ニジーにマコトジュエルを二つも奪われ、悠が重傷を負ってしまった。更にはポチタンも三人を守るために力を使い果たし、元気をなくしてしまったようだ。あんなとみくるは悠とポチタンを事務所に連れ帰り、ジェットに様子を見てもらった。ポチタンの方はミルクを飲めるくらいには回復したが、悠の方はジェットが手当てをしている最中だった。
しばらくすると悠を自室に寝かせたジェットがリビングへと戻ってきた。
「ジェット先輩、悠さんは…?」
「ところどころ外傷はあるが、気絶した主な原因は頭を強く打ったことによる脳震盪だな…しばらくしたら目を覚ますはずだ」
「…私のせいなの」
重苦しい雰囲気の中、そう口にしたのはみくるだった。
「私が、悠さん突き飛ばしちゃったの…私とあんなが言い合いになって…悠さんがあんなに優しくしてるところを見てたら、嫌な気持ちになって、それで…っ!」
段々とみくるの声が霞んでいき、気が付くとその眼から涙が溢れ出ていた。
「怪我をさせるつもりなんてなかった!でも、どういう訳か自分を抑えられなかった…マコトジュエルの事だって、私がニジーにヒントを与えちゃったのがいけないの…全部…全部私の!」
「みくるのせいじゃない…」
「えっ…?」
みくるが自責の念に駆られている最中、次に声を出したのはあんなだった。
「私が勝手に依頼を引き受けちゃったから…私が勝手なことをしなかったら、みくるが困ることも、悠さんが怪我をすることもなかった!私が!」
「あんなのせいじゃない!私が!」
「そこまでだ」
それぞれが自分のせいだと口にする二人をジェットが止める。
「まったく、揃いも揃って同じような事を言って…本当にお前達は二人似た者同士だな」
「似た者同士…」
「私とあんなが…?」
「ああ。僕ですらビックリするくらいだ…短い間しか見ていないが僕にはわかる。お前達は運命の…いや、『奇跡の二人』だ」
「奇跡の…」
「二人…」
「初めて会った時に言ったろ?僕はこの目で見たものしか信じないって…」
そう口にするジェットは少し恥ずかしそうに顔を逸らしていた。
「ビックリするといえば、悠もだな」
「悠さんも?」
「僕が個人的に抱いているのは、とにかく『変な奴』って印象だな。どこかズレたことを言うと思ったら、急に真面目なことを言い出すだろ?」
「それはまぁ…否定できないかも」
「アハハ…私の時代の悠さんもそんな感じだったよ」
そう口にするみくるとあんなは苦笑いを浮かべていた。
「だけど、不思議とこう思うんだ。アイツに裏表なんかないんだろうなって…僕にそう思わせた人間は悠が初めてだ」
「裏表なんかない、か…確かにそうかもね」
「うん…悠さんはいつも私達を助けてくれた。でも…」
『友達を助けるのに、理由なんかいらないだろ…』
「悠さんは、見返りなんて求めてない…心から私とみくるを助けようとしてくれた…」
『ミスティックは…みくるは何も悪くない!!』
「酷いことをした私に、悠さんは悪くないって言ってくれた…見限ったっておかしくないのに…」
「…いつまでも悠さん頼ってばかりじゃダメ。私達でマコトジュエルを取り返さないと!」
「…ポチ」
二人の気持ちが届いたのか、あんなの腕に抱かれているポチタンが微笑んでいた。
「…みくる!」
「…あんな!」
二人は向き合いながらそれぞれの名前を呼ぶ。その表情に迷いなど微塵もなかった。
「…悠とポチタンは僕に任せろ。行ってこい、名探偵プリキュア!」
「「うん!」」
普段着に着替えた二人は事務所を出て、奪われたマコトジュエルの奪還へと向かっていった。
「後はあいつら次第だ、ただ一つ引っかかるのは…」
ジェットの視線の先にあるのは机に置かれている例のプリキットだ。このプリキットは名探偵プリキュアの危機を救う物らしいが、全く使えなかった。
「何もなければいいが…」
あんなとみくるが訪れたのは盗まれたツバメ像があったまことみらい学園だ。
「ここに手掛かりが残されているかも…」
「しっかり探してみよう、みくる!」
「えぇ!」
みくるはすぐに捜査を始めたが、あんなはどういう訳か動きを止めてしまう。
「あんな?どうしたの?」
「…みくる、訊きたいことがあるの」
「え?…でも、今は手掛かりを…」
「大事な話だよ。お願い」
いつになく真剣な表情をしているあんなを見て、みくるはあんなの問いを聞くことにしたようだ。
「みくる…悠さんの事が好きなんだよね?」
「…へっ?」
あまりにも突拍子もない質問に、思わずみくるは呆然としてしまった。
「…あ、あんな、一応訊くけど…LIKEの方って意味で訊いてるんだよね?」
「ううん、LOVEの方だよ」
あんなの言葉を聞いたみくるは再び呆然とし…
「っ~~~!?!?!?」
顔を真っ赤にし、頭から蒸気のようなものを出していた。
「わ、私!確かに悠さんの事は尊敬してるけど、別に恋愛感情は!」
「でもみくる、悠さんが私に優しくしてるところを見てたら嫌な気持ちになったんだよね?尊敬してるだけならそう思わない筈だよ」
「じゃあ、そういうあんなは…」
「好きだよ」
「え?」
「私は悠さんの事が好き。大好きだよ。だからこそ、みくるの気持ちを訊きたい!」
「…私は」
「二人だけで盛り上がらないでくれるかな?」
そこへ聞き馴染みのある声が聞こえてきた。二人の目の前に木の裏に身を潜めていたニジーが現れた。
「「ニジー!」」
「落ち着きなよベイビー達。僕はただ、とびきり素敵なショーへ君達を招待しに来たんだよ」
「ショー…?」
「ああ。マコトジュエル…つまり、二羽のツバメを御覧に入れよう!」
「「えっ!?」
「場所はこの町が誇る美しい浜辺…虹ヶ浜さ!」
二人にそう告げたニジーはこの場から去ろうとしていた。
「あっ!」
「待ちなさい!」
「お待ちしているよ、ベイビー達!」
みくるは追いかけようとするが追いつけず、ニジーの逃走を許してしまった」
「虹ヶ浜…そこにニジーとハンニンダーが…」
「行くよ、みくる!」
「えぇ!」
二人はそのまま虹ヶ浜に向かっていった。
場所は変わり虹ヶ浜…その砂浜にアンサーとミスティックが倒れていた。二人はツバメのハンニンダー達を相手に善戦していたが二羽のハンニンダーが合体し、そこから逆転を許してしまったのだ。
「フフ…また一雨降りそうだね…この空はまるで、君達の心を写しているかのようだ」
自身の勝ちを確信したのか、ニジーは笑みを浮かべながら二人を見下ろしていた。
「…傘を届けに行ったんだ。みくるに…」
「えっ…?」
「そしたら、友達と楽しそうにしてるみくるを見て…邪魔しちゃダメだって思って…何より思ったの…この時代で…この世界で…私は独りぼっちなんだって…っ!」
そう話すアンサーの眼からポツポツと涙が零れ落ちていた。
「だから、一人で調査しようって…ごめんね…」
「っ…そうだよね…1999年に…この時代に来て、心細いよね…不安だよね…なのに私、自分の事ばかりで…ごめんね…っ!」
「ハンニンダァーーー!!」
二人の話を遮るかのように、ハンニンダーの叫びが響き渡った。
「さて、そろそろショーも終わりの時間だよ…プリキュア!!」
とどめを刺そうとハンニンダーが二人の元へ迫ってきていた。
「ハンッ!?」
「ハ、ハンニンダー!?」
しかし、突如として無数の斬撃のようなものが飛んできて、ハンニンダーを吹っ飛ばした。
「待たせてすまない、二人とも…」
この場に現れたのは一人の男だった。男は頭に包帯を巻いており、右手には可愛らしいデザインの刀が握られていた。
「「悠さん…!」」
「鳴上…悠…!」
その男を見たアンサーとミスティックは安堵の表情になり、ニジーは忌々しいと言いたげな表情になった。
「ここは、俺に任せろ」