理科室に入った筈の悠司、あんな、みくる、ポチタンだったが、どういう訳かここは体育館だった。
「…あんな、みくる。俺達が入ったのって、理科室だったよな?」
「その筈ですけど…」
「どう見ても体育館…だよね?」
「ようこそ、カラクリ迷路へ!」
三人が困惑しているとステージ上から聞き覚えのある声が聞こえ、振り向いてみるとそこにゴウエモンがいた。
「「ゴウエモン!」」
「なるほど…お前がここにいるということは、学校にマコトジュエルがあるって事か」
「そういうこった!…ん?お前さん、よく見ると少しばかり縮んじまったんじゃないか?」
「あんなとみくると同じ学校に通いたくてな。こういう事もあるし、二人と一緒にいられた方が良いだろ?」
「なるほどな…そりゃお熱いこった!」
ゴウエモンの発言にあんなとみくるが顔を真っ赤にしてしまっていた。
「ち、違うから!私達はまだそういう関係じゃないから!」
「そ、そそ、そうよ!」
「なぁ、さっき言ってたカラクリ迷路っていうのは何なんだ?」
(悠さん気にしてないの!?)
(もしかして、ゴウエモンの言ってる意味に気づいてない!?)
二人がショックを受けているのをよそに、ゴウエモンがカラクリ迷路について説明していく。なんでもゴウエモンが自身の力で学校全体をカラクリ迷路という異空間に変えてしまったそうだ。
「これからお前達には、このカラクリ迷路で謎を解いてもらう。どれか一つでも解けなければ、永遠にこの迷路から出られない!」
「「永遠に!?」」
「それは困るな…」
「「なんでそんなに冷静なの!?」」
永遠にこの場所から出られないかもしれないというのに、どういう訳か冷静な悠司にあんなとみくるがツッコミを入れた。
「そんじゃあ早速、最初の謎に招待してやろう!」
「させるか!イザナ…」
「おっと!」
悠司はイザナギを召喚しようとするが、その前に悠司達の足元に穴が開き、その穴に悠司達が落ちていった。
「おっと」
悠司は上手く着地し、あたりを見回した。どうやらここは理科室のようだった。
「ここって、理科ぐおっ!?」
突如悠司の身体が重くなり、地面に倒れてしまう。あんなとみくる、ポチタンが悠司を下敷きにして落ちてきたのだ。
「ここって、理科室…?」
「あれ?悠司君は?」
「こ、ここだ…」
下を見て、自分達が悠司を下敷きにしていることに気づいた二人は慌てながら離れた。
「ご、ごめんね悠司君!」
「大丈夫ですか!?」
「ああ…」
それから悠司達は理科室のドアを開けようとするが鍵がかかっているのか、そこから出ることは出来なかった。
「ポチ!」
そんな中ポチタンがドアに空いている鍵穴らしきものを見つける。
「これは、鍵穴か…?」
『脱出せよ』
するとどこからともなくゴウエモンの声が聞こえてきた。
『ドアを開けるには鍵が必要。理科室の注意を守り、鍵を見つけよ』
「つまり、鍵を探せば良いって事ね!」
「だろうな」
「よーし!そうとわかれば!」
「ポチ!」
あんなとポチタンが理科室内を隈なく探し始め、悠司とみくるは歩きながら理科室内を吟味していた。
「水の入ったフラスコか…」
「みんな!こっちに来て!」
みくるに呼ばれた悠司、あんな、ポチタン。みくるが見せてきたのは理科室に貼られているポスターだ。ポスターには火のマークと『FIRE』と書かれた文字があった。
「注意を守るって、これの事じゃない?」
(注意を守る…火…火は水で消せる…なるほど、そういう事か)
どうやら悠司が一足先に謎を解いたようだ。
「…確かに理科では火を使った実験をする事もある。万が一火が大きくなったらすぐに消せるようにしておかないとな」
「確かにそうだね…火を消す…あっ!」
「どうしたの?」
「この火を消せばいいんだよ!」
そう言ってあんなはポスターに描かれている火を指差した。
「ポスターの火を?」
「フッ…だけど、どうやって消すんだ?」
「それは…こう!」
あんなは理科室に置いてあったフラスコの水をポスターにかける。するとポスターの火が消え、ポスターから鍵が出てきた。
「やった!」
「ポチ!」
あんなとポチタンは鍵を持って扉の前まで向かっていった。
「あの、悠さん…」
そんな中、みくるがコッソリと悠司に話しかけてくる。しかし、当の悠司は何故かそっぽを向いてしまった。
「えっ!?…ゆ、悠さん…?」
「…」
一瞬悲しそうな表情になるみくるだったが、すぐに悠司の意図に気づき、恐る恐るではあるがもう一度話しかけた。
「…ゆ、悠司君?」
「…フッ、なんだ?みくる」
「もう!今は私達しかいないんですから普段通りで良いじゃないですか!ビックリしましたよ!」
「それは悪かったな。けど、今の俺は鳴上悠司だ。この姿の時はそう呼んでほしいんだ」
「わかりましたよ…それよりさっきの謎の事、悠司君は気づいてましたよね?」
みくるはそう悠司に訊ねてきた。
「さっき言ってたことだって、私達へ送ったヒントだったんですよね?」
「…さぁ?何の事かわからないな。どちらにしろ、この部屋の謎を解いたのはあんなだ。それは紛れもない真実だよ」
「悠司君…」
「それに俺は名探偵じゃない。その名探偵の助手なんだ。助手の役割は出過ぎた推理をする事じゃなくて、名探偵の手助けをする事だと思う」
「みくるー!悠司くーん!早く次の部屋に行くよー!」
「ポチ~!」
「…じゃあ行くか」
「あ、悠司君!…もう、困った人ね」
そう口にするみくるの表情は呆れつつも、どこか嬉しそうだった。
あれから悠司達は様々な部屋へ行き、悠司が時折ヒントを出しつつ、あんなとみくるが力を合わせて謎を解き明かしていった。それから一同が辿り着いたのは最初にいた体育館だった。
「どうやら、戻ってきたみたいだな」
『脱出せよ。正解のドアを選べ』
この場に再びゴウエモンの声が聞こえてきた。
『前へ進むには後ろへ戻り、道なき道を作り出せ』
「進むには戻る…?」
「二人とも、アレ」
悠司が指したのは五つのドアだった。ドアにはそれぞれ〇、×、△、♪、☆のマークが刻まれていた。
「ドアにマーク?」
「どういう意味なんだろ…?」
「…行き詰まったなら、初めから考えてみるのはどうだ?」
「…そっか!きっと今まで解いた謎を振り返れって事だよ!」
「なるほど!」
「それと『道なき道を作り出せ』…これも関係があるはずだ」
「道…謎を解いて進む…わかった!今まで謎を解いた場所、そこを結んでみるの!」
そう言ってみくるは自身が書いた一階と二階の地図を取り出し、これまで訪れてきた部屋を結んでいった。最初にいた体育館から順番に理科室、音楽室、図書室、家庭科室、美術室、そして体育館に戻ってくる。
「結んではみたけど…」
「わからないね…意味はあると思うんだけど…」
「…これって」
「クチュン!」
するとポチタンがくしゃみをし、それにより地図の一枚が動いてもう一枚の地図の上に重なった。
「大丈夫か?ポチタン」
「ポチ…」
悠司はハンカチを取り出してポチタンの鼻を拭いてあげた。そんな中あんなとみくるが考え事をしていた。
「「…見えた!これが答えだ!!」」
どうやら二人は答えにたどり着いたようだ。あんなとみくるは重なった二枚の紙を窓から漏れ出ていた光に当てた。
「一階と二階、一枚ずつだと意味がないように見える地図。だけど!」
「二枚重ねると、道が繋がる!」
重なった二枚の地図。それぞれ繋がっていた線が一つになり、完成したのは☆印だった。
「「☆のマーク!」」
「…お手柄だったぞ、ポチタン」
「ポチ…ポチ!」
悠司に頭を撫でられたポチタンは嬉しそうに胸を張っていた。
「さぁ、行くぞ!」
「「うん(はい)!」」
悠司達は☆印が刻まれたドアを開け、体育館を出る。
ドアの先にあったのは、学校の中庭だった。
「出られたの?」
「やるじゃないか」
そこにいたのは、桜の木の上に立っているゴウエモンだった。