技術試験隊斯ク戦ヘリ 作:ザクスキー2世
まだYMS-07Aの報告書をご覧になられていない方は、前話からお読みください。
【機密指定:甲】
報告書番号:U.C.0079-0324-603-04
提出日:宇宙世紀0079年3月24日
宛:ジオン公国軍総司令部 技術本部長 アルベルト・シャハト少将 殿
発:第603技術試験隊 オリヴァー・マイ技術中尉
表題:ツィマット社製「YMS-08A」実証試験及び模擬戦闘に於ける技術評価報告の件
1. 運用概要
本報告書は、宇宙世紀0079年3月18日より実施せし第三次降下作戦に随伴し、地球重力下(東アジア方面)に於いて実施せり次期主力モビルスーツ選定の為の「YMS-08A」(以下、本機と呼称す)の実証試験、並びに野戦改修の経緯、及び同月22日に行われしYMS-07Aとの対MS模擬戦闘の評価・詳報を為すものなり。
2. 性能評価及び野戦改修の経緯(各種試験結果)
本機は定格出力1,200kWを誇る試作型高出力ジェネレーターを搭載し、脚部及び背部に増設せし総推力51,000kgを発揮可能たる大推力スラスターにて、重力下での跳躍・三次元機動を企図せし機体なり。
降下直後に襲来せし連邦軍航空部隊との交戦に於いて、本機はフライマンタ6機、マングース2機を単機にて撃墜せしめる。之により、大推力スラスターによる驚異的跳躍力と、対空戦闘能力の高さは証明されたり。
然れども、右戦闘の最中並びに直後に於いて、本機は極めて深刻なる構造的・ソフトウェア的欠陥を露呈せり。
第一に、脚部内側にまで張り出せし増設補助スラスターが歩行時に物理的干渉を引き起こし、機体バランサーが強制的に股関節を開かせし結果、機動性が著しく低下し、ザクⅡ以下の劣悪なる歩行性能となれり。
第二に、大推力を発揮する為の推進剤消費量が常軌を逸しており、前述の対空戦闘中に於いて数十秒にて推進剤を枯渇せしめ、搭乗者を墜落の危機に陥らしめり。
右の事態を重く受け、小官の指揮の下、前線設備に於いて緊急の引き算の改修(不要なる内側スラスター群及び装甲の撤去、並びに推力ベクトルの再計算)を実施せり。結果として総推力は49,000kgへと低下せしものの、重心バランスは劇的に向上し、燃費も辛うじて実用範囲内へと収まりたり。
野戦改修後に再開せし各種基本試験に於いては、以下の通り悉く極めて良好なる結果を記録せり。
一、標的射撃試験
機体バランスの抜本的改善に依り、重力下に於ける歩行時及び走行時の姿勢制御が安定し、ザクマシンガンの命中精度に大いなる向上が見られり。
二、装甲板に対する格闘試験
標的装甲板に対しヒートホークを用いたる打突・斬撃試験を実施せし処、機体の有する大馬力より生み出される通常の斬撃に於いても、極めて強力なる破壊力を示せり。更に、スラスターの爆発的推力を乗せたるすれ違い様の一撃は、事前の想定を大幅に上回る絶大なる威力を実証せり。
三、機動力試験
無駄なる装甲を削ぎ落とせし結果、ロールアウトされたばかりの最新型たるザクⅡJ型を、歩行速度、跳躍力、反応速度等の悉くの数値に於いて優に凌駕する地上機動性を獲得するに至れり。
3. 対MS模擬戦闘記録
同月22日、ジオニック社製「YMS-07A」との間に於いて実施せし模擬戦闘(射撃戦及び白兵格闘戦)に於いて、本機は相手側に被撃数38という致死判定を与え、自らは一切の被弾を許さず、完全なる勝利を収めり。
特筆すべきは、搭乗者たるアスカ・ナカノミヤ大尉の卓越せし操縦技術なり。
大尉は本機の持ち得る推力を活かし、脚部スラスターの推力をマニュアル操作にて微細に制御する事により、1Gの重力下に於いて機体を地表で滑らせるホバー移動の如き予測不能なる機動を現出せしめり。之に依り、白兵戦に特化せしYMS-07Aの死角へと瞬時に回り込み、敵機の攻撃を悉く無効化せり。
4. 総評
改修後の本機が示せし機動力、並びに模擬戦闘に於ける圧倒的戦果は、公国軍の現行MSを凌駕する紛れもなき最高峰のものなり。
然れども、技術評価科の観点より之を分析するに、現状の仕様にては幾つかの懸念事項が存在す。
第一に、本機の驚異的戦闘力は搭乗者たるアスカ・ナカノミヤ大尉の卓越したる操縦技術と、それによるマニュアル推力制御に依存する処が極めて大なり。推力と重量の均衡がピーキーなる本機を一般兵が操縦せば、推進剤の枯渇や姿勢制御の喪失を招くは必定にして、汎用兵器としての運用は機種転換訓練無しには極めて困難と評価す。
第二に、本機の心臓部たる1,200kW級ジェネレーターは、特殊耐熱素材を多用せる試作品であり、現状にては一機あたりの製造コストが莫大なり。
併しながら、本機は軍上層部の要求項目たる「ザクⅡのパーツ互換性率五割」を十全に満たしており、新造パーツが六割を占むるYMS-07Aに比して、基本フレームの生産性や整備性は極めて優位にあり。
故に、将来的に右の高出力ジェネレーターが安価にて製造可能となるか、或いは馬力は低下すれども現在生産されし現行ジェネレーターへと換装せし場合、本機はYMS-07Aよりも安価にて量産し得る可能性を秘むるものなり。現行ジェネレーターへの換装に依り、今次試験にて示せし格闘性能や走行速度の低下は免れざるも、素体になりしザクⅡの機体設計の優秀さ故に、汎用MSとしての基本性能は依然として良好なる水準を保つものと推測す。
右の如く、現状の仕様のままにては主力量産機としての運用には多大なる難を残すも、ジェネレーターの再考を以てせば堅実なる量産機と成り得ると推考するものなり。
加えて、本機にて得られし高出力ジェネレーターの実働データ、並びにナカノミヤ大尉が編み出せし「脚部スラスターを利用せる地上ホバー走行」の着想は、今後の陸戦兵器開発に於いて極めて有益なる技術的ブレイクスルーと成り得るものと愚考す。
右、報告す。
宇宙世紀0079年3月23日
オリヴァー・マイ技術中尉
ご高覧ありがとうございます。
はい、ということで、YMS-08A君は現状のままだとコスト高過ぎて無理なので、本気で導入する気ならジェネレーター載せ替えるしか無いです。と言葉を柔らかくマイ中尉は報告書にしています。
本来、技術評価科は個人の感情は抜きに兵器を評価しなければならないのですが、マイ中尉も人間なので08Aにはほんの少し肩入れしてしまっている感じになっています。なので、総評内で改善案を出して見ている感じになります。まぁ、本人も無理だろとは思って書いていそうですが…
それと、一応報告書面に於いて08Aは量産に値せずと評価をしないのは、それを判断するのはあくまでも上層部のお仕事なので、その領分に一技術士官が踏み込まないようにするためです。