みくると一緒にいた少女が呟いた一言。これにより周りの空気が微妙な物になっていた。
「先生?…悠さんが?」
「…君は誰だ?」
「何言ってるんですか!?私ですよ!先生の生徒の明智あんなです!」
「明智あんな…悪いけど、俺は君と初めて会うぞ」
「そもそも、鳴上君は高校生だった筈よ。誰かと間違えているんじゃないですか?」
「えっ?」
幸野からそう指摘され、あんなと言う名前の少女は悠の顔をジッと見つめる。
「…確かに、私の知ってる鳴上先生よりちょっと若いかも…すみません!人違いでした!」
あんなは恥ずかしがりながら悠に謝罪をする。そんな中悠は一人で考え事をしていた。
(あの子、どうも俺の事を知っている感じだったな…まさか彼女も…それも俺がいた2012年より更に先の未来から来たんじゃ…?)
「悠さん?」
「…何でもない。それより話は聞いている。想田さんのティアラが盗まれたらしいな」
「はい…まりさんが最後にティアラを見てからこの部屋に出入りしたのは、悠さんを含めたあなた方四人…つまりこの中に、ティアラを盗んだ犯人がいます!」
みくるはこの場にいる全員にそう告げる。
「そんな、有り得ないですよ!」
だがまりからそれはないと否定されてしまった。
「…で、ですよね~!ちょっと話を聞こうかな~って…」
「…いや、有り得ない話じゃない」
「えっ!?」
「…ひとまず、各々が何をしていたか聴いてみよう。任せたぞ、みくる」
「わ、私ですか!?」
「名探偵になりたいんだろ?だからお前に任せるんだ」
「…わかりました!探偵テスト合格の為にも…!」
「何か言ったか?」
「あ、なんでもありません!アハハ…」
それからみくるを筆頭に、悠を含めた四人に話を聴いていった。
「僕は、花嫁さんを撮りに来たんだよ」
そう言いながらカメラを見せるカメラマンの宇都見。
「私は、まりにお願いしたい事があってね」
次にそう証言したのはまりの友人である藤井ともかだ。
「お願いって、何をお願いしたんですか?」
「ブーケをともかの方に投げてほしいって」
「あっ!それってブーケトス!」
「確か、ブーケをキャッチしたその人に幸せが訪れるんだったな」
「それにしても、お願いってアリなんですね」
「まり、OKって言ってくれたよね?」
「ともかが珍しく遅刻しないで来たから、つい…」
「なるほど…悠さんは何をしていたんですか?」
「俺は式の準備で出入りして、その時に想田さんからティアラの事を教えてもらったんだ。昔、想田さんのお母さんもつけてたものだって」
「私とあんなさんも聞きましたね…幸野さんは?」
「私も鳴上君と同じです」
一通り話を聴き終えたみくる。それから帽子やカバンに隠したという推理も出たりしたが、ティアラの大きさ的に帽子にもカバンにも隠せないようだった。
あれから捜査は振出しに戻り、悠は一人中庭で考え事をしていた、
(話を聴いた限りだと、おそらく犯人はあの人だ…想田さんが言っていた事が事実なら、おそらくティアラはあそこにある…)
どうやら悠は犯人の目星をつけているようで、更にティアラがある場所にも見当がついているみたいだ。だが、彼はそれを事件の関係者たちに話す事はなかった。
(だけど、俺がすぐに犯人を告発すれば、想田さんの為に捜査をしているみくるの努力を無駄にしてしまう…とはいえ、もう式まであまり時間がないな…)
「わからないんです…」
中庭を歩いていた悠は、噴水の側にいる二人の少女を見つけた。
(みくると明智?)
噴水の側にいたのはあんなとみくるだった。
「ティアラを持ち出した方法が判れば、犯人がわかる筈なのに、その方法がわからない…!」
「…みくるちゃんは、どうして名探偵になりたいの?」
「…私も、助けられたから」
そう言ってみくるは噴水から立ち上がった。
「だから、今度は私が名探偵になって、みんなを助けたい!」
「…じゃあなろうよ、名探偵!」
「でも…」
「悩んでるだけじゃ始まらないよ。一歩踏み出せば、答えはついてくる!…一歩の勇気が答えになる!…だよ!」
「あんなさん…」
「みくるちゃん!もう一度全部調べてみよ!」
「…はい!」
「話は済んだようだな」
あんなとみくるが話し終えたタイミングを見計らい、悠が二人の前に姿を現す。
「悠さん!」
「鳴上せん…じゃなくて、鳴上さん!」
「フッ…それで、どこを調べるつもりだ?」
「うっ…」
「それは…」
悠の問いにあんなとみくるは言葉を詰まらせてしまう。
「…わからないなら、視点を変えてみろ」
「視点を…?」
「『ティアラを持ち出した方法』を考えるんじゃなくて、『そもそも何故ティアラが消えたのか?』、その理由を考えてみろ。そうすれば答えが見える」
「持ち出した方法を考えるんじゃなくて…」
「消えた理由を考える…キャッ!?」
するとみくるが髪を結ぶのに使っていたリボンが強風で飛ばされてしまい、植え込みの中に入ってしまった。
「あ、まただ」
「また?」
「今日はこれで二回目なんだ。女の子のリボンが植え込みの中に入って…植え込み…花?」
「植え込みの中に入って…」
『『ティアラを持ち出した方法』を考えるんじゃなくて、『そもそも何故ティアラが消えたのか?』、その理由を考えてみろ。そうすれば答えが見える』
「「見えた!これが答えだ!!」」
「…わかったみたいだな」
「はい!鳴上さんとあんなさんのおかげです!」
「そ、そうかな…?」
「よし、お前達の出した答えを犯人に聞かせてやれ」
「「はい!」」
「「犯人は…あなたです!」」
控室に戻り、あんなとみくるが指差した人物、それはまりの友人であるともかだった。
「…や、やだなぁ!ティアラはポーチに入らなかったでしょ?外に持ち出す事なんて…」
「いいえ。ティアラは持ち出されていません」
「あなたは自分にブーケを投げてほしいとまりさんに頼み、こっそりティアラをブーケの中に隠した…あんなさん」
みくるに目線を送られたあんなはブーケの中に手を入れ、そこからある物を取り出した。
「まりさん、それにともかさん、これに見覚えはありますか?」
「わ、私のティアラ!?」
「くっ…」
「ともかさん、あなたはまりさんからブーケを受け取った後、ティアラを抜き取るつもりだったんです」
「どうですか?ともかさん!」
これがあんなとみくるが導き出した答えだ。しばらく静寂が続いていたが、突然ともかが不敵な笑みを浮かべながら拍手をし始めた。
「フフフ…やるねぇ…だけど君達は、一つだけ勘違いをしている…」
「なに…?」
「僕は、ともかではないんだ!!」
そう言ってともかは自身が着ていた衣服を脱ぎ捨てた。ともかが居た場所にはマントを羽織り、仮面をつけた男が立っていた。
「僕の名はニジー!怪盗団ファントムの、怪盗さ!」
「怪盗団…!?」
「ファントム…!?」
「なら俺は特別捜査隊のリーダー、鳴上悠だ!」
『…へ?』
ニジーと名乗る怪盗の出現に、あんな達に緊張感が走る。しかし悠の一言でニジーを含めた全員の目が点になってしまう。
「…って、何張り合ってるんですか!そもそも特別捜査隊って何ですか!?」
「フッ、特別捜査隊は特別捜査隊だ」
「答えになってませんよ!?」
悠とみくるが漫才をする一方、あんなは悠をジッと見ていた。
(今のボケたような言い回し、それにあの答え方…やっぱり鳴上さんって…)
「頂くよ?」
ニジーは悠に気を取られているあんなの側に行き、、彼女の耳元でそう囁いた。
「…あっ!ティアラがない!」
「なんだって!?」
そう、あんなが持っていた筈のティアラがニジーに奪われたのだ。控室の窓が開いていたのを見るに、ニジーはそこから逃げたようだ。
「みくるちゃん、追いかけよう!」
「は、はい!」
あんなとみくるは控室を出てニジーを追いかけていった。
「待て二人とも!」
それに続いて悠も控室から飛び出していった。
あんながいた時代だとP4メンバーは軒並みアラサーで、小さかった菜々子も22歳なんですよね(2027年の10月で23歳)。