技術試験隊斯ク戦ヘリ 作:ザクスキー2世
次回、第12話で第2章は完結します。
【機密指定:甲】
報告書番号:U.C.0079-0221-603-02
提出日:宇宙世紀0079年2月21日
宛:ジオン公国軍総司令部 技術本部長 アルベルト・シャハト少将 殿
発:第603技術試験隊 オリヴァー・マイ技術中尉
表題:仮称「鹵獲実験艦01号艦」実証試験及び防衛戦闘に於ける運用評価報告の件
1. 運用概要
本報告書は、宇宙世紀0079年2月4日よりルウム暗礁宙域に於いて当隊が射撃試験並びに機動性試験等の技術評価を実施中なりし、連邦軍鹵獲サラミス級巡洋艦改修型、仮称「鹵獲実験艦01号艦」(以下、本艦と呼称す)の各種性能評価、及び同月20日に突発的に発生せし連邦軍残存部隊との防衛戦闘に於ける運用・戦果詳報を為すものなり。
同月20日、当隊は同宙域にて無傷のOSを有する連邦軍マゼラン級戦艦のサルベージ作業に従事中、連邦軍サラミス級巡洋艦二隻の接近を受けたり。
母艦ヨーツンヘイムの緊急発進不能なる状況下、本艦戦隊長アスカ・ナカノミヤ大尉は、宇宙攻撃軍より出向中の本艦乗組員の指揮をマッツ・ガネバン中尉に一任し、本艦単艦にて迎撃戦闘へと突入せり。
2. 性能評価(試験結果及び実証評価)
【火力・制圧能力】
射撃試験にて実証せし通り、サラミス級の船体にムサイ級の連装砲六基を搭載せし本艦は、側面戦闘に於いて四基八門を一斉指向可能なり。
一門あたりの威力は規定値より一割低下すれど、至近距離に於けるその圧倒的なる面制圧火力は、後述の実戦に於いて敵巡洋艦を一撃にて粉砕するに十分なる破壊力を証明せり。
【機動力・操艦性】
機動性試験に於いて判明せし最大重量増による機動力低下を補うべく、試験現場に於いて廃ムサイより回収せし小型推進器三基を現地改造にて増設せり。
結果として出力重量比は1.2倍へと向上し、熟練の操艦も相俟って、正規のサラミス級を凌駕する旋回・反転性能を示せり。然れども、激しき機動時に於いては異なる規格の接合部より多大なる金属疲労と軋みを生じており、構造的強度の不安は残れり。
【火器管制システム】
連邦製ジェネレーターとジオン製火器管制の同期変換効率に無理を生じており、射撃指示より励起までコンマ数秒のタイムラグが存在す。此度の防衛戦闘に於いては、戦隊長及び艦長の極めて高度なる予測と計算により之を相殺せしも、一般兵士の運用に於いては致命的なる弱点と成り得るを危惧す。
3. 防衛戦闘記録及び戦果
戦闘開始直後、敵先導艦からの単装メガ粒子砲の弾幕を受くるも、本艦は増設せし小型推進器の推力を活かし、直ちに前部砲塔による牽制射を行いし後、コロニー残骸の陰へと退避せり。
ミノフスキー粒子戦闘濃度散布下、光学観測困難なる状況に於いて、戦隊長ナカノミヤ大尉は卓越したる直感的索敵能力を発揮。多数の実戦経験により培われし特異なる状況把握能力と思料するも、敵艦の侵攻ルート及びタイミングを完全なる精度にて予測せり。
戦隊長の予測と秒読みに従い、残骸の死角より現出せし敵先導艦に対し、右舷指向のムサイ級連装メガ粒子砲四基八門を一斉射す。
大口径ビーム八本の束は敵艦首より艦橋を容易く貫徹し、内部ジェネレーターを誘爆せしめ、これを轟沈せり。
直後、僚艦の爆発に乗じて突進せし敵第二艦より至近距離からの速射を受く。本艦左舷中腹及び右舷後方に被弾し装甲の一部を融解せしむるも、致命的損傷には至らず。
以降、母艦ヨーツンヘイムより敵艦を引き離すべく、約10km規模のコロニー外壁表面を利用せし機動追撃戦へと移行す。
本艦は後部連装砲にて応射しつつ、敵単装砲の弾幕を回避。この際、本艦の放ちし一弾が敵副砲塔を完全に吹き飛ばし、敵火力を低減せしむ。
追撃戦の末端、敵艦の速度低下を看破せし戦隊長の助言を受け、ガネバン中尉はデブリの切れ目にてメインスラスターを反転。機首を下方に沈み込ませる三次元反転機動(下舵一杯)を以て、敵艦の直下へと潜り込む。
敵艦の無防備なる艦底装甲に対し、再び四基八門の連装メガ粒子砲を下段より一斉射す。
これを易々と貫通せしめ、敵第二艦は艦体中央より両断され完全轟沈せり。
結果として、本艦一隻にて無傷の連邦軍サラミス級巡洋艦二隻を撃滅せしめ、当隊のサルベージ対象たるマゼラン級戦艦、並びに母艦ヨーツンヘイムの完全なる防衛を完遂せり。
4. 総評及び今後の運用提案
【総評】
本艦は、規格の異なる敵味方の部品を掛け合わせた異形の艦なれど、優れたる指揮と熟練の操艦、そして増設推力を以てすれば、一隻にて敵巡洋艦二隻を圧倒し得る「護衛艦」としての確かなる価値を証明せり。
【今後の運用提案】
本艦の示せし戦果と本国造船能力と財政を勘案し、次期運用案を左に具申す。
一、鹵獲艦艇の急造による後方警備への転用、及び現地改修の認可案
暗礁宙域に漂う無数のデブリを用いれば、極めて低コストにて強力なる巡洋艦を急造可能なり。今後はなるべく同系統の再生部品を使用することを前提としつつも、配置先部隊による現地での柔軟なる改造や改修を認可すべし。之に依り急造艦を複数隻建造し、ルナツー周辺や後方航路の哨戒・警備任務へと充当せしめる案なり。
二、鹵獲艦艇運用に於ける敵味方識別機構の導入案
鹵獲艦を自軍の戦力として運用する特性上、ミノフスキー粒子散布下に於ける有視界戦闘時、遠距離より味方からの誤射を招く危険性極めて大なり。之を防ぐ為、機体塗装の変更のみならず、遠距離からでも明確に味方と識別し得る工夫や仕組みの構築を急務として具申す。
右、報告す。
宇宙世紀0079年2月24日
オリヴァー・マイ技術中尉