技術試験隊斯ク戦ヘリ 作:ザクスキー2世
宇宙世紀0079年2月3日
ヨーツンヘイムは指定宙域への移動を終え、本国から来る艦を待っていた。
窓の外には、目印になるようなものがない。航法表示で位置を確かめなければ、先ほどまでいた場所と区別もつかない。私は手元の受領予定を閉じ、メインモニターへ顔を上げた。
通信席から、相手と連絡がついたとの報告が入る。
「友軍艦を捕捉。識別、ムサイ級です。予定の針路から接近しています」
光学映像に切り替わると、点にしか見えなかった光に、艦の輪郭が現れる。左右へ張り出した推進ブロックの間に細い船体があり、その後ろへ牽引索が延びている。
画面の範囲が広がった。引かれてくる艦の艦首、並んだ砲塔、そして艦橋が映る。
ああ、本当に造ったのか。
資料を見て分かっていたはずなのに、私は口を閉じたまま、隣のムサイと見比べてしまった。
サラミス級の船体は深緑に塗り直され、側面にはジオンの標識が付いている。色を揃えれば多少は馴染むと思ったのだろうか?連邦艦の直線的な船体から、そこだけ丸みを帯びたムサイ級の艦橋が生えている。
付け根には図面よりも太く見える補強が入り、塗装の下でも外板の継ぎ目が分かる。私の280mmMS用対艦ライフルASR-78が撃ち抜いた場所は、その下に隠れている。
両方の艦の設計者が見たら、何と言うだろう?尊厳破壊という言葉が頭をよぎり、私は咳払いで口元を隠した。
「……これを通したんですね。本国は」
隣でマイ中尉が呟いた。資料を開いた端末を持ったまま、しばらく艦影を見ている。
私は彼の顔を窺った。技術者なら、こういうものでも喜ぶのかと思っていたが、そうでもないらしい。
「中尉から見ても、おかしいですか?」
「おかしいですよ。別の艦を繋ぐために、ここまで手を入れるとは……普通は、途中でやめようと思うはずです」
言いながら、中尉は接合部の図面を拡大した。指で配線を辿り、途中で戻って別の経路を探す。横から覗いても、重なった線のどこを見ているのか、すぐには分からない。
「艦橋からの指令は、この回路で変換しているんです。火器管制は別で、こちらにも変換装置がある。これだけ継ぎ足して、よく動くところまで持っていったものです」
「感心しているのか、呆れているのか、どちらです?」
「両方です。僕なら、これを造ろうと言い出した人の正気を疑います」
それでも図面を閉じる気はないらしい。中尉は工廠の試験記録を呼び出し、実際にどこまで動かしたのかを確かめ始めた。
モニク大尉が、その肩越しに画面を見る。
「本国へ聞けばいい。造った者の名前も、ついでにね。報告書には責任者が必要でしょう?」
「聞きたいことは、ほかにもあります。補修の時に、この配線を全部追い直すのは困りますから」
「では、その一覧も出しておいて。まずは予定通りに受け取れるのか、そこからよ」
マイ中尉が頷き、端末に書き込んだ。私はもう一度艦影へ目を戻す。
仮称、鹵獲実験艦01号。
護衛艦が来ると聞いた時の嬉しさは、まだある。ただ、あの形に慣れるまでには、少し時間が要りそうだ。
牽引してきたムサイ級から、引き渡しの手順が送られてくる。航行中は01号の機関を試験に必要な状態に保ち、無理な連続運転を避けてきたという。到着後はこちらで機関を始動し、姿勢を維持できることを確認してから索を外す。
ムサイ級は明日の試験にも残り、機動の比較と、移動目標を追う模擬照準の相手を務める予定だ。
「あちらのムサイも、ずっといてくれればいいんですけどねえ」
ワシヤ中尉が小さく言った。私は聞こえなかったふりをしたが、艦長席から返事が来る。
「ワシヤ中尉、あの艦にも戻る部隊がある。借りている間に、できることを済ませておこう」
プロホノウ艦長は副長へ受領の進行を頼み、私たちの方へ身体を向けた。
「さて、ナカノミヤ大尉。見て呉れの評判は十分聞いた。守ってもらえるかどうかは、これからだな」
「はい。私も、そのつもりです」
「それなら結構。補修部品の確認も忘れずに頼む。最初の故障で動けなくなっては、護衛を増やしたことにならん」
クリューガー副長が補給一覧を開いた。艦内へ持ち込む測定器と、01号に積まれている予備品の確認が、別々の席で始まる。私も端末を受領記録へ戻した。
画面の01号では、小さな噴射が何度か点いた。索に残っていた張りが緩み、やがて切り離しの報告が入る。ムサイ級が離れても、01号はその場で姿勢を保っていた。
ひとまず、自分で立ってはいられるらしい。
引き渡しが落ち着いたところで、私はモニク大尉から乗員の資料を受け取った。
宇宙攻撃軍からの出向者で編成され、こちらの乗組員を恒常的に移す必要はない。測定や整備の応援は出すが、01号を日々動かす者は別にいる。ヨーツンヘイムの当直を減らさずに済むのはありがたい。
ただし、その人選には別の事情がある。
「古くからダイクン派に属していた者が多い。軍歴と一緒に、そちらの報告も確認しておきなさい」
モニク大尉に示された文面を読み、私は名簿へ戻った。艦隊勤務の長い者が揃っている。経験だけを見れば、頼もしい顔ぶれだ。
だが、彼らがザビ家の体制をどう見ているかとなると、話は別だ。
ナカノミヤ家はザビ家と付き合いが深い。私自身もドズル閣下の側にいると見られているし、先日はギレン総帥の隣で写真まで撮られた。あれを見ていれば、どこの家の娘が来るか、相手も承知しているだろう。
「……試験中も、私から運用上の指示を出すことになるんですね?」
「ええ。試験の手順はマイ中尉、実際の操艦は向こうの艦長が担当する。あなたには護衛艦としての使い方を見てもらう。本国の指示も、その分担になっているわ」
正式に私の指揮下へ入るのは、評価が済んでからだ。それまでにも、相談し、頼み、場合によっては止めてもらうことがある。最初から話が通じないようでは困る。
余計なことを言わないようにしようと思った途端、挨拶の言葉まで考え直したくなった。
通信画面に出た01号の艦長は、中尉の階級章を付け、口髭を整えた男性だ。
マッツ・ガネバン中尉。名簿にあった名を確かめてから、私も名乗った。
「アスカ・ナカノミヤ大尉です。今回の試験では、護衛運用の評価を担当します。よろしくお願いいたします」
『ガネバンです。こちらこそ。引き継ぎは済みました。現在、各部署の配置を確認しております』
滞りのない返答に少しだけ肩の力が抜けたものの、次の言葉が出てこない。
中尉は待っている。私の出自について何か言うつもりは、少なくとも今はなさそうだ。
「明日の射撃試験に先立って、そちらから確認したいことはありますか?」
『遠隔操作を切り離す手順です。本艦側で中断した場合、そちらの記録にはどのように残りますか?』
私はマイ中尉を呼び、回線へ加わってもらった。中断の信号は発射指令と別に記録され、艦内から射撃を止めた場合も時刻を照合できる。説明を聞いたガネバン中尉は、砲術担当者にも同じ手順を確認させると答えた。
「動かしてみなければ分からない箇所もあると思います。気づいたことは、その都度お願いします」
『承知しました』
通信は、最後まで必要な話だけで終わった。
気難しい人なのか、忙しいだけなのか?画面が消えてから、私は自分が相手の反応を探りすぎていたことに気づいた。明日も顔を合わせる。その時にも、まずは仕事の話をすればよい。
私は名簿を閉じ、試験の予定へ目を移した。
宇宙世紀0079年2月4日
ルウムの試験宙域へ入ると、窓の外にも船体の残骸が見え始めた。
外板だけになったものもあれば、艦の形を半分以上残しているものもある。味方の標識が識別表示に重なり、そのすぐ奥を連邦艦の破片が横切った。ヨーツンヘイムは、事前に確認した航路に沿って進んでいる。
01号はムサイ級とともに前方へ出ていた。昨夜の移動では主機関を使い、牽引なしでついてきている。ただ、出力を変えた時の反応が鈍いという報告は、既に届いていた。
射撃の標的に選ばれたのは、艦首側を大きく失ったマゼラン級だ。回収班による捜索を終え、標的に使用してよいと指定されている。私はその確認欄を読んでから、残骸の映像を拡大した。
誰かが乗っていた場所を、今日は的にする。
艦体に残る穴を目で追っていると、通信席から準備完了の報告が入り、私は倍率を戻して01号と標的の位置を確かめた。
01号では、サラミス級本来の低出力で貧弱な単装メガ粒子砲*1がすべて根元から撤去され、その代わりにムサイ級の主兵装である強力な連装メガ粒子砲が半ば強引に移植されている。
艦の側面を標的に向ければ、連装メガ粒子砲4基8門を一斉に指向できる。斉射に使える砲門数は、改修前の2倍だ。
今日は、まず各砲塔を個別に動かし、その後で同時射撃へ移る。マイ中尉は01号との試験用回線を確認し、手元の操作画面を開いた。発射指令はこちらから送るが、向こうの砲術部署が射撃を許可しなければ砲は作動しない。
照準の追従を確かめている間、随伴のムサイ級は射線から離れた場所で警戒を続けている。
「01号、射撃準備は?」
『準備完了。試験操作を受け入れます』
ガネバン中尉の返答を聞き、マイ中尉が最初の指令を送った。砲塔が旋回し、標的に向けて止まる。少し間を置いて、砲口から緑色の光が伸びる。
残骸の側面に穴が開き、その縁から赤く光る破片が流れ出す。
私は着弾した場所を記録しようとして、隣の中尉が別の画面を見ていることに気づいた。発射指令と実際の射撃。その時刻を並べ、差のある部分へ印を付けている。
次の砲塔を試している間も、その表示は開かれたままだ。
個別の射撃を終えると、01号は左舷を標的へ向けた。4基の砲塔が一斉に動き、重なっていた砲身が、それぞれの照準位置で止まる。
マイ中尉が準備を確認し、指令を送ると、8本のビームがマゼラン級の中央部へ集まった。装甲に開いた穴が繋がり、向こう側まで光が抜けた。画面の明るさが戻った時には、艦体の上部が持ち上がり、細かな破片を伴って離れ始めている。
内部でも別の閃光が走る。残されていた燃料に火が回ったらしく、噴き出すガスの中で構造材が折れ、船尾側もゆっくりと傾いていく。
「これは……」
後ろの席から声が漏れ、私も画面から目を離せずにいた。ヨルムンガンドの一撃とは違うが、巡洋艦の砲撃で、あれだけの範囲を一度に壊せる。
ただ、標的は既に損傷していた艦だ。無傷の戦艦にも同じ結果を出せるかどうかは、この映像だけでは分からない。
「中尉。さっきから見ているのは、発射の遅れですか?」
「はい。指令を受けてから撃つまでに、コンマ数秒かかっています。回線の遅延を差し引いても残ります」
マイ中尉は画面をこちらへ寄せ、砲塔ごとの記録を示した。個別に撃った時より、一斉射撃の方が差は大きい。
「砲へ送る電力の立ち上がりが追いついていません。それに、一門あたりの出力はムサイ級での規定値より1割ほど低い。工廠での試験より、負荷を掛けた時の落ち方が大きいですね」
「威力の方は、門数で補えるかもしれません。その遅れは、毎回同じですか?」
「それを確かめます。次は間隔を空けて、その後で続けて撃ってみます」
遅れる時間が決まっているなら、狙う位置を調整する余地はある。だが、撃つたびに変わるようでは困る。小さな敵を追う時には、さらに扱いづらくなるだろう。
私は01号へ、着弾を見るだけでは判断しないと伝えた。向こうの砲術担当者も、砲の作動表示が点くまでの間を気にしていたらしい。ガネバン中尉を通じ、操作側から見た時刻の記録が届き始めた。
次の試射では、標的の残った部分へ照準を変えた。距離を取り直し、同じ砲塔から間隔を空けて撃つ。続けて発射した時には遅れが増え、マイ中尉が試験の順番を一つ戻した。
砲そのものに故障はない。それでも射撃条件を変えるたびに、記録へ付く印が増えていく。
砲撃を止めた後は、ムサイ級に移動目標になってもらった。砲へ発射指令を送らず、照準の追従と予測位置だけを記録する。相手が針路を変えると、向けていた砲塔が追い、別の砲塔がその先を受け持つ。
01号は艦首方向へ連装メガ粒子砲3基を使える。後方にも3基あり、ムサイ級が後ろへ回っても、追跡は途切れない。
「後ろへ回られても、砲が向くのは助かりますね」
私は追跡記録を見ながら言った。前へ向けられる砲の数はムサイ級と同じで、正面から見た艦の幅は小さい。護衛として艦の周囲を守る時にも、この配置は使い道がありそうだ。
一方、前方両舷のミサイルランチャー2基は撤去されている。大きな砲塔を載せるため、重量を減らした箇所だ。
ミノフスキー粒子が濃い場所では誘導を頼みにしづらいとはいえ、近づいた相手へまとめて放つ手段までなくなる。砲が増えた分をどう使うかは、その不足も含めて考えなくてはならない。
射撃の記録を保存し、次は加速・機動試験へ移った。
並んだムサイ級と01号が、合図に合わせて主機関の推力を上げる。最初は近かった艦影が、やがて前後へ離れ始めた。01号も加速しているが、ムサイ級との間隔が少しずつ開いていく。
私は位置の表示を見てから、通常のサラミス級の基準値を開いた。比較する相手を変えても、遅いことに変わりはない。
「同じ搭載条件に揃えて、通常のサラミス級の約0.8倍です。直進の加速度が、これだけ落ちています」
マイ中尉が試験結果を示した。下ろしたミサイルランチャーの重量だけでは、大型化した艦橋や砲塔、補強材の分を埋められていない。主推進器は元のままなので、重くなった艦を同じ推力で動かすことになる。
次の旋回でも、01号は指示された向きへ変わるまでに時間を要した。ガネバン中尉が噴射を調整し、行き過ぎそうになった艦首を戻す。操艦席からの報告によると、以前のサラミス級用の設定では収まりが悪いという。
『回頭の終わりに、まだ船体が流れます。今の操作を記録してください』
「受信しています。補正の設定を変えて、もう一度お願いします」
2度目には、艦首の揺れが小さくなった。ただし、向きを変え始める遅さまでは消えない。
これでは、母艦と敵の間へ移ってもらいたい時に困る。私は記録の端へその旨を書き込み、マイ中尉に送った。
試験を止めて位置を整えている間、中尉は周辺の残骸の記録を呼び出していた。ムサイ級を選び、残っている箇所を拡大する。私が覗くと、01号の図面へ何かを重ねているところだった。
「推進器を増やすつもりですか?」
「使えるものがあれば。機関を新しく用意するよりは早いと思います。例えば、こうすれば……」
01号の両舷から、小さな副艦橋の図が消えた。そこへ支持柱が伸び、その先にムサイ級の推進ブロックが丸ごと付く。
私は黙って画面を見た。さっきまで、これを造った者の正気を疑っていたのは誰だったか?
「左右のブロックを残せれば、加速度は通常のサラミス級の倍以上を見込めます。追加する重量を含めて、ですが」
「マイ中尉。まだ何か生やすつもりですか?」
中尉が顔を上げた。その向こうでは、ワシヤ中尉までこちらの画面を覗き込んでいる。
「今度は足付きかあ。これ、工廠の人が見たら喜びますよ」
「まず、必要な推力を得るにはどうするかという話です。形は後からでも」
「形だけの話ではありません。そこへ取り付けて、船体は持つんですか?」
私が支持柱の根元を指すと、マイ中尉は図を断面へ切り替えた。元の副艦橋を外した場所では、あの推進ブロックの荷重をそのまま受けられない。内側まで補強を入れるとなれば、艦内の設備も退ける必要がある。
ガネバン中尉へ図を送ると、返ってきたのも工事についての質問だった。その区画を使えなくするのなら、勤務中の者をどこへ移すのか、と。
「ここまで広げると、正面から見える部分も増えますね。片側を損傷した時の扱いも、元のムサイと同じにはできないでしょう」
「支持部から設計し直す必要はあります。配管も、かなり長くなりますね……」
マイ中尉の指が止まった。私は首を振る。
「今ここで行う改修には、大きすぎると思います。案として残して、もっと小さく済む方法を考えませんか?」
プロホノウ艦長も図を見て、そこまでやるなら一度工廠へ戻すことになると口を挟んだ。モニク大尉が本国への報告項目に書き加える。大型の推進ブロックを付けた図は、ひとまず脇へ退けられた。
私は外の映像へ目を移した。少し離れたところに、艦首側を失ったムサイ級の後半部がある。左右の推進ブロックは残り、その周囲に付く小さな噴射口まで見えている。
「あちらの小型推進器だけを使うのはどうでしょう?01号の主推進器の両脇と、下に1基。大きく張り出させずに付けられませんか?」
マイ中尉が残骸の識別番号を確かめた。回収班が外観を記録したもので、分解して内部を調べたわけではない。まずは近づいて、内部まで調べなくては使えるかどうか分からない。
中尉は仕様表から推力と重量を拾い、01号の図に小さな印を3つ置いた。私は座席の背へ手を掛け、計算が終わるのを待った。
「これなら、約1.2倍です。通常のサラミス級に対する直進加速度の見積もりになります。補強の重量が増えれば、多少下がりますが」
「旋回の助けにも使えそうですか?」
「左右の推力を変えれば。ただ、取付位置で効き方が変わります。操艦の設定も作り直さないといけません」
ガネバン中尉は、こちらの案なら機関部署と相談できると答えた。艦尾の作業区画を空けられるか、向こうでも確認が始まる。
プロホノウ艦長は整備担当者を呼び、回収と取付に必要な人員を確かめた。私がヅダを出すと申し出ると、作業中の警戒を随伴のムサイ級へ依頼するよう、副長に指示した。
「まず部品を調べよう。それが済んでから、取り付けるかどうか決める。今日の予定を埋めるために急ぐ必要はない」
モニク大尉が改修案と試験予定の変更を本国へ送る。私は作業班との回線を確かめ、格納庫へ向かった。
ヅダで外へ出ると、モニターで見ていた残骸の奥行きがよく分かった。
ムサイ級の前半部は、艦橋の少し先で途切れている。折れた船体の内側には、部屋の壁らしい板や、束になった配線がむき出しになっていた。私はそちらへ近づかず、指示された推進ブロック側へ回った。
作業艇から出た整備兵が手を振る。肩の灯火を向け、取り外す推進器の外装を照らす。
『まず、そのまま照らしていてください。機体は寄せなくていいです』
「了解しました」
整備兵が点検口を開け、小さな機器を差し込んだ。しばらくして、こちらの回線にも点検の数値が送られてくる。外から見えた焦げは表面だけで、内部の損傷は少ないらしい。
別の作業員は配管を辿って、切り離す箇所に印を付けている。残っている圧力を抜き、接続を外すまで、私は灯火の向きを保って待った。
取り外し可能との報告が揃うと、マイ中尉から取付案の修正が届いた。01号の機関員も確認し、必要な補強材を準備している。作業責任者の見積もりを聞いた艦長が、初回の運転確認までを今日の作業とした。
その先の長時間運転は、別に予定を組むことになる。
『メテオ01、支持をお願いします。印のある枠を両側から』
私はヅダの手を近づけた。配管や噴射口を避け、指定された枠へ指を掛ける。握ったところで、向こうの作業員が少し待ってくれと手を上げた。
彼が退いてから、固定具が一つずつ外される。推進器の位置が僅かに変わり、腕にかかる負荷の表示が動く。私は押さえつけず、逃げようとする方向へ少し腕を送った。
『外れました。ゆっくり、そのまま引いてください』
最後の接続部が見えるまで後退し、周囲に作業員がいないことを確かめる。推進器を持ったまま姿勢を変えると、思ったよりも動きが重い。機体だけの時と同じつもりで返せば、余計な噴射が要る。
私は速度を抑え、作業艇の案内に従って01号へ運んだ。
艦尾では、補強材の間から整備兵がこちらを見ている。腕で上の方を示し、回線越しにも声を掛けてくる。
『もう少し上です。そこで止めて……いや、右を少し下げられますか?』
「このくらいですか?」
『結構です。仮止めするまで、そのままで』
操縦桿を握る手に力が入り、私は一度指を緩めた。動かさずに支えるだけでも、相手の艦とは僅かに位置がずれていく。画面の目盛りと整備兵の手を見比べ、腕の位置を直す。
すぐ前を、工具の入った袋が通る。作業員が引き寄せて中身を探し、欲しかったものを掴むと、そのまま固定具へ取り掛かる。
急かしても早くはならない。私は背中を座席へ預け直し、彼が合図を出すまで待った。
2基目を取りに戻った時、外装に残っていた部隊の標識が灯火の中へ入った。
塗料は剥げていたが、数字は読める。その近くには、点検口を閉めた時に付いたらしい工具の傷も残っている。つい先月まで、誰かがここを開けて整備していたのだろう。
私はヅダの手を伸ばしかけ、そのまま止めた。
あの艦を動かしていた者たちは、脱出できたのだろうか?回収の記録には部品の状態が並んでいる。そこを読み直しても、乗組員の行方までは分からない。
『大尉、こちらは準備できています』
「……はい。今、支えます」
返事が少し遅れた。私は灯火を点検口から取付枠へ移し、指示された箇所に手を掛ける。
これを持ち帰れば、01号は今より動ける。そのことは分かっている。それでも、空になった取付部を見た時には、最初に残骸を眺めていた時より胸が詰まる。
私は切り離した推進器の向きを確かめ、作業艇の後ろへついた。
3基の運搬を終えても、接続の確認はまだ終わらない。
01号では機関員が試験用の設定を読み込み、艦外の作業班は配管を一つずつ確認している。私は少し離れて待機し、最後に外された仮設の支持具を受け取った。小さな部品を散らさないよう、まとめて作業艇へ渡す。
もう、開始から数時間になる。ヘルメットの中で首を動かすと、肩の奥が張っている。飲料のチューブを口へ寄せたところで、ワシヤ中尉から周辺警戒の状況が届いた。
『今のところ、増えたのは味方の作業艇だけです。そちら、手は足りていますか?』
「ようやく空きました。次は少し離れて見ているように、とのことです」
『じゃあ、働いた分を見せてもらいましょう。動かなかったら、外すのも大尉の仕事になりそうですし』
「それは困ります。できれば、もう外したくありません」
中尉の笑い声を聞き、私も少し笑った。01号から退避を確認する通信が入り、作業艇が艦尾を離れていく。
私はヅダを側方へ移した。新しく付いた3基の噴射口が、ここからも見える。
再試験は、短い噴射から始まった。
右、左、下部の順に小型推進器が働き、そのたびに艦体の動きが記録される。私は近づきすぎない距離を保ち、取付部の映像を後方へ送った。異常の報告はない。続いて主推進器と合わせた加速へ移る。
01号の船尾に光が集まった。私はその横で噴射を強め、並ぶ位置を保つ。さっきまでブリッジで見ていた時より、艦影が前へ出るのが早い。
『加速度、通常のサラミス級に対して約1.2倍。ほぼ見積もりの範囲です』
マイ中尉の報告が聞こえた。ガネバン中尉は了解と返し、指示された推力を維持する。
短い計測を終えて噴射が止まるまで、私は接合部から目を離さずにいた。何かが剥がれ落ちる様子も、噴射の乱れもない。
旋回では、左右の推進器の使い方を変えて何度か試した。最初は艦首が振れすぎ、01号側から設定を戻すとの連絡が入る。マイ中尉が記録を送る間、ガネバン中尉は小さな噴射で艦の向きを整える。
次は左右の差を抑えた。艦首が動き始めてから止まるまでの時間が短くなり、以前のような大きな揺り戻しも出ない。
通常のサラミス級の基準より良い値が出たと聞いても、ガネバン中尉はすぐに次の報告へ移った。
『今の操作なら収まります。ただ、長く続けた場合はまだ分かりません。機関部署からも、次は継続運転を見たいとのことです』
『こちらも同じです。取付部の点検を挟んで、次の試験を組みます』
マイ中尉の声は、艦を初めて見た時とは違う。私は手元に届いた予定を読み、今日の試験終了を確認する。
主砲の出力と発射の遅れは残っている。それでも、加速について困っていた分は、確かに改善した。
01号がヨーツンヘイムの方へ向きを変えた。
私はその後ろについて、艦尾の映像を拡大する。3基の小型推進器は塗装を揃えるところまで手が回らず、取付部は新しい金属の色のままだ。2基目の外装には、先ほどの標識がまだ残っている。
もう、あのムサイ級へ戻すものではない。
そう思いながら見ていると、01号から今の取付部の映像も送ってほしいと頼まれ、私は倍率をもう一段上げた。映っている位置を伝え、拡大した映像を送る。
この宙域には、同じように後部を残したムサイ級がほかにもある。どれが使えるかは、近づいて調べなくては分からない。今日回収した艦の番号と場所を保存し、次に来る作業班が、何を外したか分かるよう記録へ加えた。
帰着するまで、私は01号の横を離れずに飛んだ。
はい、と言うわけで武装も単装メガ粒子砲がムサイの連装メガ粒子砲に変わったので、単純に火力が2倍になりました。
一応、ヘンテコMSや大型のモビルアーマーさえも組み立て整備出来てしまうヨーツンヘイム整備兵なら、軍艦の改造もお手のものに違いないと言う考えのもと、スラスターも増設されました。
スラスターの増設自体は後期サラミスやサラミス改もメインスラスターの両脇にサブが追加されているので、あんな感じを想像して頂けたら良いかと思います。
登場させるとしても大分先になりますが、ジークアクスのキャラを出すのはアリかナシか。(出るならニャアン)
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アリ
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ナシ
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どっちでも良い
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早く書け