まぁ、あくまでも今作はP4とのクロスオーバーなのでその辺は触れないと思います。
「ここは…」
目を覚ました悠が居たのは豪華なリムジンの中だった。その中は不思議な雰囲気が漂っており、奥には鼻が長い老人と美しい風貌の女性の姿があった。
悠はこの場所と、目の前の二人をよく知っていた。
「ようこそ、我がベルベットルームへ…」
「あなたとまたお会い出来た事、とても嬉しく思うわ」
「…俺もだ。イゴール、マーガレット」
ここはベルベットルーム。1年前の事件で悠が幾度も訪れた空間だ。老人、イゴールはこのベルベットルームの主であり、マーガレットはその住人だ。
「それで、またここへ来れたって事は、また何かが起こるのか?」
「左様…」
するとイゴールの目の前に複数枚のタロットカードが現れた。
「近い未来を示すのは塔の正位置…そして、その先の未来を示すのは月の正位置…『迷い』、そして『謎』を示すカード…どうやらあなたは再び災いを被り、大きな謎を解く事を課せられるようだ。あなたと初めてお会いした時と同じ結果ですな…」
「…お客様もお気づきかと思われますが、あなたが扱う事が出来たペルソナはイザナギのみでした…」
そう言ってマーガレットが開いたのはペルソナ全書。そこに写し出されていたのはイザナギだけだった。
「どうやらあなたが時を超えた事で、かの地で築かれた絆が遮断されてしまった…その過程で手に入れてきたアルカナとそのペルソナ達が失われたようです」
「ですがご安心めされよ。あなたが築かれた絆が消えたわけではございません。元居た時間へ帰る事が出来れば、アルカナとペルソナはあなたの元へ戻ってくる事でしょう」
「そうか…」
「けれど、あなたが今いる時間でも絆を育む事が出来れば、あなたが持っていたペルソナを取り戻す事が出来るわ。ほら、このように…」
ペルソナ全書に向かって一枚のタロットカードが降り注いできた。すると全書の中にあんなの姿が浮かび上がってきた。
「『刑死者』のアルカナ…これであなたに一つ、力が戻った筈よ」
「…さて、どうやらお時間のようですな」
イゴールがそう呟くと、悠の視界がぼやけ始めた。
「ではまた会う時まで、ごきげんよう…」
悠達が正式にキュアット探偵事務所の一員になって一日が経過していた。
(イゴールが言っていた事が事実なら、一年前みたいに何かが起こるのか…?)
悠は左手を上に向けて掲げるが、特に何も起こらなかった。
(今はペルソナ自体を呼び出せないか…何で昨日は使えたんだ?…ひょっとして、何か発動する為の条件が…)
「…い…おい!悠!」
思考を巡らせていた悠だったが、ジェットに大声で呼ばれてしまった。
「…どうしたんだ?ジェット先輩」
「どうしたんだじゃないだろ?掃除に集中してくれ」
「あっ、すまない」
実は悠、あんな、ジェットの三人は事務所の掃除をしていたのだった。ちなみにみくるはこれまで住んでいた寮を出る手続きを済ませてここへ来るそうだ。
「ポチタン、掃除が終わったらミルクにしようね」
「ポチ~!」
「うわっ!?やめろよ!」
ポチタンは楽しそうにジェットの顔に引っ付いた。
「すっかり懐かれたみたいだな」
「うん!良かったね、ジェット先輩!」
「呑気に見てないで何とかしてくれ!うわっ!?」
前が見えずにいたジェットは転んでしまい、持っていた大量の本を落としてしまった。
「ゴメン!寮を出る手続きに時間が…前より散らかってない?」
「そっとしておこう…」
「アハハ…」
掃除をしている最中、悠、あんな、みくるは事務所の二階に足を踏み入れていた。
「物置って感じだね」
「ああ…ん?」
悠達は床に落ちていた一枚の大きな紙を見つけた。見たところこのまことみらい市の地図の様だ。
「この辺の地図?」
「みたいだな」
「キュアット探偵事務所は…この辺かな?」
「それから…私の町が、将来ここに出来るんだね…」
あんなが自身が住む町が出来る場所に指を指す。しかしその表情はどこか沈んでいた。
「あんな?」
「…あっ、近いんだね!この辺りに来た事なかったから!」
みくるがあんなに話しかけるが、あんなはすぐにいつも通りに戻った。
「あんな…」
「…そうだ!考えがあるんだけど…」
「考え?」
「それはですね…!」
「インテリア?別になくても良いだろ…」
悠達と共に町へ出ていたジェットが面倒そうにそう口にする。
「でもでも!地図だけじゃ味気ないし!」
「一理あるな」
「それに、来てくれたお客さんがに素敵な事務所だなって思ってもらえた方が良いでしょ?」
「…舞い込んできた依頼は全て引き受けるが、僕らの使命は怪盗団ファントムを止める事だって事を忘れるなよ」
「もちろんだよ!」
「…どうしたあんな?考え事か?」
悠の言う通り、あんなはどこか考え事をしているようだった。
「…ねぇ、悠さんのいた時代って、嘘で覆われた世界だった?」
「いや…似たような事にはなりかけたけど、基本は平和だったな」
「私の時代もだよ…ファントムなんて聞いた事もないし、平和な世界だよ」
「歴史は絶えず変わるものだ」
あんなの疑問に答えたのはジェットだった。
「僕達が頑張らないとお前が居た2027年も、悠が居た2012年も噓で覆われた世界になるかもしれない。あのいけ好かない妖精の手によってな…」
「いけ好かない妖精…?」
「どういう事だ?」
「言ってなかったか?ファントムの奴らも僕とポチタンと同じ妖精なんだよ」
「「えぇっ!?」」
ジェットは怪盗団ファントムの面々も妖精だと言うのだ。
「つまり…本来奴らもポチタンとジェット先輩同様モフモフした姿をしてるって事か」
「「「そこっ!?」」」
「ポチ~!」
悠のわざとなのか天然なのかわからないボケに三人は思わずツッコミを入れてしまう。この状況をポチタンは楽しんでいるようだった。
「とはいえ、俺とあんながそれぞれ居た時代も嘘に覆われたら大変な事になりそうだな」
「そうだね…私達で守っていかないとね!」
「うん!」
「ああ。世界が噓で覆われたら、菜々子まで嘘に覆われるかもしれないって事だ。何としても奴らを止めないとな!」
「…菜々子?」
「誰だそいつ?」
「ポチ?」
「フッ…俺の可愛い妹だ。これを見ろ!」
そう言って悠は持っていた携帯電話を開き、保存されていた一枚の写真をあんな達に見せた。写真には小学校低学年くらいの女の子が写っていた。
「わぁ!可愛い~!」
「まぁ…確かに可愛いな」
「フフッ、そうだろ?」
「…やっぱり、菜々子お姉ちゃんだ!」
「「「え?」」」
あんなが写真に写っている女の子をお姉ちゃんと呼び、悠達は衝撃で固まってしまった。
「みんな!今度はこの写真を見て!」
そう言ってあんなは一枚の写真を取り出し、悠達に見せつけた。
「こ、これは…!?」
「お母さんに撮ってもらったんだ!悠さんにはある意味刺激的かもね♪」
いたずらっ子のような笑みを浮かべるあんなの言う通り、悠は写真を直視したまま動かなくなっていた。
写真に写っていたのはあんなと20代くらいの女性に二人で、女性の方は悠が見せた写真の女の子の面影があった。
「この人…もしかして悠さんが見せた写真の女の子!?」
「菜々子お姉ちゃん。悠さんの従妹なんだよ!私もよく遊んでもらったんだ!」
「っていうか、妹じゃなくて従妹じゃんか…」
ジェットは呆れた表情で悠を見ていたが、肝心の悠は先程から動かずにいた。
「おい、そんなに従妹の成長が嬉しい…!?」
ジェットは悠の顔を見てようやく気付いた。悠が涙を流しながら気を失っている事を。
「おい!感動のあまり気絶してるぞ!?」
「えぇっ!?」
「そ、そんな!?悠さぁーーーーーーんっ!!」
あんなの悲痛な叫びが、この辺り一帯に響き渡ったのだった。
「ねぇるるか、アレって何なのかしら?」
「…バカ軍団」
アルカナとペルソナの入手方法はP4のアニメ版準拠になります。