技術試験隊斯ク戦ヘリ 作:ザクスキー2世
第1話
ルウム戦役について書かれた本を開けば、たいていはモビルスーツの活躍と赤い機体の男の話が出てくる。たった1機で5隻の戦艦を沈めたというのだから、それも無理はない。私もあの男の腕前に異論を挟むつもりはないし、人型の兵器が艦隊戦を変えたことも事実だ。
ただ、その話だけであの戦いを片付けられると困る。
あの宙域には巨大な砲を持ち込んだ者たちもいた。敵艦を沈めるための1発を撃つまでに何度も計器を確かめ、機材の不具合に悪態をつき、それでも持ち場を離れなかった者たちが。
彼らのことを調べようとすると途端に資料が乏しくなる。試作品の型式と試験結果は残っていても、その傍らにいた人間の話まではなかなか見つからない。
第603技術試験隊。
私がかつて身を置いた部隊の名だ。
失敗作の展示場だと笑う者もいた。まともに使えるか分からない兵器を戦場へ持ち出すのだから、そう見えたのだろう。実際に乗せられるこちらとしても、文句の1つや2つで済まなかったことはある。
だが、あそこで働いていた者たちは自分たちの仕事を投げ出さなかった。使えるものは使えると証明し、駄目なら何が駄目だったかを持ち帰ろうとした。そのために戻ってこなかった者もいる。
髪に白いものが混じるようになった今でも、古い手記を開くと彼らの声を思い出す。記録の余白に書き込まれた名前を指でなぞれば、顔も案外はっきりと浮かんでくるものだ。
あの頃より細くなった腕では、もう長い時間の操縦には耐えられないだろう。それでも金星エンジンが座席へ伝えてきた振動や、加速のたびに肩へ食い込むベルトの感触は覚えている。手記を読みながら無意識に肘掛けを握っていることに気づき、自分で呆れることさえある。
私たちは確かにあそこで戦った。後からどんな評価を下されようと、目の前で敵艦が沈んだことも、あの老兵が最後まで砲を離さなかったことも変わりはしない。
だから覚えているうちに書いておこうと思う。
もっとも、最初から立派な働きをしたわけではない。私の着任は遅刻と謝罪から始まっている。
宇宙世紀0079年1月7日
ルウム宙域の辺境で、2隻の船が舷側を寄せていた。
大きい方はジオン公国軍総司令部直下の技術本部に属する第603技術試験隊の母艦、試験支援艦ヨーツンヘイム。地球とサイド3を結ぶ定期航路に就いていた連絡貨客船を徴用し、砲座や通信設備を増設した船である。
民間船だった頃の構造は随所に残り、新しく取り付けられた軍用設備だけが船体から浮いて見える。貨物の扱いには都合のよい広い船腹も、敵から見れば狙いやすい的でしかない。随伴する護衛のムサイ級軽巡洋艦と比べれば、その違いは明らかだった。
公国が独立を宣言してからまだ日が浅い。各地の攻撃に投入された艦艇が移動を続ける中、ヨーツンヘイムも試験兵器の受領を急いでいた。
この時すでに地球へ向けて1基のコロニーが進んでいたが、船内でその行方を知る者はほとんどいない。ここで乗員に渡されているのは目の前の積み荷を受け入れ、指定された宙域へ運ぶための命令と作業予定だった。
左舷に接舷しているのは旧式補給艦パプアである。両艦の間には係留索と連絡チューブが渡され、荷役用のクレーンが分割された砲身をゆっくりと送り出していた。
受け入れるヨーツンヘイム側の格納区画は減圧されている。開放された搬入口から差し込む照明に、宙を渡る砲身の輪郭が浮かび上がった。
QCX-76A 試作艦隊決戦砲 ヨルムンガンド。
砲身だけでも何度かに分けて運ばなければならず、超伝導フライホイール・ジェネレーターや付属機材まで含めると格納庫の相当な部分を占める。通常の艦砲を積み込む作業とは勝手が違い、技術兵は搬入図と現物を照らし合わせながら持ち場を移っていた。
プラズマ融合弾を収めた輸送容器には、砲身とは別の誘導員がついている。1発にザク3機分の費用が掛かると聞かされてからというもの、誰もがその扱いには慎重だ。理論上は戦艦を一撃で葬れるというが、今はぶつけずに所定の位置へ収めることの方が重要だった。
「右舷側、第3固定クランプを合わせろ。今のまま引き込むと受け金に当たるぞ。傷でもつけたらおやっさんに怒鳴られる」
「待ってくれ。さっき合わせたんだが……船が揺れてる」
誘導員が手を上げるとクレーンが止まった。砲身の両側についた技術兵が固定具を確かめ、格納庫の奥からは作業回線へ催促が飛ぶ。
「パプア側、補給ポンプを止められないか。燃料ホースが脈打ってる。こっちの固定が終わるまででいい」
「了解。少し待て」
「まったく、継ぎ手くらい同じ規格にしてくれよ」
返答を待つ間にも工具を持った兵が受け金の脇へ回り込む。文句を言っている者と手を動かしている者は同じだった。
新造艦同士なら使えるはずの機材が、この2隻の間ではそのまま使えない。搬入の準備でも余分な手間が掛かり、予定表にはすでに何本も訂正線が引かれている。
ザクの量産に予算も人手も取られているという話は彼らも聞いていた。こちらの試験を急がせるなら機材も揃えてほしいというのが、現場の偽らざる気持ちだろう。
やがてポンプの停止が伝えられ、誘導員が再び手を動かす。止まっていた砲身はごくゆっくりと前進し、待ち構えていたクランプの間へ入っていった。
その作業を見下ろす連絡通路に、2人の士官が差し掛かった。
パプアの連絡艇で移乗してきたモニク・キャディラック特務大尉と、ヒデト・ワシヤ中尉である。どちらもこの日が着任の日で、艦長への挨拶に向かうところだった。
格納区画に接する通路も減圧されているため、2人はノーマルスーツのヘルメットを閉じたままハンドレールを伝って進んでいた。通路を隔てる窓越しに、吊られた砲身とその周りを行き来する作業員が見える。
先に足を止めたのはモニクだ。総帥府から兵器の運用評価と監督のために派遣された彼女は、作業回線から聞こえる応酬に眉を寄せていた。
「これが最新兵器を試験する部隊の有り様か。スクラップ工場にでも来たようだな」
ワシヤは返事をしかけてから口を閉じた。通路の継ぎ目に張られた仮設のケーブルを跨ぎ、モニクの隣へ寄る。
「確かに、見た目はあまりよくありませんね。でもあの砲身、近くで見るとずいぶんでかいですよ」
「大きさに感心しに来たわけではないぞ」
「分かっています。ただ、あれで戦艦を一撃だと聞くと、ちょっと見てみたくなるでしょう」
ワシヤは搬入口へ目を向けたまま答える。
テストパイロットとして配属されたものの、まだ搭乗機さえ渡されていない。乗艦して最初の仕事は特務大尉のお供というわけだ。自分がこの艦で何に乗ることになるのかも気になるが、格納庫を占領している砲を見ていると、それを尋ねるのが後回しになってしまう。
「技術本部の説明どおりなら、な。まずは無事に積み込んでもらわねば話にならん」
モニクは輸送容器の陰へ消えた作業員を目で追う。軍服なら階級を確かめられるが、同じような作業用ノーマルスーツを着込んだ者ばかりでは責任者が誰なのかも分からない。
「艦長への挨拶が済んだら搬入予定を確認する。中尉、担当者を調べておけ」
「了解です。あの、おやっさんというのが責任者なんですかね」
「だから調べろと言っている」
ワシヤが小さく肩を竦め、ブリッジへ続く昇降口へ向き直ったところで照明の色が変わった。
作業灯に重なるように赤色灯が点滅し、ヘルメットの内側で警報が鳴る。続いてブリッジからの放送が作業回線へ割り込んだ。
『警戒警報!直ちに!』
『総員戦闘配置!釜に火をくべたまえ!』
「なっ、敵襲か!?」
ワシヤが手すりを掴むのと、足元の床が跳ねるのはほぼ同時だった。
窓の外を光条が通り過ぎ、船体の向こう側から外装の破片が飛び出す。姿勢を保っていたモニクも肩を壁へぶつけ、歯を食いしばった。
通路を伝わる振動はすぐには収まらない。格納庫ではクレーンに吊られた積み荷が揺れ、固定前の工具が壁へぶつかって跳ね返っていた。作業員の1人が身を縮め、その頭上を工具箱が回転しながら通り過ぎる。
「全員つかまれ! 砲身の下から離れろ!」
通路の入口では技術兵が扉を押さえ、退避してくる仲間を数えていた。足場を離れた者が手を伸ばすと別の兵が受け止め、その身体を手すりへ引き寄せる。さっきまで補給艦への文句を並べていた声が、今は同じ相手の名前を繰り返し呼んでいる。
モニクは窓の向こうへ目を走らせた。工具を拾いに戻りかけた兵に気づくと、通路を指して退避を促す。兵は一度だけ工具の行方を見てから手すりを蹴り、こちらへ飛んできた。
作業回線の怒鳴り声を聞きながら、ワシヤは手近に寄ってきた工具箱へ腕を伸ばした。取っ手を掴むと身体ごと引かれそうになり、慌てて手すりを握り直す。
さっきまで笑っていた口元が強張っていた。
ブリッジの正面モニターには接近する2つの艦影が映っている。
白髪の艦長マルティン・プロホノウ中佐相当官は、指揮席の肘掛けを押さえながら報告を聞いていた。隣ではオリヴァー・マイ技術中尉が表示を切り替え、格納区画の状態を確かめている。
「出ました!サラミス級2隻、こちらへ接近中です!」
「損害は」
「右舷外装の一部が被弾。耐圧区画への貫通はありません。推進系、異常なし!」
「パプアへ離艦を通告。格納庫は人員の退避を急がせろ」
立て続けに返事が上がる。プロホノウは正面の艦影から目を離さず、マイへ問い掛けた。
「荷役はどこまで進んでいる」
「砲身の一部がまだ両艦の間です。今動けばクレーンを損傷します」
「切り離せるか?」
「作業員を離してからでなければ危険です」
「急がせろ」
ヨーツンヘイムが貨客船だった頃から、プロホノウはこの船を預かってきた。どれほど機関を回しても巡洋艦のようには動けず、無理な転舵をさせれば積み荷が先に暴れ出す。それでも動かなければ次の砲撃を待つだけになる。
索敵員の報告では、敵艦を発見した時にはすでに砲を向けられていたという。周囲へ散布したミノフスキー粒子がこちらの索敵を妨げ、敵の接近を許してしまった。
「散布濃度から逆探されたのではないか…?」
プロホノウの呟きにマイが顔を上げる。
「濃度の変化を追ってきた可能性はあります。ですが、今のところは……」
「分かっている。検討は後だ。護衛艦へ、敵を抑えてくれと伝えろ」
正面モニターの中でサラミスが進路を変えた。もう1隻が少し離れた位置へ動き、双方の砲塔がこちらへ旋回してくる。
「敵艦、発砲!」
モニクは窓から離れ、昇降口へ急ごうとしていた。
格納庫にはまだ退避を終えていない者がいる。通路を横切ろうとした技術兵へ先に行けと手を振り、振り返った時にパプアの船体が白く照らされた。
メガ粒子砲の光条が船体中央へ突き刺さっていた。
貫かれた外板の周囲からガスが噴き出し、艦の陰にあった係留索がまっすぐに張る。パプアは傾きながらも形を保っている。モニクは通信の送信キーを押し込んだ。
「パプアへ退艦を――」
言い終える前に船腹が内側から開いた。
窓いっぱいに光が広がり、モニクは反射的に顔を背ける。遅れて足元へ衝撃が届き、繋がっていた索が何本も引き千切れた。切れた連絡チューブが船体を叩き、窓の縁へぶつかった破片が細かく砕けて散る。
光が薄れた時には、さっきまであったパプアの中央部がなくなっていた。前後に分かれた船体の間から次々と破片が飛び出し、その奥ではまだ小さな発光が続いている。
人影は見えない。
ワシヤは窓の外を探した。連絡艇を送り出した区画がどこにあったか思い出そうとしたが、回転する残骸の向きが掴めなかった。
「パプアが……」
自分たちはつい先ほどまであの艦にいた。移乗の順番が違っていれば、まだ向こうで待たされていたかもしれない。
ヘルメットの中で自分の呼吸が大きく聞こえ、窓を見ているのに目の前のものがうまく頭に入ってこない。手には拾った工具箱を握ったままだった。
「ワシヤ中尉!」
モニクの声に肩が跳ねる。
「窓から離れろ。破片が来る」
彼女自身も手すりを強く握っていた。ワシヤが後ろへ下がるのを見届けてから、モニクは艦内回線を開く。
「こちらキャディラック。護衛のムサイはどうした! 格納庫にはまだ人が残っているぞ!」
その窓の端をムサイの船体が横切った。
ヨーツンヘイムと連邦艦の間へ割って入りながら、連装メガ粒子砲塔を旋回させている。砲口が光り、放たれた射線がサラミスの進路を塞いだ。
先行していた1隻が舷側に被弾し、外板を散らしながら艦首を振る。その間にムサイはヨーツンヘイムから敵を引き離そうと前へ出たが、もう1隻のサラミスはすでに射撃位置を変えていた。
ムサイの砲塔が追いきる前に、その艦尾で光が弾ける。
「まずいぞ……」
ワシヤが喉の奥から声を絞り出した。
手前の敵を追えば横から撃たれ、そちらへ向き直れば最初の敵に狙われる。護衛艦は撃ち返しているものの、2隻を同時には抑えられない。
格納庫へ視線を戻しても、そこにあるのは未組立の砲と輸送容器ばかりだ。あれを今すぐ撃てればという考えは、床の上に並んだ接続前の機材を見れば消えてしまう。
クレーンの先では取り残された砲身がゆっくりと傾いていた。
ブリッジにも護衛艦の被害報告が入っていた。
プロホノウはそれを聞きながら格納庫の映像を確認する。作業員は退避を始めているが、搬入口の近くにまだ数名が残っていた。パプアが失われたことで、積み荷の支え方まで変わってしまっている。
「艦長、砲身の固定が間に合いません!」
「人員を戻せ。積み荷は放して構わん」
マイが振り向いたが、プロホノウはもう機関へ指示を出していた。逃げ切れるかどうかではない。次の射撃まで同じ場所に留まるわけにはいかなかった。
その時、モニターの中のサラミスが艦橋から破片を噴いた。
光条は見えなかった。
ムサイの射撃はまだ敵艦の手前を通っている。それなのに艦橋が崩れ、その直下へ穴が開いていく。遅れて船腹の継ぎ目から光が漏れ、サラミスの中央部が膨らんだ。
船体を走った亀裂が開き、砲塔の1つが台座ごと吹き飛ぶ。艦首と艦尾が別々の方向へ動き始めた時には、もう巡洋艦の形を留めていなかった。
「敵1番艦、爆発! ……撃沈です!」
「護衛艦の射撃か?」
「確認できません!」
プロホノウの問いに索敵員は映像を拡大するが、画面を埋めるのは残骸ばかりだった。
モニクとワシヤも通路の窓から同じものを見ていた。ムサイを撃っていたはずの艦が突然崩れ、射撃が止まっている。ワシヤは口を開きかけたまま隣のモニクを見たが、彼女も答えを持ち合わせてはいない。
残ったサラミスが艦首を振り始めた。
仲間の残骸を避けようとしたのか、それとも何かを見つけたのか。推進炎が伸びたところで右舷の機関部が陥没し、反対側から外板が飛び出す。
今度はワシヤにも見えた。装甲が焼け落ちるより先に穴が開き、奥から何かが噴き出したのだ。
「実体弾……?」
答える者はいなかった。
2隻目のサラミスは艦尾から崩れた。消えた推進炎の代わりに大きな閃光が広がり、残っていた艦首が砲塔を振り回すように回転していく。
最初の1隻に異変が起きてから十数秒。ヨーツンヘイムを狙っていた2隻は、どちらも射撃を止めていた。
後に映像と射撃記録を突き合わせたところ、最初の弾は艦橋を貫いて艦内へ入り、弾薬庫の誘爆を引き起こしたと判断された。2発目は機関部へ命中し、動力系統をまとめて破壊している。
使われたのは280mm MS用対艦ライフル ASR-78の特殊徹甲炸裂弾だった。
ただし、この時のヨーツンヘイムには射手の姿どころか、どこから撃たれたかも分かっていない。味方が援護してくれたらしいということだけが、砲撃の途絶えた状況から辛うじて読み取れる程度だった。
艦内回線にはしばらく報告が重なった。敵艦の状況を尋ねる声と作業員を呼び戻す声が交錯し、その中でプロホノウの命令が続く。
「警戒を解くな。ほかに敵がいないか確かめるんだ。格納庫は退避を続行」
ムサイも砲塔を動かしながら残骸の向こうを窺っていた。ヨーツンヘイムを庇う位置は崩していない。
格納庫では技術兵が最後の作業員を通路へ引き上げていた。誰もが外を見たがっているが、今は自分の身体と隣の者を固定する方が先だ。
モニクは手すりを伝ってきた兵へ場所を空け、すれ違いざまに残っている者はいないかと尋ねる。返事を聞き終わる前に、ブリッジから新たな報告が入った。
「熱源を捕捉! 敵艦の残骸の向こうから接近してきます!」
「識別は」
「確認中。大きさはMS相当……速いです。こちらへ向かっています!」
ワシヤは工具箱を壁際へ固定し、もう一度窓へ顔を向けた。
遠くに小さな噴射光が見える。点にしか見えなかったものが瞬く間に大きくなり、減速のために身体を返すと手足の輪郭が分かった。
ザクではない。
肩も胴も細く、背中から張り出した推進器がやけに大きい。長い銃を抱えたまま姿勢を変え、進路を横切る破片を小さな噴射で避けている。
「識別信号、ジオンです! 味方機!」
回線に流れた報告を聞いても、ワシヤはすぐには力を抜けなかった。味方にあんな機体があっただろうか。
機体がヨーツンヘイムの照明に入ると、灰色の外装が見えた。軍用の仕上げ塗装を済ませた姿ではなく、下地のサフグレーに銀色の装甲が継ぎ合わされている。チタンシルバーの部分だけが光を強く返し、姿勢が変わるたびに模様まで変わって見える。
ワシヤの視線は背部の大きなノズルに釘づけになった。あの大きさなら今見た加速も分かる。だが、機体の細い胴体と並べて見るとどうにも釣り合っていない。
「……ヅダか?」
モニクが呟いた。
「ご存じなんですか、大尉」
「資料で見たことがある。ツィマットの試作機だ。ザクとの選定で落ちたはずだが」
EMS-04 ヅダ、ツノがあるのでその指揮官機仕様に違いない。
採用を逃した試作機の名と目の前の姿が結びついても、モニクの疑問は解けなかった。なぜこんなところへ飛んできたのか。試験隊へ届けられた資料に、今日この機体が加わるという話はあっただろうか。
ヅダは開放された搬入口の前で速度を落とし、大きな推進器の噴射を絞っていた。背部ノズルから伸びていた光が短くなり、脚と肩の小さな噴射が残る。
抱えている280mm MS用対艦ライフル ASR-78は機体に迫る長さがある。機体が止まっても銃口は格納庫へ向けず、船体の外へ逸らされていた。
「ブリッジ、接近機から通信です」
わずかな雑音の後、若い女性の声が入った。
「こちら宇宙攻撃軍所属、アスカ・ナカノミヤ少尉。ヨーツンヘイム、聞こえますか」
ワシヤがモニクを見る。モニクは窓の外を見つめたまま、返答するブリッジの声を聞いていた。
「こちらヨーツンヘイム。聞こえている」
「申し訳ありません。到着が遅れました。私の進出があと数分早ければ、そちらのパプアを救えたのですが」
女の声は明瞭だったが、最後だけ少し低くなった。
ワシヤは窓越しにヅダを見返す。サラミスを沈めたのはこの機体なのだろう。それを確かめるより先に、乗っている相手からパプアのことを詫びられていた。
手すりに添えていた指を開き、また閉じる。先ほど掴んでいた工具箱の感触がまだ手に残っている。
「ナカノミヤ……少尉?」
モニクがその名を繰り返す間にも、ヅダは格納庫からの誘導を待っていた。積み荷が寄った搬入口は狭く、技術兵が確認のために戻ってくるまで進入するつもりはないらしい。
誰かが作業回線で受け入れを指示し、別の者が固定具の場所を尋ねた。ようやく動き出した技術兵たちも、ときどき手を止めて外の機体を見ている。
後方からはもう1隻のムサイが合流しつつあった。少尉をここまで運んできた艦で、傷ついた護衛艦の外側へ回ると残骸の向こうへ砲を向ける。
その姿を確かめた後で、モニクはヅダへ視線を戻した。
技術兵の誘導灯に応じて機体がゆっくりと入ってくる。窓の向こうを長い銃身が通り、その後から継ぎはぎの装甲と赤いモノアイが現れた。
ワシヤはもう一度搭乗者の名を口の中で繰り返し、通路を空けるために脇へ寄った。
ザクスキーなのにオリ主の搭乗機はヅダかよっていうツッコミお待ちしてますw
お気に入り登録、高評価いただけると嬉しいです。
そしたら、次話の投稿早くなるかも知れません…(自信はない)
登場させるとしても大分先になりますが、ジークアクスのキャラを出すのはアリかナシか。(出るならニャアン)
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アリ
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ナシ
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どっちでも良い
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早く書け