」
「あんなも悪気があって依頼を引き受けた訳じゃない。学校に行っているみくるに迷惑をかけたくないと思ったからだ。そうだろ?」
「う、うん…」
「みくる。依頼人を第一に考えるのは悪い事じゃない。だけど、あんなの気持ちも汲み取ってやってくれ」
そう言って悠はあんなに目線を移した。
「恵子さん探し、俺も手伝うよ」
「…いいの?」
「ああ」
悠は優しくあんなの頭を撫でた。あんなは頬を赤らめてご満悦のようだ。
(…どうして、あんなばかり)
その光景を見ていたみくるの心中は穏やかではなかった。やがてみくるの心はどす黒い感情で覆われていった。
「そうだみくる。お前が引き受けた依頼って…」
突然の事だった。悠がバランスを崩し始めたのは。みくるが悠を思い切り突き飛ばしたのだった。
「悠さんっ!!」
突き飛ばされた悠は壁にぶつかり、あんなが悲鳴に近い声を出しながら駆け寄っていった。
「うっ…!」
「!?…悠さん、血が…!」
「ポチ…!?」
頭を強く打ってしまったのか、悠の頭部から血が流れていた。悠本人も今のショックで気を失っているようだった。
「っ!…私、今何を…!?」
悠を突き飛ばした当人であるみくるはこの光景を見て我に返ったのか、震えながら自身の両手を見ていた。
「…みくる。どうしてなの?」
あんなはこれまで出した事のないような低い声を出していた。
「どうして?悠さんが私の味方をしたから?だとしても、突き飛ばす事ないでしょ」
「わ、私、そんなつもりじゃ…!」
「言い訳なんて聞きたくないっ!!」
あんなは大声でそう口にする。その目からは涙が零れ落ちていた。
「悠さんはいつも私に優しかった!いつも側にいてくれた!…私には、悠さんしかいなかったの!!」
「あんな…っ」
みくるはこの場から逃げるように去っていった。
あんなはみくるには目もくれず、悠の側に座り込んだ。
「…そうだよね、最初からわかり切ってる事だったよね…」
そう口にするあんなの表情はどこか寂しそうだった。
「悠さん、いつも私の頼れるお兄さんでいてくれたよね?でも、わかってる…本当は悠さんも寂しいんだよね?」
そう言ってあんなは悠に顔を近づけてきた。そんなあんなの目には光が宿っていたなかった
「安心して、私が一緒だよ?ずっと…」
「ん…っ…!」
しばらくして悠が目を覚ました。悠は頭を押さえながら辺りを見渡したが、この場にあんな達はいなかった。
「あんな…みくる…ポチタン…」
頭に怪我を負った影響か、あんな達を探している悠はフラついているようだった。
「ハンニンダァーーー!!」
悠が目にしたのはアンサーとミスティックがツバメの姿をした二体のハンニンダーと戦っているところだった。先程の喧嘩の影響か、二人は思うように連携を取れていないようだ。ハンニンダーを浄化する事も出来ず、二人は地面に倒れてしまった。
「さぁ、そろそろ舞台から降りてもらおうか」
今回のハンニンダーを生み出したであろうニジーがそう口にすると、すかさず悠はペルソナを召喚した。
「イザナギ!!」
「「ハンッ!?」」
プリキュアにトドメを刺そうとするする二体のハンニンダーをイザナギが吹き飛ばした。
「ペルソナ使い…厄介な奴がいないと思ったんだけどね…」
「悠…さん…」
「どうして…?」
「友達を助けるのに、理由なんかいらないだろ…ぐっ」
「あ…!」
悠が苦しみながら頭を押さえ、それを見たミスティックの表情が変わってしまう。
「へぇ…何故頭を怪我してるのか気になってたけど、君が何かしたって事か」
そう呟くとニジーはミスティックに視線を移した。
「私…私は…!」
「ミスティックは…みくるは何も悪くない!!」
悠は動揺するミスティックにそう告げ、イザナギをハンニンダーに向かわせた。
「「ハンニンダー!!」」
「くっ…!」
使用者の悠が頭が負傷している影響か、イザナギは思うように戦えていないようだった。
「このままじゃ悠さんが…!」
「…あっ!」
するとアンサーは先程地面に落とした虫眼鏡のような物に気づいた。これは先程ジェットから貰ったプリキットだ。
「オープン!」
アンサーはプリキットを使おうとするが、いつもの様に大きくならなかった。
「オープン!オープン!」
何度も使おうとしたものの、結果は変わらない。
「君達はもう、舞台に上がる資格はないのさ!」
ハンニンダーの一体がイザナギから離れ、アンサーとミスティックに向かっていった。
しかし、二人が倒れる事はなかった。
二人の前に飛び出してきた悠が、二人を守ったからだ。
だが、悠は今のでダメージを負ってしまい、防御の際に使用した模造刀も真っ二つに折れてしまった。
そして追い打ちをかけるように、イザナギも消えてしまった。
「アンサー…ミスティック…良かった…うっ…!」
「「悠さんっ!!」」
二人は地面に膝を付けている悠の元へ駆け寄るが、もう一体のハンニンダーが悠達に迫って来ていた。
「ポチィィィィィーーー!!」
今度はポチタンが悠達の前に現れ、額の宝石を輝かせながら叫んでいた。
ポチタンは不思議な力でハンニンダー二体を吹っ飛ばした。
「くっ…マコトジュエルは二つ手に入れた…今回は良しとしよう!」
ハンニンダーはニジーを乗せてこの場から飛び去っていった。
「ポ…ポチ…」
「ポチタ…ン…」
力を使い果たした悠とポチタンはこの場に倒れてしまった。
「「悠さん!!ポチタン!!」」
この話を書いていた時の作者「(こんな展開を思いつくとか)非道いなぁ…(自分に)人の心とかないんか?」
ちなみに悠が意識を取り戻すまでの出来事は原作と概ね同じです。